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愛蔵版名無しさん:
樹村さんというのは60-70年代に青春を生きた人間の実存を、いつも引き摺っていた、
という気がします。「星に住む人々」位までは回顧的に描いて、それが80年頃からより根
本的に描くようになった。同時代の実存にある母子体験、その失敗の仕方に焦点を当てる
ようになった。それが「海辺のカイン」で、実存と共同性の関係、共同性の根本にある実存、
世界が生の根本から渇望される、その関係が描かれたのが「ピューグルムン」だった。世界
と実存の内的経歴の構造、への視点が根本にある。あの辺の作品で樹村さんは自らの青春
、そこで出会った出来事の諸々に、世代的な幻想に、決着をつけたんじゃないか、て思える
。あれが80-90年代的な問題を取り上げた、て90年代にヘルスワーク出版から作品集で
出たときに言われていたけども、実は樹村さんとしてはそれは偶然の評価で、本当は青春
に出会った幻想の樹村さんなりの総括だったと思うんです。それは、きっと同時代を過ご
した人間は分かっていたんじゃないか。それは誰もあそこまで根本的な総括はできなかっ
たと思うし、目立たないけども、一部評論家がやっている60-70年代回顧とかよりも、
根本的な場所からやっていたんじゃないか、と思えます。