1 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :
2008/10/21(火) 08:59:34 ID:hknk3426 作ってやったからここに書き込めよ。 ついでにコピペしといてやるよ。
2 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2008/10/21(火) 09:00:32 ID:hknk3426
舞台は大成功のもとにフィナーレを迎えた。 アンコールの喝采に応えるためにひかるは舞台のそでから再び姿を現した。 見事に主役を演じることが出来た幸せを体一杯に浴びるかのように大きく 胸を張り、ダンサーらしくしなやかに深々とお辞儀を繰り返した。 そして、最後に舞台の奥に戻ろうと跳ねるように体を翻した時 人の出入りで暗幕が引っ張られ、ほんの一瞬であったが一気にまぶしい光が 差し込んだホールの奥の入場口、緑の非常口のライトの下に視線がよぎった。 「まどかさん…!」 暗幕は元に戻されすぐに暗くなったが、満席のために壁側の通路で観ていた 客の中に、まぎれもないその姿があるのを確認できた。 長い髪の美しい女性が腕組みをして壁に寄りかかるように立っていた。
3 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2008/10/21(火) 09:01:09 ID:hknk3426
予備校での夏季講習も後期日程となり、否が応でも受験生としての気構えと 自覚が促される、そんな雰囲気の中、熱心にノートをとる恭介の姿があった。 しかし、隣にはいつもの彼女の姿はない。 「春日君、ごめん。明日は出られないよ。」 「行くの?ひかるちゃんの…」 「うん…」 「俺はさすがに・・・」 「解ってるよ。」 「会うの?」 「会えないよ…。酷いことしたし。でも…」 自分の気持は解っていた。随分前から解ってはいた。でも、そんな感情を 今まで男の子に抱いたことがなかったことへの戸惑いと、何よりひかるを 大切に想う気持ちから隠し通してきた。
4 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2008/10/21(火) 09:01:45 ID:hknk3426
中学からいろんなことがあった。楽しいことばかりじゃなかった。 正直、クラスでは浮いた存在で、元来勝ち気な性格と、両親が不在 がちであることからの生活の乱れも生じていた。 お酒の味を覚え、煙草を吸い、授業をエスケープしたり、相手を無視 したり…そうすることが受け入れない周りに一線を画し、敢えて自ら 受け付けないと装う彼女なりの精一杯の「つっぱり」であった。 しかし、中学3年の春に恭介と出会ってから、まどかに変化が生じた。 最初は自分の変化に気付かなかったし、ひかるの手前もあり、ひかる 以外の他者への「つっぱり」は捨ててはいなかったが、そんな部分も 恭介と触れていく内に徐々に氷解していった。 それまでは、唯一ひかるがまどかの「女性」の部分が構う相手と しての存在であった。 しかし、まどかも年頃になり、その相手が異性である恭介へと変化 していったのは、彼があまりにも「世話が焼ける」男の子であり、 何より唯一つっぱっている自分を諫めてくれる存在であったから。
5 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2008/10/21(火) 09:02:23 ID:hknk3426
まどかと恭介が高校2年になるまでは、まどかはひかるの「姉役」を 演じることができていた。 ひかるや恭介の口から二人の事を聞かされる度、恭介には敢えて 突き放した物言いをする一方、ひかるには一貫して優しくアドバイス をしていた。恭介とは一定の距離をとることで自分に抑制をかけてい るつもりであった。 しかし、恭介と二人になると、からかい半分に恭介に腕組みを仕掛けて みたり、わざと顔を近づけて恭介を慌てさせたり、そんなシーンを一人 思い出して機嫌が良くなる自分にハッとしたりしていた。
6 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2008/10/21(火) 09:02:54 ID:hknk3426
高校2年のバレンタインデーはアバカブのカウンターの中から、ひかる が恭介に手作りチョコを渡すシーンを見なければいけなかった。 バツが悪そうに照れながら鮎川の機嫌を伺う恭介に 「今年は本命に貰えて良かったね」 と軽くいなしながら、忙しそうに店の奥に消えた。 その夜、まどかはベットに転がって、何日も前から考えていた手作りの チョコを入れた包みを眺めながら恭介との出会いの頃からを反芻して いた。
7 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2008/10/21(火) 09:46:49 ID:hknk3426
「何?まさかチョコでも欲しくて電話してきたとか?」 「あ…、いや、うん…」 いきなり機先を制され黙ってしまうしかなかった。 「今何時だと思ってんの?じゃ、お、や、す、み、春日せんぱい!」 電話を一方的に切ると、まどかはそのまま自分の机に向かい一番上の 引出しを開け、恭介と自分の2ショットの写真を取り出した。 「一体君はどっちが好きなの?」 そう言って、写真の恭介を指でピンと弾いてクスリと笑った。 「期待してたなんて可愛いじゃん。」
8 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2008/10/21(火) 09:47:25 ID:hknk3426
可愛さを振りまくだけではなく、女性らしい細やかな気遣いも見せる ようになり、いたずらに恭介に絡んで困らせることはなくなっていた。 それは、明らかにまどかを意識したものへと変わっていた。 3人でいる時も他に人がいる時も、まどかと恭介が視線を合せていた シーンを何度か目にしたことがあった。 最初は気にも留めていなかったが、ひかるも大人になるにつれ そういところに思いが至るようになってきていたのである。 同時に、まどかの中でも恭介に対する想いがひかるを大切に思う 気持ちと同じくらいに大きなものとなっていた。
9 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2008/10/21(火) 09:48:02 ID:hknk3426
中学までは相変わらずクラスで孤立した存在のまどかであった。話しかけ にくいオーラを全身から出していたし、事実、普通に話しかけようとしても 「何!」 と凄まれることが常であった。 授業はというと、ぼんやりと窓の外を眺めているか、エスケープしては体育館 裏でタバコをくゆらせているか。 高等部に上がってからは、随分人当たりもソフトになったとは言え、授業中 の態度は相変わらずであった。 一応中堅どころの進学校の中で、まどかは常に上位に名を連ねる存在であり だからといって、一向に集中しない彼女の態度を快く思わない教師もいた。 回数こそ減ったものの、エスケープ癖も抜け切れず、そのまま街をぶらつく 姿を見張りの教師に見つかることもあった。
10 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2008/10/21(火) 09:48:38 ID:hknk3426
そして問題集に書いてあることであり、何かにつけ大学名を出されるのも まどかの癇に障るところである。 唯一社会科の教師で、一度自分の家庭の話や時事の話題へと脱線すると 面白おかしく、時に熱く語る先生がいて、その授業だけは 「始まったよ…、やれやれ」 そう思いながらも笑っている自分に気付くこともあった。 そんな鮎川を見て「あいつも笑うんだよなあ…」と不思議そうに眺める 男子もいたが、恭介はそんな鮎川の姿を見るだけで嬉しくなったりする。
11 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2008/10/21(火) 09:49:35 ID:hknk3426
単位制のフリースクールへの編入を考えたりもしたが、その都度それを 押し留めたのは何より恭介の存在であった。 授業中、ふと気付くとこちらを見ている彼の視線を感じる。 そんな時は敢えて視線の送り手の方に振り向くことをせず 「あんたは黒板を見てなさいよ、もう。」 知らぬ素振りでそう思うことがしばしばであった。 しかし、まどかにとって恭介の寄せる想いは決して嫌なものではないし まどか自身も無意識のうちに恭介を見ていることがある。 休み時間に小松たちとワイワイ盛り上がっている恭介を、頬杖をついて やさしく眺めてしまう。当てられ答えられず、オドオドする彼のことを 嫌味交じりになじる教師に対しては、つい睨みつけていたりもする。 恭介の姿が見られる空間は、彼女にとって居心地の良さを感じるもので あった。
見っ直そう〜 見直そう
(⌒) .(⌒) (⌒) .(⌒) (⌒) .(⌒)
( ´・●・)つ ( ´・●・)つ ( ´・●・)つ
( 二つ ( 二つ ( 二つ
\./ /、 \./ /、 \./ /、
∪`J ∪`J ∪`J
>>1 の人生を見直そう 糞スレたてずに見直そう (サァ)
く、そスレだ 糞スレだ
\\ シャバダバダバダバダバダバー //
\\ シャバダバダバダバダバダバー //
(⌒) .(⌒) (⌒) .(⌒) (⌒) .(⌒)
( ´・д・.】) ( ´・д・.】) ( ´・∀・.】)<あ、もしもし
>>1 の糞スレの件なんですが
( ノ ( ノ ( ノ
♪電話ピポパポ 糞スレ24
3年になるとひかるやまなみ、くるみも進学してきた。 それまでは高等部では挨拶以外で話をするのは恭介くらいであったし、 お昼は小松達にからまれている恭介をよそに、学食で一人で食べるか 教室で持参のお弁当を食べるかであったが、今ではひかるやまなみ達が まどかを探し、トレイを持って合席してくるようになった。 彼女にとって、学校でも話が出来る同性の存在が、それまで鬱屈していた 高校での生活をいくらか楽にしてくれる。 学食で楽しそうに話を聞いている姿は、美人ではあるけどおっかない存在 として遠巻きに見られていた彼女とはまた別の美しさを引き出し、以来 ひかる達を通じて鮎川の事を聞いてくる連中が増えた。 ひかるは「自分で聞けばいいでしょ!」とにべもない。まなみは「見かけ と違って優しくって、憧れている」と。そして、くるみは「知らない」。 ひかるは異性のみならず同性からも鮎川の事を聞かれるたびに、ちょっと 苛立ちを感じながら呟いた。 「かなわないのかなあ…」
ひかるは中等部の頃のように、あからさまに恭介にべたつくことをしなく なった。恭介の姿をただ確認したいだけのために授業の合間の隙を見ては 恭介たちがいる3階まで上がってみることがあった。 女子と笑って話す恭介を見ては、自分だけのものにしたいと嫉妬心から 飛び出しそうになることもあったが、相も変わらず小松や八田らと笑い ながら話す恭介を見るとホッとして自分の教室に戻ってきた。 ただ、その際必ず確認を怠らなかったのはまどかの姿である。 恭介が女子と盛り上がっている時は知らん顔をしているが、男子どうしで はしゃいでいる時は、それをやさしく眺めているまどかの表情があった。 「まどかさん…も、もしかしてあたしと同じなの?」
ひかるは高等部に進学すると演劇部に入部した。 まどかはあまり表情に抑揚がない。いつもスカしている。なのにひかる から見ても「いい女」であり、憧れる。美人であることが理由の一つで あることは言うまでもないのだが、せめて雰囲気だけでもと真似しようと 思ったこともあった。 手足もしなやかに伸び、体躯も大人の仲間入りしたひかるは顔も飛切り 可愛いし、見知らぬ男子からいきなり手紙を渡されることも度々である。 確実に大人びた美しさも兼ね添えてきているのだが、やはりかなわない。 「ひかるはハツラツとしてた方が似合うよ。」 まどかから何気なく言われた一言で演劇の勉強をするようになった。 指導の先生や先輩たちから叱咤激励を受けながらクタクタになるまで 発声練習やダンスの稽古に打ち込んだ。 もっと自分を磨きたい。
「毎日お勤め御苦労さん。んじゃ、後でね、春日君。」 「相変わらずきっついなあ…」 3年になって居残り補習は恭介や小松たちの宿命だった。 鮎川は別に特進クラスでの補講を受けるよう勧められているのだが 「あたし勉強嫌いですから」 と拒否している。 本来なら私立では通らない言い訳だし、抜群の成績は別にしても普段の 授業態度やエスケープ行為は決して褒められたものではない。 ただ、父親が有名な音楽家であることと、まどかの母親が一人暮らしする 娘の素行を心配してアメリカから頻繁に学校に電話をしてくること、 さらには後援会役員として毎年多額の寄付をしていることなどもあり、 何となく見逃されている状態であった。
「ま…まどかさん!」 練習の一貫として学校の周りを走らされていたひかるが、集団から離れ 息を切らせながら帰る途中のまどかに駆け寄り声をかける。 まどかはカバンを肩にからって、周りの下校中の学生達から浮いた感じ は相変わらずである。 おそらく教科書や辞書は学校のロッカーに置いてきぼりなのであろう、 肩にからえる程度の薄さである。 「ひかる、頑張ってるね。」 「はい。今日は遅くなるからアバカブ寄れません。代わりに先輩を 見張ってて下さいね。じゃあ!」 そう言って、遅れを取り戻すように走って行った。 「見張って…か。」 空を見上げ、ふうっとため息をついた後、一旦下ろしていたカバンを 肩にからって歩き出した。 「誰にも渡さないってこと?」
6と7の間に 「あたし、どうなちゃうんだろう?もう、ひかるのお姉さん役を演じるのが 辛くなってきちゃったよ。」 ぼんやりと考えているその時電話が鳴った。 まどかはベットから起き上がり受話器を取った。ナンバーディスプレイは 恭介からであることを示していた。 「はい?」 まどかはいきなり退屈そうに機嫌悪く答えた。 「あ、…あの、お、俺さあ…」 およそ言いたいことの見当はついている。今までも十分過ぎるほど恭介の 想いは伝わってきている。 立場上あからさまにはしてこなかったけど、自分だって抑えている想いは 恭介に伝わっていると思ってはいた。
8の前2行に ひかるが高等部の1年に進学する頃からは、ひかる自身も恭介に対する 思いを強くするに至っていた。 も抜けとるがな!
10の前 まどかにとっては、授業はとても退屈なものであった。全ては教科書と参考書 も!
8と9の間に「チュンチュン、朝が来ました!今日は水曜日だぶぅ」が抜けてる
8時過ぎのアバカブ。カクテルを飲みながら会話を楽しむカップルや 女性客で賑わっている。 「春日君今日は遅いねえ。ひかるちゃんも部活大変そうだし。」 「春日君は勉強が大好きみたいだから。」 カランカラン! 「いらっしゃい…あ、春日君。今日はもう来ないかと思ってたよ。」 「あ、鮎川、何か食べるものないかなあ…」 「どうしたの?」 「小松と一緒にこの間のテストの間違いのやり直しをしてたらさぁ、 なんかお互いムキになっちゃって。つい頑張り過ぎちゃって…で、 家にはここで夕飯済ますからって電話して…」 「ほう、まどか君が言ってた通りだ。」 「へ?」 「あははは、何でもないよ。それより今混んでるからさぁ、裏で食べて くんない?すぐ作ってあげるからさ。何が食べたい?」 まどからしい相変わらずサバサバした物言いだが、彼が来る前とは その表情も声の張りも明らかに違っている。
「うーん…よし!」 ちょっと考えた後すぐにてきぱきと下ごしらえの準備をして大きめの お皿の上に次々と作ったおかずを小分けして盛り付けていった。 「これって、うちじゃやってないよねえ?特S定食か何か?」 マスターはちょっと呆れている。 「いいの、それなりにお代は頂くから。」 更衣室の丸椅子に座ってひたすら食べている恭介。 「美味しい、美味し…み、水…」 「そんなに慌てないでよ。もうちょっと味わって食べてよ…まどかさん スペシャルなんだからさあ。」 まどかはもう少し恭介を見ていたかったが、忙しくてそうもいかない。 10時を過ぎ、マスターは入口のプレートをクローズドにひっくり返す。 テーブル席に数人の女性客が話し込んでいるだけで、そろそろ帰りそう。 まどかはカウンターの中で片づけをほぼ終了し、マスターは今日の売上 を勘定し出した。 「1500円?春日君こんなに出したの?」 「マスター、春日君には黙ってて…」 「まどか君も気前いいねえ。」
「ただいま」 「あなた、お帰りなさい。今日も遅かったわねえ…またまどかちゃんに 任せたの?」 「ああ、僕よりしっかりしてるからねえ。」 「そういう問題じゃないでしょう!まだ高校生よ!何かあったら どうするの。」 「いや、終電間に合わなくなるから帰れって言うんだ。それに、帰った 方がいいのかなあって…」 マスターはかいがいしく恭介の世話を焼くまどかの姿を思い浮かべた。 「え?」 「いや、何でもないよ。」 「お給料とかちゃんと考えてあげてるの?」 「それがね、自分の数少ない居場所の一つだし、ここにいると楽しいから ってね。だから、気を使われると居辛くなるから気持ちだけでいいって 言うんだ…」 マスターは風呂から上がり、奥さんとビールを飲みながら話を続けていた。
「そういえばさあ、この間まどかちゃんと遭ったのよねえ。」
「それがね、あの、ほら、誰だったっけ…あの男の子…」 「春日君?」 「そうそう、春日君がね、友達と公園でソフトクリーム食べてたのよ。 ちょうど私も買い物帰りでね、あ、春日君だあ…って思って見てたらさあ 向こうからまどかちゃんが来てね…」 「あーら、お久しぶり。何それ?美味しそうじゃない。」 そう言って恭介の食べかけのソフトクリームをいきなり奪うと一口食べて 「うん、美味しい!」「じゃね!」 そう言って、ソフトクリームを恭介につっ返すと小松達を見ること もせずにサッサと街中へと歩いて去って行った。 思いっきり引いて見ていた小松と八田。 「お、お前らどういう関係?」 「どういう関係って…子ども扱いというか、なめられてるのかなあ…」 「春日!ふつう違うぞ!それって…」 「久し振りだから最初判んなかったけど、まどかちゃんと春日君って 付き合ってるの?」 「いや、付き合ってはいないんだろうけどね…」 マスターは奥さんのあまりに単刀直入な質問に困ってしまいながらも ひかるのことを考えていた。
なかなかいいところもあるけど奥さん視点と客観的視点が前触れもなく変わりすぎ。 絵のある漫画じゃないんだからわからなくなる。 小説っぽく出来ないならせめて台本調で。 あと鮎川は恭介と二人きりならアイス食べるかもしれないけど小松達が居るならやらない。
まあまあ 妄想を文字にしてるだけなんだから 生暖かく見守ってやってくんない
(場面は変わってマスターが帰ったアバカブ) アバカブの店内の照明は落とされ、カウンターの上の電球だけがついて いる。その下で勉強する恭介と内側から見つめるまどかの姿があった。 「ごめんね、今日は忙しくって…あんまり構ってあがられなかったね。」 「いや、鮎川と会え…、ほら、ちょっとでも教えてもらえるとさぁ・・・」 「そうか、あたしに会いに来たいんだ…」 ちょっと冷やかしながら顔を近づけるまどかに顔を上げられない恭介。 「授業料は…家まで送ってもらおうかなあ」 カランカラン!「こんばんは!」 まどかは慌てて離れた。 「先輩!やっぱりここに居たんですか。」 「ひかる、どうしたのこんな時間に…」 「今度着る衣装を先輩に見てもらいたくって、電話したらここに居るって くるみちゃんが教えてくれたんですよお。遅いからもう居ないかなあって 思いながら一応来てみたんですけど…」 「ああ、俺今日は何かと忙しかったからこんな時間になってさ。」 「ひかる、どうしたの?カチューシャなんかして…めずらしいね。」 「練習で暑くって、前髪が鬱陶しかったから友達の借りたんですよお。 似合いませんかあ?」
構ってあがられなかったね→構って「あげられ」なかってね。
妄想だろうがなんだろうがドンドン投下するが良い
ひかるは髪を伸ばすつもりでいた。 少しでも恭介の気を引こうと、何かを変えようと髪をカチューシャで纏めて みたものの、そうするにはまだ短いため反って子供っぽくなってしまった。 しかし、これはこれで元来のひかるの可愛さを引き立たせていた。 目元の泣きホクロが目立っている。 「先輩何食べたんですかあ?『まあ、どうせ家よりアバカブの方が 美味しいんでしょうね』って、まなみちゃん怒ってましたよお!」 いたずらっぽく笑いながら言った。 「ひかる、何か飲む?」 「はい!そうですねー、今日は大人っぽくソルティードッグなんか どうでしょう?マスターも居ないし。先輩もどうですか?」 「ダメよ、飲んだら人が変わっちゃうんだからさあ!」 「え、え?」 たじろぐ恭介であったが、すかさずひかるは恭介の腕にしがみつき 「私は…先輩なら人が変わってもOKですよお」 と言ってまどかの方をちらりと見た。
まどかは「そうだね。」とやさしく笑みを浮かべた。 ひかると話している恭介に「はい」とレモンティーを差し出す。 カップの傍に、ひかるから死角になるように2つに割られた ハート型の角砂糖が添えられている。 「…?」 見上げる恭介にまどかはそっぽを向いてちょっとべろを出した。 「じゃあ、一杯だけだよ」 自分たちにはウォッカとグレープフルーツジュースを用意する。 「じゃあ、まどかさん、あたし先輩に送ってもらいますからあ!」 「うん…。じゃあ、気を付けてね。」と二人を見送る。 「ひかるちゃん、部活はどうなの?最近あんまりアバカブ寄らない みたいだけど」 「先輩こそどうなんですか?同じ校舎なんだから会いに来てくれても …って、やっぱり3年生が1階に来るのって変ですよね。でも久しぶり こうやって腕組んで先輩と歩けるのって最高です!ずーっとこうして いたいなあ…。」 「あ、あははは…、ひかるちゃん酔ってる?」 「いいえ、本気なんですけど…」 ひかるは真顔でうつむいてしまう。先輩わかってない! まどかは帰らず、カウンターに座ってウォッカをロックで飲んでいた。
「ひかる…、あんたはいいよね。素直だから。」 呟くようにしてそのままカウンターに伏してしまった。 (翌朝1時限目、まどかが嫌っている教師が出席を取っている。) 「鮎川!…また来てないのか…落としてやろうか!」 先生は吐き捨てるように言って出席簿を教卓にポンと放った。 「どうしたのかなあ?またサボタージュ?でも1限目からってのは あんまりなかったよなあ。」 恭介が独り言をつぶやくそばから小松が小声で 「春日、お前しっかり支えてやれよ、鮎川のこと。」 「な、何で俺が…?」 「お前本気でわかんないのか?鮎川はお前に気があるんだろ?お前も そうなんじゃないのか?」 小松に言われて何も言い返せない。 「ま、まさか…。」 これが精一杯であった。 「まったくもう、お前ひかるちゃんどうすんだよ?」 小松は彼なりに3人の関係に気付いていたが、優柔不断な恭介の態度に さすがに腹立たしさを覚えていた。
(心配になり学校から電話をかける恭介) 「あ、鮎川?俺、春日。どうしたの?」 「うん、ちょっと具合悪くって午前中は休んじゃおうかなって。」 「鮎川、昨日ちゃんとまっすぐ帰ったの?」 ひかるが恭介の腕をにしがみついて帰る後姿が脳裏を過った。 自分が送ってもらうつもりだった。 「そんなの君には関係ないでしょ!それより、ちゃんとひかるを 送ってあげた?ひかるに変なことしたら承知しないからね!」 そう言うと、一方的に電話を切った。 「何だよ!心配してんのに…俺は送り狼じゃないっつーの!」 結局、昼を過ぎても鮎川は学校に行かなかった。 「応援するって言っちゃったし…。」 少し自分に苛立ちを覚え、ずっと封を開けずにそのままになって いたタバコがあったのを思い出し、取り出そうと机の引出しを 開けた途端、そこにはお気に入りの恭介のスナップショットが。 ちょっと見入ってしまって 「あー、もう!」 声を出して思いっきりタバコを壁に投げつけた。 恭介に禁煙の見張り役をさせていたのを忘れていた。
こんなのマジ読みしてるのは俺だけか?
いや 俺もマジ読みしてる きまオレだと思うとバカバカしくて読めないが、 妄想虹小説の割には良くできてると思う
そしてまどかにはひかるに対する殺意が徐々に芽生えるんですね わかります。
家にいても落ち着かないため街へ出ることにした。 街の景色は春から初夏のそれへと装いを変え始め、街路樹の生い 茂った新緑の間からこぼれる日差しがきらめいている。 まどかはジーンズにパンプス、腰には春物のカーディガンを巻きつけ Tシャツ姿で、長い髪をなびかせながら颯爽と歩いていた。 「何も考えたくない」 イヤホンからは街の音を全て遮るようにOLD-SCHOOLが流れる。 昔はつるむことを嫌って一人で街に出ることが多かった。 3人の関係が出来てからは、恭介を通じて知人も増えた。 つっぱりも抑え、彼らとそれなりに過ごせる余裕もできている。 しかし、混乱するといつもの癖でこうなってしまう。 勝手に孤立を決め込む。 他人と上手くやるつもりなどサラサラない。 思うように、気が向くまま勝手に流していきたい。 「でも、今回ばかりは…」
いつもするようにCDショップに行ったり、テラスでお茶したり、 それができない。 「承知しないから…かあ。逆じゃん、ひかるにとっては…」 ひかるを想う気持ちから出た言葉じゃなかった。 咄嗟に出てしまった。 ひかるへの妹のように想ういたわりの気持ちと、それ故今まで 閉じ込めてきたのに、もうどうにも抑えようがない気持ち… 恭介を想う気持ち…相反する感情に絡めとられて身動き出来ない。 「あたしだって…」 結局イライラは解消することなく、下校時間を迎えた学生たちで 街があふれ出した夕方、気付いたら階段のところに来ていた。 「成り行きにまかせるしかないんじゃない?」
CD→レコード
>37 オレ入れて三人ってとこか。内容はまどか寄りだな。成就させる気か? >41 突っ込みどころ満載だが突っ込む必要なし。
妄想にボケも矛盾もあるもんかい! ひたすら書くべし書くべし書くべし!!
