★村上春樹的就職活動U★

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331午後の最後の面接
僕が永沢さんと親しくなったのは、ちょうどそんな時だった。
彼は寮の中でもまず第一に頭の良さで知られていた。何の苦もなく東大に入り
在学中にTOEIC984点を叩き出し、司法試験にも合格した。
しかし彼は「法曹界に興味はない。あれは弱い人間同士が税金を使って慰めあう
最低の場所だよ。」と言って、みなと同じに就職活動を始めていた。

彼は非常に特別であり、就職活動も極めて順調であった。すでに商社上位3つの内定を
獲得し、外資系コンサルも軒並み内定を得ていた。
彼は良く僕にこう言った。「なあ知ってるか、就職活動なんてゲームみたいなものだよ。
相手はこちらにある程度の演技を要求してくる。おれ達はそれにただ応えれば良いんだ。」
「それは永沢さんが特別なんですよ。少なくとも僕はあの集団面接というものがどうも
苦手なんです。」僕が答えると彼は
「なんだ、そんなことか。じゃあ一緒に面接を受けるよう申し込もう。」
と言った。