†† 小公女セーラ 46話 ††〜「花のささやき」
「ベッキー、あなたにお話があるの。あとで、わたしのお部屋に来てほしいの」
「はい、セーラお嬢様。わかりました」
けれども、ベッキーはいくら待ってもなかなか姿を見せず、ベッドを降りてセーラ
から彼女の部屋に行こうかと思っていました。
すると、扉をノックする音が聞こえてきました。
「どうぞ、ベッキー!待っていたわ!」
扉を開けてお顔を見せたのは、リボンを解いてプラチナ・ブロンドを下ろしたネグリジェ
姿のラビニアだったのです。
「ごめんなさい、ベッキーに頼んで代わって貰ったの……」
「ラビニアお嬢様……」
「ラビニアでいいわ。アメリア先生からあなたのことは聞いたわ……」
「……」
セーラはラビニアもまた、ダイヤモンド鉱山の話を聞いて、手を反したように変わって
しまう人なのかと哀しく思っていました。
「わたし、ずっと謝らなければと思っていたの」
ラビニアの腕には、エミリーが抱かれていたのです。そしてエミリーの胸にはエメラルド
の胸飾がありました。
ベッドに腰掛ける格好になったセーラにラビニアは近づいてエミリーを渡します。
「わたしセーラに嫉妬していたの。いとも簡単に注目をさらっていってしまうあなたが……
だから、あなたの物を奪いたいと思うまでに憎むようになっていたの」
セーラに抱かれたエミリーに宝石の飾があることに気づきました。
「あなたがわたしを許してくれるとは思わないけれど、これを返して謝って
おきたかったの。ほんとうにごめんなさい、セーラ……ほんとうに」
ラビニアは腰を落としてセーラのお顔を仰ぐように切々と懺悔しています。
「エミリーをベッキーに帰してもらうように頼んだの。けれど、ベッキーは自分で
返した方がいいって。それに、あなたが出て行ったあの日、ミンチン先生がわたしに教えて
くださったの……自己満足でしかないけれど、わたしセーラに謝っておきたかった」
ラビニアはセーラの膝にお顔を伏せて泣いてしまいました。
「ラビニア、お顔をあげて。わたしを見て」
セーラはラビニアの下ろされたプラチナ・ブロンドの御髪をやさしく撫でます。
ラビニアは涙で潤う碧眼でセーラを見ました。
「見て、ラビニア。エミリーのお顔、あなたみたいでしょ。綺麗な金髪に深く蒼い瞳、
ずっと憧れていたの。エミリーじゃないほんとうのおともだちが欲しかったの」
エミリーの飾を外すとラビニアの胸にそれを付けてあげました。
「おともだちになって、ラビニア。おともだちになって欲しいの」
「これは、もともとはあなたの物なのよ」
「わたし、あなたに贈り物をしたいけれど、何もないから」
「わたしセーラから、いろんな大切な物を貰ったわ。感謝してもしきれないくらいによ。
いいわ、これをもう一度、あなたにいつか贈り物として貰っていただくわ」
ラビニアは立ち上がるとお顔を少し傾けて、セーラの唇に口吻をしました。
「あっ、ラビニア」
セーラはエメロードの瞳を瞬きして目元を赧くそめています。
「わたしも贈る物がないから、わたしをあげる」
ラビニアの瞳が少しだけ悪戯っぽい表情を見せました。
「それに、あなただけわたしの裸を見ただなんてずるいもの」
セーラは憧れのラビニアのエロスの誘いに恍惚のなかにいます。ラビニアは
ベッドに腰掛けているセーラの前にすっと立つと、セーラの惚けているお顔を見ながら
自分のネグリジェとシュミーズを床に落として、頭を傾げてズロースの紐を解いて
惜しげもなくセーラの目に秘所を晒したのでした。しなやかな肢体を前屈みにして、
ズロースを抜き取りました。床に落ちた白い衣服が貝のように見え、右脚を少しだけ
くの字に曲げて立っている姿態はヴィナスの誕生のようです。
秘部を飾る僅かばかりの繊毛もやさしく上品に女を飾っていました。セーラは
ラビニアの裸身の前に傅いて乙女の秘部に唇を寄せました。
「ああっ……そこは……いやあ……」
そこはニードルで陵辱されたラビニアのルビィが息づく神殿です。先刻の忌まわしい
記憶が蘇り、大事なところが慄くのです。
「ラビニアのここ、綺麗よ。とても綺麗」
セーラがお顔をあげてエメロードの瞳で、ラビニアの碧眼の瞳を見つめました。
「ああん……い、意地悪……まだ、こわいのに……」
「ラビニアはわたしをあげると言ったわ」
「い、言ったけれど……ひっ、ひぃーっ!」
セーラは包皮からお顔を覗かせているクリットを舌でやさしく突くのです。
セーラがラビニアに憧憬の念を抱いていたようにまた、ラビニアもセーラに同じ
感情を抱いていたのです。エメロードの瞳、雪のように白い素肌にほっそりとした