解決できない答えは取り敢えず先送りにしよう…そう決めたら 少し楽になった。 「春日クン家近いのか…でも、どうせ残されてるだろうなあ。」 まどかは近くのコンビニで可愛いレターセットとペンを買って公園に 戻り、ベンチに腰掛け何かを描き始めた。 「我ながら大作だなあ。よし!」 書き上げて封をした手紙を春日家のポストに入れ、アバカブへ急いだ。 「まどかさん!どうしたんですか?一日休むなんて珍しいですね?」 ひかるが慌てて入ってきた。 「あれ?ひかる部活は?」 「試験前一週間は休みなんですよお…そんなことよりまどかさん、 本当にどうしたんですか?」 心配気に聞いてくる。 春日クンから聞いてないのかなあ?それともあいつ、今日の事ひかるに 話さなかったのかな? 「小松さんたちに聞いてびっくりしましたよ。先生凄く怒ってたって。」 「春日クンは?」それとなく尋ねた。 「それが、先輩『鮎川はきまぐれだから…』って。 何かご機嫌悪かったみたいでしたあ。『俺、補習があるから』って 教科書開くんですよお。」 つまらなそうにひかるは呟いた。
「ふーん…」 自分のせいでみんなを巻き込んでいる事を知って、関係ないやって 思おうとしてみたものの、大人になったまどかはやはり反省した。 「先輩来ないですねえ。でも、まどかさんと教えっこが出来ていい ですよねえ、羨ましいなあ。」 教えっこじゃなく、一方的だよ…まどかは思った。 「じゃあ、ひかるはまなみちゃんとすればいいじゃない。」 そう言って、ハッとなった。 ひかるが恭介に近づく口実を与えてしまう… 「向こうが迷惑しますよお。」 「そんなことないと思うよ。」 まどかはくるりと背中を向け、グラスを並べながら棚の中の鏡越しにひかる の表情を伺った。 すると、ひかるも鏡越しにまどかの表情を読み取ろうとしていた。 まどかは慌てて視線をそらした。
ひかるにそんな芸当が出来るとは思わないが、 妄想ってことでそこは不問にしといてやろう
「妄想」って書いてあるんだから読むんなら黙っていよう。 ここにきまオレワールドを持ち込まない方がいいようだな。 登場人物のキャラ設定は全く別人!そう思わないと萎えるぞ。
まどかや恭介だからいいわけで 全くの別人ならただの駄文なわけであり
>>47 黙っていても良いんだが 放置プレイじゃ書き手も萎えるかと思ってな
「さあ、帰って勉強しようかなあ。じゃあ、ごちそうさま… まどかさん、あたし頑張りますから!」 そう言ってニコリと微笑みひかるはアバカブを出た。 「気付かれてるのかしら?」 「とうとう春日君来なかったねえ。試験前はいつもまどか君に頼ってるのに。」 「…」 「ところでまどか君、そのバスケットは何だい?」 まどかは注文されたメニューをどれもほんの少し多めに作って、そのほんの 『少し』をわけてもらい、小分けにしてバスケットに詰めていた。 見つかったまどかは慌てて言い訳を取り繕う。 「お客さんの残り物を近所のワンちゃんにあげようかなあって…」 「喜ぶだろうね、かす…ワンちゃん。」 笑いながらそう言うと、マスターはカウンターの客の会話に加わった。 「見抜かれてる…!」 最近のまどかは、恭介のことになると表情や仕草を隠せなくなっていた。 「じゃあお先に、マスター。」
補習も早めに終わり、今日はアバカブに寄らずまっすぐ帰った。 「ただいま。」 「お兄ちゃん、まどかさんから手紙来てるよ。」 慌ててくるみから手紙を取り上げて自分の部屋に入った。 「何だろ?切手も消印もないということは、直接持ってきたのかな?」 恭介は封を開き中身を開けてギョッとした。 そこには大きな字で「大嫌い!」と書いてある。 しかし、その下には… 照れる恭介の腕にしがみつく楽しそうなまどかの絵が描いてあった。 二人ともそっくりに描いてあり、それぞれに「あたし」、「キミ」 と矢印が引いてある。 「?」 「お兄ちゃん、電話!まどかさんから。」 「あ、ああ。」恭介は慌てて子機を自分の部屋に持ち込んだ。 「春日クン、遅くにごめんね。」
「うん、どうしたの?」 もう恭介の機嫌は直っている。 「今、下まで来てるんだあ。ちょっとでいいから会えないかなあ?」 「うん、すぐ行く。」 マンションの玄関先から少し離れたところにまどかが来ていた。 恭介が近づくと 「春日クン、今日はごめんなさい。」 恭介を前にまどかはしおらしく謝罪した。 「心配して電話してくれた春日君に失礼なこと言っちゃったね。 でも、ひかるはああ見えて『うぶ』だから…まだ早いと思うし…」 (あ、あたし何言ってんだろ?) 「うん、ひかるちゃんのことは…大切にするよ。妹達のようにね。」 「え?…。」 二人は言葉が続かなかった。
恭介は頭を掻いてちょっと照れながら 「あのさ、明日寄っていい?アバカブ。一緒に勉強しようよ。ね?」 まどかは「うん。」とニッコリ微笑んで恭介の耳元に顔を近づけた。 「あたしさあ、春日クンのこと放っとけないよ…『試験前』は。」 そう言うと、「あ、これ…」 持ってきたバスケットを照れくさそうに恭介にそっと差し出す。 「うん、作り過ぎて余っちゃったんだあ。まあ、夜食にでもって。 心配掛けたお詫び。じゃあ帰るね。」 微笑みながら胸の前でちょっと手を振り、くるりと背中を向け歩き出す。 恭介は慌てて後ろ姿に声かけた。 「ね、ねえ鮎川、有難う。あ…、あのさあ、あの手紙、どっち?」 まどかは顔だけ振り向いて 「春日クンが決めて。決めた方が正解だよ。」 「うわー!美味しそう!」箱を開けた途端みんなが覗く。 「これもーらおっと」手を伸ばそうとするくるみをまなみが制し 「これは全部お兄ちゃんのものよ。」 恭介は抱えるように自分の部屋に持って行った。 「お兄ちゃん、入っていい?」
「お茶が要るでしょう?あ、コーヒーの方が合うかなあ。」 「あり…がと…、まなみ。」早速食べている。 お茶を置いて出て行こうとして立ち止まり振り返る。 「お兄ちゃん、聞いていい?」 「何?勉強のことなら俺が出る幕ないだろ?」 「ううん、まどかさんのこと。」 「え?」 「…やっぱり、いい。何でもない。」と言って部屋を出た。 まなみも3人の関係を察していた。そして、まどかとひかるの どちらかが辛い思いをするであろうことを不安に思っていた。 姉のようにやさしいまどかも、嘘偽りのない素直なひかるも 二人とも大好きであった。 「でも、この先もずーっと今のままでは…。」
おっ ちょこっとだけきまオレっぽいキャラになってきたかな?
いい感じ 突っ込むなという意見もあるけど、どこか惹かれる文章だから これは?という所に突っ込みたくなる
6月のとある金曜日 今日のまどかは機嫌がいい。好きな曲を口ずさんでいたり、 授業中チラチラ恭介の方を見ていたりする。 「明日かあ…。」 (誕生日会の思い出) 先月25日はまどかの18回目の誕生日。 恭介やひかるはもとより、まなみ、くるみ、勇作、あかねに加え 小松や八田も来てくれた。 「鮎川まどかさん、お誕生日おめでとう!」 シャンパンを開けてみんなで乾杯。 それぞれが、花に加えて凝ったプレゼントを渡す。 まなみ、くるみは出し合って買ったハンカチセットを 選ぶのにもめた様子。勇作は「まどかさんは日本酒です!」 飲めもしないのに男気だけはこんな風。 あかねはまどかにピッタリ似合うサングラス。目が少し透けて 見えるブラウンで、今の季節にぴったり。当然自分とおそろい。 ひかるは考えた挙句、自分とまどかを描いた油絵を数ヶ月かけ 作成。一番努力がにじんでいるプレゼント。小松と八田は ラベルに「二日酔いで学校休むなよ。」と書かれた赤ワイン それぞれに特色がある。 「みんなほんとに有難う。嬉しいよ。」
マスターからのプレゼントは今日の誕生会のセッティング。 でも、料理は結局まどかが作った訳であるが。 「なんだろう?これ…」 封筒の裏にはfrom恭介と書いてある。 「何ですか?それ、先輩。」 「あ?うん…ほら、来年受験だからさ、本とかいるだろうし… 図書券だよ。あ、鮎川、開けなくていいよ。」 「?」 誕生会は小松、八田、くるみ、まなみのテーブルとひかる、恭介 あかねのテーブルに分かれ、それぞれに盛り上がった。 まどかは仕事の合間に顔を出して話に加わる。 勇作はお酒がダメで、シャンパンでもう潰れてしまっている。 「じゃあ、お先にマスター。お疲れさまでした。」 「ああ、お疲れさん、まどか君。」 会が終わりみんな帰った。ひかると恭介は勇作を送って行った。 通常の営業も終了。片付け事に追われ、11時過ぎにやっと終了。
まどかはプレゼントの詰まった大きな紙袋を両手に抱え、家に着くと それらを玄関におろし、楽しみにとっておいた恭介のプレゼントを 急いで開けた。「何だろう?」 2枚のチケットに手紙が添えられている。 「鮎川まどか、18歳のお誕生日おめでとう!これ、鮎川が観たがって いた『Soul Train』のチケット。あ、もう一枚は俺の!一緒に行こうね。」 アメリカの新鋭の劇団が来演している。ソウルフルなミュージカルは 評判になっていた。 鮎川は、その内容を知っていて是非本物を生で観てみたいと思っていた。 でも、それ以上に恭介がそっと自分を誘ってくれたことの方が嬉しかった。 その夜、まどかはベッドに転がって、いつまでも手紙を眺めていた。 「待ち遠しいなあ。」
今日は土曜日、マスターには無理を言って休みをもらった。 もとよりマスターは時々でもまどかが手伝ってくれることが有難かったし 渡しているバイト代では、とても彼女のような人材は得られないことも 承知していたので、快く「行っておいで」と伝えていた。 「何着て行こうかなあ…、春日クンに合わせないとなあ。あいつ時々キメテ くるからなあ。内容からしても、スーツじゃない。ラフな格好の方がいい かな?」一人でぶつぶつ言いながら、楽しげに迷っていたが、 結局ジーンズにパンプス、上はノースリーブのサマーニットにした。 まだまだ夜は冷えるからとストールもバッグに入れた。 「5時に待ち合わせだからあ…そろそろ出ようかな。」 そのすぐ後に彼女は「事件」に巻き込まれることになる。
事件とはなんぞや 気になる
ジーンズにローファー、くすんだオレンジ色の立ち襟ポロにこの日の ために買っていたベージュのサマージャケット 「えーっと、あそこの角を…」 そうぶつぶつ言いながら歩いている恭介の目に飛び込んできたのは 母校の制服を着た女子生徒2人を囲む、見るからに不良な女達。 見過ごす事も出来ないし、鮎川だったら…と思うと勇気を振り絞る しかなかった。 「ねえ、何やってるの。いじめちゃダメだよ。」 「何だ?お前!どいてろ!」 「いや、ねえ、もうやめなよ、何かわかんないけど…」 一気に不良たちの苛立ちのボルテージが上がる! 「てめー!うるせーってんだろうがあ!」 二人がかりで恭介の胸ぐらをつかみにかかりながら、他の奴が 恭介の脇腹を蹴る。いくら不良でも相手は女性だし、殴りはできず 突き飛ばすのが精一杯であった。しかし、相手は5人。恭介は新品 のジャケットをつかまれ、体ごと振り回わされる。さらにそこに 蹴りを入れてくる。恭介は顔に入らないように腕で顔を覆うしかない。
同じ時刻に待ち合わせていたまどかが、恭介が来た路を同じ方向から 歩いてくる。 そして、恭介がそうしたのと同じように奥の路地に視線をやった瞬間、 5人がかりの女達に振り回されている恭介の姿が飛び込んできた。 その瞬間、まどかは昔に戻ってしまった。 駆け出すや否やあっという間に間合いをつめ、拳で女のみぞおちを突く。 大きく振りかぶった張り手で相手を殴り倒し、「おらあ!」と叫びながら 足を掛けて払い腰で投げ飛ばす。反動をつけて相手を壁にぶつける、 倒れそうになる相手を尚も蹴り倒す…あっという間の出来事だった。 鬼のような形相を残したまま、制服姿の後輩たちに言い放った。 「見てんじゃないよ!さっさと帰んな!」 恭介は噂には聞いていたけれど、こんな鮎川を見たのは初めてな訳で 気安く「鮎川」と呼んでいた彼女の、全く知らない一面を見てしまい 少しぞっとした。 「ヤロー!」 振り向いたまどかに女の一人が白い粉の固まりを投げつけた。
超能力使って陰か遠くで見てた鮎川にばれるのかと思ったらそういう展開か
伏線がいくつかあるね「事件」が読めてきたかな?
「あなたたち何やってるの!」 白衣の上にカーディガンを羽織った看護婦たちが駆け寄ってきた。 「やばい、逃げろ!」 5人の不良は体のあっちこっちを抑えながら逃げて行った。 「か、春日クン。大丈夫?…目、目が開けられない…」 目を開けられずに、それでも恭介を探そうと手を伸ばしてきた。 「み、水を…」 ちょうど近くのコンビニへ買い物に出ていた看護婦さんたちが 手に持っていたお茶やミネラルウォーターを鮎川の目に掛けて 取り敢えず目についた粉を洗い落してくれた。 「痛くて開けられない。これ、石灰よね、使ってる奴がいるって 昔聞いたことはあったけど…。」 それを聞いたベテラン看護婦が 「何?石灰なの?すぐうちにいらっしゃい!」 まどかは両肩を看護婦二人に預け病院に向かった。 もう一人の看護婦は痛そうに歩く恭介に付添っていた。
連れて行かれたのはすぐ近くの総合病院の眼科であった。 時間外であったが残っていたドクターがすぐに生理食塩水で目を洗った。 まどかはまぶたをこじ開けられて、顔も前髪もびしょびしょになっていた。 眼瞼も眼球も結膜は充血し、ゼリー状に腫れ上がっている。 「石灰ってね、アルカリ性だからすぐに洗わないと大変なことに なっちゃうんだよ…」 医師はひとしきり洗ったあとまどかの顔をタオルで拭いてやり、再び まぶたをこじ開けると、炎症止めの軟膏を両目にたっぷり塗り、上から 眼帯、さらにそれがずれない様に包帯で固定していった。 「でも、その場にお茶や水があって幸いだったねえ。」 看護婦さんたちのとっさの判断によって最悪の事態を免れた。 まどかは痛みに耐えながらも我慢してなされるがままにしていた。 一通り処置が終わり 「明日には取れると思うよ、これ。でも今日はこのままの方がいい だろうね。見えなくて不安だろうけど一晩我慢して。わかった?」 ずっと黙っていたまどか初めて口を開いた。 「すみません。みなさん、有難うございました…」 声が震えていた。
ちょっと見ない間に、いつの間にこんなことになってたんだ! それにしても、まどか強過ぎだろ。まどか中心のストーリー過ぎ。
>>68 おいおい ここを何処だと思ってんだ?
小説スレじゃなくて妄想スレだぞ
野暮なことは言いっこなし!
確かにそうだが、きまオレに近づいたり離れたり 作者は3人をどうする気だ?
妄想だからな 作者本人しか判らんわさw ひょっとすると本人にも判ってないかもしれんぞ
妄よ想。
うまいっw 座布団一枚!
二人は一旦人気のない待合室で待たされた。 土曜日の夕方の外来待合室はエアコンも落とされ空気が生暖かい。 一瞬で昔の不良に戻ってしまった自分を、恭介に一番見られたくない 姿を見られたことを恥じ、悲しくなっていた。 「…春日クン…大丈夫?」 まどかは両眼を包帯で巻かれているために何も見えない。 それでも恭介の方を向いて、いたわる様に手を伸ばしてくる。 恭介は目の周りが青く腫れ、口元に切り傷、新品のジャケットは所々 破れていた。ジーンズも蹴られた跡が残っている。 恭介は目に当てていたアイスパックを下ろし、伸ばしてきたまどかの 指先を右手でゆっくり受け止めた。 「あっ…。」 まどかはビクッとして手を引っ込めた。 恭介はまどかを気遣う。 「痛くない?俺はいいけど…鮎川の目の方がすごく心配だったんだ… でも、なんか大丈夫そうで良かった…。」 「あ、あたし…春日クンが殴られるのを見て…我慢ができなかったよ。 自分でも分からないんだけど、気付いたら…。恥ずかしいよね、 女のくせに…」 そう言うと黙ってうつむいてしまった。
「助けてもらってこんなこと言うのもなんだけど、鮎川はもう、 こういうの卒業しなきゃ…ね?」 やさしく声を掛け肩に手をやると、まどかは泣きそうになるのを こらえるように震えている。 (嫌いにならないで…) 心の中で何度も呟いた。 先生は事情を看護婦たちから聞いて、警察に言うかどうか考えていた。 その時、心配して後を追ってきた2人の女子高生が診察室を訪ねてきた。 鮎川と恭介が二人を守ってくれたことや、彼らが自分たちの高校の 3年生であることも言ってしまった。 まどかは1年生に人気があったので、その存在は知られている。 二人はまどかと恭介が大丈夫なのかしきりに聞いてきたが、先生は 「心配しなくていい。大丈夫だよ。」 と言って彼女らを落ち着かせ、もう一度事件の詳細を尋ねた。 二人から事情を聞いて、先生はますます考え込んでしまう。 「未成年かあ。」 先生はまどかと恭介を診察室に再び呼び入れた。
結局、この子たちを守ろうとした彼がやられ、彼女が倍返ししたけど 仕返しされた…どうなんだろう、傷害罪は成立するけど、正当防衛の ようでもあり、でも過剰攻撃してるしなぁ…、だからと言って傷害の 重症度を考えると石灰投げるようなやつを見過ごすのも… 先生はしばし思案しながら尋ねてみた。 「君たち親は?」 「今、海外に行ってて…姉も遠く離れてるし…先生、今回の事は警察 沙汰にして欲しくないんです、学校にも…。」 何より恭介を巻き込みたくなかった。 「お願いします。おねがい…」 両目が全く見えない状態で声がする方向に頭を下げる。
きまオレっぽくなくなってきたが、嫌いじゃないぞ
ベテラン看護婦が恭介に尋ねる。 「あなた、ご両親は?」 「僕は…父親はいますけど…」 やはり知られたくなかった、特に今回のまどかのことを。 今度はまどかに尋ねた。 「じゃあ、あなた一人で寮かどこかに住んでるの?」 「いえ、家に一人で…」 まどかがたまたまバッグに入れておいた保険証を手探りで探し診察前に 差し出していたのだが、それを見ながら新規カルテを作成していた事務 が診察室に入ってきて、先生に「ちょっといいですか。」と手招きする。 「あの子…、あの指揮者の鮎川氏のお嬢さんじゃないですか?」 看護婦たちも寄ってきた。「先生、これは警察には言わない方が…」
先生は二人の元に戻ってきて 「わかったよ。黙ってよう。ところでどうしようか?泊まってくかい? 経過を診ないといけないから明日も来てもらわないといけないんだ。 今晩は僕が当直だから、泊まれば明日朝一番に診てあげられるし 大丈夫そうならそのまま家に帰られるしね。 どうせ家に帰っても一人じゃ何もできないだろう?」 「先生、個室しか開いてないですよ。」 と病棟の看護婦さん。 「まあ、一泊だし、個室料はいいだろ。事務にナシ付けといて。」 先生は軽くそう言うと、あらためてまどかに確認を迫った。 「ただね、一泊でも入院となると保護者の了解が要るんだよね。」 もちろんそれはどんな病院でも入院に際しての規則なのではあるが 先生なりに、やはり親には事の詳細を伝えなければと考えていた。 それを察したまどかがすぐに応えた。 「母に連絡していいですか?」 両目をふさがれた今、この瞬間でさえ恐怖を感じる。 ましてやこの状態で家に一人でいることなど想像もしたくない。 先生はまどかに電話番号を訊き、机の上のメモ用紙に書き留めた後 今度は電話を0発信にして外線で国際電話をかけた。
俺も嫌いじゃない。妄想作者よ、行くところまで行ってしまえ!
