セノン(警備会社)

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652あるセノンマンの体験記
佐藤さんは、去年2月まで羽田空港に勤務していた。警備会社の社員として空港に派遣され、搭乗客の手荷物検査を担当していたのだ。  
警備会社には1年半のアルバイト生活を経て入社した。
「食品スーパーでのアルバイトが楽しかったので、漠然と人と接する仕事に就きたいと思っていました。
正社員での仕事を探していたのですが、大学を中退後、ずっとアルバイトをしていた私を採用してくれそうな会社はなかなか見つかりませんでした。
そんなとき警備会社の求人を見つけ、応募条件を満たしていたので受けてみたら採用。予想外のことでしたが、空港で働くなんて面白そうだし、これも何かの縁だと考えて入社したんです」
警備会社に入社したのは2001年の8月。そのわずか1カ月後に、アメリカ同時多発テロが勃発する。
当然ながら空港警備は厳重体制を敷くことになり、手荷物検査員として羽田空港に配属された佐藤さんも、新人ながら超多忙な業務に就くことになる。
「テロ以降は航空会社の検査が厳しくなり、手荷物検査時に搭乗券の名前まで確認するようになりました。
時間がかかるため、検査台の前には長蛇の列ができ、いら立った搭乗客からは文句を言われる。精神的にとてもキツかったですね」
内定したときは警備員も接客業だと考え、自分を納得させたという佐藤さん。だが実際は、検査員として搭乗客と接しはするものの、喜んでもらえる仕事ではないように感じていた。
また、警備という仕事の性格上、対応もマニュアル厳守が求められる。
人と接するのが好きだった佐藤さんにとって、警備の仕事はあまりにも事務的に思えた。空港で働くなんて面白そう……入社動機の甘さを痛感させられるまで、多くの時間はかからなかった。
「とはいえ、せっかく正社員として入社したので、簡単には辞めたくないという思いがありました。結局1年以上悩みましたね。
最終的には、拘束時間があまりに長い仕事への不満と異動の可能性の低さ、現場の提案が通らない風通しの悪さなどを総合的に判断して退職を決意しました」