肢体に長く艶やかな黒髪が妖しく官能の焔を掻き立てるものでした。赤、青、黄
の原色が瞬く眩暈のようなものを感じています。
そして、セーラがやさしくするたびにニードルの傷跡が妖しく疼いてくるのです。
思わずラビニアはセーラの頭を掴んで、自分のセックスに押し付けるようにしていました。
セーラはラビニアの傷を癒したい一心でしたことでした。しかしそれはラビニアの官能
に火を点けてしまったのです。
「セ、セーラ……す、すごいの……も、もっとしてぇ……」
セーラの舌にネクタルが絡み、ラビニアの内腿をツーッと滴り落ちていきました。
両脚はガクガクと顫えだして立っていられないほどになっています。開きかけた
赫い華に熱い口吻をして、女神のネクタルを啜るのです。あからさまな淫水の
立てる音がラビニアを羞恥で身を焦がしました。
「あああ……セ、セーラ……ど、どうにかなっちゃうううッ!」
歔き出してしまったラビニアを余所にセーラは執拗に彼女を責めました。セーラは優しい
征服者となってラビニアに君臨していたのです。可愛らしい桃色の舌を尖らせると、
今度は秘孔にそっと入れたのです。
「あっ、あっ、ああああ……セ、セーラ……!わたしからバローの影を消してぇぇぇッ!」
ラビニアは堪えきれずにとうとう、床へと崩れてしまったのです。脱ぎ捨てた物が腰に
あたって、濡れて輝く秘部をセーラに生贄として晒しているようです。
セーラはエミリーの姿に憧れていたのです。それが今、エミリーではないラビニアが
友情の証として自分の裸身を晒して提供してくれたのです。歓喜していました。それにも
まして、ラビニアに悦んで欲しいと願っていたのです。
「ひぃーっ!」
ラビニアのか細い嬌声があがります。セーラの舌は秘孔へ抽送を開始したのです。
ラビニアはセーラの責めにお顔を左右に烈しく振り出します。それに引き摺られるように
美しい輝くばかりのプラチナ・ブロンドが淫らに拡がって行きました。
セーラの頭を掻き抱いていた両手は、迫り来る絶頂に肘を立てて自分の頭を掻き
毟るのです。
「あっ、あっ、セ、セーラああああああああああああッ!」
時折仰け反る肢体の頂上の蕾は痛いまでに凝っていました。セーラの唇に烈しい
痙攣が伝わり、腰がバウンドしたのです。セーラの唇は女の息吹をめいっぱいに
受け止めたのです。
ラビニアが目を醒ますとセーラはセックスに頬を擦って泣いています。
「エミリー……わたしのエミリー……」
ラビニアはエミリーが最初のお友だちだったことを、ミンチン先生から聞いていたことを
思い出していました。
「ごめんね、セーラ……わたしエミリーじゃないのよ……でも、お友だちにはなれるわ」
セーラの紅潮している頬をやさしくラビニアは撫でていました。
「セーラ、今度はわたしにあなたを愛させて頂戴……」
手を付いて快美の余韻の残る躰を起こそうとするラビニアを、セーラは身を起こして
正座する格好となり右手を反して差し出しました。
「今度はわたしがあなたへのプレゼント……」
セーラはラビニアにそう言いました。
一種のナルシズムの具現なのでしょうか。セーラは自分に無い金髪をラビニアは黒髪
に憧れていたのです。その自分が描き思い続けていた対象を目にした時、烈しく嫉妬
したのかもしれません。セーラにはエミリーがいましたから、幾分かの違いはありましたが
たいした差はありませんでした。
その自分が心の奥に思い描いていた対象に愛し愛される、いわば創造した分身に
愛されるという、これほど蠱惑的なことがあるでしょうか。
ラビニアはセーラの差し出した手に、自分の手を乗せます。
「わたし、あなたの綺麗な黒髪が羨ましかったわ。それに吸い込まれそうなエメラルドの
宝石の瞳」
ラビニアは躰を起こすとセーラと同じように正座して、熱いベーゼを贈りました。憧れの
ラビニアからの美の賛美は歓喜となって唇を開かせて、熱情の舌を誘うのです。
セーラにとってラビニアの舌戯は甘い蜜のようでうっとりとするのです。ラビニアが唇を
離そうとすると、もっととおねだりするほどでした。
唇を離す時に右手に黒髪を掴んで、セーラに見えるようにそこへキッスをします。
「セーラの躰はどこもみな愛しいの……食べてしまいたいくらいだわ……雪……
ミルク……真珠……そんな素肌にこの黒髪……羨ましいの」
上目遣いに碧眼の瞳をセーラに向けて、手にした黒髪に頬擦りをします。
「あなたの、その綺麗な肌をわたしに見せて」
ラビニアは名残惜しそうに掴んでいた黒髪を手放すと、セーラを脱がしに掛かる
のでした。シュミーズも脱がしてセーラに呼びかけます。ベッドで愛してあげる……と。
(次回に続く・・・)