ナシ付けといて
電話が繋がる。 「HELLOW. THIS IS AYUKAWA…」 言うや否や、先生は病院名と自分の身分、氏名を伝え「今、お嬢さんに 代わります」そう伝えると、まどかに受話器を持たせた。 「あ、ママ?私、まどか…。」 「一体どうしたの?」 母親の声を聞いた瞬間泣き出しそうになるのを我慢して、 病院の電話番号を看護婦に聞き、かけ直してくれるように伝えた。 看護婦さんの一人が言う。 「ああ、気にしなくていいのに。どうせ病院が払うんだから。」 一時して、かかってきた電話に先生が出る。 「あ、先生、鮎川さんからです。」 と事務が外線を切り替える。 先生はちょっと抑え気味に状況を伝える。 事の経緯はまどかが不良に異物を投げつけられたこと、目は大丈夫 そうであるが、聞くと独り住まいであることから入院を勧めている。 本人もそれを願っている、そして今回の件は受験もあるし警察や学校に 言わないで欲しいと本人に懇願されており、こちらはそれで構わない ということを伝えた。まどかが手を出したことは伏せておいた。 「ほんとうに娘は大丈夫なんですか!」 母親は狼狽し声がひっくり返っている。 先生はそう願っている旨伝え、再びまどかに受話器を持たせた。 「ごめんなさい、ママ…」 そう言うと包帯の下から涙が流れてきた。 傍で心配そうに見ていた恭介。初めて見るまどかの涙だった。
普段気丈な娘が電話の先で泣いている。反抗して家出したり、父親を 突き飛ばしたこともあった。その娘が随分しおらしくなっている。 「まどかちゃん、あなたは私の可愛い娘なの。どこにいても、いつでも あなたのことが心配よ。お願いだから無茶はしないで頂戴。わかった?」 「…うん。」 落ち着きを取り戻した母親はとにかく病院に任せることにした。 そして明日朝一番にまどかの姉を向かわせる旨伝え、何度も謝罪をした。 事務に電話が代わり、入院を了解するに当たって承諾書をファックスで 送るので、記入して送り返してくれるように伝えられた。 まどかは物が見えなくなることで、こうも気弱になる自分に驚いていた。 しかし、それはまどかの本当の姿である。
まどかは車いすに乗せられ外来から病棟へと案内されたが何も見えない。 案内された個室はさすが法人の個人病院だけあって、簡素ではあるが 一体型のバストイレ付き、ソファーや簡易冷蔵庫も用意されている。 車いすの音が変わったことから、「カーペットが敷いてあるのかな?」 全く見えないために、音や匂いに敏感になっている。 まどかだけ通され、病衣の用意やシャワーが使えることなど説明された。 年輩の看護婦さんが 「下着出しといて、洗ってあげるから。替えがないでしょ。」 「すみません…」 何も見えないまどかは、ただただ任せるしかなかった。 「私が一時ついててあげるから、怖がらなくていいわよ。夕ご飯は 今日外泊から帰れなくなった患者さんの分があるから温めてあげるね」 恭介は部屋の外で待った。 「せっかく付いてるんだからシャワー浴びる?汗かいたでしょう?」 「…お願いします。」 看護婦さんはまどかをゆっくりとバスルームに誘導し、シャワーを出して 温度を確かめる。適温に調整したらそのまま流しっぱなしにしてくれた。 まどかにシャワーとトイレの位置を手を添えて教える。 どこまでも気使いの出来る看護婦さんだった。
恭介空気
外で待つ看護婦さんに気を使い全てを手早く済ませるまどか。 「終わりました…。」 「もういいの?入るわよ。」 「お願いします。」 バスタオルを手渡すと、まどかは急いで体を拭こうとする。 「ねえ、あなたは患者さんなんだから気を使わなくっていいのよ。」 「あ…、はい…。」 看護婦さんは体を拭いたまどかの素肌の上から病衣を着せてやり、 ゆっくりと肩を抱いてベットまで連れて行ってくれた。 そして、予め用意していた暖かいタオルで顔を拭いてやりながら 「お化粧してないんだ!」と驚きの声を上げる。 「はい、まだ…」 長く濃いまつ毛、スッとした眉、全て自前で何も描いていない。 それらは包帯を巻く際に確認して驚いてはいたが今は隠れている。 「…!」 何より肌が白くて綺麗である。髪も密度が濃く艶やかに美しい。 まどかが見えないことをいいことにマジマジとそれらを眺めながら 看護婦はちょっと絶句。気を取り直し 「下着は洗っといてあげる。乾燥機ですぐ乾くから。待ってて。」 そう言って、まどかに櫛を持たせて出て行った。 「人は一人じゃ生きていけない…」 まどかはこのありきたりな言葉の意味を思い知らされた。
何を書きたいのか解らんかったが、そういう展開か…… ちょっと冗長だが、まあ妄想だから大目に見よう
看護婦は部屋を出てきて恭介を見た。 壁にもたれながら右手でアイスパックを目にあてがっていたが、慌てて それを外し不安げに看護婦を見る。 「あ、あの…。」 「大丈夫よ。シャワー浴びたら少し落ち着いたみたいだから。 それより君、顔腫れてるね。あちこち絆創膏だらけで…痛いでしょ? それ代えてあげるよ。」といってぬるくなったアイスパックを受け取った。 緊張している恭介を安心させるように、看護婦は饒舌になった。 「でもさあ、あなたの『彼女』美人だねえ!それにさ、途中から 見てたんだけど、『彼女』凄いね。カッコよかったあ。 女の私でも惚れちゃうね。あ、もう終わったから今なら入っていいよ。」 そう言ってニッコリすると詰所に戻って行った。 心配そうに付いてきた後輩二人に「心配ないから。大丈夫だからもう 帰っていいよ。でさあ、このこと黙っててくれる?」 「ごめんなさい。ごめんなさい…。本当に有難うございました。」 そう繰り返しながら、二人は泣き出してしまった。
二人を帰したあと、ノックをして「入っていい?」と尋ねる恭介に 「いいよ。」 割と広い部屋に電動式のベッド。 まどかは仰向けのまま顔だけはこっちを見ていていた。 恭介はベットサイドに丸椅子を寄せてまどかに話しかける。 「まだ痛む?」 「ううん、さっきより随分いい。」 声のする方を確かめて少し微笑むまどか。 恭介が訊いた事情はこうである。 「何か二人で手をつないで歩いてたら『おめえらバカじゃねえ?』って 言われたんで、つい睨み返したら連れ込まれてしまって、生意気だって カツ上げされてたんだって。」恭介はさらに続けて「二人ともすごく 謝ってたよ。でさ、一応誰にも言わないようにって言って帰って もらったよ。」と、取り敢えず事が収まりそうであることを話した。 「そうなんだ…、…ねえ、春日クン。どうしてあんな無茶したの?」 「いやあ、放っておける状況じゃなかったし、鮎川ならきっとそうする だろうなって思ってね。」 「あたし、そんな正義感強くないよ。いい?ああいう時は恥ずかしがらず 大声で人を呼ぶのよ。」と言うまどかに 「自分だってしたくせに。」ぼそっと恭介が返す。 ちょっと間が空いて、二人とも笑い出した。
「今日は台無しになったね。せっかく春日クン誘ってくれたのに…」 「俺が鮎川巻き込んじゃったんだよね。鮎川が言うように、あそこで 人を呼んでたらすぐ終わってたのにね。」 「ううん、あたしがややこしくしちゃったし…でもさあ、あたしね… SOUL TRAIN観るのだけが目的じゃなかったから…」 ちょっと恥ずかしそうに顔を逸らした。 恭介もつられるように 「俺も…こうしてさあ、鮎川と一緒に…」 「え?」まどかは恭介の方を向いた。「何?」期待して問いかけたところに トントン。 ベテラン看護婦さんが入ってきた。 「アイスパックあなたのと、鮎川さんの分ね。彼女の目を冷やしてあげて。 温め直したごはんここ置いておくから、あなた食べさせて頂戴。 それと、これ、(小声で)乾いてるから。」 そう言って布団の中のまどかの手に下着が入った紙袋をつかませると そそくさと病室を出て行った。
詰所では帰り支度している日勤の看護婦と夜勤の看護婦が盛り上がってる 「鮎川さんって、あの指揮者の?へえー」 「それが、ちょうど後の方しか見てないんですけど、凄かったんですよ。 カッコ良かったなあ…動きがねえ、慣れてるって感じ。不良なのかな?」 と恭介に付添った若い看護婦さん。 「でも、外来では電話で『ママ、ごめんなさい』って泣いててね、可愛かった わよお。とても不良には見えないけどなあ。」 「それにしても、高校生って聞いてびっくりした。すっごい美人なんだもの。」 「そうなのよ、さっき清拭したんだけど、あの肌なら化粧はいらないわねえ。」 羨ましげに言うベテラン看護婦に若い看護婦が突っ込む。 「先輩1cmくらいですか?指で押したら凹んだりして。」 「こら!」 一同大笑いである。 「ところであの子、彼かしら?全然さえないわねえ。」 「あんな美人の彼女に守ってもらうなんて…」 戻ってきた婦長が 「守ってあげたくなるタイプなのよ、きっと。」 そう言うと、日経表をつけ出した。 「守ってあげたくなる?」 「私も誰かに守って欲しいー!」 詰所はおしゃべりと笑い声が絶えない。
トントン。 で、ひかるが来たかと思ったよ。看護婦でよかった。
ベッドのリモコンを操作してまどかを起こしてやる恭介。 「はい、あーん」 「恥ずかしいなあ…」 「しょうがないだろ。ね?」 「うん。」 遠慮がちに開けたまどかの口に、フキの煮浸しを入れてあげる。 「美味しい!味付けがフキの風味を邪魔してないんだあ。ねえ、 他に何があるの?」嬉しそうに聞くまどか。 「えーっとねえ、卵と豆腐かな?人参の細かいのと炒めてあるやつと、 銀鱈?のみりん干しを焼いたやつにお味噌汁かな。」 恭介にはこの病院食がとても旨そうには見えない。 「その卵と豆腐の食べさせて」 「うん。」そう言ってスプーンですくいまどかの口に入れてやった。 「へー、ちゃんとお豆腐の木綿の感じが残ってて、食感がいい! 調理師さんに教えて欲しいなあ、作り方。」 「すごいね。よくわかるね?」 「だって、今は味覚と嗅覚と触覚しかないんだもん、冴えてるよ。」 「聴覚は?」 「春日クンのやさしい声、かな…。」
まどかはちょっと顔を赤くして次をせがんだ。 目は隠れているが表情豊かに、嬉しそうに感想を述べながら食べてくれる。 「そんなに美味しいの?俺にはちっとも…そうは見えないんだけど。」 「じゃあ、ちょっと食べてみて。」 「いや…、お箸一つしかないし。嫌じゃない?」と慌てて言う恭介に 「別にいいよ…ほら、食べてごらん。」 いいのかなあ…そう思いつつも少しつまんで食べてみた。 (作戦成功。でも見られないのが残念!) 「うーん、俺は鮎川の料理の方が断然美味しいと思うけどなあ。」 「味覚が子供なのよ、春日クンは。」 しかし、まどかには分かっていた。こうして恭介に介抱してもらって いる、そのことが全てを素敵なものに思わせてくれていることを。 神様がくれた至福の時間。今頃は劇も終盤を迎えている頃だろうか? でも、そんなことはどうでもよかった。 ただ恭介と二人で居たかった。形は違うが想いがかなった。 恭介は鮎川にねだられるまま食事の介助をしてやり、食後の歯磨き の用意も整えてやった。
「…なに?これ。甘―い!」 「ごめん、さっき売店で俺の夕飯用のパン買うついでに、 歯磨きセットも買ったんだけど…あ、バナナ味って、子供用だ。」 恭介はパンを頬張りながらチューブを確認した。 「いいよ、春日クンが気を使ってくれるのが嬉しいよ。」 恭介は食事の配膳を詰所に持って行き、面会時間を尋ねた。 「一応20時までですが。でも、『彼女』も今は不安でしょうし、個室 だから22時くらいにしましょうか。…変なことしちゃダメよ。」 「そ、そんな…」 赤くなる恭介を看護婦達は陰で笑っていた。「可愛いね。」 改めて自分がまどかと二人で同じ空間にいることに気付いた。 「春日クン、今何時?」 「8時半かな。もうそろそろ消灯だろうし、9時には…」 そう言いかけた言葉を遮るように 「あたし、暗い所って苦手なんだあ…。今は少し光を感じるけど 電気消されてこのまま一人にされたら不安だよ。 だ、だからさあ、寝付くまでもう少し居てくれる?」 「喜んで!あ、ははは。」 恭介はリモコンを操作してベッドを横に戻してやる。 「ねえ、不安だから寝付くまで…あの、あのさ、手握っててくれない? 小さい頃、寝付けない時パパにいつもそうしてもらってたんだあ。」 まどかは真っ赤になっている。 恭介が傍に居てくれる安心感からいつもの「つっぱり」は影をひそめ、 まどかが心の奥に隠している「女の子」が現れてしまう。 「いいよ。」 にっこり微笑んで、差し伸べてきたまどかの手を軽く握って布団の中に 入れてやった。
「あ、あゆ…かわ〜…」 「…え?何?か、春日クン?」 鮎川は目を覚ました。なのに眼が開けられない。さっきまでは眼帯と 包帯を通してでも光を感じていたが、今は真っ暗である。 「いやだ、あたし寝てたの?…春日クン?ねえ、春日クン?」 返事がない。耳を澄ますと寝息が聞こえる。 「寝てしまったの?今何時なの?…暗いってことは消灯時間は過ぎてる? 個室も消灯になるの?看護婦さんが?じゃあ、春日クンはなんで…?」 まどかは混乱している。 病院の電気は一斉に消灯されるが、個室は改めて電気をつけ直すこと を許されている。今日一日いろんなことがあって二人とも疲れていたが 少しでも帰る時間を先延ばしにしようと、話題を見つけては話していた。 そしていつのまにか二人とも眠ってしまっていた。 まどかはもう一度呼んでみた。 「春日クン?」 「…」寝息のみ。 「やだ、二人とも眠っちゃったんだ。」 時間が知りたい。こういう時はテレビを見れば、いや聞けば何時頃かは わかる。しかし、テレビがどこにあるか分からない。(ナースコールを 押そうか…)しかし、まずは自分で出来ることをやろうとするのがまどか の性格である。取り敢えず、恭介を起こしたい。でも、大声を出すと 看護婦さんが飛んで来そう。 「あ!そう言えば…下着つけてなかったんだ。」 60 まどかは布団の中で自分の傍に置いていた袋を開け、手探りで取り出し、 慌てて身に付け、あらためて病衣を整えた。 そして、布団をそっとはぐり腕を使ってゆっくり上半身を起こした。 今度はベッドの上で四つん這いになり、探る様にそーっと左足から、 つま先に神経を集中し、床を探すように足を伸ばしていった。 「…!」
「…!」
俺的には93、94がいい!95はやり過ぎ。で、このあとどうなる?事に及ぶのか?
そういう作品じゃなさそうだけどな
他人の妄想に口をはさむのは愚の骨頂だが、露骨なエロだけはやめてほしい
今日は妄想タイムあるのかな 時間的にはそろそろかな
明らかに恭介の体の一部である。 (春日クン、ベッドのすぐ下に倒れ込むように寝てしまってるのかしら?) そう思いながら、尚もつま先に神経を集中し、恭介を踏みつけないように 少しベッドから向こうに足を下ろしてみた。 床を確認すると、両手はベッドについたまま右足も同じ場所に下ろした。 そして、バランスを崩さないようにそーっと両手をベッドから離した瞬間 やはりバランスを崩して前のめりに倒れそうになった。 「いけない!」 そのまま倒れこまないよう慌てて手を付いた場所は床であった。 「?」 片手を付けたまま体を支え、もう片手で探ってみると、自分が今作った 「トンネル」の中に恭介が寝ているらしいことが解った。
「よいしょっと。」 反動をつけ手を放し、尻持ちをつきそうになるのを今度は慌てて後ろに 手を付いて体を支える。そして上手いことバランスを取ってしゃがむ。 (えーっと) 心の中で想像しながらそっと両腕を前に出すと、すぐそこに恭介がいた。 両手でまさぐってみて、やっと恭介と自分の位置関係がわかった。 今、恭介は椅子からずり落ちるようにベッドの脇にベッドの方を向いて 軽く背中を丸く、腰と膝を曲げて寝ている。 そして自分はその背中側にいるようだ。 まどかはちょっと恭介の背中をつついてみたが反応がない。 「考えたら、春日クン今日は疲れたよねえ。あたしも久しぶりに 大立ち回りしちゃったし…」 恭介の傍で(どうしようか?)と考えていた。 「あ、あゆかわ〜」 「春日クン?」
返事がない。 「寝言かあ…」 (どんな顔してんだろ?授業中なら見たことあるけどなあ… あたしのこと夢見てくれてるのかしら…?) 「こら、返事しろ、恭介。」 そう言ってクスリと笑った。 まどかは恭介の体にそっと触れてみた。ゆっくりと腕から肩、そして顔を なぞってみる。一旦触れるとためらいは消え、指が勝手に動いていく。 彼女の長くてしなやかな指は動きを止めず、大胆になっていった。 指はさらに頬から流れて、そのまま恭介の唇をやさしくなぞる…。 触れるほどに恭介への「愛おしさ」が溢れ出す。 そして、抑え難い衝動がまどかの心に湧きあがってどうしようもなく…。 まどかは恭介の顔の位置を確認すると、そのまま両膝をつき、両手を恭介の 頭の両側にそっと置いて体を支え、猫のようにしなやかに、静かにゆっくり 顔を近付けていった。 …寝息がする方へ… …彼の寝息を耳元で感じ… …そして顔を…恭介に向け…ゆっくりと近づく… (恭介…) その時、まどかの長い髪の一部が肩から崩れるように恭介の顔へと落ちた。 「あ、あゆかわ…」
104 いいぞいいぞ!
「!」 がばっと身を起こすまどか。 「やだ、春日クン起きてたの?」 「あゆ…かわ〜…」(す〜やすや) 「こら!」 「…」 やっぱり寝ていた。 まどかはちょっと吹き出し、 「今日はこの辺にしといてやるよ。」 と呆れるように言った。 (ちょっと残念かなあ…でも今は見えないし、それに…) 「やっぱり、まどかのファーストは合意でなくっちゃ。」 そう呟くとしばし思案して、元来た逆を考えながら何とかベットに 戻りナースコールを押した。
「どうかされましたか?」 「すみません…お願いします…」 「すぐ伺います。」 「失礼します。」看護婦が入ってきた。彼女は懐中電灯を持っている ようで、まどかの眼もその光を感じた。 「すみません、『彼』が寝ちゃったみたいで… 起こして帰して頂ければ…」 部屋の明かりがつけられると、ベッドのすぐ下に眠りこけて 幸せそうな顔をした恭介が転がっていた。
「んまあ!帰ったんじゃなかったの?」 まどかはまるで今まで眠っていたような声を作って 「私も寝てしまったみたいで…目が覚めたら寝息がするもので…。」 「すみません、起きて下さい!」 看護婦さんにいきなりゆすられ起こされる恭介。 「んは?つ、つぎ、どれに…する?」 寝ぼけている。まだ、まどかに食べさせていたらしい。 まどかは眠ったふりを決め込んでいたが、瞬間、吹き出しそうになった。 「もう10時過ぎてますよ!お帰り下さい!」 「?…あれ…あれ!俺、寝てた?」 そう言って起き上がりまどかの方を向いたが、すでにまどかは 背中を向け眠っている。(振りをしている) 「あ、俺…」 「とにかく、あなたは自宅に帰らなきゃ。連絡してるの?家。」 「いっけねえ!じゃ…じゃあ、おやすみ。」 背を向けて寝ているまどかに言うと、恭介はボロボロになった ジャケットを小脇に抱え病室を出て行った。
恭介に夜間出口を説明した後、看護婦はまどかのところに戻って 「大丈夫?痛くないですか?」 と尋ねるも「は…い…。」と眠そうに答えて寝息を立て出した。 様子をみて看護婦はそっとその場から離れ、部屋の明かりは消さ れた。看護婦は去り際に「おやすみなさーい」と小声で囁くが 彼女は眠っていなかった。 まどかは横を向いたまま、さっき触った『彼』の感触を思い出していた。 さらに、自分が「しようとしたこと」を思い出しながら、抑えられない 動悸を感じていた。 夢の中に落ちて行く前に… さっきなぞった右手の中指と人差し指を左手でそっと握り そして… 二本の指を、そのままゆっくり自分の唇に押しつけた。 「ひかる、ごめん…。」 まどかは恭介とのことを思い出しながら深い眠りへと誘われていく。 「今さら遅いよね…でも…告白しょうか?…そうしたら、ひかるが…」 そのまま意識が薄れていった。
いいね。 久しくなかった甘酸っぱさが込み上げるような、そんな感じ。
まどかがあっさり涙を流すところはチョト興ざめかな それ以外はまあ、全体的には良い感じ
111よ、これは妄想なんだから、いちいち自分の中のイメージと照らし合わせるなよ。 無粋ってもんだぜ。ただ、文章は小学生マンガレベルだが それなりにラブコメ してて、読んでて楽しいぞ。それこそ「応援するよ」と言いたい。頑張れ妄想作者。
113 :
111 :2008/11/15(土) 16:57:40 ID:???
たしかに人の妄想に注文をつけるのは無粋かもしれん。 が、別に非難しているつもりもなく、率直な感想を述べておるだけだ。 書き手も無反応では張り合い無いだろしな
まぁまぁ これ読んでんの俺含めて3人くらいしか居ないんだから 仲良くというのも変だがのんびり行こうや 見たところちょっとした感想で特に攻撃的でないからいいんじゃない? 俺もつっこんだ事あるし
115 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2008/11/16(日) 16:33:26 ID:9ZBTF04e
御意!
そろそろ妄想タイムかな? o(^0^)o
まどか「アク禁くらってるんだ?」 作者「え?…うん。」 まどか「プッ!」(吹き出す) 作者「と、取り敢えず再開…(汗)」 人の気配を感じながら、まどかは夢の中に落ちて行った ちょっと病室の扉が開いたが、何かを確認するとまた閉まった。 「もう、お休みになっているみたいですから…」 「今日は一旦帰ります。明日出直してきますので、先生に宜しく お伝え下さい。」 まどかの姉であった。 母親は「明日でいいわよ。」と言うが、「そんな訳いかないでしょう! んもう。」後ろでご主人が様子を窺っている。 訳を聞いたご主人も「そりゃあ、心配だね…僕が運転するから行かない?」 姉は済まなそうに「いい?」 姉夫婦は倒したシートにクッションを敷き、その上にそっと子供達を 寝かせた。 「ごめんねえ、まどかったら…。」と済まなそうに言う奥さんに 「心配だね。」と気遣うご主人。 「高速でどのくらいかかるかなあ?」 「そうだねえ…今8時だから…11時前ってとこかな?」
翌朝、「うーん…」寝返りを打ってこちらを向くまどかに 「まどか。」 「…?」 まだ目が覚めきれない。また夢の中に落ちていく。ちょっとして 「…?お姉ちゃん?」 「目、覚めた?」 「え?来たの?」 「あんたものんきね。ママと一緒!」 「あ…ごめん。有難う、わざわざ。チビ達は?」 「『あんたんち』にパパと一緒にいるよ。き、の、う、から。」 少し嫌味っぽくまどかに言う。 「昨日、ママったら『大丈夫そうだから明日でいい』って言うんだもん、 呆れちゃった。娘が入院したのに。うちのパパが『僕が運転するから』 って言ってくれて、でチビ達も乗せて高速使ってね。」 「うわぁ〜、みんなで来てくれたんだぁ。ごめんなさい…」 「夜こっちに着いたんだけど、覗いたらあんた寝てるみたいだったから 一回『家』に引き返したのよ。ところで、ねえ、大丈夫?痛くない?」 「うん。有難う…。」(痛いって言えないしなぁ)「今何時?」 「7時半。朝ごはんどうする?一応来てるよ。」 「…いい。」 姉には申し訳なかった。昨日のような気分にはなれない…。
「じゃ、下げてもらうよ。看護婦さんから大体事情は聞いたけど、何で 自分で行く訳?そう言う時は人を呼ぶべきでしょ?んもう。」 昨日自分が言ったことを言われている。可笑しかったが笑う訳には…。 「大体、まどか、あんた、まさかまた戻ったんじゃないでしょうね?」 姉は昔のまどかを知っている。 「そんなつもりじゃ…」 「まあ、さすがに今回は懲りたでしょ?」 「うん…ごめんなさい。」 まどかはベッドをギャッジアップしてもらい、姉に手渡された 缶コーヒーを手に持ったまま、しばらくいろいろ話をしていたが、 9時過ぎになって義兄が子供たちを連れてお見舞いに入ってきた。 「まどかねーちゃん!」上の男の子が飛びついてきた。下は父親におんぶ されている。 「ごめんねえ。元気にしてた?」まどかの口元に今日一番の笑みがこぼれた。 「まどかちゃん、大丈夫?痛くない?」 「義兄さん、ごめんなさい…。」申し訳なさそうに詫びる。 姉はじゃれつこうとする子供達を制しながら、歓談を続けた。 トントン!
そうですか…アク禁ですかw 妄想もほどほどにな って洒落にならんか……
「おはようございます。入っていいですか?」 「どうぞ。」 看護婦さんと当直明けでひどい寝ぐせのついた先生が入ってきた。 「初めまして、まどかの姉です。この度は妹が大変お世話になり、 本当に有難うございました。」 姉は一生懸命先生や看護婦に感謝の意を表している。 その間、義兄がチビ達を両腕に抱っこしていた。 先生は「今から包帯を取りますから診察室へどうぞ」と促し、 ちょっと会釈してさっさと診察室に行ってしまった。 先生は美しい姉妹を前にしても全く動じないほど眠たかった。 「じゃあ、みなさんもどうぞ。鮎川さんは車椅子で行きましょうか。」 そう言ってまどかを車いすに誘導した。 先生は、包帯を取ったら再度目の検査をする旨、まどかと姉に説明する。 義兄はチビ達が診察の邪魔にならないように外に連れ出した。 「じゃあ、検査室の方へ。」先生が看護婦に言う。 (うす暗い検査室へ車いすのまま移動) そっと包帯が解かれ、軟膏がついた眼帯が取り除かれた。 まどかは周りのわずかな明るさを、さっきよりも感じ取ることが出来た。
瞼の上の軟膏が大雑把に拭き取られ、ゆっくり眼を開けるよう 促される。 恐る恐る瞼をあけると、うすぼんやりと周りを感じた。 徐々に慣れていくと、うす暗い検査室の中がはっきり見渡せる。 「どうですか?」 「はい!見えます。」 「痛みはあるかな?」 「左目がちょっと…まだ。」 まどかは軽い問診の後、検査台に顎を載せるよう言われ、引き続き 検査を受けた。結果は角膜には異常ないが、左眼瞼の結膜に炎症が 残っているとのことで、左眼だけまた軟膏が塗られ眼帯を掛けられた。 彼女は今度は自分の力で診察室に移り、同時に姉も診察室に呼ばれた。 二人は、明日一杯は左眼だけ眼帯をしておくこと、日に数回点眼薬を 点すこと、1週間後に再診とするが、異常があればその限りではない 等医師から説明を受けた。 最後まで聞くと姉はほっと胸をなで下ろして先生に深々と頭を下げる。 「有難うございました。」 二人は診察を後にして、詰所に寄って挨拶した。
「昨日の看護婦さんにも宜しくお伝え下さい。」 二人は一旦病室に戻り、荷物をまとめ病室を後にした。 受付で清算を済ませているまどかの姉。 受付のフロアのソファで待つまどか。しきりに外を見る。 (来てくれないのかなあ…?) 清算を済ませた姉が「さあ、帰ろうかあ。」 「うん…。」 二人は、外で子供を遊ばせている義兄の元へ歩いた。 眼帯をしている義理の妹を見て義兄はちょっと驚き声を掛ける。 「大丈夫かい?」 「はい…ご心配掛けて済みませんでした。」 神妙に謝罪しているまどかのジーンズにチビ達がまとわりつく。 まどかはしゃがんでチビ達のほっぺに思いっきりキスをした。 「ごめんねえ!」 まどかは義兄のベンツの助手席に、姉とチビ達は後ろに乗り家へ向かった。
姉達は1階リビングでくつろいでいる。 夫婦はコーヒーを飲み、子供達はまどかのアクセサリーで遊んでいる。 まどかはあらためてシャワーを浴びていた。 髪も洗い、すっきりした気分で体をバスタオルで巻いて出てきた。 「ああ、スッキリした。」 「あんた、なんて恰好してんの!さっさと着替えて来なさい、んもう。」 まどかは義兄の視線を気にせず、冷蔵庫からちょっと迷って缶ジュース を取って2階に上がって行った。 (姉貴がいるからやっぱりビールはまずいよねえ…) 「姉妹でもこうも違うんだねえ…」 階段を上がって行くまどかの後姿を見ながらため息交じりに言う夫に 「ど、こ、がぁ?」 と顔を近づける姉。 「あ、い、いや、性格。せいかくだよ。」 と慌てて取り繕う夫であった。 二人は吹き出して笑った。 まどかは自分の部屋に入り鏡の前に座って顔を近づけ覗き込む。 「やっぱり左が赤いなあ…」 顔を離し、左眼を少しつむってもう一つの大きめの分厚いタオルで髪を ごしごしこする。ちょっと手が止まり、鏡を見つめた。 「あたしのこと心配じゃないの?」
アク禁w!まどかに笑われてるし。で、解けたのか?
パソコンで書く→携帯にメール→コピー→携帯から書き込む(ペースト) という手もあるよ
最初から携帯でもいいけど馴れてないかなと思い
彼がいかに粘着とは言え、さすがにそこまではやらないだろう。 ネットカフェにでも行けば?連休も控えていることだし。
「あ、あははは…ひかるちゃん…ハー…(深いため息)」 恭介は病院へ行こうと部屋を出た瞬間、訪ねて来たひかるに捕まった。 今日はまなみに借りたノートを返しに来ただけで、恭介に会えれば いいくらいのつもりだったのだが… 「先輩!どうしたんですか?その顔。」 さすがに言えない。マズイに決まっている。 「いや、その、…自転車でこけちゃってさあ、スピード出してたし」 「ホントですかあ?」 「ほ、ホントだってば。」
結局、日曜日は午前中一杯、ひかるがする看病に付き合わされた。 ひかるはここぞとばかり、甲斐甲斐しく看病する。 「先輩!今日は外出禁止です!わかりましたか?」 ひかるは親と出かける用事があるからと昼過ぎに帰った。 ひかるが帰って行くのを窓から確認して、慌てて病院に電話するが まどかはもう退院したとのこと。 「まずいよなあ、やっぱり…。」恭介は急いでまどかの家へ向かった。
車庫にはまどかの姉が「あげるよ。」と言ったまま、まどかが免許を 取るまで新しいご主人を待つ健気な『ミニ』と、その横に『でっかい』 ベンツが止まっていた。 「お姉さん来てるのかなあ?入りづらいなあ…」 家の前に立つ電話ボックスのまわりでうろうろする恭介。 「キミは立ってなさい!」 その姿は既に見つかっていた。
実はまどかも「あいつ、来ないのかなあ?」とちらちら外を見ていた。 今日は久し振りだし、みんなで食事に出かけようということになった。 姉は独り住まいしているまどかに御馳走してやりたかった。 皆で車に乗り込む際、まどかは少し見やった自分の視線と恭介のそれが 交わった瞬間を感じながらも敢えて無視した。 (ふんっ!) 「あ、あゆかわ〜…」
予約していた中華料理店の個室にて 「うわ〜美味しそう!頂いちゃおうっと。」 姉は下の子を膝の上に載せあやしながら隙を見て口に放り込んでいる。 義兄は最初「帰り僕が運転するの?」と恨めしげに妻をみてウーロン茶 を飲んでいたが、「じゃあ、私が運転してあげようか?」の一言で ニッコニコでビールから紹興酒へと進んで行った。 まどかはくっついて離れない上のチビに嬉しそうに食べさせている。 「はい、あ〜ん。」 そう言いながら自分も口を開いているのに気付きハッとなった。
昨日のことを思い出した。 真っ赤になったまどかを見て 「まどか、あんたまさか、飲んだんじゃないでしょうね?」 「そんな訳ないじゃない!」 「あんた、冷蔵庫にビールがいっぱいあったけど、飲んでるの?」 「たまーにね、たまによ。」 「パパの大切なウイスキー無くなってるけど?」 「落として割っちゃった、掃除の時。」 「嘘ばっかり…タバコは?」 「もうヤメタ。知ってるでしょう?中3で卒業したって。」 (恭介に言われたんだもん!)
