こんな夜更けに、闇と風の中にチョビを走らせるのはだろう。
それはハムテルと二階堂だ。ハムテルはおびえる二階堂にひしと抱きつかれている。
ハムテル 「二階堂よ、なぜ顔を隠すのだ」
二階堂 「ハムテルにはネズミが見えないの。戸棚の裏は、ネズミの卵でいっぱいだ・・・」
ハムテル 「あれは漆原教授だ・・・」
ネズミ 「かわいい坊や、一緒においで。面白い遊びをしよう。入浴して腹毛は真っ白でフカフカだし、細かくちぎった新聞紙をたくさん用意して待っているよ」
二階堂 「ハムテル、ハムテル!きこえないの。ネズミがぼくになにかいうよ」
ハムテル 「落ち着きなさい、あれはチップ取りの変装をした菱沼さんだよ」
ネズミ 「いい子だ、私と一緒に行こう。私のこどもたちがもてなすよ。お前をここちよくゆすぶり、踊り、歌うのだ」
二階堂 「ハムテル、ハムテル!見えないの、あの暗いところにネズミの親子が!」
ハムテル 「見えるよ。だが、あれはしっぽをそられたリスだよ」
ネズミ 「愛しているよ、坊や。お前の美しい姿がたまらない。力づくでもつれてゆく!」
二階堂 「ハムテル、ハムテル!ネズミがぼくをつかまえる!ネズミがぼくをひどい目にあわせる!」
ハムテルはぎょっとして、チョビを全力で走らせた。あえぐ二階堂を両腕に抱え、やっとの思いで自宅に着いた・・・
腕に抱えられた二階堂はすでに泡を吹いていた。