【アナタは同和差別を経験したか? 2003年版】

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137大佐
年齢:20代前半
性別:男性
場所:東葛飾
教育:小・中学校時代の社会科での『士農工商 エタ ヒニン』程度。
体験:ある?

内容:少々長くなります。

高校時代の蒲田でひょんな事で知り合った同い年の男がいた。
そいつはある私立高校を傷害事件でその数日前に退学になったのだそうで、
四六時中ひどくイラついているようだった。
しかし、その言動や行動をみているとその『闇』の様なものは
それだけでは済まされない様な感じを受けた。

彼は城東地区にある実家に一向と帰ろうともせず、
蒲田の連中の溜まり場と化していたマンションに住み着いて、
日がな一日街を徘徊しては、喧嘩をふっかけてボロボロになって帰って来たり、
女にふられて飲めない酒をバカみたいに飲んで暴れて、
スジ者のベンツに酒瓶を投げつけては、周りを巻き込み大揉めに揉めたりと、
所謂『手のかかる問題児』で、
当然周りの連中も彼と一歩距離を置こうとするのだけれど、
今度はその事に拒絶されたと感じて、子供の様に泣いて錯乱気味に謝る始末。
手に負えないと、一人また一人と彼の周りから去っていき、皆が消えた。
それが哀れに思えた自分は、
日頃自分を頼ってくるそいつの面倒を何かと見てやったのだった。
138大佐:03/01/18 01:55 ID:tqphre7N
知り合って月日も経ったある日、
家まで付いて来てくれないか。と頼まれ、
電車を乗り継ぎ訪れた彼の住む町には、高校時代の自分でも気付く
どこか寂れているだけではない『独特の雰囲気』があって、
その彼の実家と言うのはどこの町にもあるような
新しくもない、そして古くもない普通の家なのだけれど、
端々から尋常ではない空気が漂っている事に気付いた。
よく見て見るとその壁と言う壁、窓と言う窓に防犯カメラと
鉄格子がはめられていて、彼は、鍵を持ってないから、
とその鉄格子をよじ登るとベランダに上って、
近くにあったスコップで窓を叩き割って『自宅』に入り込んだ。
自分も戸惑いながら後に続くと、その室内には、
一面に洗濯物や生ゴミ、新聞紙などが積もって汚臭を発していて、
人の生活している気配はあるのだけれど一切手が入れられておらず、
真っ昼間なのに独特な翳りがこの家の内側にへばりついていた。
彼の部屋のドアを開けると、長く窓もカーテンも開けていないような
部屋の中からひどくすえた空気が流れ出してきて、その壁には
彼自身が殴ってつけたのであろう丸いこぶし大の穴が無数に開いていた。
母親は下の部屋にいるようで、気配は微かにするのだけれど、
存在を示す様な兆候はなかった。
彼はそんな『母親』に向かって怒鳴り続けていた。
家のあちこちには『平和』だった頃の名残があちこちに転がっていた。
逃れ様のない孤独とか絶望とかいわれる様なものをその家で感じた。

家を出た後、彼に今まで触れずにいた家族の事を糾すと、
母親が分裂病で完璧に狂っていて手がつけられない。
父親は単身赴任で地方へ出たまま仕事を理由に
一向にこっちへ帰ってこようとはしない。
彼自身、親から過去に相当の仕打ちを受けたのだと、
堰を切ったように話し始めた。
しかし、いつもの様に被害者ヅラばかりしていた彼に
自分は同情と同時に心底吐き気を覚えた。
139大佐:03/01/18 01:57 ID:tqphre7N
その後、数年が経って自分は『ブラク』と言われるものに興味を持って、
どの様なものなのか自分の目で確かめてみようと歩き始めた。
そして、初めてふと訪れた『地区』といわれる場所へ向かう際、
目的の地区を挟んだ向かいの町の風景にはどこかで見覚えがあった。
彼の実家のあった場所である。探索後文献なども漁るようになり、
その彼の『実家』のあった土地は過去に、今も隣りの町内に存在する
『地区』に含まれていた『旧地区』であった事を知った。
そして、彼の苗字も普通では有り得ない苗字で、
当時は変わった苗字との認識しかなかったが、
それが『地区』に多い独特な構成のものである事も知った。

何かとんでもないことを知ったような気分で、彼の『闇』の一部に
触れてしまった気もした。人に理解してもらう事ばかりを欲していた
そいつにひとつ近付いてやれた気もして優しくしてやれる気もしたが、
その時には、自分の前からもそいつは姿を消していた。
後に、歌舞伎町のホストとして働いていたとの噂は聞いたのだけれど、
その後の足取りは知れず、今は音信不通だ。
今度は自分の中に言い様のない『闇』と例えようのない無念さが残った。

そいつが『部落民』なのかどうか本当のところは知らない。
仮に『部落民』だったのだとしても、彼がそれを知っていたのかどうかも
今は分からない。けれど、もし彼が『部落民』なのであったら、
それを知っているのであったなら、
彼の元からの性質も大きく作用したのであろうが、
やはり心のどこかに作用して何かを歪ませたのかも知れない。
きっとそいつは長くは生きない。
いつか何かが起こった時、自分は自分を責めるのだと思う。
他人の人生などその人間次第だと感じながらも、
その人間の持つ『闇』とやらに近付いてしまったからには
そう簡単にはいかないのであろう。