「あんた、いつまで一人で住むの?あの家。うちに来ない?」 「いやだ。」 「パパんとこは?」 「い、や、で、す。んもう、うるさいなあ〜。ママみたい。」 「だって、『ママ』だもん!あんたも子供産めば解るわよ。」 まどかは想像してまた赤くなった。 「うるさいあな〜。ねえ?」 チビに同意を求めると、何も分からずにうなずく姿を見て 姉妹は吹き出した。 義兄は、いつもならどちらかを引き受けなければならないのだが 今日はまどかが看てくれているので食事とお酒に専念できるのが 嬉しいようで、姉妹の会話を始終ニコニコして眺めている。
「まどか、もうすぐ夏休みだけど、大丈夫?」 「うん、有難う。」 「じゃあね、まどかちゃん。何かあったら何でも電話して。」 「はい。今日は有難うございました。」 一泊で長旅させたチビ達に謝った。 「ごめんね〜、疲れたよねー。バイバ〜イ!今度遊びに行くからねえ!」 姉夫婦は一旦まどかの家に寄り、久しぶりにいい気分になってる 義兄の酔いが覚めるのを待ってから帰った。 (お姉ちゃん大丈夫かなあ?2時間も…。まあ、ママに似て運転 好きだから心配いらないかな。)
まどかは姉夫婦を見送った後、すぐに辺りを見て回った。 (やっぱり帰るよね。ちょっと悪いことしたかなあ。) 時計は7時前。父親と話してないことを思い出し 「パパに電話しなくっちゃ!」 まどかは母に電話して、あらためて経緯を説明し、姉夫婦に良くして もらったことも話した。 電話が父親に代わったので、あらためて謝罪した。 父親は特にまどかには甘く、もう少し自重するようにやさしく諭すに 留めたが、電話の後ろから母親の怒った声が聞こえてくる。 父と娘はそれを聞いて笑っていた。 長電話を切り、まどかはシャワーを浴びて早々とパジャマに着替える。 わずらわしくなって眼帯も外した。 「そうだ、明日の宿題何にもやってない!」
机に向って準備を始めたが、ちょっとして手が止まる。 (姉貴夫婦って、うちのパパとママに似てるなあ…。お姉ちゃんの 趣味とママの趣味が同じなのかなあ?親子だもんね。あたしは違う よねえ…) そう思いながらふと机の上の『恭介』に目が行った。 「え?…そんなあ…」 (パパや義兄さんとタイプが似てる?いや、春日クンはそんなんじゃない …よねえ…) 少しだけ良く思おうとしていた。 その後、電話の子機にちらちらと視線をやりながら、頑張って宿題を 片付けたが結局電話は鳴らなかった。 「なにさ、あんなやつ」
翌日 「お、おはよう、鮎川…」 「おはよう、『ダーリン。』」 ひかるがよく使うセリフを言うや、つんとそっぽを向いて さっさと教室に入って行った。 「いっとき口きいてもらえないや。」 恭介はがっくりきた。 眼帯をしている鮎川を見ても、中学の頃の様にクラスはざわつかない。 かえって、八田なんかが「大丈夫?」と声を掛けてくる。しかし 「ありがと。」 相変わらず素っ気ない。
一方恭介は、腫れは完全に引いているものの、蹴られた跡はまだ痛い。 動く度に「イテテ、…」と声には出しているものの誰からも構われ ない程度の存在感のなさ…。 授業中、左眼が見えないので普段より右眼をよく使う。その分恭介の 姿が飛び込んでくるのがわずらわしかった。恭介は心配して見ている のだが、まどかはなかなか許さない。 「電話ぐらい掛けてくれたっていいじゃない…なによ!」 休み時間は敢えて売店に行く。 「あれえ、まどかさん!眼、どうしたんですか?」 ひかるも来ていた。
実は、始業前には「例の事件」がすでに1年生の間に広まっていた。 1年の女子が不良にカツ上げされそうになったところを、3年生の 男子が守ってくれた。その人は相手が女だから手を出さなかったけど、 その分かなりやられた。けれど、通りかかった『知り合いの女性』が 凄く「切れてしまって」不良達を…。でも、逃げ際に不良が投げつけた 「変な粉」が目に当たって病院に行ったらしい。 「…それって、3年の鮎川さんじゃない?」
朝っぱらから、女子達がうるさい。当然ひかるの耳にも入ってくる。 (まどかさんなのかなあ?もうケンカはしないって先輩に誓ってたし… やられていた男子って…先輩?そういや昨日先輩顔にアザ作ってた!) くるみまなみに事情を訊くも、土曜日は父親と父方の親戚の家に 行っており、帰ったのが恭介よりも遅かったぐらいで、「例の一件」 については、あいにく本当に何も知らない。 恭介にはひかるが願っていた「アリバイ」がなかった。 (まどかさん土曜日は用事があるからってアバカブ休んでたし…え!? ひょっとして、先輩とまどかさん、あたしに隠れて逢ってるの?) ひかるは急に胸がドキドキし出して、居ても立ってもいられず 気持ちを落ち着けるために売店まで来たところだった。
作者よ、暴走し過ぎ。いいことでもあったのか?
亀突っ込みで何だが、なぜ恭介は能力を使わなかったんだろ?
妄想の暴走
144よ、あの日には能力を使うシーンがなかったんじゃまいか?おそらく 作者はその線で行く気だろう。まあ、俺からすれば、こんな設定自体、現実 離れしているとしか思えないけどな。妄想だから仕方ないが。
いやいや、モチーフはきまおれでしょ?んじゃ、能力使わないと!
だーかーら〜、これは「きまオレ」ちゃうって!
>鮎川だったら…と思うと勇気を振り絞る バスケのシュートの時のようになるべく普通の人間として、一人の男として振舞おうとしたのでは
なるほど 一見それは説得力がありそな見解だが、 一人の男と振舞おうとするのはいつも鮎川が見ている時だからな…… ボチボチ妄想の続きが投下されると思うから楽しみにしていようかw
あれ〜? そろそろ投下の時期だと思ったんだが…… やっぱこの前暴走してネタ使い果たしたか?
お〜い!作者〜。まだか〜? ひょっとして、また「アク禁」くらってるのか〜?
まどか、まだか?
>153 面白くないから書くな!
「うん、ちょっとね…」 ひかるは怪訝な顔つきで尋ねてみた。 「先輩腫れ引いていました?」 「会ってないから知らないなあ…」 同じクラスじゃないですかあ、そう言おうとして「?」ふと思った。 「先輩も怪我してたんですよお。何か自転車で転んだって… 昨日まなみちゃんにノート返しに行ったら先輩顔が腫れてて…」 そう言ってまどかの顔を覗き込む。 「…あら、そう。」 (やっぱり、ひかるに捕まってたのかあ…) そんなことだろうとは思っていたが 「どっちが大事なのよ…」 と、まどかはよそを向いて呟いた。
ひかるは猜疑心からもう一度尋ねてみた。 「ところで、まどかさんはどうしたんですか?」 人当たりは良くなったが、それでも不良時代の面影は残っている。 そんなまどかだが、今はいくらなんでも暴力沙汰は起こさないだろう。 「あ、何か解らないんだけど目が腫れちゃってさあ。だから、 病院に行って…」 慌てて嘘をつく。そして、話題を変えようと 「で、大丈夫なの?ひかるの『ダーリン』は。」 ちょっと投げやりに言った。 しかし、ひかるはそれに応じない。 直感、まどかが嘘を付いていると感じた。
「まどかさん、私に何か隠してませんか?」 自分でも驚いている。まどかに対して初めて楯を突いた。 「!」 みんながいる前で割とはっきり言うひかるに驚いた。いつもなら 何でも自分の言うことを信じていたはずなのに、最近のひかるは まどかの気持ちを探ろうとしている…。 (やばいなあ…) まどかはいきなり「これ下さい!」と替え芯を店員さんに差し出し 「何も隠してないよ。」 やさしくそう言うと、ちょっと微笑んでお釣りと品物を受け取り、 そのまま3階の教室へ戻って行った。
その日、ひかるは部活を休んだ。もちろんアバカブにも寄らない。 ひかるの直感が確信に変わった。 「まどかさん隠してる!なんで、何で今まで気付かなかったの!」 今まで『騙されていた』気がして、ひかるは自分が悔しかった。 「なんで?…私に隠れてまどかさんと先輩…」
今までのひかるなら、すぐに恭介に電話をしたはず。いや、直接恭介の マンションに行ったはず。 しかし、ひかるは自分の部屋にこもり、今までの3人で過ごした思い出を 視点を変えて集中しながら深く反芻していた。深く、深く…。 「!」…「!!」 あれもこれも、あまりにも符合することが多過ぎる。 「あたし、なんで気付かなかったの?…そ、そんな…まどかさんが、 あたしのことを『騙してた』なんて…」
次から次へと勝手な想像が湧き上がるたびに顔が熱くなった。 「まどかさん…『応援する』って言ったでしょ?」 ひかるは今まで自分が思っていた3人の関係と、今想像している 3人の関係が異なっていることに気付き、混乱したまま夜を明かした。 翌朝、ひかるの顔は睡眠不足でやつれ、目の下にクマが出来ている。 ひかるは鏡を見て驚いたが、すぐに顔を洗い、目と顔のマッサージを 繰り返した。そして慌てて髪を櫛でといていたが、ふとその手が止まる。 「とにかく、先輩に聞いてみよう。」うつむき加減にそう呟いた。
ひかるは登校すると意を決して直ぐに3階に上がり恭介を探した。 二人の姿を見つけたものの、自分が昨日勝手に想像した二人の 関係と目の前の光景があまりにもかけ離れていて躊躇した。 「あたしの思い込み?」ひかるはいい方に考えようとした。 授業開始前、まどかはぼんやり外を眺めている。 まどかはまどかで考え込んでしまっていた。 今日から眼帯を取っているが、恭介の方を見ようとしない。 (あたし、どうすればいいの?もう、気付かれてるよ、絶対…)
恭介は小松達と笑って話してはいるが、心ここにあらず。 「何か、あれ以来、鮎川凄いオーラ出してるなあ…とても話し かけられやしないよ、ホント。」 2時限目から鮎川はいなくなった。 先生には「眼科の診察があるから」とウソを言った。 いたたまれない。そんな気持ちからのエスケープだった。
(何となく声を掛けそびれ、そのまま教室に戻ったひかる。) ひかるは二人のことが分からなくなった。 先輩は私にやさしい。想ってくれている気がする。 でも、その想いは「愛情」というより、妹のように「愛しむ」 というような、そんな域を超えていなかったのでは? 他方、まどかは、自分が意識する以前から姉のように接してくれて どんな時も守ってくれていた。何でも言える、全てを委ねられる そんな存在だった。やさしい「お姉さん」だった…。
(二人にとって自分は妹ってこと?でも、まどかさんも、あたしと 同じになっちゃって…あたしは『妹』から『ライバル』に格上げ されたのかなあ…ライバル?まどかさんにかなう訳ないじゃない!) ちょっと苦笑いする。 最初は許せなかった。自分への『裏切り』と感情的になっていたが 深く考えていくうちに、反芻するほどにまどかが今まで随分無理して 「引いてくれていた」ことも解ってくる。 ひかるは高校生になって、感情をセーブできるようになった。 「まどかさん、無理してたのかなあ…」 ひかるはずっと物想いに耽っていた。
数日後 「おはよう、ひかる。久し振りだね、朝会うの。」 「あひっ!ま、まどかさん…、お、おはようございます!」 「どうしたの、最近見かけないけど?部活忙しいの?」 「は、はい…。」 不意打ちだった。ひかるはあれ以来自分の想像の、どこまでが 正解で、どこまでが不正解なのか測りかねていた。 二人に会うのが怖かった。だから、3人が合う可能性がある朝は 少し早く家を出て会うのを避けていた。3階にも上がらない。 学食も時間をずらした。 しかし、今日は少し寝坊したため、二人の通学時間に重なった。
こそこそと隠れるように歩いている後ろからの不意打ちだった。 「ひかる、最近『らしくない』けど、何かあったの?」 まどかにはひかるの気持が分かっていた。 自分の恭介に対する気持がきっとバレている。だから ひかるが悩み、それ故『らしく』なくなったのだろうと。 「自分の所為」であることは重々解っている。 でも、だからと言って、ひかるには『らしさ』を失って欲しくない。 (もっと堂々としようよ。張り合おうじゃん!ひかる。)
妄想乙 それにしてもスゲェなw 端末何台も使ったとか?
凄い妄想力だな。一体どこでこんなこと考えてんだ?湧いてくるのか? にしても、面白くなってきた。まどかに開き直らせ、ひかると対峙させるのか。
日は遡って (まどかが眼科受診と偽ってエスケープした火曜日の午後) まどかは一旦帰宅して私服に着替えると街へ出た。 病み上がりの目には陽射しが眩し過ぎる。誕生日のプレゼントにと あかねに貰ったサングラスをしているが、およそ高校生には見えない。 (あかねさん、これ素敵ね。) ショーウインドーに映る自分の姿を見て、ちょっと心が弾んだ。 (決まってる!) まどかはそのまま街をブラブラした後アバカブに向かった。
「眼帯外したんだ。眼はもういいのかい?」とマスター。 「うん。まだちょっと痛むけど。」着替えを済ませ出てくるまどか。 「もうすぐ期末試験だね。3年だから受験勉強もあるしねえ…おや、 そう言えば、まどか君どうするの?まだ聞いてなかったね、進路。」 「あっ。」 そうであった。まだ何にも決めていない。大学に進学するか、社会に 出るか。好きな音楽への道も考えない訳ではない。両親が居る海外も 興味はある。 「あいつはどうするのかなあ…」 そう呟くと、そのままぼんやりと窓の外を眺めてしまった。 自分の進路を『彼』に委ねようとしているまどかを見てマスターは (こりゃ、重症だなあ…。) 「そういや、昨日来なかったね、春日くん。まどか君に教えてもらわ …いや、一緒に勉強しなくて大丈夫なのかねえ?期末前なのに。」
店が終わり、帰宅するまどか。 シャワーを浴び、冷えた缶ビールを持って自分の部屋に上がる。 部屋の明かりは点けずに窓を開け、扇風機で体を冷やす。 「もうすぐ7月かあ…。」 ステレオのラジオを点けると、モニターの緑の明かりが部屋の中を 薄く照らす。FMからはセクシーなOLD−SCHOOLが流れる。 シュパッ、ピッ!缶ビールの蓋を開けると、待ちきれないように 一気に流し込んだ。 「美味しい。」
体を拭き、夏用のパジャマに着替えるとタオルで髪をごしごし拭き ながら考える。ふと手が止まる。一時するとまた手が動き出す。 残りを飲もうと缶に手を伸ばす。置いた缶の先に写真が立ててある。 恭介を真中に3人が笑っているベストショット。セルフタイマーで 撮ったやつだ。まどかはちょっと動きを止めたが、すぐ視線をそらし また缶をつかんで残りを一気に喉の奥に流した。 (決着をつけなきゃ。ひかるのためじゃなく、自分のために。)
一旦下に降りると、今度はウイスキーと氷とグラスを持ってきた。 カラン、コロン。トクトクトク。父親のシーバス18年物を注ぐと グラスの縁を片手に持って、中の氷を回しだした。カラン、コロン…。 まどかはそのまま部屋の明かりを点けずにいた。椅子に座って 頬杖をついたまま、時々思い出したようにウイスキーを口に含む。 ぼんやりと、今までの自分の気持ちの流れを整理していた。 「あたしにとって、『ひかる』って何? あの子、今まで一人ぼっち のあたしを随分支えてくれたよねえ…、随分とさぁ…」
妹じゃないのに、妹以上に身近な存在だった。孤立しがちなまどか を明るく支えてくれる存在だった。だからと言う訳じゃないが ひかるの言うことは何でも受け入れることが出来たし、譲ることも、 まあ出来た。まどかは自然とひかるの姉のように振舞っていた。 (ひかるって裏表ないし、時々ホッぺにキスしたくなるくらい 可愛いし…でも、だからと言って…) 「あたしだって好きだし…」 そう呟いてハッとなった。 (好きだし?)
今までこんな想いで恭介のことを『好き』と考えることはなかった。 それが今、ふと口に出してしまった。 「好き…かあ」 (もし、妹の彼が姉にアプローチしてきたら、姉としてはそんないい 加減なやつはお断りよねえ。でも、妹が『彼』と一方的に思っている だけで、また、周りにそれをアナウンスしてた「だけ」だったら? 『彼』には最初から「その気」が無かったら?もし、本当は最初から 『あたし』のことを想ってくれていたとしたら…?)
とうとう、主語を『あたし』に置き換えてしまった。 その瞬間、体中が熱くなった。ウイスキーのせいじゃない。 「あたしのことを想ってくれていたとしたら…」 今度は口に出してみた。また、体が熱くなり胸がぎゅうっと痛くなる。
乙 一体どないしたんじゃ? まさに堰を切ったって感じだな
いたとしたら?
所々に原作やアニメのまどかの表情が浮かぶぜ。
180 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2008/11/29(土) 12:00:54 ID:7poDTv5w
さすがに走り過ぎた?いい感じになってきたから早くUPして欲しいな。
いやいや あまり気張ると嫌になりかねん マイペース マイペース♪
まどかは今まで硬派で通してきたつもりであった。 それまでは異性に「何か」を感じたことはなかったし、どちらかというと 自分の世界に引きこもっていたのかもしれない。 唯一出入りを許されていたのはひかるだけだった。 しかし、多感な時期に恭介と出会い、3人の時間は流れ、まどかのなかに 恭介への想いが芽生えていったのは不思議ではなかった。 「こんなあたしを叱ってくれる、本当に一生縣命に心配してくれてる… そんなキミは…全然頼りないのになあ…」 写真の中の恭介を見ながら呟く。
ただ、まどかはそれを「初恋」と了解するのを努めて避けていた。 それは「ひかる」という存在があったからではあるが、何より 自分の気持ちに「素直」になれなかっただけなのである。 しかし、結果としてはまどかのそんな部分が二人の関係を、 お互いを「恋しく想う」関係へと熟成させていったのである。 あれこれ考えを巡らせるよりも、ほんの少し自分に素直になったら あらためて自分が「恋」をしていることに気付く。 それも、随分前から…。 自分だって想ってなかった訳じゃない。
一方的な解釈?いや、きっとそう。深いところで伝わってきていたし あたしだって伝えていたし…そう思うとまた熱くなる。 「じゃあ、どうすりゃいいの?」 ちょっと酔ってきたまどかは、立ち上がるとそのままベットに 倒れ込んだ。 (春日クン…好きだよ。)
翌日水曜日、やはり学校ではつれなくしてしまう。 恭介から「おはよう。」と挨拶されても、挨拶を返しこそすれ 目は合わせない。 例の一件を怒っているのではなく、今は目を合わせるのが恥ずかしい。 明らかに意識し出している自分に戸惑い、今までの「鮎川」を、 おそらく恭介にはそう映っていたであろう自分を演じようとする。 まどかは恭介に悟られまいと必死であった。
186 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2008/12/01(月) 09:08:31 ID:kOrY496M
まどか、随分素直になったな。恭介がうらやまし。
原作ではまどかは最後までひかるをたてたが アニメでは最後はひかるの存在がなかった。 妄想じゃ、ちゃんとひかると向き合うみたいね。
妄想だからな 思うがままに新しい展開にすれば良いさ 素直なまどかもまたよろし♪
ふむふむ 妄想とはいえ、それっぽくて良い
まどかが、『一方的?』と思っていたことに、ひかるも気付き始めて いた。 「あたしが一人で勝手に思い込んでたの?」 答えは恭介しか知らない。会いたい!会って確かめたい!しかし 今まで迷うことなく信じていたものが、知ると崩れてしまいそうで 怖くって、とても恭介に会うことなど出来ない。 翌日、学食でめずらしく一人でいる恭介をみつけた。 「ちょっとごめん…。」 くるみにそう言って恭介に近づき、勇気を振り絞ってアタックする。 「せ、先輩。元気ないですね?どうしたんですか?」
(元気がないのは自分なのに…。思い切って切り出したい! やっぱりダメだ…。聞けない。当たり障りのない会話で終わってしまう。) 「先輩…本当はどうなんですか?」小声で呟く。 「それがさあ、ひかるちゃん…ん?今なんか言った?」 「いえ、別に…。」ひかるはうつむいてしまった。 そんな二人を突然現れた八田が冷やかす。しかし、ひかるの 雰囲気をすぐに読み取って、小松が「やめとけよ、八田」と言う。 小松がいつもの雰囲気と違うのに「?」となる恭介であった。 今までなら雰囲気に乗じて思いっきり恭介に甘えることが出来た。 でも、今は不安が先に立つ。ひかるは恭介をじっと見つめて呟く。 「あたしですよね?」 胸が張り裂けそうになった。
「春日クン、今日も来なかったねえ。」 「お疲れ様、マスター。」そう言うと、そそくさとアバカブを出た。 梅雨入りしているせいか、昨日と違い今日は何となく涼しい。 しかし、まどかにとっては昨日と同じである。まだ解決していない。 帰るとシャワーを浴び、部屋着に着替えると昨日と同じくビールから 始めた。まどかは二日続けて飲んでいる。酔うと自分と正直に向き合える。 (昨日は、あたしの気持ちだよねえ…今日は?) 早くも酔っている。 (じゃあ、ひかるは?ひかるはどうすればいいの?あたしが身を引く? それじゃあ、春日クンが…あれ?)
また、酔った頭で自分勝手に考えている。 (問題は、春日クンがどう思っているかじゃないの?もし、やっぱり 本当はあたしのことを想ってくれてるんだったら…) また体が熱くなってきた。胸も締め付けられる感じがする。 (もしそうなら、春日くんを『譲る』のは…) ウイスキーの力を借りた。 (それは、春日クンにとっても…あたしにとっても…良くない。 大体、春日くんは物じゃないし…) 場所を椅子からベッドの上へと移した。 「春日クンが決めて。決めた方が正解だよ。」 以前言った言葉を思い出しながら夢の中へと落ちて行った。
要するに、まどかも恭介のことが好きな訳で、やはり最終的には恭介の 気持ち次第ということでしょ?まどかとひかるとの間にどんな関係がある にせよ、恋というものは当事者の気持ちが一番大事!引いたり、譲ったり するのは相手が可哀そう。そういう意味で、まどかの言ってることが正解。
↑あなた直訳し過ぎだよ。
まあまあ。
…ネタ切れの予感。
同人映画までのつなぎのつもりだろ? もうすぐ終わりになるよ しかし希望を言わせてもらえば、あの映画に拘束されず、どんどん妄想を広げて欲しいな
「つなぎ」にしても、随分密度が濃く埋ってるよなあ。 まあ、まどか中心ではあるが。 ページ数からして同人小説1冊分くらいあるか? こんなの買うヤツはいないだろうけど。 絵がついてりゃ買ってもいいかなあ。
>>199 絵は誰が書くんだよ?
今のまつもとが書いたらそれこそ同人になっちまうでw
高田にしろまつもとにしろ、アシによりけり。個人的には原作では杉ひろみが 転校してきた回の絵。アニメではあの日のベッドの上で涙ぐむまどか。そんくらい の絵が描かれていたら桶。買う。もう、大人買い!
「あの夏」の自宅で早川満を下から見上げ小馬鹿にするまどかもいいぞ。
UPの法則があまりにも変則的です。 作者様、気を持たせないで早くUPしてよ。 きまぐれなんだから。
コミックで恭介が風邪を引いたまどかを看病するやつ。あの時の鮎川がかわゆいっす。
妄想まだか?
まあ焦るな もうそろそろ投下される頃だ
翌朝 「おはよう、春日クン。」 「え?あ、お、おはよう、鮎川…」 いきなり後ろから声掛けられ驚いている。なんせ、この数日まともに 口をきいてくれなかったから。でも、何だか今日は表情がやさしい。 恭介は恐る恐る訊いてみた。 「今頃なんだけど…眼、大丈夫?」 まどかは後ろから追い抜き、恭介の斜め前に並ぶように歩きながら 「もう、とっくに治ってるよ。アリガト、心配してくれて。」 よそを向いて言う。 (なんか、まだ怒ってるのかなあ…)
「あの日さあ、ホントは迎えに来てほしかったんだあ。」 そう言って恭介の方にちょっと顔を向け、流し目で彼を見る。 「ま、いいか。『家の前で』心配してくれてたから。」 そう言うと、まどかは笑い出した。 「なんだ、やっぱり知ってたのかあ。」と恭介も笑い出した。 まどかは吹っ切れていた。 (「その日」が来るまで、それまではあたしの口から言うのはよそう。 でも、「その日」が来たら、その時は伝えよう。そして、後は…あとは 春日クンの気持ちに任せよう。それまでは、あたしも、ひかるも 今まで通り『らしく』していよう。)
もうすぐ終わりか?それともオリジナル「あの日(その日)」が来るのか? なんだかんだ言ってもここまで続けた作者は偉いと思う
ここ最近の流れって、時間が前後していて何度も読み直してみたぞ。 土曜日に事件があり、日曜日に姉夫婦と会食。月曜日にひかるが気づいて 火曜日はまどかがさぼり、その夜から自問自答が始まる。水曜日に全ては 恭介次第と気づいて、木曜日の朝すっきりしている。時系列的にはこれで いいのか?たった6日の内容に1か月かかってるぞ。60から始まり208か…。 まるでスラムダンクみたいだな。 こりゃ、年内には「あの日」には到達しそうにもないなあ。 迷走作者よ、209に褒められてるぞ。もうちっと頑張れ。俺も楽しみにしている。
チュラチュラチュラチュラチュラチュララー チュラチュラチュラチュララー
そして金曜日 「ひかる、最近『らしくない』けど、何かあったの?」 「そ、そうですかあ?」 ひかるは慌てて取り繕うが、まどかの余裕に押されていた。 後ろ手にカバンを持って歩くまどかの表情がどこか「涼しげ」である。 「最近会ってるの?春日クンと。」 「いえ、そ、それがですね…。」 (まどかさん、一体どういうつもりなのかなあ?) ひかるはまどかの本心が解らず困っている。 「ま、まどかさんは先輩と逢ってますか?」 「あはは。クラス一緒じゃん。」 「あ、そう言えばそうですよね。あたし何言ってんだろ?あははは…」 困惑するひかるを横目にまどかは澄ました顔でそれとなく… 「さては、『ダーリン』と会ってないからかなあ? ダメだよ、ひかる。しっかり捕まえてないと。 …『取っちゃうよ。』」
「…え?」 何てこと言うんですか!という眼つきでまどかを睨んだが まどかは気にせず笑って先に歩み出した。 まどかの口からそんな言葉を聞いて、改めてまどかの本心を知った。 (しっかりしなくっちゃ!まどかさんに取られる。) 「はい!誰にも渡しませんから。」 後ろからちょっと歩を進めてまどかに並び宣言する。 「そうだよ。その意気!さ、学校行こう。」 3人がそれぞれ『ステップアップ』しなければならない時期が 近付いていると感じているから、ひかるにもそれを促すつもりで ちょっとだけ告白してみた。 お姉さん役は降りよう。勝手なことは解っている。 大胆な発言にもかかわらず、いつも通り接してくるまどかの態度に、 彼女の決意を見てとって、挑戦状を受け取る勇気が湧いてきた (まどかさん、女として勝負しましょう!)
