「僕、もう長く生きられないんでしょ?隠さなくてもいいよ」
弟の言葉に、俺は何も言い返すことができなかった。
弟は生まれつき体が弱く、外を出歩くことすらできなかった。
そんな弟に俺ができる事といえば、自分の旅の話を聞かせてやることくらいだった。
「お兄ちゃんのお話を聞いてると、僕も一緒に冒険をしているような気になれるんだ。だからもっと聞かせてよ。ね!?」
両親が名のある聖戦士にも関わらず、力不足という理由で聖戦士になれなかった出来損ないの俺でも、
こいつの役にたてるなら…と、それだけが俺の生きる支えになっていた。
「僕ね、お兄ちゃんが、お兄ちゃんで、ほんとうによかったと思うよ。
だから、僕の人生がここで終わっても、それまでお兄ちゃんがそばにいてくれれば僕は幸せなんだ。
でも、お兄ちゃんの活躍する姿を見られないのは残念だな…
物語に出てくるような伝説の剣を手に、次々と敵を倒していくお兄ちゃんを一度だけでも見たかったな」
その時、俺は心に決めた。伝説の剣を、そしてそれを持つ俺の勇姿を必ず弟に見せる、と。
これが弟にしてやれる最後の事なのだから…
それから俺は必死で伝説の剣についての情報を集めた。
そしてついに「ある町の店で最強の剣が売り出される」という情報をつかんだ。
もちろん俺はすぐに買いにいった。
やった!とうとうやったぞ!
ついに見つけたぞ!
待ってろよ、今兄ちゃんがお前の願いを叶えてやるからな!
念願の、念願のアイスソードを手に入れたぞ!