天外魔境シリーズを語ります! 第二十四段

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大分、お前と飲むときはいつも白木屋だな。
一番最初、お前と飲んだときからそうだったよな。
俺が貧乏大学生で、お前が大学中退の身分ながら親の仕送りだけで
PCEに明け暮れる毎日だったとき、 おごってもらったのが白木屋だったな。
「大学なんて下らない。あんなところはサラリーマンになりたい奴が行くところだ。」
お前はそういって笑ってたっけな。

俺が大学出て入社して初任給19万だったとき、
お前は今度専門学校に行くから親に金貰えると胸を張っていたよな。
「サラリーマンなんてやる奴の気が知れんPCEユーザーが一番偉い」
そういうことを目を輝かせて語っていたのも、白木屋だったな。
あれから10年近く経った、こうして、たまにお前と飲むときもやっぱり白木屋だ。
ここ何年か、こういう安い居酒屋に行くのはお前と一緒のときだけだ。
別に安い店が悪いというわけじゃないが、ここの酒は色付の汚水みたいなもんだ。
油の悪い、不衛生な料理は、毒を食っているような気がしてならない。
なあ、別に女が居る店でなくたっていい。
もう少し金を出せば、こんな残飯でなくって、本物の酒と食べ物を出す店を
いくらでも知っているはずの年齢じゃないのか、俺たちは?

でも、今のお前を見ると、
お前がポケットから取り出すくしゃくしゃの千円札三枚を見ると、
俺はどうしても「もっといい店行こうぜ」って言えなくなるんだ。
お前が親に仕送りを半分に減らされたのは人づてに聞いたよ。
来年からは完全に仕送りを止められるのもな。
お前が体壊したのも聞いた。 新しく入ったバイト先で、一回りも
歳の違う、20代の若いフリーターの中に混じって、 使えない粗大ゴミ扱いされて、
それでも必死に卑屈になってバイトとゲームを続けているのもわかってる。

だけど、もういいだろ。

十年前と同じ白木屋で、十年前と同じ、努力もしない夢を語らないでくれ。
そんなのは、隣の席で浮かれているガキどもだけに許されるなぐさめなんだよ。