むず痒い いい意味で
とうとう、まどかが言っちゃった!!
2008年12月9日、「まどか独立記念日」制定。
ちょうど前を歩いている恭介を二人は見つけた。 「せんぱーい!おっはようございまーす!」 ひかるはまどかの元から駆け出し、恭介の腕にしがみつく。 「あ、おはよう、ひかるちゃん。」 「おはよう、春日クン」 まどかは二人を追い抜きざまに挨拶したが、顔は「しらっ」としていた。 (ひかる、あんたはそれが似合うよ。あとは『彼』次第かな?) さっさと歩いて行った。 そして、この日を境に3人の関係は「その日」が来るまで微妙なバランスを 保って推移していくことになる。
期末試験まで後数日。夕前のアバカブはお客が少なく、マスターは外出中。 「先輩!今度の試験が終わったらいよいよ夏休みですね。」 「そうだね…、でも俺と鮎川は受験があるから遊べなくなるなあ…あれ? そう言えば鮎川どうするの?進路。」 「さあ。」 カランコロン! 「あら、まなみちゃん。いらっしゃい。」 「あ、まどかさん、こんにちは。ひかるちゃん、探したよ。 ノート解った?私、字が丸いから解りにくかったでしょう?」 「ううん。まなみちゃんのノート、すごく解りやすいから勉強する意欲が 湧いてくるよ〜!でさあ、まだ教えて欲しいとこがあるんだけど、いい?」 「いいよ。じゃあ、うちに来ない?くるみが居るけど…」 「いつもお邪魔してるから、今日はあたしん家でしない?」
ひかるは、恭介をまどかと二人きりにするのをためらったが 敢えてそういう場を提供できるのも「女」として自分の成長のためと 『らしくない』選択をした。 まどかは知らん顔して片づけをしているが、意識はしている。 ひかるは「じゃあ、行こうかなあ。」と言って恭介をちらりと見る。 近づき、ちょっとすり寄りながら「浮気しちゃダメですからねえ…」 まどかに聞こえるように当てこすりに言う。 「あ、あははは。ひかるちゃん…」 「じゃ、まどかさん。」 そう言うとまなみと一緒にアバカブを出て行こうとする。
「ちょっと待ってて」 まどかが呼び止め、一旦裏に行くと再び出てきて二人に手渡す。 「これさあ、おすそ分け。良かったら二人で食べて。」 相変わらず1年の女子に人気のまどかは下駄箱にプレゼントを入れられ 困っている。今回は彩り鮮やかなキャンディーだった。 「うわ〜きれい!さすがまどかさん!有難うございます〜。」 二人はきゃぴきゃぴの女子高生と化して帰っていた。 恭介はカウンターの隅で悶々と勉強をしている。さっぱりわからない。 「どれどれ?」 恭介の隣に座り体を寄せてくるまどか。
よく次から次と妄想が湧いてでるなあ。なかなか飽きないぞ。
ああ 寺田の妄想よりもこいつの妄想の方が質が良い
寺田のは「作品」、こいつのはただの「妄想」 前者からは良い悪いは別にして触発される「何か」がある。 こいつはただの「良いとこ取り」であって、リスクが全くない。
まどかの甘い香りにドキッとして振り向く恭介。 まどかは途中から、明らかにからかい半分となって顔を近づけてくる。 少し目を細めて小首を傾げ、誘惑の笑みを浮かべて 「あたしが分からないのは…キミの…」 「え…?」(ドキドキ) 「理解力。」 そう言うと、ちょっとつれなくしてみせて、お客さんのところにお冷を サーブしに行った。そしてまた戻ってきてカウンターの中に入ると 「このまま放っておくと大変なことになるんだけどなあ…」 (はっきりしなさいよ!) と恭介の方を見ずに言った
恭介は勉強のことを言われていると思っている。あたふたしながら 「お、俺、頑張るよ。だから、い、一緒に進学しよう!」 「え?」 わざと当てこすりに言ったつもりなのに、恭介は勘違いしている。 スマッシュショットを打ったつもりが『変な球』が返ってくる。 でも、その『変な球』には恭介の素直な想いが詰まっている。 「ね?一緒の大学に…」 「う、うん。」 ちょっと驚いて、まどかもつい素直に応じてしまった。 そしていたずらな天使はクスクス笑い出す。 恭介も頭を掻きながら照れ笑いしている。 勉強はアバカブ閉店後も続いていた。 まどかは優しい表情で一生縣命な恭介の姿を見ている。 (ずっと一緒にいようね、恭介クン。)
まつもと亭という店があったとする この作者は店の雰囲気にあった料理を彼なりに工夫して出してる 素人料理だけどそれなりにマッチしてる 寺田はプロだけど店に合ってない英国料理か何か作り出した感じ 「おいおい、まつもと亭は家庭料理の店だよ?勝手にオリジナリティ発揮してんじゃないよ」 ってね
227 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2008/12/11(木) 21:29:21 ID:oZqkavr8
君は暖簾分けされた分家に本家の味を求めている。 オレは分家で全く違う国籍の料理を出されても、オレにとって旨けりゃいい。 君は「質」と言うが、「好み」の問題だろう? 寺田は本家の味を求める君にとって、「違う味」を出したかも知れんが 一応「プロの味」。確かアニメの構成も寺田だよね?旨と思ったのは皆無だったか? 「あの日」だけは印象に強く残る不味い味だったかもしれんが、それもプロの味。 で、こいつは暖簾分けを許されてもいないし、何となく似ているだけで凡庸。 斬新さもインパクトも感じないただの「妄想」 素人の味をプロの味と「質」で比べること自体おこがましいと思わんか?
227よ!妄想が途切れて読みにくいから、そろそろ消えてくれ!
>>227 その議論は「あの日」本スレでやってくれ
ここは妄想を楽しむスレだ
その通り!
期末試験と実力試験が立て続けに終わり、夏休み前の校庭に それぞれの順位が100位以内まで貼り出されている。 「春日クン凄いじゃん!期末ごぼう抜きだね。」 「鮎川のお陰だよ。でも、実力は今までの総合力だからなあ… まだ載るまでには至ってないや。鮎川は相変わらず…?あれ?…え! 期末51番?何で?いつもシングルなのに。実力のほうは3番かあ… 凄いね…やっぱり、例のせい?」 「うん、サボタージュが過ぎたみたい。サボった科目は10点ずつ 引かれちゃってたよ。」 「何でサボるの?」 「…」(ぜーんぶ、あんたのせいよ!) まどかは恭介をちょっと睨む。 恭介はちょっと後ずさりして 「え?お、俺のせい?なんで?」 するとまどかは空を見上げて 「暑いなあ…、喉乾いたなあ…」 「はいはい、お陰様で初めて載りました。奢らせて頂きます。」 二人は笑いながら学食へと向かった。
中学3年の春までは勉強なんていい加減だった。 授業はサボるし、先生は無視するし、テストの答案を完璧に解いた上で 全部答案用紙の裏に書いたりと、子供じみた反抗をしたりしていた。 しかし、それも恭介が転校して来てから変わった。 世話のやける弟が出来たようなもんで、見本を示すように努力したが、 それまでのスタイルとは相容れないため、当然歪みが生じてしまう。 悪ぶって見せたかと思うと、姉のように教育的指導を行ってみたり、 まどか自身も修正が利かなくなって、周りからは「きまぐれ」と映る ことが多くなった。
高校3年生になっても、その影はいまだに少し残っている。 こと、「恭介」が関係する場合は「きまぐれ」の振れ幅が大きくなる。 素直になれない、つい意地を張ってしまう、そして何より… 「ひかる」との関係で混迷を極めてしまっていた。 しかし、この梅雨の間にまどかは自分なりの答案を用意した。 もう、迷うことはない。 実は二人だけで学食に行くのは初めてであった。 放課後であったからまだ目立たなかったが、これがお昼時だったら あっという間に噂になっただろう。 自販機で買ったコーヒーなのに、なんだか美味しい。会話も弾む。 まどかはまるで憑き物が落ちたかのようにすっきりしている。 窓際に座る二人に、樹々の間から傾きかけた陽射しが差し込み 特にまどかは恋するオーラで輝いている。 (ねえ、春日クン…「恭介」って呼んでいい?)
なんだか、まどか、恋しちゃってるな。 放課後の学食かあ…懐かしい。 この二人に似合ってるぜ。
そう言おうとして瞬間、我に帰った。 (だめだめ…ダメよ、そんなこと言ったら「こいつ」調子づくから。) まどかは顔を赤くして喉まで出かかった言葉を思いとどまった。 「どうしたの?」 「ううん…なんでもないよ…。」 (どうしたんだろ?あたし…まさか缶コーヒーで酔ってるとか?) まどかは視線を窓の外に向けた。 まどかにとっても、二人きりで学食など初めてである。 恭介とこうして「高校生している」自分が何だか嬉しい。 (もっと…もっと早くに、こうなってたらなあ…でも…でもさあ、 今が最高なんだからいいじゃん!) まどかは今の関係でいられることに納得していた。 (ひかる、ちょっと「同級生」を超えてるけど、許して。)
アバカブまではまだ時間がある。 二人は取り留めもない会話をしていたが、恭介はまどかに話したい ことがあった。ちょっと具合を見計らって切り出す。 「実はさあ、…」 高校最後の夏休み。大切にしたい。 恭介の父親が観光協会主催のグラビアの撮影でハワイに呼ばれる。 航空券やホテルの手配をしてもらうことになったが、主催者側は 気前よく何名でも可とのことであった。 「ねえ、高校最後だから行かない?」
えー!今度はハワイに行くのか?尽きないなあ、ネタ。 どんな展開になることやら。このまま「まつもと亭」で行ってくれ。
>気前よく何名でも可とのことであった。 いい時代だ
「あたしは関係ないし…悪いよ。でもさあ、あたし親がワイキキに コンド(ミニアム)持ってるから、自分で行こうかなあ?行っていい?」 「うん、一緒に行けるんだったら。」 「…もし余分があるんなら、それでひかるを誘ってあげてよ…」 「そ、そうだね、みんなで行った方が楽しいよね。」 「うん…有難う。」 まどかは、自分の恭介への想いがひかるに知られた以上、 ひかるの全く知らない場所で抜けがけをするのを控えたかった。 そして、今までがそうであったように、3人で過ごしたかった。 「え〜!いいんですかあ!ホントに?やったー!やったー!!」 ひかるは大喜びである。 「まどかさんも来るんでしょう?」 「うん。」 「やったー!やり〜!!楽しみだなあ。」 ひかるは大喜びで恭介に抱きついた。 結局、春日家にあかねとひかるが同行することになった。 まどかはあかねとひかるが泊まれるようにコンドを片付け、 買出しなど準備をするため先乗りした。
皆はそれぞれ手荷物を持ってホノルル空港へ降り立った。 隆は付き人を伴っている。機材は現地に送っていた。 暗い入国審査のフロアを出て来た皆の目には、眩しい光に照りつけ られた空港前の通りと建物の影がくっきりとコントラストをなし、 辺りに樹々の緑が鮮明に輝いて見える。そして 「アロハー!」 背が高いヤシの木の下にまどかが迎えに来ていた。
彼女は膝下までのジーンズにお洒落なサンダル、上は体にフィットした レモン色のポロが光沢を放ち輝いている。耳にも同色のイヤリング。 大きく開いた胸元には藍色と紅色の紐のネックレスが二重にちょうどいい 具合に巻かれている。腕には人数分用意していたフラワーレイの束。 あかねにもらったサングラスを取ってこっちを見ながら手を振っている。 「まどかちゃん!おっそろ〜い」 あかねがサングラスをして駆け寄る。 「あ、あゆか…。」 恭介は声を掛けようしたが、ひかるや妹達が駆け寄ってまどかを囲む。 「まどかさん、アロハー!」
そうだろそうだろ 何名でもという事になればみんな来ると思ってたよ 一族郎党来てもおかしくない勢いだ
一族郎党というと…… ちょっと待て、あのトラブルメーカーの一弥もくるんか? これは一波乱あるぞ!!
あかねがいるんだから一弥は当然だね 爺さん婆さんがもしいれば以外な展開があるかも いないだろうけど
ホノルル空港のシーンがリアルだな。ハワイはまどかと恭介とさゆりの 組合わせだったと思うが、家族総出でひかるやあかねもいるし。 相変わらずネタを膨らまそうとしているな。
おいおい、お前ら。勝手に騒ぐなよ。おれはドタバタラブコメは読みたくないぞ。 そもそも作者の意図を汲んでみろよ。始まりからして「あの日」にこだわってる だろ?どうせ着地点は「あの日」だろ?多分作者はそこまでの穴埋めを勝手に しているだけだろうよ。ハワイに行ったとしても内容はシリアスになるんじゃね?
別に違うだろ 漫画があって(A世界)パラレルでアニメがあって(B世界) あの日があって(C世界)この妄想があるんだろ(D世界) 多少あの日に近い世界かも知れないけど、あの日に不満があるから この妄想が発生してるんだろう
>>247 に同意見だな
作者がどう妄想しているかは作者にしか判らんが、
時間的なものを考えれば、予備校の夏季講習の始まる前に
ハワイ旅行はチョト無理ってもんじゃね?
確かに俺は作者の考えは解らん!が、しかし、まどかは自分の気持ちをひかるに それとなく伝えたし、ひかるはまどかの気持ちを知った上で対等に向き合おう としている流れだよな、ここまでは。俺が(勝手に)思うには、「あの日」で あまりにもひかるが理不尽な扱いを受けているから、実は「納得ずく」だった という落とし方をこの作者はしようとしているのではないかと思っている。 とにかくだな、この妄想の最初は「あの日」から始まってるよな? 「あの日」に不満なら、あんな書き出しはないと思うぞ。 予備校云々については解らん。 作者よ、勝手なことを言ってスマン!お前の思うがままに書いてくれ。
250 :
249 :2008/12/14(日) 23:56:59 ID:???
すまん、不満があるから「つなぎ」を描いているのだろうな。 と俺は解釈している。少なくとも否定はしていないのではないか?
いやいやいや 不満つっても全面不満から半分満足半分不満とかちょっとだけ不満とかいろいろあるわけで だからあの日に近いけどやっぱり違うという事なんだろう
>いやいやいや この表現好きだな。笑った。
これだけ煽ってんのに、なぜ顔を出さない?日曜日の深夜は続きが読めると 期待していたのだが。もう一度言う。お前さんの好きに描いてくれ。
いや 十分思い通りに書いてると思うよ いっそ「あの日」の枠組みからも抜け出してくれ♪
まどかは飛びついてきたみんなにそれぞれ色違いのレイを掛ける。 まどかの姿は、いつも一緒に居る見慣れた彼女ではなく、まるで現地の 魅力的な女性のように思えた。それくらい違和感なく溶け込んでいる。 時差のせいで疲れているはずなのだが、皆テンションが上がっている。 「春日クン、アロハー。」 そう言って小首を傾げ、恥ずかしそうに微笑みながら、恭介に 「とっておき」のレイを掛けた。 掛ける瞬間、跳ねた右脚が恋する女性を隠さない。 「あ、有難う。」 恭介にも伝わった。 まどかは待たせていたタクシーに何かを伝えると、運転手は空港から 出てきたスーツケースのうち、ひかるとあかねの分を一緒にタクシーに 運んでくれた。
春日家は協会が用意したアラモアナホテルへと移動することになっている。 恭介とまどかはお互いの連絡先をメモして交換した。 まどかは隆に挨拶をした。 「おじさま、アロハー」 「やあ、まどかちゃん。」 隆は仕事で自分が相手出来ないので、その分 まどかに案内を宜しく頼んだ。 春日家はホテルに着くとアーリーチェックインを済ませた。 妹達とは別室。すぐに部屋に入り、軽くシャワーを浴びて横になるや すぐに電話が鳴り、隆は仕事の打ち合わせに呼ばれた。
間もなく恭介にも電話がかかってきた。 「春日クン?疲れたでしょ?」 「ううん、興奮してるよ。海外は初めてだし。」 「こっちは今から食事に出るんだけど、よかったら合流しない?あっ、 な、なによ〜ひかる。」 ひかるが受話器を奪い 「先輩!待ってま〜す。」 「お前は来なくていいぞー」とあかねの声も聞こえる。 「ちょっと返してよ〜、もう」 ひかるから受話器を奪い返すと 「妹さんたちはどうかなあ?もし良かったら一緒に。案内するから。」 まどかは、THE BUSの乗り方や番号、降りる場所を教えた。
着いたその日に遊ぶのか?若いなあ・・・。普通へろへろだろ。
259 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2008/12/16(火) 23:12:49 ID:kxWi+oqt
疲れたからってそのまま寝ると時差ボケから解放されるのに時間がかかるんだよw
俺はダメだ。ワイハじゃないが、着いてもぼーっとして 頭が痛くなってくる。取り敢えず長旅の疲れを癒すために 仮眠取るようにしている。他のやつらみたいにすぐ色街へ 出動する元気はねえ。
作者すまん!ここは夢と純情の場であったな。 259!アゲたらちょっと恥ずかしいな、このスレ。
262 :
259 :2008/12/17(水) 08:07:08 ID:???
済まん いつの間にかsageが消えてた ……吊ってくるorz
いや、これはこれでヨロシ。
まなみとくるみは早速部屋からの眺めに盛り上がり、現地のテレビを 視ては興奮していた。恭介が誘うと、慌てて着換え出した。 恭介はズボンをゆったりしたショーツに着替え、アロハにサンダル と、現地では普通に見かける格好に着替えた。 ホテルからは英語が解るまなみがスムーズにバス停まで案内した。 初めて海外の交通機関に乗り、身丈の大きい現地の人に囲まれちょっと 萎縮していた3人であったが、強い陽射しに原色を放ちきらめいている 海やヤシの木々、白く輝く高層ホテルなど見慣れない景色が車窓に 飛び込んでくる度にそれらを興奮して眺めていた。 やがてバス停が近づくとまどか達が待っている姿が見えた。
バスから降りると、6人は顔を見合わせ盛り上がった。 眩しい陽射しにみんなの姿は照りつけられ、どの顔にも飛びっきりの 笑顔がはじけている。 「じゃあ、軽くランチする?」 「OK!」 6人はまどか行きつけのビーチが見えるレストランに入って行った。 ここは軽装でもよく、また女の子にはとっておきのスウィーツの バイキングもやっている。 6人は夕方までワイキキ周辺を楽しんだ。アイスクリームを食べたり ショップを見て回ったり、アクセサリーを選んだりして過ごした。
恭介以外は皆女の子だな 一種のハーレム状態♪
女性5人に連れまわされる感じで、恭介はいささか疲れていたが、 そんな『彼』の様子をちらちらと窺いながら、まどかが話しかけてくれる。 それとなく、恭介も興味がありそうな店に連れて行ったりしてくれる。 まどかはテンションが上がっている4人の相手をしながら、それとなく 恭介の手を引いたりしている。 「ほら、こっちよ。」 みんなにはそれと気付かれないように、自然に…。 ひかるはくるみ達とテンションが上がりまくっており、あっちの店、 こっちの店、あっちの棚、こっちの棚と大忙しである。 夕方になり、一旦ホテルに戻ると再度連絡を取り合って6人は 隆の案内で日本料理店で食事をすることになった。 隆はアシスタントと協会の職員達と打ち合わせも兼ね飲んでいる。 恭介は盛り上がる女性陣から離れ、マウンテンビューが見える窓際に 座り夜景を眺めていた。すると…
「すると…?」作者、寝るなよ。
みんな忘年会で忙しいのかな?
俺は途中で抜けた。 出来るだけ行かないようにしている。 酒飲んで騒ぐより 旨いもん食った方がいいと思う。
お 同志がいたなw 飲むのは構わんがグダグダと飲み続けるのが嫌だ
今抜けてご帰宅じゃ!…おや?作者はまだ戻らぬか?
窓に近づいて来るまどかの姿が映っている。 振り返るとまどかが心配そうにしていた。 「春日クン、大丈夫?今日は疲れたでしょう?」 「うん、ちょっとね。でも、皆楽しそうで、何か、俺も嬉しいよ。」 「そうだね。」 ちょっと窓の外を眺めて、まどかはいきなり 「春日クンが来る前に作ったんだ。いつ渡そうかなあって…」 そう言うと、コルクで栓がしてある透明のかわいい小瓶を差し出した。 中にはいろんな形をした小さなかけらが詰まっている。 ビンの首にはさっきまでまどかが首に巻いてた藍色の紐が括りつけられ、 ぶら下げられるようになっている。紐についている金の金具が輝いている。 「これね、ビーチから拾ってきたサンゴや貝殻のかけらを一粒ずつ 選んで願いを込めて入れていくんだ。『健康でいられますように』とか、 『学業がはかどりますように』とか…作るの大変だったんだよ。」 (さすがに…「他のお願い事」は言えないなあ…)
にっこり微笑んで 「…あげるよ。貰ってくれる?」 「え?…いいの?」 恭介はドキドキしている。(これって…。) 「ほら、おそろい。」 まどかも少し顔を赤くして、自分のをポケットから取り出した。 紅色の紐で括ってあるおそろいの小瓶。どちらも先ほどまで まどかが首にしていたネックレスを括りつけている。 「中の貝殻もおそろいよ。大切に持っててね。…無くしたら 一生口きかないから!」 そう言うとまどかは再び女性陣の中に加わって行った。
まるで、何事もなかったかのようにまどかはあかねとじゃれている。 ひかるもみんなも笑っている。 以降、まどかは恭介と目を合わそうとしなかった。 恭介は、たった今、まどかの本当の気持ちを、確信を持って受け止めた。 まさか、こんな場所で、こんな状況で、こんな具合に… ドキドキしてきた。やっぱり、自分が想っていたことを、鮎川も想ってくれて いたと知り、胸が熱くなってきた。 と同時に、やはりこのままではいられないことが分かり、何とも言えない 気分で夜景を眺めた。窓ガラスには笑っているひかるの姿が映っている。 「どうすりゃいいのかな…今更」
ホテルに戻り、初日からはしゃぎ過ぎたせいか、あかねとひかるはシャワー を済ますとそのまま倒れ込むようにベッドに入り眠ってしまった。 まどかはラナイ(ベランダ)に出て夜風を浴びていた。 遠くに車の行きかう音がする。波の音はあいにく聞こえない。 片手にグラスを持って、テーブルに置いた小瓶をぼんやりと眺めている。 (これって、告白したようなもんよねえ…抜けがけ? しないんじゃなかった?まどかさん。いつからこんなになっちゃったの?) そろそろ寝ようかと小瓶をポケットにしまい部屋に戻る。そして ひかるが寝ているベットに近づき、落ちていたシーツを掛けてやりながら (ひかる、あんたそんなんじゃ勝負にならないよ…。) やさしく微笑んで自分のベットに入った。
おお!いつの間にかこんなことに!告っちゃったか!まどか。ちがうか!
