彼――マキシムは薄暗い密林を一人歩いていた。
「くそっ……乗りこんだと思った虚空島がまさかこんなことになってるなんて……」
四狂神を倒すために旅をしていた仲間とははぐれてしまった。
生きているのか死んでいるのかさえ分からない。それでも……
「セレナ……君だけは、君だけは生きていてくれ。俺は死なない。
君と、我が子と――ラルフと幸せな家庭を築くまで」
今一度胸に誓う。必ず、生き延びると。マキシムはバッグに入っていたトライデントを握りなおした。
剣でなかったのが残念だがまだましな方だろう。フライパンだったら目も当てられないところだ。
その時、
「貴様も――」
どこからか声が聞こえた気がする。搾り出すような、呪詛に満ちたうめき。
マキシムは身構えた。もちろん後ろも警戒は怠らない。さあ何でも来い、準備は万全だ。
「幸せ者かぁぁ!」
どどおん……と、凄まじい音が大地を揺らした。カインはスキーストックを男から引き抜いた。
男――マキシムとか言ったか。彼の下で絶命した男を見下ろして彼は吐き捨てた。
「しかも妻子持ちとはな。はじめに教室で見たときから鼻持ちならない野郎だとは思ってたが」
ふと、マキシムの近くに転がっていた槍に目をが行く。マキシムの支給品、トライデントだった。
カインはそれを無言で拾い上げると、凄絶な笑みを浮かべた。
「ゆるさねえ……セシルも、エッジも。俺を差し置いて幸せになった全ての人間を。
必ず俺がこの槍で裁きを下してやる……」
カインにとってはゲームの主旨が既に変わっていた。
【「エストポリス伝記2」 マキシム 死亡】
【「ファイナルファンタジー4」 カイン 生存 装備スキーストック→トライデント】