☆☆☆大阪市内☆☆☆

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194名無しさん@お腹いっぱい。
近道をしようと、初めて曲がった路地のほんの裏側や、
渋滞を避けようと知らず知らずに越えた橋の向こうに「そこ」はあります

現代人が忘れてしまった神秘にも似た夢のような空間をあなたは知っていますか?

突然狭まる道幅に、荒れるに任せた未舗装の道路
豚の鳴き声に心揺さぶられ、和牛の干皮が眼底に焼きつく
行く人々は目つき鋭く、四本の指に異形を匂わす
郷愁ただようバラックやスレートは、母の背でみた幼き頃の思い出か

まだ見ぬ異国の路地裏ではない
毎夜の夢に現れる、極彩色の迷宮(ラビリンス)では豪奢すぎる

年の頃は十五、六であろうか
廃車の傍らに一人たたずむ少女の、痛いほどの視線があなたを突き刺す
あまりに美しく、そして冷たいその視線に、あなたは息を呑み、ただ立ち尽くす

「おい!こら!なにしとるんじゃボケ!」

刹那、中年男の怒声が響く 
あなたから視線をはずし、獣に怯えるように少女はドス黒い廃墟へと消えていった
195名無しさん@お腹いっぱい。:05/01/07 11:32:19 ID:OBlHJVdC
どこをどう抜けたのだろう
やがてセピア色に染まったバラックも豚小屋も、水溜りも見当たらない

いつの間にか、全身が聞き慣れた喧騒があたりをつつむ
どこかの工事現場の音 車のクラクション せわしなく走り抜ける少年達の足音
あなたは現実世界の遠慮の無さを思い知る

ふと懐かしく、そして刺すような冷たい視線を感じた気がして、あなたはゆっくり振り返る
                    
                   「大阪市営○○住宅」

無色で無臭で、すっかり世間にとけこんだ 「ふりをした」 無機質で巨大な集合住宅群が
ただ、あなたを見下ろしている
なにを期待したのか、自分で自分がおかしくなったあなたは、少し苦笑いを浮かべる

そして、喉元から込み上げる様々な感情 懐かしさ 郷愁感 そして切なさ・・・
二度と逢うことの出来ない、セピア色の風景とあの少女に、あなたは少し泣いたかもしれない