(春日クンがひかると…どこまでなら許せる?もうひかる、しょっちゅう 抱きついてるし…キス?…ダメよ…ホッぺは?…ホッぺまでかなあ… 口は?…だめ!絶対だめだって!…??) 甘い香りで目を覚ましたら、すぐ目の前まであかねが迫っていた。 「ダメ〜!」 まどかは慌ててベットから転げ落ちた。 「な、なにすんの!あかねさん…」 「だってえ〜、まどかちゃんすっごく可愛いんだもん!」 「いや…あたし、そんな趣味無いから、んもう!」 まどかは立ち上がって、ちょっとふくれている。
「んじゃ、あたし走ってくるね。」 あかねはどこに行っても朝のジョギングは欠かさないスポーツ少女である。 「あかねさん、朝ごはん何がいい?」 「あ、まどかちゃんが作るものなら何でもいいわ。結婚してくれない?」 そう言うとニッコリ微笑んで出ていった。 「もう、油断も隙もあったもんじゃ…あれ?ひかる?」 可愛い寝顔でベッドのむこうに落ちていた。ちょっとよだれをくってる。 「せっかくの美人も台無しじゃん。」 まどかはひかるにシーツをかけ朝食が出来るまで起こさないようにした。
あかねは恭介に変身して(邪魔さえ入らなきゃ)まどかを堕とす寸前まで 行った事もあるから、あかねがまどかの気持ちに気付き(ここからが無理だが) 恭介の代理でも いいやと割り切ればチャンスはある ただその後恭介をどう騙すかあるいは引き込むかも必要だが まあこの妄想にその展開はないだろうが
3人がちょっと遅い朝食を摂っている。 メニューはベーコンとサニーサイドエッグにほうれん草のバター炒め。 表面をサクッと焼いたトーストにコーヒーと何ら日本と変わらない。 でも朝から会話が弾んでいる。 「ねえ、今日はフラのレッスン受けに行かない?」 「うわ〜、まどかさん、それ、いい!行く行く。行きま〜す!」 「ふふ、ちょっと腰振っって、ロコ(地元の男性)の目をこのあかねさん に釘づけにしてやろうかな。そういや、恭介達はどうすんだろう…」
あかねが電話すると、向こうはホエールウォッチングに家族が誘われていて、 まあ、付き合いだからってOKしたらしい。まどかは、「たまには家族で 行動したら?」と伝え遠慮した。昨日のこともあって、恭介に会うのが ちょっと恥ずかしい。あかねは当然まどかにつく。 まなみとくるみはひかるだけでもって誘うのだが、まどかが女の魅力に磨きを 掛けるのを黙って見過ごす訳にはいかないので、頑張って断った。 (でも…本当は先輩と一緒にクジラさんを観たいなあ。) 10時からショッピングプラザで無料のレッスンをやっているとのことで 3人は早速向かった。当然、昼からはサーフィンの予定。 案内された先はフロアのオープンスペースで、観光客の視線が恥ずかしいが 講師は日本人の女性であった。もちろん3人とも初めてだし、他の日本人 観光客も来て賑わっている。3人はそれぞれ色と柄の異なるバウ(フラ用の スカート)とナッツのレイを借りて着替えた。上は予め着て来たタイトな ノースリーブのシャツで、3人とも決まっている。しかし、レッスンが 始まると、そこはもうひかるの独壇場であった。
作者は一時期音信不通だったが、どうやらハワイへ取材旅行に行ってたようだな 時期的に一番安いしw
な、なんと!妄想の背景は現地取材ですか?この不況の時代に…!安いと言っても 十数万はするでしょ!いいご身分だこと。
まあ そう言いなや 安いツアーなら5・6万円くらいだし、今円高だから…… それに五ヶ年計画とかで積み立ててるかも知れんしw
おいおいお前らw 作者の身の上を妄想してどうすんだw
ゆっくりしたやさしいメロディーに乗って、手の動き、足の運びと徐々に 複雑になっていくのだが、なんせひかるは演劇部だけあって、指先にまで 神経が行き届いており、その動きはしなやかである。途中からは目をつむり、 メロディーに合わせてゆったりと踊っている。 髪も春からカットしていないため今では肩より少し伸び、高校生になって 体つきも随分女らしくなった。踊る姿はさらに『らしさ』を引き立てる。 見物していた観光客の中からも「あの可愛い子、上手ねえ。」と声が聞こえる。 この姿を、月夜のワイキキビーチで見たら、男どもは放っておかないだろう。 余程リズムが肌に合うのか、ひかるはやさしい微笑みを浮かべ、目を薄く 閉じて恍惚の表情。
お?五カ年計画の妄想が始まったぞ。
あまりの呑み込みの速さに、講師はひかるを呼び出し前で踊る様に頼んだ。 自分は受講に来ているお客さんの所を回りながら指導するから、その間は 見本になって欲しいとのことである。 まどかとあかねは自分たちが悪戦苦闘しているのに、ひかる一人が完全に フラの世界に入り込んでいるのを見て驚いている。 まどかはどうしても見物客の視線が気になり、集中出来ずにぎこちない。 あかねは手と足がうまくそろわず、少し苛立って「やってらんない」と ぶつぶつ言いながら、これもぎこちない。
30分が経ち、あかねとまどかは随分慣れてはきたが、まだぎこちない。 硬さを取る目的で、講師が「あなたの『愛する人』を思い浮かべましょう。」 と言うと、やっとダンスに集中していたまどかの手足の動きが急に ぎこちなくなっていく。 (な、なんで、こんな時に…) ドキドキしてきた。自分でも顔が赤くなるのがわかる。 一方そんなまどかを正面で見ていたひかるは、少し優越感を覚えている。 (ふふっ。まどかさん、先輩の前じゃ素直になれないでしょう? あたしは何時だって自然でいられますよ。)
ひかるの踊る姿は美しく、会場の観光客の足が止まる。そして、その中に アイドル歌手早川みつるの姿もあった。 「おっ?あれ日本人じゃない?いいねえ!」 マネージャーを引き連れている。彼は地元観光協会主催の観光写真撮影に 日本側のトップモデルとして招かれていた。これには、恭介の父親も 参加している。ただ、隆の被写体は人物についてはまどかやひかる、たまに 子ども達程度であまり得意としておらず、よって今回は早川との接点はない。
この妄想のオフ会があっても、ハワイにゃ行けねー!
292は何を言ってるんだろう…アフォですか? それはさて置き早川ミツルじゃなかったかな?
早川は甘いマスクと声でちょっとエッチな曲を歌うのだが、それが若者から おばさま世代まで幅広く受けて、あっという間にスターに祭り上げられた。 21歳とやや遅咲きではあるが、ちょっとしたきっかけで一度ブレイクすれば 誰しも勘違いをするし、それは早川みつるにおいても同じである。 彼はマネージャーを通して事務所に圧力をかけ、忙しいスケジュールの 合間に一応仕事という形でハワイ行きをねじ込んだ。ハワイに来てからは 何とか穏便にとなだめすかすマネージャーをよそに、日本から来た 追っかけの女の子達を車に乗せドライブに出かけたり飲みに出掛けたり やりたい放題である。
その彼が通りすがりにフラダンスの練習風景を見て、あまりに「成りきって いる」ひかるの姿に目を奪われた。 「ねえ、ちょっと声掛けてきてよ。お昼御馳走したいって。」 しぶしぶマネージャーは伝えに行く。こんなことは慣れてはいるが、年上の 自分が、こんなヤツにアゴの先で使われていることが、仕事とは言え悔しい。
レッスンは終了して、ひかるは講師の女性に褒められている。まどかは 何となく消化不良であった。言い出しっぺなのに、上手く出来なかったのが 何とも釈然としない。しかし、ひかるが見事に輝きを放っていたことには 満足している。(誘って良かった。) 「良かったね、ひかる。」 一方のあかねは、へらへら笑いながら他の参加者と一緒にまだ練習している。 そこに、マネージャーが近づき、ひかるに伝える。 「あの〜すみません。あそこにいる者が、是非お昼をご一緒したいと申して いるのですが…」 通常はここで女性は振り返り、「早川みつる」を確認すると二つ返事でOK するのがお決まりのパターン。
振り返るひかる。しかし、 「あっ!早川『なんとか』だあ。」 と言ってちょっと見ると、まどかとあかねにその事を伝えた。 早川は『なんとか』呼ばわりされて、がっくり膝を折りながらも (普通、『みつる』は覚えてるだろう!) 一応ひかるを見ながら笑顔で手を振っている。 「どうします?タダですよ、お昼。」 「ひかる、行ってくればいいじゃん。あんたに気があるんだから。」 とまどかが笑いながら言うと 「あたしは先輩がいますから!まどかさんどうぞ。」 と睨み返す。 まどかは澄まして 「あたしはいい!趣味が違うし。あかねさんは?」 「パス!嫌いだし。」
あらあら ミツル君 散々だねぇw
作者、「みつる」にこだわる訳は?何かあるのか?俺はどちらでもいいけど もし訳やこだわりがあるのなら是非聞いてみたい。
全部丸聞こえであった。自信家の彼もへこんでしまう。しかし、通常は 気を取り直しさらに攻撃を仕掛けるのが彼の性格なのであるが、じっと 3人を見たまま黙っている。マネージャーも、最初は(ざま〜見ろ)と 思っていたのだが、いつもと様子が違う早川に「?」と少し引いている。 ヤツは最初、こっちを向いていたひかるにばかり気を取られていたのだが 振り返ったまどかやあかねを見て驚いていたのである。 (上玉が3人…何なんだよ!あそこのオーラは…) しかも邪険にされた。 (この俺様が…まあ、見てろ。このおとしまえは付けてやるから。) ふっふっ…と笑っている内に、あっという間に観光客に囲まれ身動きが 取れなくなり、元来の小心でやさしい性格ゆえかサインを拒めず もみくちゃにされている。人はいいヤツなのである。
3人は講師の女性「マリ」さんとフラの話で盛り上がっている。お昼は 4人でランチしようということになった。その後、サーフィンするなら いいインストラクターを紹介してくれるという話である。 彼女が運転するワンボックスに乗せてもらい、チャイナタウンへと移動。 彼女は3人を大変気に入り、今晩州主催のレセプションでフラショーを 行うので、是非来て欲しいと願う。話していく内に、それが恭介の父が 参加する観光協会のものであることが解り、春日一家も含めみんなで 観に行くだろうという話になって盛り上がった。
マリは自分は午後の部があるからと、再度ワイキキに3人を送る。 その前に素人用のサーフィン教室に連絡してくれた。 「大切な『お友達』だから、ちゃんと教えてあげてね!」と念を押す。 3人はビーチに案内され、紹介されると彼女は「またね!」と去って 行った。着替えを済ませた3人に、ビーチの視線が集中する。 まどかはサーフィンを何度かしたことがあり、予めサーフウエアを 持ってきていたが、ひかるとあかねの分を用意するのを忘れていた。 心やさしいロコのインストラクターも少し視線を奪われるが、ボードと こすれて起きるケガの予防と、何よりビーチの視線を遮る目的で2人に ウエアを着せた。 「OK、ハジメマショウ!」
まずはビーチでのレッスン。まどかは今まで我流だったが、あらためて 基本を習うと(そうなんだ…)と感心している。 30分ほどして、いよいよ海へ。 あかねは最初、全く波を捕えられず、 「あーもう!」「あら〜!」 と大声を出しブレイクやスルーを繰り返していたが、まどかがボードを つかむ手の位置をずらすよう教えた途端、落ちる回数が減った。 そこからはさすがにスポーツ少女を自認するだけあってあっという間に上達。 一方、ひかるは怖がって全くボードに立てない。頑張って立とうとするも、 波のうねりを感じた途端、腰が落ちて海に放り出される。 波にもまれ、息が出来ない溺れる恐怖が先に立ってしまう。 最初は平等に教えていたインストラクターも、みんなが次々に巣立って 行く中で一人落ちこぼれているひかるを放って置けなくなった。
ここぞとばかり助け船を出そうと日本から来たサーファー達が狙っている。 全くダメなひかるの姿が男心をくすぐる。それを感じてインストラクターが 守るように離れない。ボードを押してやったり、支えてやったり。 遠くでは、あかねとまどかが大はしゃぎである。 あかねが捕らえたウェーブに、まどかはわざと「先乗り」する。 ぶつかりそうになり、「きゃー!」っと叫び声をあげ波間に沈むあかね。 遠くからインストラクターが「ノー!!」と両手でバツ印を示す。 まどかはちょっとベロを出し、笑いながらあかねのウェーブを滑って行く。 そして、鼻をつまんでおどけたように海に落ちる。
「やったなー!まどかあ!」 あかねはボードに乗ってパドリングしながらまどかを追いかける。 「ゴメン、ゴメン、あかね!」まどかは笑いながら沖に逃げていく。 「こらー!」あかねがまどかに飛びかかる。二人は海中に没して、 でも顔を見合せ笑っている。透明な海に陽射しがキラキラと差し込む。 二人は一気に仲良しになった。同学年の女子とは話をしないまどかが あかねには心を許す。気さくで、自然とまどかの心に飛び込んで来る、 不思議と許せる、そんな彼女と友達になれそうな気がしていた。 ハワイでの解放感がまどかを「素直」にさせる。恭介に対しても あかねに対しても。 二人はサーフィンを堪能している。ターンしようとして思いっきり ブレイクしてしまったり、ハイタッチしようと近づいてはどちらから ともなく海中に飛び込む。
「まどかさ〜ん!」 遠くでひかるの声がした。探すと、なんと波に乗れている。 まだ、ボードの上で棒立ちだが、それでも落ちずに長いこと乗れている。 まどかとあかねはさすがにはしゃぎ過ぎてくたびれていた。 二人はそのまま波に乗ってひかるに近づく。 「やったね、ひかる!」 「もう!二人とも居なくなるんですもん!」 インストラクターが終了の合図を送る。あっという間の2時間であった。 時間は5時になり、3人は海から上がった。 「あ、そう言えば恭介達どうするんだろ?」 3人は着替えを済ますと、急いでまどかのコンドに戻った。すると、 恭介とまなみ、くるみが1階のロビーに来ていた。
女性達はあらかじめ日焼け止めをぬっていたから大丈夫だったが、 恭介一人だけが陽に焼けており、顔が真赤になっている。 「恭介、焼けたな〜!」 あかねが呆れてまじまじと眺める傍で、まどかはクスクス笑っている。 (ず〜っと海を覗き込んでたんだろうなあ…春日くんらしい。) 恭介達から事情を聞いて、昼に自分達が話していた通りになったことに 「やっぱり!やった〜!」 と、ひかるは大喜びで恭介の腕にしがみつく。 夕方6時過ぎにホテルの庭でセレモニーが始まる。 まどかとあかねは麻製のシックなワンピースで大人ぽく決めている。 あかねのそれは、裾がフレアで涼し気である。まどかはボディコンに近く 首から胸元にかけて紅色の少し太い紐のネックレスが見えている。 その先の見えない部分に親指くらいの小瓶がぶら下がっている。 ひかるやまなみくるみはサンドレス。ひかるは髪をカチューシャでまとめ、 首にはナッツレイをしている。
まどか「焼けたね〜」 作者「昨日は一日サーフィンしてたから…」 まどか「で、今日は何するの?」 作者「取り敢えず朝ごはん。もうここの飯は甘くて飽きたよ。何か作って。」 まどか「やだ。」 作者「そ、そんなあ…」 現在12月28日日曜朝7時40分。という訳で、ハワイより愛を込めて妄想連載中。 尚、この作品は「妄想」であり、登場する人物名称は実在する人物名称と全く 関係はございません。年内には終わりそうにもないデス…。
ホテルの庭は芝が広がり、プールとプライベートビーチにつながっている。 会場はステージの前から主賓、来賓席が続いており、春日家は前の方に 通された。少し斜め後ろにまどか達のテーブルが位置する。 そして、まどかから恭介を見る、その視線の先にゲストに呼ばれている 早川みつるの姿があった。 主賓の挨拶が始まり、乾杯の合図とともにテーブルのあちこちで歓談が 始まる。ステージではハワイアンの演奏が流れる。トーチショーが終わり 間が空くと、あらためてゲストの早川みつるが紹介され、客席がざわつく。
早川はステージに上がり、まるで自分のコンサートのようなしゃべりを するのだが、一部のおばさま、お姉さま以外は聞いていない。 そこで、早川はここぞとばかりに用意していたテープを流し、アフレコ で自分のヒット曲を歌い始めた。どうだと言わんばかりに、ちょっとした 振りも付けて、会場の女子達に熱い視線を送っている。 隆はスタッフや他のクルー達と撮影の話で盛り上がっている。 ひかるはショーが始まると早々と恭介の傍にやって来た。恭介からしっかり 離れず、それでもまなみやくるみと一緒におしゃべりに夢中。 クジラ、フラ、サーフィン…話題はつきない。 (あの子たちも可愛いけど…なんだ?あの野郎。全然いけてないのに。) ステージ上で歌いながら、視界がいいことを利用し品定めをしている。 ひかるが恭介にべたべたしている時点でひかるへの興味は失せていた。
やっぱりハワイに取材旅行かw 停電はどうだった?
なんという決めつけ
まどかは楽しそうにしているひかるを見て (まあ、いいかあ…) ちょっと諦め顔。でも、こちらもあかねと二人で盛り上がっている。 その姿をステージの上から眺めていた早川の視線は、まどかに釘付けに なっている。自分が目立ったことに気が済んだのか、ステージを降りたが 視線はまどかから外れない。 (隣もいいが、ありゃあ『ねんね』だ。あいつは違うな…「遊んでる」) 早川は、まどかに自分と同じ「匂い」を感じていた。 確かにまどかは中学の頃から酒やタバコを覚え、見た目が大人っぽい こともあり、未成年が入れないような場所に行き「遊び」はしていた。 しかし、早川の「遊び」とは違う。 所詮、夫婦仲の良い良家のお嬢さんであるが故、崩れるにも限度がある。 「純情」だけは捨てていない。
早川は勝手に解釈し、すでにモーションをかけている。 熱い視線を送っている。まどかはあかねと盛り上がりながらも、時々 ちらっと恭介に視線を送る。その視線のはるか先に位置する早川みつるは、 まどかが自分に反応していると勝手に思い込み、「GET YOU」と呟いて ウインクを送る。残念だが、まどかには全く届いていない。 ショーも中盤を過ぎ、フラショーが始まる。衣装を身に付けた女性たちが 魅惑のダンスを演じる。例の講師の女性も踊っている。そして、音楽が 優しいメロディーに代わると、女性たちがステージから降りて来て、会場 のお客さん達を一緒に踊りましょうと誘う。彼女は当然ひかるを誘う。 あかねは他の女性に引っ張り出されたが、まどかは遠慮した。
踊りは何も知らない観光客に合わせてやさしいものである。嫌がっていた あかねは乗り乗りで踊っている。昼に習ったものより易しいせいか、 余裕で踊っている。囃し立てるくるみまなみにウインクで応じながら 踊っている。しかし、ひかるは違う。もう、全身から「女」のオーラが 出ている。頭上には満月が浮かび、その姿は神秘的ですらある。 海の女神が舞い降りた。 自然とみんなの視線が集まる。早川も見入ってしまっている。 (春日せんぱい、あたしの気持ちが届いていますか?) その目は薄く閉じられているが、涙が滲んでいる。踊っている内に、完全に 「その世界」に入り込んでしまっていた。優しいけれど、どこか物悲しい曲。 そのメロディーがひかるに恋する女性を演じさせる。
>「現在12月28日日曜朝7時40分。」 >2008/12/29(月) 02:53:41 ID:??? と、合っていないのは何故?
まどか「来年こそは…決着をつけなきゃ…」 恭介「来年こそは…優柔不断を返上するぞ。」 ひかる「来年こそは、勝負の年にしますわよ!」 あかね「来年?なんにもね〜や…」 まなみ・くるみ「来年こそは彼氏をつくるぞ〜!」 一同「良いお年を!!」
双子は明らかに違う
恭介はぼーっと眺めている。ひかるのこんな魅力的な姿は初めてであり、 ほんの少しだけ心を奪われていた。 (ひかるちゃん…。) そんな恭介を見て、まどかはスッと席を立った。 (今夜は完敗よ、ひかる。) ひかるのフラの『振り』は「私は、あなたを、海より深く、想っています。」 という意味だった。
バックからペンとメモ用紙を出し、「ゴメン、疲れたから先に帰るね。まどか」 と書いて、あかねのグラスの底に敷く。インクが水滴で滲んだ。 まどかはホテルのラウンジへ出て来たところを追って来た早川に捕まった。 「もう、お帰りですか?」 「…」 「宜しければお送りさせてもらえないでしょうか?」 (はー…) まどかは深いため息をついて、じっと遠くの恭介をガラス越しに見ていた。 そして、左手で胸元に隠れている小瓶を服の上からキュッと握り 「今夜は荒れてんだ、あたし。」 そう言うと踵を返し、さっさとホテルを後にした。
321 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2009/01/03(土) 19:02:44 ID:HKrrLp7M
作者君、まだ居るのかしら?ハワイに。日付が日本のままとういうことは、 持って行ったのかな?マイパソコン。 まあ、無理しない程度に今年も宜しくお願いしますね、妄想。 追伸 「マリ」さんはハワイでは有名だから、使わない方がいいと思います。
あけおめ(^o^)/ 本年も一層妄想に励まれますことを祈りあげます
作者!どうした?お疲れか?本当にハワイに行ったのか? なんせ、妄想だからなあ。
「ちっ、俺の思い過ごしか…。」 早川はまどかが見やった視線の先を眺めて、恭介の姿に気づいた。 若い男性は恭介しかいない。 (さっきあの娘がベタベタしていたヤツ…何であんなヤツが…ん?) ひかるの出しているオーラがやけに恭介を照らしている。 (まさか、あいつ…あんな冴えないヤツに妬いてんのか?) 恋愛に慣れた早川ならではの直感である。そして、昼に垣間見た ひかるとまどかの会話から、おおよその察しがついた。 「なるほど、芽がない訳でもなさそうだな。」 相変わらず、自分勝手に考えている。すぐに、レモンスカッシュの濃い やつにクラッシュアイスが満たされたグラスと自分用に水割りを注文し 両手に持って恭介のところへと向かった。
おい、これ奢るからちょっとあっちに行かないか?」 「え?何?」 「いいから、ちょっと付き合えよ。お前の彼女についてだな…」 「先輩!一緒に踊りましょう!ねえ、くるみちゃん達も!」 「お、おい!今話して…」慌てて制す早川をよそに ひかるがやって来て、バタバタと3人を連れ出したため、テーブルに 早川一人が残されてしまった。ステージ上の恭介をちょっと睨み 「出直すか…」 レモンスカッシュをテーブルに置き、水割りを飲み干し席を立った。
恭介はひかるに愛想笑いをしながら、ステージの上から不思議そうに 早川の後姿を追っていた。 (「お前の彼女」って…鮎川のことかなあ…、なんであいつがかかわって 来るんだろう?鮎川の知り合い?) まどかの過去を詮索しない恭介であったが、さすがに相手が今を時めく 「早川みつる」なだけに、段々と鮎川のことが心配になってきた。 そして、今では「自分の知らない鮎川」のことも気になり出していた。 まどかが聞いたら、多分「へ〜、妬いてんだ」と言われるに決まっている。
ダンスショーも終わり、みんなは互いに拍手しながらステージを降りた。 恭介はひかるに引っ張られる様にテーブルに戻る。 また、先ほどのようにひかるは恭介にくっつき、妹達と楽しげに しゃべっている。あかねはテーブルのメモを見て「え〜!」と声を上げ 「まどかが帰っちゃったあ!もう、ヤケ酒だあ!」とこっちのテーブル に入ってきた。 「まどかさん、帰っちゃったんだあ…何でだろう?」呟くまなみに 「なんか、『疲れた』って。」と、自分の所為かのように言うあかね。 「あ、あははは…鮎川は初日から俺たちの「お守」してたから…。」 とフォローする。
「そうよねえ、疲れちゃうよねえ。まどかさん私達にすごく気を使って くれてたから…」とまなみが言う。 「よし!帰ったらまどかをマッサージしてあげよう!」と言うあかねに 「それがいけない!」とみんなが一斉に突っ込む。 ひかるは何となく、まどかが帰った理由を解っていた。 そして、恭介の横顔を見た瞬間「決心」した。 (まどかさん、今夜決めちゃいます!) 今夜のひかるは、恭介を「落とす」自信があった。 (先輩…覚悟はできてますか?)
作者、お帰り。 ところで、ひかるに変なマネさせないでくれ! 恭介!お前しっかりしろ!
キス確実の予感。ひかるはいい女になったなあ。
一方、恭介はぼんやりと自分とまどかの関係について考えていた。 昨夜、間接的ではあるけれど、心のこもったメッセージを受け取った。 (あの「鮎川まどか」から…) 自分だって今までずっと想っていた。 最初は彼女の「きまぐれ」にいいように翻弄された。でも、その中に 彼女の「好意」を感じ取り、それを自分のいいように膨らませた。 おっかなくって、みんなが腫れものに触る様に接してた、そんな彼女と 自分だけは特別な関係でいられた。 (取っつき難く、どこか気高い、そんな「鮎川まどか」が…) 自分には心を許してくれている、そう思うとたまらなく嬉しかった。
最初は、いろんなシチュエーションで接近するたび、熱い鼓動の高鳴りを 感じていた。彼女にその気がなくっても、二人で共有できる時間が嬉しくて そんな日は一日中気分が良かった。 そして、そんな時間の積み重ねが、いつの間にか恭介に「鮎川まどか」を 意識せずに振舞える余裕を与え、その頃にはすでに、二人の関係は 「思い過ごし」ではない「想い」のやり取りが出来るまでに成熟していた。 目が合ったら、話せたら、会えたら、会いたい…そして「逢いたい」 心の底からそんな思いにさせてくれる存在へと変わって行き、 やがて、どうしようもなく「好き」と意識するようになった。 まどかのことを想わない日はない。いつも意識してしまう。出来たら…と ずっとずっと想っていた。そして、やっと叶った。
昨日は「瞬間」分からず、割と冷静に対応出来たのに、時間が経つと共に 飛び上りたいくらい嬉しくなってきた。 そして、それと同時にすごく不安な気持ちが湧き上がってきた。 「俺、何喜んでるんだろ…。どうしよう…どうしよう…」 (鮎川、言ったのかな?ひかるちゃんに…) 彼女の「行為」が、余程の覚悟と決意があってのことであろうことは さすがの恭介でも解る。 (3人の関係はどうなるんだろう…、いや、どうすればいいんだろう…) あの日、「春日くんが決めて。決めた方が正解だよ。」って言われた。 そう、自分の気持ち次第であることは解っている。 まどかの気持はずっと伝わってきていたと思う。自分もそうだった。 今ここに「両想い」であることが解った以上、ひかるにあやふやな態度は いけないと、「やっと」思えるようになった。
ひかるのことは「好き」ではあるが、そこに恋愛感情はないし、 そういう態度で接した覚えはない。なのに、自分がはっきり させなかったから、3人の関係がこんなことになってしまった。 (自分の所為だ。) 今ではひかるもはっきり意思表示しており、中学生の頃とはまるで違う。 はっきりと「想い」を伝えてきている。もう「ノリ」ではない。 「関係」がないだけで、まわりは皆、恭介とひかるが「付き合っている」 と思っているはず。 (でも、今すぐひかるちゃんに自分の本当の気持ちを伝えられる訳がない。) そのことで悩み昨日は眠られなかった。今日だって、クジラなんかどうでも よかった。まどかとひかるのことを考え、ただ海面を眺めていただけであり とても楽しめる状態ではなかった。
(でも、「いつか」自分の気持ちをはっきりと伝えないと…) 隆にサーブされたグラスを飲んでしまい、ちょっと酔いがまわってきた。 考えもまとまらない。 (妹達を連れて帰らなくっちゃ…ひかるちゃんはあかねに任せて…) 「ひかるちゃん、ごめん。ちょっと酔ったみたいだから先に帰るね。」 「え〜!そんなあ〜。」 「ごめんね。」 「…じゃあ、ちょっとだけビーチを散歩してからにしませんか?」 「あ、う、うん…。」 (これが俺のいけない所なんだよなあ…)
二人はその場を抜け、ビーチへ降りた。満月と降り注ぐ星空がロマンチック。 波の音も雰囲気を演出する。歩きながらひかるは恭介を見上げ 「せんぱい、あたし、高校生になって変わりましたか?」 恭介は月に照らされたひかるの横顔にドキッとしながら、冷静を装う。 「う、うん。なんか、大人っぽくなって、それに髪も伸ばしてるじゃない。 3年の男子の間でも評判いいよ。」 「別に…他の男の子は関係ないんです。…せんぱいだけが振り向いて くれたら…。」 そう言うと、恭介の指にそっと自分の指をからませてきた。 恭介は拒むこともできずそのままにした。 いつものように腕にしがみつかれた方が対応しやすい。 でも、これは…指を通して…ひかるの「想い」が伝わってくる。 (せんぱい、準備は出来ましたか?あたしは…今夜、捧げるつもりです。) 恭介はこの先予想される危うさにドキドキしていた。 (ど、どうしよう…)
331〜333はAB型でふたご座の彼女を持ったやつにしか分からない経験だよな。 しかも美人の!俺にはよ〜く分かるぞ。そして一方を切る切なさも。
338 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2009/01/13(火) 21:04:38 ID:0xXIxdes
まどかさん機嫌悪いぞ。余計な書き込みすな!!!
