【女】男は結婚するべきではない part172【発狂】

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57就職戦線異状名無しさん
 メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐(じゃちぼうぎゃく)の女を除かなければならぬと決意した。
メロスには貧困がわからぬ。メロスは、都市の高学歴である。知を学び、金と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
きょう未明メロスは家を出発し、電車に乗って、十里はなれた此(こ)のシラクスの銀座にやって来た。
メロスには父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、都市の或る律気なバカマッチョを、近々、花婿(はなむこ)として迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。
メロスは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる銀座にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。
メロスには竹馬の友があった。セリヌンティウスである。今は此のシラクスの銀座で、証券マンをしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。
久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちにメロスは、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、市全体が、やけに寂しい。
のんきなメロスも、だんだん不安になって来た。路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたって、まちは賑やかであった筈(はず)だが、と質問した。