ニュースキャスター
「宇宙飛行士国民選抜法が施行されて一年が経ちました。
記念すべき初の国民選抜宇宙飛行士は、とし子さんに決まりました。」
と し 子 宇宙へ
とし子は、いきなり国民的スターになってしまったのだ。
53歳。独身。三畳のアパート(風呂とトイレは共同だが、トイレ自体はとし子の部屋にある)に息子(道雄10歳)と2人暮し。
魚の形をした醤油入れに醤油を入れてふたを締める仕事をしている。時給650円。
とし子は悩んだ。魚の形をした醤油入れに醤油を入れてふたを締めたことしかない自分が宇宙飛行士をやれるか自身がなかったし、
一人息子の道雄を置いていくのが不安だったのだ。
とし子
「道雄、ごめんね。母さん行ってくるわ。
これは、父さんがお前の一歳の誕生日にレースで優勝して贈ったトロフィーよ。
道雄は父さんのこと覚えてないかもしれないけど、父さんはいつも私たちを見守っているはずよ。」
道雄
「母さん、僕の父さんは今何をしているの?生きてるの?死んでるの?教えてよ!
何のトロフィーなの?F1のレーサーだったの!?」
とし子
「母さんが、無事に宇宙から帰ってきたら全部話すから、それまで待っててね。
母さんきっと帰ってくるから。」
「…もし帰ってこなかったら、押し入れを開けるのよ。そこに父さんにつながるカギがあるから。」
そう言うと、とし子は1年間の訓練を受けるため種子島宇宙センターに向かった。
その直後、道雄は押入れの戸を開けた。
和月盲信者キモッw
そもそも「武装アニメ化はるろ剣のおこぼれ」って事実を認めると、何か困ることあんのか?
種子島宇宙センターの局長、飯田修(58歳)から、とし子特別訓練編成チーム(TTHC)のメンバーが紹介された。
モンゴル中山(88歳)
石黒たけし(37歳)
スカイウォーカー啓二(17歳)
安部幸子(41歳)
安部千春(41歳)
このメンバーで1年間訓練が行われた。そして卒業式の日、修は自分の気持ちを伝えた。
飯田修
「あなたのがんばりに感動した。僕と結婚しませんか?」
とし子
「ごめんなさい。わたし、スカイウォーカー啓二と今付き合ってるんです。」
修の恋は終わった。
そして、修は退職してTTHCも解散した。
モンゴル中山 → 新婚旅行中に石仮面を発見
石黒たけし → 車の免許を撮りに自動車学校に入学
スカイウォーカー啓二 → とし子と別れ幸子と付き合うが…
安部幸子 → この世の真実に目覚める
安部千春 → 昨夜は北斗真拳を極める夢を見た
スペースシャトル、アブフレックス号の中は思ったより狭かったが、三畳間に住んでいるとし子は不自由は感じなかった。
スペースシャトルは5人乗りで各国の宇宙飛行士が搭乗していた。
マイク・デイビス(30歳)アメリカ代表。
クリカレフ・ユーリー(18歳)ロシア代表。
カール・ペイトン(5歳)オーストラリア代表。
リン・メイ(65歳)中華人民共和国(国籍日本)代表。
チュパカブラ(年齢不詳)プエルトリコ代表。
小さな窓からは、地球が青く輝いていた。
とし子
「きれい。こんなにきれいな星の中で人間はなぜ殺しあうのかしら。
私達の命は、とても短いのに…。」
とし子は誰もが抱く思いを、今口にせずにはいられなかった。
そのとき、アブフレックス号が大きくゆれた。
船内には緊急事態を知らせるサイレンが鳴り響く。
連絡係のとし子が急いでリーダーがいるコックピットにむかうと、そこは血の海になっていた。
リーダーのマイクは殺されていて、グレイ星人みたいなのが2匹、いや二人居た。
とし子の不用意な発言は外交問題に発展しかねないのである。
グレイ星人
「この船は我々がハイジャックした。完全に包囲されている無駄な抵抗は止ッ…」
グレイ星人が言い終わらないうちに、とし子のビンタがグレイ星人の左頬に直撃。
グレイ星人
「殴ったね。親父にもぶたれたこと無ッ…」
やはりと言うか。言い終わるのを待たずにとし子のビンタがグレイ星人を再度襲った。
脳を激しく揺さぶられ体勢を崩すグレイ星人。そこに当然と言わんばかりのとし子追撃。