340 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2009/01/13(火) 23:51:03 ID:nAZHkME3
ああ まどかはそういうのを自慢するのを一番嫌うからな
342 :
337 :2009/01/14(水) 15:27:33 ID:???
素直に謝罪…スマソ
「よう、お二人さん。」 ひかるはぎょっとしている。 早川の登場に恭介は救われた。相変わらず場を読めないやつである。 もちろん、確信犯的に声を掛けた訳で、 「ちょっと借りるぜ。」 そう言って、恭介に肩を組んでひかるから離した。 「何すんだよ!」 ここからは、二人ともひそひそ声になる。 「まあ聞け!お前、どっちが本命なんだ?あの子が本命なら、長い髪の 『彼女』は貰うぜ?」 「…そ、そんなこと、お前に関係ないだろ!」 「いや、大ありだね。俺は『彼女』が気に入った。俺は二股掛けてる お前が許せないんだよ。まあ、あの子にしとけ。似合ってるぜ…いや お前にゃ勿体ないくらいだよ。」
お前が言うなと言ってやりたい。百回くらい言ってやりたい。 しかし、ヤツは笑いながらその場から去って行った。 「じゃあな!」(その程度の「純情」は見飽きたよ。) 「ひかるちゃん、帰ろう。あいつ、鮎川に言い寄ってるみたいだから…」 「いいんじゃないですか?まどかさんが決めることだから。」 ひかるは恭介の心を読んでいる。でも、何とかして振り向かせたい。 「まどかさんはしっかりしてるから、大丈夫ですよ。」 「う、うん、そうだね…。」 (逃げられない) 「今日の踊り見てくれましたか?随分イメージトレーニングしたんですよ。」 「凄かったよね、ひかるちゃん。分かった?会場がざわめいてたの。」 「あたしですね。お月様に願いを込めて踊ったんです。もっと女らしく なりたいって。そして、『誰かさん』と…一つに…いやだ、恥ずかしい…」
ひかるは月明かりでも判るくらい真っ赤になりうつむいてしまった。 その姿がたまらなく愛おしくなって、恭介は我慢出来ずひかるを 抱きしめようと腕を伸ばし、ひかるもそれに応じて身を委ねようとした まさにその瞬間 「おに〜ちゃ〜ん!ひかるちゃ〜ん!」 くるみの声が。 無邪気なくるみは、月夜に浮かぶ2人のシルエットに駆け寄る。 「あっ!」 「え?」 恭介は慌ててひかるから離れた。 (あ、危なかった…あぶなかったあ…) 「か、帰ろうか。」 「あ、は、はい…。」 (惜しかったな〜、くるみちゃんったらあ…もう!!) その頃、早川は来賓者名簿を見ていた。座席表と比べている。 「はは〜ん、『鮎川まどか』って言うんだ。そういや『まどかさん』って 言ってたよなあ、あの娘。ヤツは…春日…家族で来てんのか。春日…ああ 親父さんはフリーカメラマンの春日氏か。で、あいつが『春日恭介』。」
まどかが帰って間もなくひかるとあかねが帰ってきた。まどかは 気持ちを落ち着けるため、ワイキキのストリートをぶらぶらしていた。 「あら、お帰り。」 「ただいまあ!今日は楽しかったね〜。」 あかねとひかるはご機嫌である。 「まどかあ、ごめんねえ。気が利かなくって。」 あかねは自分だけステージに上がっていつまでも調子に乗って踊って いたからまどかに寂しい想いをさせたと思っていた。 「え?いや、そうじゃないんだ。もうすぐだからさ…ちょっと気分がね。」 「あ、これまた気が利かなくって。」 そうじゃないんだけど、それとなく嘘をついてしまう。やっぱり目を合わせ られない。そんな二人の会話を聞いていたひかるが 「いつの間に仲良しになったんですかあ?まどかさん珍しいですよね。」 「ひかるちゃん、今日からね、あたしたち名字で呼び合うことに したんだあ。ねえ?まどか。」 「そうねえ、何でだろ?違和感ないよねえ。」 まどかもちょっと考えている。今日はサーフィンやフラやレセプション など盛りだくさんだった。(でも、最後が…まあ、いいか。) みんなはシャワーを浴びた後、今日の話で盛り上がり夜更かししていった。 ひかるがとびきり機嫌がいいため、まどかは少し心配になっている。 (春日クン…まさか…)
恭介は妹達と部屋の前で別れ、自分の部屋に入った。隆は遅くなりそう。 疲れを思いっきりシャワーで流した後、部屋着に着替えラナイに出た。 「今日は危なかったなあ…。ほんと、ひかるちゃん、中学の頃と比べたら 全然女っぽくなって…こんな俺に…みんな羨ましがるよなあ。」 すこし「へらっ」と笑みを浮かべたが、すぐに深刻な顔つきになった。 (人が聞けば、羨ましい限りなんだろうけど、俺、…鮎川のことが 好きだから…出会った時からずっと…) そのままぼんやりとマウンテンビューを眺めてしまう。 (俺次第だよなあ、俺がこじらせたんだし。でも、今更…どうしたら…) 鮎川のことを正直に告白する勇気はないけど、これ以上こじらせないよう ひかるとの間に「距離」を作らなければと感じていた。 (今日みたいなスキを作っちゃまずいよなあ。) 「そういや…」 早川のことを思い出した。 (あいつ、鮎川のことを『貰うぜ』って言ってたけど…明日…鮎川に …聞いてみようか…) フラフラと部屋に入り、そのままベッドへ伏してしまった。
翌朝 (ん?)「いいにお〜い…」 あかねが起き出してきた。目をごしごしこすって思いっきり伸びをする。 片手で前髪をかき上げながら台所に近づくと、まどかが味見中であった。 「わぁお!お味噌汁じゃん!ねえ、味見させて。」 「お、は、よ、あかね。顔洗っといで。それからよ。」 つられる様に、ひかるも起きてきた。 「いいにお〜い!あれぇ?お味噌汁ですかあ?」 ひかるも驚いている。昨晩は地元の味付けが濃いものばかりだったから まどか自身もそうだし、あかねやひかるにも食べさせてあげたかった。 あかねは慌てて着替えて「走り」に出たが、15分位ですぐに戻ってきた。 まどかは髪を三つ編みに組んでいる。エプロン姿がお姉さんしている。 ひかるとあかねはカチューシャでまとめている。3人とも化粧要らずの スッピン美人である。 「いただきまーす。」 「わあー美味しい!まどかさん。うちのより美味しいかも!」 「ありがと、ひかる。」 「ご飯も美味しい。秋田こまち?こっちでも食べられるんだ。」 あかねも驚いている。 「まどかって、なんでこうも上手なの?センスかなあ?あたしも するにはするけど、ちょっと格が違うわ。」 「実はねえ、昨日からいりこのお出汁取ってたんだあ。お漬け物は こっちに乗り込んだ時に漬けておいたの。どうだ、参ったか?」 お箸をもって、ちょっと行儀悪く「えっへん!」とするまどかに2人が 「へへー!参りましたあ。」 朝から会話と笑い声が絶えない。
ルルルル…電話が鳴る。 まどかが出る。 「HELLOW ? THIS IS…」 「あ、鮎川?俺、春日…。」 「あ、春日クン…。」 昨日は二人になる瞬間がなかった。でも、まだ「あの夜」からの 「感じ」が続いている。二人にしか分からない「感じ」が。 「あ、あのさ、妹達がハナウマ湾に行きたいって言うんだけど、 そっちの予定は?」 「うん、別に決まってないけど…ちょっと待ってて。」 まどかは振り向いてひかるとあかねに訊いた。 「凄くきれいな海なんだけど、行く?」 「絶対行きま〜す!」そう言うや、ソファからバタバタと飛び出して まどかから受話器を奪った。 「せんぱい!昨日は有難うございました。」
まどかはドキッとした。 (「有難う」って、なに…?) ひかるはひかるで、昨夜手をつないでビーチを歩けたことだけで 嬉しかったのだが、それに対する感謝の言葉にちょっとひっかかる。 つまらないことだが、まどかを疑心暗鬼にする。 ひかるはあかねを見ると、しきりにOKサインを出している。 「OKで〜す!」 「じゃあ、一回そっちに寄るね。」 電話を切ったひかるにまどかが 「あたしはパス。」 びっくりして、二人が同時に突っ込む 「え?なんでえ!」 「昨日から体調悪いんだ。朝から体冷やすとダメみたい、あたし。 行き方教えたげるからみんなで行っといでよ。」 「ねえ、無理なの?」 あかねは引き下がらない。 「無理みたい。ね、行っておいで。あそこすごく綺麗だから。」 「別に泳がなくっても…」 「あそこは泳がないとあんまり意味がないから…ね、行っといで。」 二人は「例の日」かな?と勝手に解釈して引き下がった。
恭介達がタクシーでやって来た。事情を聞いて3人とも 「そんな〜!」 恭介はしきりにまどかを見るのだが、彼女は視線を合わせない。 (まさか…昨日のこと、ひかるちゃん言ったのかなあ?) こんな時のまどかの態度には(絶対怒ってる)と確信が持てる。 結局、まどかにバス停まで案内してもらい、入場方法や帰りの バス停などを記したメモを渡された。後は呑み込みの早いまなみに 任せれば大丈夫。恭介以外はウキウキ気分でバスに乗り込んだ。 出発するバスからまどかの姿を見て、恭介は降りたくなった。 手を振るみんなを笑顔で見送る。バスが見えなくなるとくるりと 背を向け空を見上げた。 「なにさ、あんなヤツ。ひかると行けばいいじゃない。」 ちょっとふくれて戻った。 「あ〜面白くない。」 まどかはちょっと考えて (もう一回マリーさんに教えてもらおう) 何となく自分も昨夜のひかるのように踊れたら…と思った。
「ワオ!どうしたの?まどか。一人?」 まどかは名前を覚えてくれていたことにちょっと感激した。 彼女はみんながハナウマ湾に行ったこと、自分はもうちょっと フラを学びたい…特に『振り』の意味も…ということを伝えた。 「OK!今から始めるところだから、一緒に踊りましょう。」 まどかは今日もツアーの観光客に混ざって一緒に踊ってみた。 マリーの踊りをつぶさに観察しながら…。 よく見ると、腕から指先までがしなやかに動くのだが、顔の 表情が動きの度に違っている。 (これはただの「ダンス」じゃない…「手話」みたいなもの?) あらためて、昨夜のひかるが「演じていた」ことが解った。 一つ一つの振りの意味が解らなくても「想い」が伝わる。 まどかは昨日マリーが「愛する人を思い浮かべましょう」と言った意味が 何となく解った。そして、今日は「型」ばかりに気を取られていた自分 から脱皮して、恋する女性を素直に表現出来るようになっていた。 「ヒュ〜、まどか、昨日と全然違うわ。すごくいい!」 マリーが傍に来てささやく。 昨夜ひかるが放っていたのと同じオーラが朝っぱらから出ている。 後はただメロディーに身を委ねているだけである。
午前の部が終わりまどかはランチに誘われた。マリーは室内での講習が担当 のため、気分転換も兼ねランチは出来るだけ外で食べるようにしている。 そこで、今日はお弁当を買ってアナモアナビーチパークで食事をすることに なった。着替えを済ませて出て来たマリーは昨日のように駐車場に案内する。 まどかは彼女の運転する車内でいろいろ話を聞いた。 それによると、マリーは観光でハワイにやってきてフラの魅力に取りつかれ、 留学の形にしてそのまま学ぶ内に講師に抜擢された。その後、知人を通して ご主人と知り合い恋に落ち、1年後に結婚した。 彼は地元の銀行に勤めていて、ハーレーを馬のように操るナイスガイ。 子供は男の子で、2人とも小学校に通っているとのことであった。 父親と子供達は暇さえあればサーフィン三昧らしい。 プロポーション抜群の彼女はローライズのジーンズからお腹を見せている。 とても30代の子持ちとは思えない若さと格好良さである。 (あたしもこの年齢でこういられたらなあ) あまり将来を考えないまどかにちょっと目標が出来た。
アラモアナからビーチへと曲がるとすぐ、緑の芝の向こうにきらめく海が 見える。一面緑の芝の上にはきれいな色の小鳥たちがたくさん群れている。 マリーはビーチの駐車場に車を停め、降りると思いっきり伸びをした。 「やっぱり、外は気持ちいいねえ〜。」 二人は来がけに買ったデリバリーとシートを持ってビーチへと歩いた。 ビーチ手前は所々芝が植えてあり、大きな木が葉をおい茂らせている。 「ここにしようか。」と木陰にシートを広げた。 目の前には太陽を反射して白く輝く砂浜と青い海が広がる。 二人は靴を脱いで座り「お弁当」を開けた。まどかのは甘辛く味付けされた ポークリブカットステーキにオニオンリングが付いたお弁当で、ご飯は玄米。 マリーは魚のフライ、唐揚げ、スパムにビーフステーキ、ポテサラとおかずが 盛りだくさんのハワイ版幕の内。ご飯は白米の大盛り。 「これ、それとトレードして。」 「んじゃ、いってらっしゃーい。」 二人はお箸で「ご指名」を取り合う。 「いらっしゃ〜い!」 中身を分け合いながら感想を述べて平らげていく。 「美味しい〜!」 「ねえ、ビールが欲しいでしょ?」 「ええ…でも、ここじゃアルコールは罰金なんでしょう?」 「そうなのよねえ、一体どこで見られてるか判んないから。 私払わされたことあるもん。結構酔っ払っちゃって…」 「え〜!ビーチで飲んだの?さすがマリーさん…ぷっ!」 二人は笑い合った。
「あ〜お腹いっぱい!それにしても、マリーさん凄くスタイルいいけど、 あんなに食べて太らないんですか?」 「有難う!それがね、ほら、凄く動くでしょ?フラって。だからお腹がすく のよねえ。だから食べちゃうんだけど、でも消費してる方が多いみたい。」 やはり女性の気になる会話はダイエットである。 「ところでさあ、ねえ、まどか。ギター弾ける?」 「ええ、少しは。」 「ウクレレ弾いたことある?」 「いいえ。」 マリーはニヤリとして「ちょっと待ってて。」そう言って車へ戻り、ウクレレを 2本持ってきた。そして、「ウクレレ教室」が始まった。
ギターは普通に弾けるがウクレレは初めて。弦の数からして違うのだが、 そこは音楽家の遺伝子を引き継ぐ彼女のこと、あっという間に要領を覚える。 覚えたところで今度は、流行りのハワイアンを教える。何度も繰り返すうちに まどかはあっという間にマリーを超えた。 「凄いねえ!音楽やってるの?」 「ええ、小さい頃から…。」 「じゃあ、今の曲をギターとウクレレの共演でやってみない?」 「え?ギターは?」 軽くウインクしてマリーは車へ走って、今度はギターを持ってきた。 「…」 まどかは少し引いている。(あの車一体何を積んでるの?) 「家族でBBQした後、みんなで演るんだ。だからいつも積んでるの。」
まどかはギターに持ち換え、手っ取り早くチューニングを済ますと、 たった今習った曲をすぐに弾き始めた。 あまりの器用さにマリーはちょっと声を失うが、「OK!」と言って途中から 合わせるようにウクレレを弾き出した。 そしてマリーは歌い始めた。その声は美しく透き通っている。 歌詞はよくある『乙女心』を唄ったものであるが、曲の中で繰り返される 「いつも知らん顔しているけれど…」 というフレーズをまどかは気に入った。 いつの間にか二人は時々アイコンタクトを取りながら歌っている。 マリーは女性らしい、澄んだ美しい声だが、まどかのそれはちょっと違う。 甘い声からハスキーな声、やさしい声から強くてパンチの利いた声など 見事に使い分ける。幼少時を海外で過ごした経験もあり、英語の歌詞も ネイティブに近い発音で歌うことが出来る。 人の前で歌うことなどしないまどかであるが、ついマリーに乗せられている。
358 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2009/02/03(火) 09:25:12 ID:zLikoDQI
うおー!まだハワイに居んのか!妄想するには居心地がいいのかい?
いくらなんでも帰ってるべ ハワイの想ひ出に浸ると同時に妄想にも浸ってるのさ 確かにハワイはボ〜ッと妄想に浸るには良い所だがなw
いい加減ハワイは飽きたんだがなあ・・・
「お?『鮎川まどか』じゃん!」 通りがかったのは、ショッピングセンターをぶらついたついでに取り巻きと 一緒にビーチにやって来た早川みつるであった。遠くからでもまどかと認識 できるくらい彼女のことが気に入っている。 ずかずかと近づいて行くが 「え?」 足が止まる。まどかの声に驚いた。 「すげえ…」 『プロ』の自分がつい聞き惚れてしまった。昨夜とは全く違うやさしい表情で 楽しげに歌うまどかの声に「天性」のものを感じている。 アイドル稼業はしているが、生まれも育ちも「お坊ちゃま」で、幼少時から ピアノやバイオリンに親しんできた。 目立ちたがり屋な性格からアイドル稼業をしているが、彼も「センス」の 持主である。それだけに、まどかの『凄さ』が解る。 「あいつ、声も顔も…一体いくつ持ってんだい?」
「よう!『鮎川まどか』。」 楽しげに歌っている二人にいきなり割り込む。相変わらず強引である。 「あ、あなた昨日ステージに出てた…え〜っと」 「早川みつるです。」 ニッコリ笑ってマリーに挨拶すると、そこにあったウクレレを取って、今まで 彼女たちが歌っていた曲を弾き出した。最近覚えた彼の18番でもあった。 「まどか、知りあいなの?」 「全然。」(何よ、こいつ!なんであたしの名前を知ってんの?) まどかはギターを弾く手を止めて少し睨んでいる。しかし、こんな状況に 慣れっこの早川は、まどかの気持ちを分かっていながら弾き続ける。 弾きながら、時々ウクレレの胴を小気味よく叩いて、パーカッションの 代わりをする。確かに「上手い。」 怪訝な顔つきで見ていたマリーが「よし。」と言って合わせて弾き出した。 彼女の歌声に早川は勝手にアレンジして自分の歌をラップ調にかぶせてくる。 まどかは呆れて眺めていたが、マリーの顔を立てて合わせるようにギターを 弾き出した。でも、歌うのは止めた。 3人の即興でやるセッションのあまりの乗りの良さと上手さに通りすがりの みんなが眺めている。
曲が終わるとマリーはいきなり立って 「さてっと、帰ろうか、まどか。」 「はい。」 まどかは早川を見ずにマリーにはニッコリとして、さっさと片付け始めた。 二人が無言でテキパキと片付けているため、声を掛ける機会を逸している。 もう少しセッションを続けたい。きっかけをつかみたい。 「お…、おい、『鮎川まどか』、ちょっと話が…」 「何よ?」 マリーは先に車に乗り込んで様子をミラー越しに見ている。 ミラーの角度をちょっと変えて、まどかの表情を観察する。 「お、俺のウクレレ大したもんだろ?」 「そうね、やるじゃん。で?」 「いや、だからな、もうちょっと…お前の声に惚れて…凄いよ、お前!」 「アリガト。で?」 「…そう邪険にするなよ。お前の彼なあ…」
早川は昨夜の恭介とひかるの危なかったシーンを持ち出そうかと思ったが 瞬時に「危険」を察知した。この話で切り崩すには、彼女は危険すぎる。 今の彼女からも十分殺気を感じる。何をされるか解ったもんじゃない。 (昨夜のことは「切り札」として残しておい方が良さそうだ…。) 「何よ?」 「いや…、お前、あんな冴えない奴が好みなのかあ?」 「誰のこと?」 「あの、春日恭介ってやつ。あんなのが…」 「そうよ。悪い?」 照れ隠しが入るだろう、その隙に付け込もうという常套手段があっさり 崩された。梅雨の前だったらまどかもためらっただろう。 しかし、こんな場面だからこそ、尚更はっきり言える。 「あんなやつ、止めた方がいいぞ。」 早川は延ばしにかかったが、まどかは無視して助手席に乗った。 「すみません、お待たせしました。」 「いいの?」 まどかはスッキリした顔でマリーに 「はい。」 そう言うと、早川をちらっと見上げ「フッ」と笑って言った。 「『あんなヤツ』だからいいんじゃない。」
そのまま車はワイキキの中心へと去って行った。 残された早川にさすがの取り巻きも声を掛けられない。 彼にしては見事な「振られっぷり」であった。 早川は呆然として、さっきまでまどかが楽しそうに歌っていた 歌詞を口に出して反芻した。 「知らん顔しているけれど、ホントは気になる…」 (『あんなやつ』に?あいつが?信じられねえ…!) 「お前と釣り合うのは俺だろ?」 早川みつるは静かに燃え出し、不死鳥のごとくよみがえった。 一方まどかは車の中からワイキキの街並みを眺めながら考えていた。 (何であたしの名前を、何で春日クンのことを知ってるのよ? あたしが知らないとこでキミは何やってるの?) 今までなら、何かあれば(なにさ、あんなヤツ)と突き放していたのに 今ではどうにも気なってしまう自分にちょっと戸惑っている。 (あたしって、こんな人だったっけ?) まどかの困った表情を見て、マリーはそれとなく気遣う。 「大丈夫?」 「はい…」
「まどかは好きな人いるの?」 「え?…ま、まあ…」(いい加減なやつだけど) いきなり聞かれて素直に白状してしまう。少し赤くなってる。 「へ〜、どんな人なんだろ?」 「大したヤツじゃ…」 マリーは遮る様に続けた。 「私ね、まどかと会って2日しか経ってないけど、あなたがすごく 素敵な女性って解るよ。そして、まどかが好きな人って、きっと…」 「きっと?」 「きっと…飾らない人なんだろうなあって思う。」 まどかは恭介の顔を思い出してクスッと笑った。 (うん、当たってる。) そしてまどかのコンドの前に来て 「じゃ、ここで。」 「今日は有難うございました。楽しかったあ。今度はいつになるか 判らないけど、もし…もし良かったらまたお邪魔してもいいですか?」 「うん、待ってるよ。約束ね!またね。See ya!」 マリーの乗る車を見送り、ビルの影に入ると考え込むように呟いた 「…今頃あいつ何やってるんだろう?」
その頃恭介達はビーチを堪能し、帰り支度をしていた。 「いやあ〜綺麗だった。毎年も来たいね。」 笑みを浮かべてまなみが 「お兄ちゃんここだとそんなに怖くないでしょう?遠浅だし、シュノーケル があるから息つぎ出来なくても大丈夫よね。」 と優しく言うのに、くるみは突き放すように 「お兄ちゃん、今年も泳げないんだあ。」 と呆れ顔。たたみかけるようにあかねはぐいっと顔を近づけて 「恭介、お前逃げるなよ。恥ずかしいつーか、みっともないつーか。せっかく このあかねさんが教えてやろうとしてんのにさあ。」 「お前だから、尚更怖いんだろ!本気で海が嫌いになったらどーする。」 「先輩は泳ぎ上手でしたよ。うん、もう少し。来年も練習しましょうね!」 「う、うん…」 完全に女性陣に後れを取っている。 「お腹減ったねえ。」 誰ともなしに言う。ビーチにあるスナックショップの食べ物は、いくら 若くても勢いでは食べられそうにない「独特」のものばかりで、みんなは 食事を摂るのを先延ばしにしていた。 バス停で待つこと数分でBUSがやってきた。
BUSに乗った途端、クーラーがみんなの火照った体を冷ましてくれる。 車内ではみんなが湾で遭遇した魚やサンゴのことで盛り上がる。 ひかるは笑いながらもそれとなく恭介の指に自分の指を絡ませている。 恭介はどうしようもない困惑を感じながらも抵抗出来ないでいた。 そんな二人を薄眼で睨むように見ていたあかねが我慢出来ずに 「ひかるちゃん、こんなヤツのどこがいいのよ?」 「あははは、あかねさん、先輩は『こんなヤツ』じゃないですよお。 とってもやさしいし、スポーツも勉強も大体こなせるし…でも、時々 なんだか放っておけなくって…いやだ!あたし。」 慌てて恭介の指から手を離した。 「……」 みんなはしらけた目で恭介を見ている。恭介はタジタジになる。 「ひかるちゃんが目を覚ますまであたしが恭介のこと見張っててやる。 お前、ひかるちゃんに変なことしたら承知しないからな。」 (是非そうしてくれ!このままじゃ、お、俺…) 「いやだあ〜、別に見張らなくってもいいですよ〜。なるようになりますって」 一同『ガクッ』とコケた。
一生懸命なんだけど、見てて放っておけないタイプてのがキーワード。 五代君と同じパターンか。響子さんのライバルは八神とこずえだった。 さらに五代にも三鷹という強力なライバルがいた。 関係が複雑でストーリー展開に膨らみを持たせることができたと思う。 きまオレはただの三角関係だったが、その分「能力」で味付けをしていた。 この妄想にはそれがないから、ストーリーに何の広がりもなく、 ただウダウダと主人公の心象風景だけで続けるしかないのだろう。 それだけでよく続けられるな。感心するよ、嫌味じゃなく。
ふむふむ…。最初から駒が限られ、成金もなしという状況で よく頑張っていると言いたいのだな、君は。 しかし、君は「妄想」というものの本質を分かっているのかい? 「妄想」ってやつは「知恵」が関与する項目に「器質と経験」から来る 「偏り」が見られ、ただ同じところに拘ってそこをぐるぐると循環する だけのものだろ? だから、はなっから「展開」などあり得ない、君が言うところの 「ウダウダ」したものなのだよ。 作者は「お話」を書いているのではなかろう。あくまで「妄想」なのさ。
371 :
370 :2009/02/09(月) 19:36:27 ID:???
