日本人が見た朝鮮国の風俗・風景
風呂場と便所
途中の各官庁には風呂というものが無かったが、ここ清水館では日本人のために風呂場が
新たに作ってあった。その広さ10坪ほど。湯を汲み入れて使うが、頗る爽快であった。
また、便所も数箇所仮設してあった。これも日本人のために作ったと言う。しかし粗末な
藁葺きで不潔であった。途中の宿には敷地の一隅に便所が設けられていたが、頗る不潔で
堪え難かった。また、部屋に銅製の蓋付きの缶があり、通常はこれで用足しをするという。
普通、朝鮮人民の家には便所がないとも言う。そのためか、いたる所で糞尿の臭気が
甚だしく数万の蒼蝿が舞い、部屋にも満ちて煩わしく、耐えられない位である。雨が降る日
だけ臭気が治まった。ここでは蚊および蚤はまれであった。しかし、浅間艦から士官3人が
連絡のために仁川から来たときに民家に宿泊したが、夥しい蚊と蚤のために、ついに一睡も
出来なかったと言う。
日本人のためにこのように浴房を設け、数箇所の便所を作ってあるが、これは京城近傍では
奇なる風景だと言う。
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