手塚治虫批判もやれよ3

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80大塚康生
●技術を軽視していた手塚治虫さん

 『鉄腕アトム』の功罪については、方々でいろいろと語られています。手
塚先生は「原作漫画があれば準備はおろか宣伝さえもいらない」風潮を巻き
起こし、テレビアニメ時代を出現させました。しかし、私がお会いして語っ
た印象では御自身はあれではとても満足しておられなかった。本当は心の底
からディズニーを超えるフルアニメーションの大長編を作りたかっのだと思
います。ただ、実際に長編をやってみて驚かれたと思うんですね。自負して
いたのとは随分違う。それは、繰り返しますが、技術を甘く見ておられたと
いうことに最大の原因があったのではないかと思います。手塚先生は技術集
団を鍛え上げることにも熱心ではなかった、と私は考えています。
 こんなことがありました。私共が『ルパン三世 カリオストロの城』(1979
年12月15日公開 宮崎駿監督)を完成させたあと、手空きがあったものですか
ら『火の鳥(2772 愛のコスモゾーン)』(1980年3月15日公開 手塚治虫総監
督・杉山卓監督)を手伝うことになりました。手塚さん自身が原動画全員に
話をしたいということでテレコムにいらっしゃいました。
81大塚康生:2007/10/13(土) 17:11:43 ID:???
 手塚先生は、「私はまだ『カリオストロ』は見てません。(虫プロの人に
よると試写室に籠りっきりで繰り返し御覧になっていたそうです)噂に聞く
と3コマ作画だそうですけど、今度皆さんに手伝ってもらう『火の鳥』はオー
ル2コマ・フルアニメーションですからそのつもりで宜しくお願いします」と
言われるので、皆緊張していました。しかし、届けられたカットを見て、私
たちは唖然となりました。たしかに、2コマで作画してありましたが、3コマ
用に描かれたものを「…(点々々)」と言いまして、原画と原画の中に何枚
入れるかを変えただけで、2コマにしなければならない特有の描き方や工夫が
全く入ってないんですね。必要もないシーンにただ枚数が増えているだけで、私たちは本当に驚きました。
 2コマ使用ということはかなり小さな演技(仕種)を拾うことになりますか
ら原画と原画の間の密度が高くなり1カットの原画の枚数も3コマ使用よりも
ずっと増えてしまいます。『カリオストロの城』は基本的には3コマ、速い所
は1コマ・2コマを自由に使っていますが、この時どうやら手塚先生は理念と
してのフルアニメーションに憧れていらっしゃるが、技術的な使い方は御存
じないのだとわかりました。
82大塚康生:2007/10/13(土) 17:14:45 ID:Vr+NGs6l
 今、私がこういうことを言っても先生を傷つけることにはなりません。長
編アニメーション特有の技術は、先ほど言いました「移転」が必要だったの
です。さもなくば、研究と準備に資金を投入して、テストしながら効果を確
かめて使用しなければなりません。フルアニメーションは、ただ枚数が増え
ているだけではないのです。描き方の細かいところで違っているのです。
 また、これも技術的な話になりますが、例えば「熱狂的に拍手する」仕草
を感じよく見せるには1〜2コマでないと気分がでません。しかし、3コマでも
ポーズがよかったら充分鑑賞に値する演技として成立するのです。場合によ
ってはフルアニメーションでは鬱陶しいだけになってしまうこともあるので
す。
 手塚先生は、心の底から2コマのフルアニメーションが好きだったと思いま
す。しかし、当時すでに漫画家として売れっ子だった先生が、東映やディズ
ニーを訪れて基礎技術を学ぶということはあり得ませんでしたし、そんな資
金も時間もなかったでしょう。冒頭に話しましたように、東映が長編のスタ
ートに当たって、いかに慎重だったかを思い出してみてください。
 「あのくらい、ぼくでも出来る」といった手塚先生の過信が、真摯な生徒
として一から学ぶには遅すぎたともいえましょう。私は、他の誰よりも、手
塚先生がすでに東映が蓄積していたフルアニメーションのテクニックを一か
ら学んで出発してほしかったと思っております。」