★村上春樹的就職活動U★

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129就職戦線異状名無しさん
「あなたはここで何をされているのですか」
リクルートスーツに身をつつんだ加納マルタは突然僕に言った。
「いや、面接はここで受けろと綿谷ノボルに言われたんです」
僕はそう答えたが、なんだか遥か遠くのできごとのような気がした。
「水をちょうだいしてよろしいですか」加納マルタは僕の横に座った。
「水?」僕は答えた。「水って、水道の水のことですか」
「ええ、それでかまいません」
「それなら、そこの通路を右に曲がれば、洗面所がありますよ」
そういって加納マルタの方を向くと、そこにはすでに誰もいなかった。
「やれやれ、面接前だっていうのに僕は混乱しはじめているようだ」
だれもいない待合室の真ん中でそっとつぶやいた。