グレイ星人 VS とし子
とし子のKO勝ち。
マイクを殺された怒りでとし子は我を忘れていた。
穏やかな心を持ちながら激しい怒りによって目覚めたのだ。
しかし、グレイ星人がもつ不思議な武器のせいでとし子の動きは止められてしまった。
そして殺された。
グレイ星人 VS とし子
グレイ星人の逆転勝ち。
グレイ星人
「こいつを生き返らせたくば我々のいうことを聞け!我々の持つ科学力でならまだ間に合うぞ!」
そのとき、プエルトリコ代表のチュパカブラがグレイ星人に飛びかかった。
鷲のような爪でグレイの両肩をつかむと、のどに二本の牙を突きたてて血を吸い出した。
とし子を殺された怒りで我を忘れていた。よく思いかえすとマイクの事は忘れていた節があると後に語った。
チュパカブラ
「でかい口たたくわりには緑色でまずい血だな!口直しにこっちの血も吸っておくか。」
チュパカブラは完全に野生化していた。グレイ星人がミイラのように干乾びるまで体液を吸うと、
とし子とマイクの血も吸い出した。そして、今度は吸い終わると、その骨と肉を食べだした。
船内には緊急事態を知らせる警報音と、チュパカブラが骨肉をむさぼるボリボリという音が交互に聞こえる。
リン・メイ
「アイヤー、このままでは私達も食べられてしまうアル。食べられなくても、グレイに殺されるアルよ。」
リンメイは広東語で悲しんだ。おそらく。
クリカレフ
「大丈夫だよ、リン・メイ。僕達にはまだ心強い味方がいるじゃないか。」
クリカレフの余裕しゃくしゃくの態度に疑問を隠せないリン・メイ。
クリカレフとリン・メイ、二人の背後から甲高い喚き声が聞える。
まだ5歳のカールが恐怖を抑えきれずに泣きだしたのだ。
最初に異変に気付いたのはチュパカブラだった。彼の野生は己の危機を敏感に察知する。
そう、とうとうカールに封印されていた“奴”が覚醒しようとしていた。
そこが自分の死地になることとも知らないとし子が、宇宙へ向うため我家をたった直後。
息子の道雄は父へのカギが眠る押入れの戸を開けた。
そこには、バックトゥーザフューチャー(I〜III)のビデオ、それだけが押入れの中心にあった。
道雄
「そうか、父さんはこのビデオを観てタイムマシンを作ったのか。今は時間旅行をしているんだな。
よし決めた。母さん、僕は父さんに会いに行くよ。」
道雄は勝手な解釈をした。
そして、とし子の軽自動車(ワゴンR)を違法改造して、タイムマシンを作った。
ロケットエンジンがワゴンRを時速200Kmまで加速させたとき、テスラコイルが前方に時空の穴を開けて時間跳躍する代物であった。
一番の壁であった燃料のプルトニウムも遊戯王レアカードと交換で入手できた。道雄とって生命を失うに等しい代償であったが…。
道雄はバックトゥーザフューチャーのビデオを観てタイムマシンを作った。
当初の目的は父親に会うことであった。しかし、父親に会うには手掛かりが少なすぎたと痛感した道雄は、
幼い頃の記憶を頼りに、過去未来をタイムマシンで行き来して情報集めを始めるのだった。
道雄の体感時間により数年が経過したある時。父を知る一人の男に出会うこととなる。
旅立った時間から10年前のアメリカ。その男の名は飯田修、そう、後の種子島宇宙センター局長である。
母、とし子特別訓練編成チーム(TTHC)の監督にして、父への手掛かりを持った唯一の人物。
運命が動き始めた。
狂信者必死だなw
宇宙は静寂に包まれていた。
それはそこを漂う船、スペースシャトル、アブフレックス号の内部も例外ではない。
全てが終わっていた。
舟の外壁にはポッカリと空いた巨大な風穴が一つ。
もはや生命の熱すら存在しない。彼等は何処に消えてしまったのか。
先刻のシャトルを襲った異変、その時まだ生き残っていた者達が居たはずだ。
皆この漆黒の宇宙空間に放り出されたか。男の心に絶望の影が落ちる。
「何が、ここで何があったんじゃ…。とし子さん、何処に。」
その呟きが影に響く。彼は船内をスキャンしていた機器から顔を上げた。
