【人を殺した後は】北斗の拳16【小便がしたくなる】

このエントリーをはてなブックマークに追加
132愛蔵版名無しさん
 週間少年ジャンプという完全な娯楽雑誌から生まれたテーマ性豊かな作品である。
とは言ってもテーマ重視の内容かといえばそうでもなく、やはり娯楽漫画だと言えよう。

 無敵の北斗神拳を体得した主人公ケンシロウの凄まじい闘いぶりは圧巻で秘孔という斬新なアイデアも光る。
非常に暴力的な内容で、秘孔(ツボ)を突かれた相手は体内から爆発したりと無茶苦茶であるがそれ故にその暴力シーンが逆にギャグになるという半ば反則技で勝利をおさめている。
テーマとしては愛や哀しみを背負って生きるというのが大半を占めるが描かれ方がうまく心を打たれるシーンもある。
筆者は特に南斗聖拳を統べる南斗鳳凰拳の使い手『聖帝サウザー』の台詞『愛ゆえに人は苦しまねばならぬ。愛ゆえに人は哀しまねばならぬ。』に惹かれる。
まったくもってその通りで共感の限りである。
この台詞を書いただけでも原作者武論尊の才能がわかると思う。
ただ武論尊の才能はそういった台詞を生み出す才能のみで物語を作る能力は欠けているように思う。
物語全体を見てみればわかるが完全な御都合主義で話は進められよくもまあと思うほどに設定が後付けされている。
物語序盤で死んだはずのユリアが実は生きていたり、そのユリアをさらった宿敵シンも実はユリアをかばってあえて悪名をかぶっていたりとやりたいほうだいである。
もっともそういった後付け部分が問題に思えないほど全体的には面白く敵キャラも魅力的だ。

 ただ生涯の敵ラオウを倒して後はもはや蛇足で必要ないものである。
話としてもどんどんと面白みに欠けてゆき敵キャラの魅力も無くなった。
『ラオウを倒して終われば名作だったのに』と何人の人が思ったことだろうか。
原作者武論尊も『ラオウと共に北斗は死んだ。それ以降は何を書いたのか覚えていない。』と言っているらしいので製作者側でも承知の上で続けざるをえない状況になっていたのであろう。
人気商売とはいえ作品を傷つけるような製作はなるべくやめてほしいものだ。
我が子を自分の手で傷つけるようなものだと言えばわかりやすいだろうか。