冨樫義博の『幽遊白書』 その12

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123愛蔵版名無しさん
  連載を終えて〜ふり返れば敗北宣言〜

※結論を早く知りたい方は次のページの最後の行だけどうぞ。
ようやく終了することが出来たという、開放的な快感が正直言
って一番大きいです。作品に対して全く執着がなくなった、と
いうわけではないのですが、ストレスが意欲をはるかに上回っ
てしまった、という感じです。とにかく終了までの半年間は恐
ろしく長く感じました。実は93年の12月くらいに終わるこ
とは決定していました。と言うより私がムリヤリ編集部に頼み
込んだのですが……。理由を挙げれば大小合わせて50コくら
いあるのですが、だいたい大きな理由は3つです。
@身体の都合上 Aマンガに対する考え方 B仕事意外の欲求
Bは論外です。要するに遊びたい・休みたい・思いっきり寝た
いという類のものですので。しかし50コの理由の大半はこれ
に当てはまります。@は今までBが満されなかったために生じ
た問題です。連載当初から武術会が始まるくらいまでは、週に
休みが睡眠のための半日。それ以外はほとんど仮眠でストレス
発散は寝る時間をけずってするという日が続いたのですが、結
構楽しんでやっていました。しかしRPGで言うところのHP
は確実に減っていたようで、読み切り31P・巻頭カラーがた
て続けに来たあたりで徹夜をすると心臓に痛みが走り出すよう
になり、徐々にその間隔が縮まってくるようになりやがりまし
た。その頃ちょっと真剣に制作のペースについて考えるように
なりました。「規則正しい生活はムリにしても寝たい時にきっ
ちり寝て描いたら、どの位のペースで仕事が出来るだろうか」
と。実行しました。原稿がみるみる遅れ出しました。しかしで
きる限り徹夜はさけました。この頃から仕事としてのマンガへ
のとりくみ方が変わってきました。
124愛蔵版名無しさん:04/09/02 19:21 ID:???
「仕事で過労死はやだ。ポックリいくなら遊んでいるときか趣
味で原稿描いてるときがいい。カラー原稿こわい。読み切りこ
わい」
 寝る時間の他にストレス発散の時間もとるようになっていま
した。さらに原稿が遅れ出し、仙水と幽助が闘っている頃第一
のピークを迎えたのです。しかし、ちょうどその頃、今までと
は違うストレスがかなりたまっていることに気付きました。体
調を整え、今までのストレスを発散したために生じる新たなス
トレスです。「原稿が満足に出きない」Aの問題発生です。
 私は画力で人をひきつけたいという絵が好きな人なら誰でも
少しはもっていそうな野心を極力おさえてもらっていました。
125愛蔵版名無しさん:04/09/02 19:22 ID:???
新人時代、萩原一至さんの原稿を当時担当のT氏から見せても
らったからです。正直言って絵では絶対かなわないと思いまし
た。しかし「できれば全部1人で描きたい」という理想はすて
られませんでした。幽遊白書の連載中、何回か1人で原稿を上
げたことがあります。全てストレスがピークに達している時で
す。理解してもらえるかわかりませんが、原稿が満足にできな
いことによって生じるストレスを解消する方法が「1人で原稿
を上げること」なんです。その結果その週の原稿は惨々たるも
のでした。背景も人物もなぐり描きです。読み切りのツーショ
ット。鴉VS蔵馬。幽助と雷禅が対面する回はほとんど1人で描
きました。後半の2話はあるハガキの批判の通り、落ちる寸前
の半日で19枚上げたものです。プロ失格かもしれませんがそ
れでも自己満足していました。すでにその時「人がどう思おう
がどんなに荒れた原稿になろうが1人で描きたいもんは描きた
いんだ」という気持ちを抑える理由が失くなっていたのです。
残念ですが幽遊白書のキャラクターで出来ることは、商業誌ベ
ースではやりつくしてしまいました。あとは出来上がったキャ
ラクターを壊していくか、読者があきるまで同じことをくり返
すしか残っていませんでした。この本でやったようにキャラを
壊す試みはジャンプでは当然ボツになりました。同じことをく
り返すに耐え得る体力ももうありません。そこで常々思ってい
たことを実行しました。「もしジャンプで長期連載が出来たら
自分の意志で作品を終らせよう」アンケートの結果が悪ければ
10週で打ち切りというシステムは承知でジャンプにお世話に
なりました。逆にそれがはげみとなり、「読者の反響」を意識
することで色々勉強ができました。しかし、それを全く考えな
いで自己満足だけのためにマンガ描きたくなってしまいました。
その結果できる作品がジャンプ読者のメガネにかなうとはどう
しても考えられませんので挑戦を放棄します。今までの文章を
要約します。
 わがままでやめました。すいません。