孤独のグルメ 第32話【久住昌之×谷口ジロー】

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21愛蔵版名無しさん
連載時と単行本の違い

1話:山谷で例の目をしていて絡まれ、拳銃を使おうとした相手に警告するが
無視して撃とうとしたために両腕を10ヵ所折るシーンがカット。

2話:背広と外国人の連れの会話が差し替え。
(本当は後の伏線となっているのだが、全て消されている)

3話:単行本では、季節物を頼んでしまい断られるという展開だが
連載時は「猪木の顔真似をしないと注文に応じない」という意味のわからない店に入った設定。
シュールすぎるためと、モデルの店に誤解を与えるという配慮でかなり変更されたが
店主が注文を断るコマと、仕方がないのでゴローが猪木の顔真似をしたコマは流用されている。

4話:客が子供の人身売買組織についての会話をしていて
脇で飯を食いながら聞き耳を立てるゴローという密室劇の展開だが
単行本では組織絡みのストーリー自体が筋書きから消されているため
ゴローの単なる独白に差し替えられている。
ちなみに2話ラストの背広と外国人がブローカーであるという事がこの会話で判明することで
伏線がここに繋がっている。


※5話以降は一層単行本との差が激しい
人身売買組織と、少女の部分を徹底的に削除してあるため
正直単行本は別の話になっている。
差し替えによってエッセンスがかなり抜かれてしまった結果
連載時の読者と単行本読者の間でかなり印象と評価が異なる作品になっている。
22愛蔵版名無しさん:2011/08/04(木) 01:58:06.56 ID:???
5話:人身売買組織のチンピラに街で追われているイギリス人の少女を助けるシーンが
パリで小雪と別れた時の回想シーンに差し替えられている。
また、店に入るくだりも
追手から隠れて入った店で、さらわれてから今まであまり食事をしていなかったと言う少女に
何か食事らしいものということで焼きそばを頼むが、焼きそばがやってないというもどかしさと
加えてゴローはあんまりうまくないと思った焼きまんじゅうを
少女が必死に食べる対比によってかなり少女が弱っていたことを表現している。
おみくじも少女が引いて大吉を出しており、ゴローが少女に意味を伝えると
「こんなにひどい目に逢って大吉ですか」と自嘲する少女に
「君にはこれから良い事があるんだ」とゴローが語りかけてラストとなる。

6話:ゴローの弁当はジェットではなく、少女の作ったもの
少女の名前がシャーリーであるというのがここの独白でわかる。
隣の客が車内でジェットを使っている事に対し、ゴローは口に出さないが批判的であり
ここでゴローが思った内容は、単行本だと他の客が言った事になっている。
オチは自分の弁当を開けてみると新婚愛妻弁当のようなゴテゴテしたもので
隣の客がそれを見てちょっと笑ったような気がしたので
お前のジェットよりマシだと思いつつ隠し気味に食べてしまう自分の器の小ささが
少し嫌になるというもの。
23愛蔵版名無しさん:2011/08/04(木) 02:00:05.52 ID:???
7話:着いていきなり路上で人が撃たれるシーンから始まる。
その際に現場でゴローの目に不審な男が映り、その場では見失うが
取引先で会った滝山がその男であり
ここから仕事の話をしつつ、「こいつは何なんだ」「滝山はあの時自分に気づいただろうか」
「そもそも滝山も単に居合わせただけじゃないのか」等の考えが錯綜する密室劇になる。
帰りにたこ焼きを買いに寄った際には、偶然にもそこが銃器・麻薬・臓器等一切の
闇売買の元締めの店であり、そこに入ってきたゴローと店の常連(全員売人)との
思案が繰り広げられる。この際にロクちゃんと常連はゴローが捜査官ではないかと
警戒するが、当のゴローは滝山とシャーリーと組織の事しか考えておらず
眼前の危機にまるで無頓着な様子が描かれている。
表面上は何もなく、たこ焼きを買って帰るゴローを単なるシロウトだったと馬鹿にする客に
店主が「死人が出なかったのが奇跡だ」と1人だけゴローの力量をはかったセリフで締める。

