静寂に包まれた夜のゼビラス星。わずかばかりの生物と、荒涼とした大地が続く虚ろな星。
そんな大地にぽつんと佇む少年フラッピー。天を仰ぐフラッピーの目にひと雫の涙が。
「あぁ、ボクのふるさとブルースター……」かつてあの天井に美しく輝いた星、ブルースター。
フラッピーが生まれ育ったふるさとが、そこにあった。
「たくましく強いパパ、やさしく美しいママ、兄さん、姉さん、みんなで仲良く暮らしていたのに、でも今はもう……」
あの天のどこを探しても、ブルースターはない。
樹々は緑をたたえ、鳥はうたい、花は咲き誇り、溢れる水と美しい人々の笑い声の絶えなかった幸せの星ブルースター。
その星に、闇の帝王ンガロ・ンゴロが魔手を伸ばした。一度狙われたら決して逃がれることができないと言われる恐ろしい悪だ。
戦いか、降伏か、選択が急がれた。長老がみんなを集めて叫んだ。
「我々は戦いを好まない。だが、服従も好まない。ブルースターは誰の支配も受けない。
3日の後、私はこのボタンを押す。我々のブルースターは自ら消滅するのだ」
誇りに満ちたブルースターの人々は自決の道を選んだ。
運命の日の朝、フラッピーは父に呼ばれた。
「フラッピーよ、いよいよお別れの日が来た。私はおまえが可愛い、おまえだけでも生き延びてくれたら…そう願わずにはいられないんだ。
実はここに脱出カプセルがある。これでこの星を脱出するのだ。まだ未完成だが、隣のゼビラス星までは充分到着できるはずだ」
そう言うと父はフラッピーの言葉も待たずにカプセルに押し込めて、発射ボタンを押してしまった。
遠ざかるブルースターを振り返りながら、フラッピーはつぶやいた。
「なんて美しい星。さよなら、みんな、さよならボクのふるさと」
父のつぶやきが耳をかすめた。
「生きてさえいれば……」
そして、フラッピーはゼビラス星から全てを見た。はるか天上でブルースターが細かく砕けたのを。
そして、そのかけらがゼビラス星の上にふりそそぐのを。
あれから幾つの夜を過ごしただろう。ひとりぽっち、あてもなくさまようフラッピーは、寂しかった。
「このまま生きていたってどうなるんだ。ボクも死んでしまいたい……」
打ちひしがれた心でふらふらっと歩いていると、突然美しい湖に出た。青々とした水をたたえ、まわりは美しい花と気と鳥のさえずりが…。
「美しい……。このゼビラスにもこんなところがあったのか、まるでブルースターのようだ」
陶酔にも似た気持ちのフラッピーに頭上から声がした。
「ブルースターは、細かく砕けてブルーストーンとなりこのゼビラス星にちらばっている。そのブルーストーンを全てここブルーエリアに集めるのだ。
ここはお前の聖域だ。ひとつ残らずブルーストーンが集まったその時は………」
「はっ!」
我に返ったフラッピーは辺りを見回した。
「今のはなんだったんだろう。ブルーストーンを集める? 集めたら一体どうなるんだ?」
茫然とフラッピーは考えた。
「よし、集めてやろう。ゼビラスの隅から隅、全てを探し出そう。集めたからってどうなるかわからないけど、ブルースターはボクのふるさとじゃないか。
たぶんきっと、何かが起こりそうな気がする…………」
フラッピーは歩きはじめた。ブルーストーンを求めて寂寞とした大地へと。