>>88 営業報告会の日が来た。今日の処刑対象は俺たち営業部員ではないので
全体に安堵感が漂っている。対照的に全員同席を命令された財務部のやつ
らには重苦しい雰囲気が漂い、顔に精気がない。
今日の処刑対象は財務部の運用担当者とそのアシスタント、そして管理責任
を問われた財務部長だ。
外資系企業からヘッドハントされてきたこの運用担当者は、外債の運用で100
億近くの穴を開け、会社の業績見通しを狂わせたのだ。
役員会は財務部の粛正を決定し、その実行を我々営業部に一任した。うちの
部長と財務部長は取締役の椅子を巡って対立しており、この繊細一隅のチャ
ンスにほくそ笑みながら部長は言った。
「矢崎、この件は任せる。思う存分にやれ。」
営業部次長として、俺にはオリジナルの処刑方法を開発することが期待され
ている。歴代次長はそれぞれに語り継がれる処刑を考案してきたのだ。
ホタル、串焼き、毒ガス、ヒンデンブルク、そして究極処刑とされる最後の噴水。
別名「針」と呼ばれるこの処刑を作り出したのは今の部長だ。
これらの並び称される処刑を俺自身のアイデンティティとして会社に問わねば
ならない。