その男はひどくカジュアルな格好をしていた。アロハシャツに短パン。
破壊された船内を歩き回る姿は、足取りの重さを除けば自然体そのものであった。
「とし子さんやぁ何処におるんじゃ。助けに来たぞい。遅くなっちまったんで怒っとるんかのぉ。」
…乗員の生存している可能性は、スキャン結果から分かっていた。
彼はそれでも声をあげながら歩き続けた。そうでもしないと自分が許せなかったからだ。
舟の機能は完全に停止している、人工重力発生装置、酸素循環装置も勿論だ。
だが、それらは即時停止するようにはなっていない。生存していられる時間があった。
そのかん、自分に助けを求め、戦っていた者がいる。彼はさらに力を込め声をあげた。
誰が聞くことも無い声でも止める事は出来ない。聞えない。そもそも空気が無いのだ。
彼、モンゴル中山はそこを確かに歩いていた。
そのころ、地球では静かな波紋がひろがっていた。
安全な筈の宇宙シャトルが、突然のエマージェンシーコールを最後に消息を絶ったのだ。
ただの事故ではない、訓練を受けたとはいえ一般市民が乗っていたテスト機である。
内閣では極秘に緊急会議が開かれ関係省庁の役人官僚は情報収集にどうたらこうたらうんたらかんたら…。
ここ種子島宇宙センターの管制指令室でもスタッフが慌しく動いていた。
激しさはあるが、混乱といえるようなものではなく、整然と己がすべき作業をこなしている。
飯田修
「あちらの状況が掴めない事には…。中山からの通信、先程の一回だけか?」
何度目かとなる同じ質問。
オペレーターらしき女性からの返答はもう首を振るだけとなっている。
さして期待はしていなかったのだろう、彼の視線は動かず上部のモニター画面に固定されていた。
シャトルの反応座標を映す超望遠映像、画面の半分を占める丸い輪郭は月だろうか?
その曲線に沿って動く視線が何かを必死に探している。修は焦っていた。
「道雄君。僕はまた君を、裏切ってしまうかも知れない。」
それは懺悔だったのだろうか。あるいは、決意のようにも受け取れた。
10年前の飯田修はアメリカに居た。
当時の日本超宇宙開発分室、現在の種子島宇宙センターの前身となる部署の職員だった彼は、
NASAへの技術研修とちょっとした観光を兼ねて、海外であるこの地にやってきていた。
洋画観賞が趣味であり、英語が得意な方、という理由で部署の中から選出された修であったが、
不慣れな土地とネイティブな現地語に四苦八苦する毎日であった。
そんな研修先の施設でのこと。
夕方、社員食堂で馬鹿みたいな量のポテトフライと格闘していた修は、目の前の光景を信じることが出来なかった。
自分はもう40も後半の中年だ。一度も風邪をひいたことの無い健康体を誇る修でも、こちらの食事は胃に堪える。
だからすぐ鼻の先のテーブルで少年が食べている食事、そこに目が行った、とたん離れなくなった。
彼の記憶力が正しいのならば、それは寿司に見えた。それも握り寿司だ。しかも桶に入ってるヤツ。
日本に居た時から通算して…かれこれ5年ぶりだろうか?握り寿司への超接近。ポテトは喉を通らなくなった。
結論から言うと、少年の食べている寿司を僕は半分ほど分けて貰った。
正直、どんな味か覚えていない。
脳と舌が自分でも分けの分からない動きをして、気付けばもう食べ終わっていた。
味を確認する余裕など無かったんだろう。
いや、美味しかったのは断言できる。でなければ記憶が飛ぶような事態にはならない。
…釈明させて貰えるのならば、僕は無理にと頼んだわけではない。
自分の食い意地の悪さのを否定するつもりは無い。だが中年なりの分別はある。
どこで手に入れたのかさり気なく聞く僕に、少年の方から申し出てくれたのだ。
僕の知ってる限り、施設付近のストリートに「SUSHI屋」とやらは確かにあった。
しかも繁盛もしていた。しかし、その店で出されている料理は僕の知っている寿司とは違っていた。
具体的に言うと酢飯の上に、色とりどりのフルーツが乗っていた。
????!