8話:1人ではなく、シャーリーと2人で焼肉に行っている。
焼く作業に忙殺されるシーンは、シャーリーが焼肉のやり方(+日本語)が分からないと言うので
「教えてあげよう」とエエカッコしいで頼みすぎてしまった結果としてのもの。
帰りに堀の内のそばを通りながら、男女が焼肉を食べる事の世間での意味を思い出し
「そういえば店員が変な眼で見てたな」と頭を掻く事になる。
また、組織に追われるシャーリーが気がかりなので今までなかなか風俗に行く暇もなく
かといって堀の内が近いからと今行くわけにもいかず
「うおォン俺はまるで人間火力発電所だ」と己のやるせなさと体の正直さを嘆きつつ終わる。
24愛蔵版名無しさん:2011/08/04(木) 02:02:18.08 ID:???
9話:仕事のついでにシャーリーを海に連れて来た時の話となっている。
食堂の窓から海岸を見ていたシャーリーが「海に来て、こういう所でさらわれた」と過去を話し出す。
それを聞いたゴローは彼女をいつまでも日本に居させてはいけないと思うが
同時に組織をどうにかしなければ彼女は狙われ続けるとも思い
ここで組織と対決する決意を固めることになる。
直後に攻撃を受けるが、ヒットマンに魚のミンチを浴びせてトンビに襲わせ切り抜ける。
ヒットマンが崖下に落ちた後、さらに多くのトンビが集まってくる事によって
直接的ではない残酷美での死の表現がされている。

10話:昼飯を食べながら先日の襲撃について考えるゴローが
何故ヒットマンが自分の顔を知っていたのかという理由を考えるうちに
やはり大阪で男が撃たれた時に、滝山が自分のことを見ていたと確信するシーンが
女によるテーブル談義に差し替えられている。
また、商談の際にやたらと滝山がゴローの住所を知りたがっていたのも思い出し
その際渡した名刺に事務所の住所が乗せてあることと
シャーリーが雑用の助手を申し出たので今は事務所にいる事、これら全てに気づくコマが
単に味噌汁が美味くて驚いただけという事になっている。

11話:シャーリーに電話し、事務所をすぐ離れるように言って公園で合流する事になる。
この回は公園に着いたシャーリーがゴローを待っている間に食事をする話なのだが
全てゴロー主体に差し替えられている。
まだ漢字がいまいち分からないので、読めるひらがなで書いてある「おでん」を頼んだり
覚えたての日本語でカレーを頼んだらカレー丼が出てきたり
でも日本食だから丼なんだろうと違和感なくそれを食べたりといったシーンが続く。
親子連れを見て切なくなったりしつつ、眠くなったのでウトウトしていると
ゴローが後ろから肩を叩いて「寝ないで下さい」の張り紙を指さして意味を説明し
今度はバスでゴローが寝るとシャーリーが肩を叩くという緊迫感の無い終わり方をする。
25愛蔵版名無しさん:2011/08/04(木) 02:05:36.02 ID:???
このように、別物と言えるほどに連載時と単行本でストーリーが異なる経緯として
まず連載中に共同原作者の1人が亡くなり、急遽連載が中断となってしまった。
原作者を欠いた形で一定の連載ペースで復活させるのは難しいため
後半部分を当初の計画より大分削った形で書き下ろしにした単行本を作り
そこで終結させる計画であった。

しかしここで何故か雁屋哲がこれを不服として出版社に怒鳴りこみ
「共同原作者を欠いた形で続けることは許されない」という主張を始めた。
(雁屋哲は「共同原作者の友人」を自称してはいるが、この作品には一切タッチしていない。)

この言いがかりのようなクレームへの苦肉の策として
出版社と残りの原作者で話し合いが行われ
ストーリーのうち、亡くなった共同原作者の発案した部分を全てカットした形で
単行本を製作することとなった。

しかしその結果、本来話の中核であったはずの
「組織・組織に狙われる少女・主人公と組織の対決」の部分が抜け落ちてしまい
組織の話で緊張、日常で緩和というスタイルのストーリーだったはずが
収録されたのは単に緩和した日常の部分だけとなった。

しかしこの緩和部分はシビアになりすぎるストーリーとバランスを取るべく練られた
上質の緩和であるため、現在ではこの緩和が単体の作品として通用してしまう状況である。