その少年は寿司雄と名乗った。
腹が膨れ血糖値の上がった僕の脳にかかれば、本名でないのはすぐに分かる。
それから何度か尋ねてみたものの、困ったように、すまなそうに。
今はまだ名前は言えないと。
男として、それ以上聞くわけにもいかんわけだ。食べ物の恩は固いのだから。
結局、名前もそうだが寿司を手に入れた方法も最後まで教えてくれなかった。
少なくとも「SUSHI屋」では無いだろう。
寿司雄君は、僕に尋ねたい事があるんだと切り出した。
僕は自分で分かる事なら、と快く引き受ける。
寿司の恩、と言えば義理堅いように聞えるが、僕自身、正直興味を惹かれた。
僕の好きな洋画では、この展開はこれから起きる事件の前触れ以外の何物でもない。
自分で言うと恥かしいが、僕は国家機密に僅かながら関わっている人物なのだ!
極端に規則を適用するなら施設内トイレの紙の消費量も国家機密の職場だ。
改めて確認すると凄い事だぞ、これ。なんだか質問への期待が膨らむばかりだ。
さて、質問の内容だが、聞いて驚いた。少々天文学に突っ込んだ内容だ。
有体に言うなら、僕に尋ねずとも学校の先生に放課後に聞けば良いような質問ばかりだ。
だが成る程、ここの天体観測機器は最新鋭(より、ちょっと型遅れ)が揃っている。
天文学を志す少年が僕のような「一流」に憧れてわざわざ質問に来てもおかしくは無い。
少年の質問に一通り答えた後は、同僚に僕の指導能力をアピールがて施設を案内する。
案内と言っても、外部から出入り可能な職員食堂の周辺を僕が上司に怒られないレベルでだ。
それでも寿司雄君は興味深そうに聞き入っていた。
帰り際には計器のテスト用に趣味で撮った数枚の天体写真を御土産に渡してあげる。
そういう類の写真を持ってないかと尋ねられたので気前良くプレゼント。いわゆる記念品。
その後、寿司雄君がまた遊びに来てくれる事を期待したが、いや寿司が目当てではない。
あの数時間の会話で少年と親友になれたと確信できたからだ。自分でも不思議な感覚だった。
しかし、僕がアメリカに居る間、少年が姿を見せる事は無かった。
日本に帰った僕は種子島宇宙センターの局長に就任、忙しい日々を送っていた。
その理由の一つに「宇宙飛行士国民選抜法」の存在があった。
宇宙飛行士国民選抜法(以下UHKS法)とは何かを乱暴に説明すると。
日本国民に巨大な夢を与えてやろう!と総理が解散総選挙を発動させて可決した凄い法律である。
この「UHKS法」はコーラを飲んだ後に出るゲップの如き強制力を持っている法律らしく、
5歳以上の国民の中から誰か一人を無差別に選び、1年の訓練の後にNASAに頼み込んで、
シャトルでビューンとひとっ飛び。一般国民が宇宙飛行士を経験するというものである。
基本的には、この「1年の訓練」をさせるのが僕の仕事となるわけだ。
そんなおり、ふと宇宙に憧れていた寿司雄君の事を思い出す。
彼が日本国籍を持っているのなら、数年後の抽選で彼が選ばれる可能性はある。
僕のところに、宇宙へ行く訓練をする為にやってくる。僕が訓練の監督とは知らないだろう。
数年ぶりの再会、なんとも感動的だ。驚くだろうか?僕の事など忘れているだろうか?
いや、それが天文学的な確率であることは分かっている。起こり得ないことだ。
そうか、あの天体写真をいそいそとポケットに詰め走り去る姿が彼との今生の別れであったか。
などと物思いにふける僕、もう歳なのだろうかね?ふぅ…
萌えキャラの出ない回想シーンが永過ぎてアンケ低迷
「と し 子 宇宙へ」次週打ち切り
その後、色々あって
俺 達 の と し 子 は こ れ か ら だ !!
先生の次回作にご期待ください
※とし子宇宙への完結編が来年春の増刊に乗ります