あ、それと、俺も好きだが ここで「めぞん」を持ち出さないでくれ。
できたらもっと簡潔にな 妄想と区別がつかんワイw
窓から見える緑や民家が太陽に照らされ輝いている。遠くに青い海が見え隠れ する。ダイアモンドヘッドを回ってワイキキに入ると、あっという間に まどかのコンドの近くに着いた。ガヤガヤとエレベーターから廊下を歩き 玄関に到着。時間はお昼をとうに過ぎ3時になろうとしていた。 「お帰り〜。どうだった?」 みんなはまどかの顔を見た途端、一斉に「お願い」を始めた。 「何か食べさせて。」「お腹減ったあ」「まどかさん、もう死にそう。」etc まどかは後ずさりしながら手のひらでみんなを押し留めるように 「あ、はいはい。」 そう言うや、台所に慌てて駆け込む。髪をバンダナで後ろに括りエプロンを 掛けて戦闘準備OK。 「誰か手伝ってえ。」 まなみがすぐに応える。 「まどかさん、私がお手伝いしま〜す。」 「え〜っと、手っ取り早く作れるものって言ったらお素麺かな?うん、よし。」 まどかは大きなお鍋にお湯を張ってコンロに掛けた。 「まなみちゃん、そこの棚の中にお素麺が入ってるから、沸騰したら全部 入れてくれる?」 「はい!」 まなみはまどかの手伝いが出来ることが嬉しそう。
まなみは、だらしのない兄や聞き分けのない双子の妹と一緒に過ごす内に、 春日家では母親のような存在になっていた。 賢い妹が兄妹や父親の面倒を見るという、父子家庭ではよくあるパターン。 春日家においてはまなみがそう。(もう一方はただの天真爛漫。) いつも何かに気を使って、気が休まる時がない。 もちろん、世話を焼くのは嫌いではないが、時には誰かに甘えたい。 でも、相談できる相手がいなかった。 中学一年の時、校庭で庭掃除の際指を怪我した。そこに居合わせたまどかが 「大丈夫?見せてごらん。」 と言うや、まなみの指に顔を近づけ自らの口で傷口から汚れた血を吸い、 さらには自分のハンカチを包帯代わりに巻いて手当てしてくれた。
「帰ったらちゃんと消毒しといた方がいいよ。」 そう言って立ち去るまどかを呼び止めるように 「あ、有難うございます。」 まなみは真赤になった。まどかは(可愛いね)と少し微笑んで 「いいえ。」 そう言うとその場を去った。 ハンカチは洗って返すべきだったが、血のシミが取れない。代わりに デパートで迷いに迷って選んだハンカチを手渡した。 「あら、気を使わなくてもいいのに。」 まどかはちょっと驚いたが遠慮せず受け取ってくれた。そして、 まどかのハンカチはまなみの宝物として引き出しの奥にしまわれた。 この一件は誰にも話していないまなみだけの秘密であった。 この一点だけで、まどかを一人占め出来る。 第一印象は「怖かった。」悪い噂ばかり聞こえてくる。 でも、兄を通して見るまどかは優しいお姉さんのような存在。 実際に話すと何とも心が休まる。話しかけられるだけで何だか嬉しくなる。 まどかのことを知るほどに憧れへと変わって行った。
「まなみちゃん、錦糸卵頼んでいい?あたし、お出汁作るから。」 「はい。」 そう言うと、まなみは目の前に有った卵をボールに割り出した。 「ちょっとゴメンね」 まどかは後ろから手を回し、まなみにエプロンを着せてやる。 「はい。」 とエプロンの紐を首に掛けてやり、次に腰ひもを後ろで結んであげる。 まどかの甘い香りや体温を感じる。 まなみは前を向いたまま体を緊張させ、顔を赤くしドキドキしていた。 「あ、有難うございます。」 「いいえ。」 (あかねちゃんがああ言うのも解るわあ。まどかさんの胸に飛び込みたい。) まなみは心底感激している。そんなまなみに優しく微笑むまどか。 冷蔵庫に朝のお味噌汁用に作って余っていたお出汁があった。そこに あらためて干し椎茸をゆっくり煮出して作った出汁を合わせる。色目に醤油と 少しみりんを加え、疲れた体に甘味を足してやる。 (ホントは椎茸は一晩かけてじっくり出したいとこなんだけどなあ〜) 何も言わずにさっさと手が動く。あまりの手際の良さにまなみは驚いている。 「まどかさん、このお出汁、凄く美味しい!一体どうやって作ったんですか?」 「それねえ…今度良かったらアバカブにおいでよ、教えてあげるから。」 二人の会話が弾んでいるところに、良い匂いにつられてくるみとひかるが やって来た。 「あたし達も手伝いま〜す。」 キッチンが騒がしくなった。まどかはひかるやくるみに出来そうな役を与え ワイワイ楽しげにやっている。 一方、リビングではあかねが小声で恭介を尋問していた。 「おい、恭介!どっちが好きなんだ?」
おれ:この妄想は…云々 あんた:およそ妄想というものは…云々 この妄想にちょっと材料が加われば広がりが持てると思うのだが、 あんたはそのちょっとが無いのが妄想だと言ってんだよな。 ところで、あんたの主張は正しいのか?前提としておかしくないか? この作者は妄想と書いているが、おれはそれに乗っかって楽しんでいる だけで、そもそも妄想じゃなくって空想だと思っている。 妄想なら、あんたが言うように修正できない病的偏りが生じるのだろうが 空想であれば、外部からのヒントにより知恵がつくのは可能じゃないか? 話の展開も広がろうというものだ。
378 :
377 :2009/02/10(火) 11:14:46 ID:???
おれは別にここでめぞんを熱く語る気はないよ。 比較するために出しただけだ。
それなら「この空想は・・・」と書いたらどうかな?そもそも、日常的に使われる「妄想」は 「空想」の少し偏執的な意味合いで用いられるのではないのかな? ある枠内でこだわりをすてきれぬ作者が自嘲的に「妄想」と言っているのであろうが(真意は?) そのこだわりゆえ展開に乏しいことを、最初から暗に認めて「妄想」と言っているのじゃろうな。 故に、敢えて「ストーリーに広がりが無い」等念を押さなくてもいいのじゃよ。 ちみのような人を世間では「目障り」と言うのじゃ。 「めぞん」については了解した。好きにすればいい。
だから〜 もそっと簡潔にやってくれってば
「…!」 ズバリ言われて恭介は驚いた。 「な、何を言い出す!」 「お前なあ、このあかねさんを騙せるとでも?」 「うっ…。」 見抜かれている。弁解も言い訳も出来ない。 「黙っててくれ。」 「じゃあ、あたしの『まどか』に手を出すな。」 「お前なあ…」(は〜…アホか、こいつ) 「恭介…これでもあたしなりに心配してんだぞ。」 「あ、有難う。」 「ば〜か、お前じゃないよ、ひかるちゃんの方だよ。このままじゃ…」 「お待たせ〜!」 みんながそれぞれお汁の入った器や、錦糸卵やシソの葉、ゴマなど日本で 食べるのと何ら変わらない薬味をお盆に載せてバタバタと入って来た。 恭介とあかねは慌てて話を止めた。
まどかはお素麺を盛り付けたガラスの大皿を抱えて後から入って来た。 みんなはお箸をもってスタンバイしている。そこに顔を遠ざけるように 器をそ〜っと置くまどか。一斉に争奪戦が始まった。 まどかはお昼はマリーと一緒に済ませているから食べるつもりはなかったが、 みんなの勢いに押されるように食欲が湧いてきた。 「ハ、…ハワイに…ん、んぐ…シ…ソの葉って…あるの?」 「春日クン、落ち着いて食べなよ。シソの葉は普通に売ってるけど。」 「でも、お出汁が利いてるねえ。美味しい!さすが『あたしの』まどかだわ!」 「『あたし』は余計よ、んもう!そういやあかね、最後まで手伝わなかったわね。 春日クンと何コソコソ話してたのよ?」 あかねと恭介は同時に口の中の素麺を吹き出しそうになった。 「あ〜!先輩。あたしというものがありながら!」 「俺達イトコ同士だって!」 「その前に、お前とじゃ有り得ないって!」 「あかねちゃん面食いだもんね。」 ボソッとくるみが言うのに、ひかるとまどかが同時に反応した。 まどかは一瞬ぴくっとなったがスルーした。しかし、ひかるは応戦した。 「あら、くるみちゃん言ってくれるじゃない。お兄様は格好いいですよ〜だ。」 「お兄様〜?」 一瞬皆が考え、一同吹き出した。 「柄じゃね〜!!」 あかねが一番受けている。まどかも笑っている。ひかるも可笑しくなってきた。 「お兄ちゃん、『様』呼ばわりされたの初めてだよね。」 まなみにも受けている。
「ねえ、みんな何で食べてこなかったの?」 「あれじゃ〜…、ねえ?」 一同うなずく。まどかもちょっと思い浮かべて 「そおねえ。日本人にはちょっと合わないかな。」 「でしょ〜?」 「これだけじゃあ足りないでしょう?チキンバスケットか何か買ってこようか?」 「あ、お、俺も行くよ。」 すかさず恭介が名乗りを上げる。出来たらまどかと一緒にという魂胆から。 しかし、次に名乗りを上げたのはあかねと妹達だった。 「恭介、行こうぜ〜」「お兄ちゃん、早く行こう!」 あっという間にみんなに連れ出されてしまった。一生縣命まどかに懇願の眼差しを 送るのだが、まどかは「ヨロシク〜」っと笑ってちょっと手を振るだけ。
言ってくれるな。目障りはお互い様だろう。要は、おれは広げる余地が あると思っているが、作者の世界ではそれはないのだろうと私見を述べたに 過ぎない。あんたが高飛車な態度で食いついてきただけじゃないのか? 要求した訳でもなく私見を述べることと余計な御世話は別だろ? 取り敢えず、今回の件はこれにて終了したい。 あんたの気に触ったのならスルーしてくれ。お互い邪魔みたいだし。
それは良いことだ 二人で仲良くROMっててくれ
「ふ〜」っとため息をついて「よし、片付けようか。」そう言って立ち上がる。 「あたしもお手伝いしま〜す。」とひかるも立ち上がった。 バタバタと食器を重ねシンクに運ぶ。 「あ、これ冷蔵庫ね。ラップしといて」 「はい!」 二人は息の合った姉妹のようにてきぱきと片付けていく。まどかはエプロンを して、食器を洗い始めた。ひかるはテーブルをナプキンで拭き終わるとまどかの 傍にきた。台拭きを洗いながら、なんかご機嫌よろしく鼻歌なんか歌っている。 「ひかる、ハナウマビーチ楽しかった?」 「はい、あんな浅いのに、色んなお魚がたくさん見られて感激しました〜。」 「良かったじゃない。…で、みんなはどうしてた?」 遠まわしに恭介のことを訊いてみた。 「先輩、あかねさんが近づくと逃げるから、尚更あかねさんが追いかけるんですよ。 『教えてやるって言ってるだろー!』って。」 「あははは。あかねらしいね。」 「でも先輩、海が浅いのと、きれいでお魚が見えることに安心したんでしょうね、 不安が取れて、パニックにならなくなったのがよかったのかなあ?いつの間にか 泳げるようになってましたよ。」
「…。」 「ちょっと心配だったから傍についてたんですけど、先輩調子に乗ってどんどん 沖に行くから、時々手を引いて連れ戻さないといけなくって〜。」 ひかるは恭介のことを「世話のやける男の子」のような言い方をする。 まどかはちょっと面白くない。 (まあ、しょうがないか…) つむじを曲げて行かなかったのは自分である。 そのまま「ふ〜ん…」とやり過ごそうとしたが、ひかるの話は止まらない。 「先輩、あたしが手を引っ張ると凄く照れちゃって…カワイかったなあ。」 まどかの食器を洗う手が少し荒くなり、食器がぶつかる音が大きくなった。 しかし、ひかるは空気を読めずに嬉しそうにしゃべり続ける。 「それがですねえ〜、昨日の夜…先輩とビーチに出て…」 「え!?」 「先輩とファースト…」 まどかの手が止まった。 「ねえ!ひかる。そんなこと人に言うもんじゃないよ!」 我慢が出来ずにちょっと声を荒げてしまった。
「あ、ごめん。」 まどかはちょっと顔を赤くして余所を向く。ひかるもびっくりして、慌てて 「え?いや…違うんですよお。もうちょっとだったのに、あの『早川みつる』 に邪魔されてえ。」 取り敢えず未遂に終わった一部始終を話した。 まどかは食器を洗いながら時々「へー」と相槌を打ってはいるものの、顔は シンクを向いたままで、ひかると視線を合わせない。 気取られないよう一生懸命である。 そんな姿をひかるは少し引き気味に見ている。 (まどかさん勘違いして妬いてるのかなあ…? こんなに余裕のないまどかさんって初めて見た。 大体先輩はあたしが先なんだから…でも… そんなに好きなんですか?先輩のこと。 まどかさん『女の子』になってる…いけない、いけない!同情は禁物!) ひかるは頭を振って気持ちを新たにしようとした。 (まどかさんと言えどもダメなものはダメ!でも…先輩はどっちなんだろ?)
389 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2009/02/14(土) 17:42:32 ID:cD1YA3To
ひかるはいじらしいなあ・・・。
確かに、あの夜のひかるは無敵だった。 恭介ならずとも、男なら…。 (でも、だからと言って…あいつ…) まどかは冷静を装いながらも眉間に皺を寄せぼそっと呟く。 「なにさ!」 「え?なんですか?まどかさん。」 「あ、ううん、何でもないよ。」 一時二人とも手だけが動いていた。お互いに何となく気まずい。 「きょうす…みんなが帰ってくる前にコーヒー入れておこうか。」 「え?…あ、はい!」 まどかは敢えて名前を出すことで少し意地を張った。 その頃、恭介はABCマートでいろいろ物色していた。べったりくっついて 離れないあかねを無視している。妹達はお土産物コーナーに釘付け。
「ねえ、ねえってば!」 「…」 「なんで無視すんのよ!」 店にいる白人の女性達が恋人同士の痴話げんかと勘違いして笑っている。 可愛い彼女をあしらう彼、そんな図式がピッタリ。 「お前なあ、俺のことに介入するなよ。」 「だって、あんたがハッキリさせないからいけないんでしょ。一体…」 「あかねちゃん!これ素敵!」 くるみが砂と貝殻が入ったガラスの小瓶を取り上げてあかねに見せる。 恭介はハッとなった。思わずポケットに手が行く。そっと触ってしみじみと 考えた。(俺も何かしなくっちゃ…) 「恭介、お前何たそがれてんだ?」 「うっ!と、とにかくこのことは黙っててくれ。俺なりに考えてんだから。 お前が言うほど単純じゃないんだよ。」 「ほー、誰のせいだ?」 「分かったから…」
恭介は責め足りなさそうなあかねを制しながら、小腹を埋められそうな 食品を片っ端からカゴの中に入れて足早にレジに向かった。 「ただいま〜!」 クーラーが利いた部屋には暖かいコーヒーの香りが漂っている。 「いい匂い!」 くるみとまなみが入って来た。その後からあかねと荷物を持たされた恭介が 入ってくる。 「うわ〜、こんなに一杯どうするのよ。もうすぐ夕ご飯よ。」 あかねは腕時計を見て驚く。 「あ〜ホントだあ!もうすぐ5時じゃない!そうか、お昼が遅かったから。」 「ねえ、みんな、コーヒーでも飲んでさ…」 「え?なに?」 くるみとあかねは早速チップの袋を開けて食べている。それを見てまどかが 「…今食べるとお好み焼き入らないんだけどなあ。」 あかねとまなみを見て呆れたように小声で呟く。
忙しくて久しぶり来たけどまだハワイか。というかハワイがこの話全体のメインなのか もう恭介はっきり出来ないならスクリュードライバーでも飲んでイケナイ事しちゃえ (かぁっ) 正直二人が結ばれるのはサラッと爽やかに、がいいけど (「かぁっ」言いたかっただけ)
まあ そう言いなや 20年前に連載が終わった漫画をネタにここまで妄想を膨らませる作者じゃ 行ってきたばかりのハワイネタを繰り出すのは朝飯前ってこったw
395 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2009/02/27(金) 00:02:53 ID:EXn0vyv/
まどか「またアク禁?」 作者「はい…」 まどか(…ばーか。) 「えー!まどかさん、あそこですかあ?」 「うん。ひかる絶対気に入ると思うよ。」 ハワイの初日に日本のお好み焼きチェーンのハワイ支店があるのを指さして 「帰る前の日に案内するね。」と約束していた。東京で食べるのよりソースが 少し甘い。まどかは以前から(これはこれで「あり」だなあ)と思っていた。 そして、今日がみんなで過ごすハワイ最後の日。まどかは予備校の夏季講習 が始まるまで、もう少し滞在する予定だった。 明日にはパパやママがやって来る。 (どうせいいのは最初だけで、すぐにお小言が始まるんだろうなあ…) 皆はコーヒーを済ますとメインストリートへと繰り出した。 ワイキキの中心街、通りのショーウインドーにまだまだ高い日の陽射しが 反射して眩しい。ウインドーの向こうにはカラフルなTシャツやアロハが 並ぶ。通りを行きかう観光客はどの顔も笑顔。日本人の割合も高いが やはりほとんどは地元の人たちと白人が圧倒的。そんな雰囲気はやはり 「外国」だし、何よりここは世界的観光地なのである。 そんな通りをみんなはおしゃべりしながら楽しそうに歩く。 「そう言えば今日が最後なんですよねえ…」 まどかはあまり気にしていなかったが、ハワイが初めてのみんなにとっては 3泊5日は足りない。父親の仕事のお陰で来れた訳だから贅沢は言えない。 「くるみサーフィンしてな〜い!」 「私も〜!」 くるみとまなみが残念がる。 「俺は別に…」 「あんたは海怖いんでしょ。あたしクジラ見てな〜い!」 「あたしもクジラ見てな〜い!」 急にみんながそれぞれに自分がやってないことを口にし出した。
作者「あ!!下げ忘れた…」 まどか「なに素人みたいなことしてんの!んもう。」 確かに家庭が裕福なまどかと違い、こんな機会がないとめったに来られない。 まどかは残念そうに言うくるみとまなみの腰に手をまわして提案する。 「じゃあ、今夜はハワイの夜を満喫しよ!」 そう言うと、みんなは「やったー!」と歓声を上げた。 日が傾きかけるまで、通りをブラブラする。いろんな所に迷路のように ショッピング街が仕掛けられ、なかなか飽きない。そして夜の7時前に 目的のお好み焼き店に入った。やはり日本人が多い。 しっかりもののまなみは父に貰ったおこずかいを確認していた。 (足りるかしら?) みんなはそれぞれ好きな物を注文する。腹具合は後で行くスイーツの分を 考え7〜8割に止めよう。そして十分満足!ごちそうさまあ〜。 ひかるとあかねは食べたお好み焼きについてお互いコメントに夢中。 お勘定は普通にレジで清算しようと思っていた。 「Check please.」 まどかがそれとなく伝えるとウエーターが伝票を持ってきた。やはり 一番大人っぽく見えるまどかの前。まどかはサインをしてカードと一緒に 渡した。 「あ、まどかさん…」 まなみが気付いて慌てている。まどかはやさしくまなみを制して 「いいわよ、ここはあたしの奢り。みんなのラストナイトだから。」 「でも…」 「ほら、それよりお土産買ってないんじゃない?それに使ったら?…ね?」 恭介も気付いて自分が半分出すと言うがまどかは好きにさせて欲しいと願う。
「恭介、ここは素直に甘えよう。」 あかねが言うのに(お前なあ…)ちょっと睨む恭介。しかしあかねは 「日本に帰って出来るお礼ってもんがあるだろ?」 とウインクする。 ウエイターがカードを持ってきた。まどかはみんなを促すように席を立つ。 「ごちそうさま〜!美味しかったで〜す!」 ウエイターとカウンターで調理しているコックさんが笑顔で応える。 「アリガト〜!」 「あれ?日本人じゃないんだ。」 「うん、こっちは日系も多いから、日本人と思って気付かず話しかけると 通じなかったりするんだ。」 「へ〜、ところで鮎川、何でカードなんか持ってんの?俺たちってカード 持てないんじゃないの?まだ学生だし…。」 「実はね、姉貴のカードなんだ。」 「えー!いいの?そんなことして。」
実はまどかの姉が自分の名前をまどかに書かせたカードを作っていた。 一人暮らしするまどかには必要なカード。妹も実年齢より大人っぽく見えるし このくらいはいいだろうという姉の判断で自分名義のカードを持たせている。 もちろん、その口座には月々の生活費のほかに、アバカブのバイト料も入って はいる。(まあ、ほとんどはまどかの遊興費に充てられるのだが) みんなはカードで支払うまどかをちょっと大人っぽく思った。 「じゃあ、次はスイーツ!」 ひかるの掛け声で一同海の見えるレストランへ向かう。ひかるは初日に行った レストランを気にいって、もう一度行きたいと思っていた。 先頭はくるみとまなみ。そのすぐ後ろを恭介とひかるが話しながら歩く。 ちょと離れてまどかはあかねとおしゃべりしながら付いて行く。 あかねの相手をしながらも先を歩く恭介とひかるが気になる。 ひかるがはしゃぐ度にまどかは自重する。 (まあ、楽しそうだし…いいか。) しかし、ひかるが恭介の指に自分の指を絡ませようとしているのを見るや (ひかる…ちょっとやり過ぎだよ!)
持っていたレシートを小さく丸め、恭介の頭めがけて指で弾いた。 「ん?」 振り向く恭介にまどかは知らん顔している。 あかねはクスっと笑った。 恭介は自分の姿がまどかとあかねの話のタネにされていそうな気がして、 さも目的のお好み焼屋を見つけた素振りで 「あ!あそこ?」 と言いながら慌ててひかるから離れる。 そんな恭介を見て、まどかとかねは顔を見合わせこっそり吹き出した。
「あんなヤツのどこがいいんだろ…」 あかねが呟くのに、まどかも応えるように 「ホントね。」 やさしい眼差しで見つめている。そんな彼女の姿を見てあかねは (あたし、まどかに言ってんだけどなあ…) まなみ同様、あかねも早い時期から気付いてはいた。 ひかると恭介を見ていても、お似合いのカップルには見えるのだが 肝心な何かが伝わって来ない。 一方、恭介とまどかを見ていると、二人ともちぐはぐで、どぎまぎしてて 本当に意識し合っているのが良く解る。ただ、今まではまどかと親しい 間柄でもなかったから静観するにとどめていたのだが、こうして彼女と 親友関係になってしまえば、放っておく訳にもいかない気がする。 今までの経緯を知っているだけに、まどかが引くしかないようにも思う。 でも…、どう見ても『二人』は互いに想い合ってる。 (こんな状態いつまで続けるの?) 「まどかは平気なの?」 「ん?何が?」 見つめてくるまどかにドキッとした。 「あ、いや、…ゴメン。…あたしたちも手つなごうか?」 あかねはちょっと悪戯っぽく顔を寄せてきた。 「何言ってんの、んもう!」 ぷいっと他所を向くが二人とも笑っている。
もう日が暮れかかっている。水平線が夕陽の深紅に染まる。そこから頭上に かけて、徐々に青から黒へと深さを増す星空。宇宙へのつながりを感じる。 通りはショウウィンドーからの眩しい光に充ち溢れ、南国の夜が演出される。 カフェに到着すると、昼に来た時とは違い、何ともムード満点の雰囲気。 ガラス張りの大きな窓越しに、今にも消えそうな夕暮れが見える。 みんなは店に入るとメニューを読み出す。写真が無いので「モノ」が解らない のだが、それをあれこれと話し合うのが楽しい。結局まどかに尋ねる。 「それはね〜…そうねえ〜…」 まどかはみんなの質問に解り易いように答えるのだが、結局聞くだけ聞いて 「じゃあ、やめた。」「じゃあ、これは?」とみんな勝手なことを言う。 (何よ、んもう。) まどかは少し腹を立てるが、みんながわいわい楽しそうにしているのを見て (残念だなあ、今夜が最後かあ。) ちょっと淋しくなった。 (あたしも一緒に帰ろうかなあ…でも、パパには随分会ってないし…)
日も暮れ、ビーチに灯るたいまつの炎がまどかには淋しく思えた。 みんなはいろいろ迷った挙句いろんなものをオーダーし、分け合った。 会話も弾み、みんな楽しそう。ひかるも恭介に随分甘えている。 恭介もひかるに気を使って、したいようにさせていた。 (「ラストナイト」だからしょうがないか。) 「そうだ、お土産買ってない!」 「あ!ホントだあ。一弥置いてきたからなあ、持って帰んないと怒るよ。」 まどかはまたもやカードで会計を済ませた。 「ごちそうさまあ」 まどかに案内されてみんなは慌てて免税店のDFSギャラリアに行く。 そこにはちょうど隆が彼の助手とお土産を買いに来ていた。
原作やアニメではまどかがひかるや恭介以外の人物と話すことってあまり無かったけど この作品ではあかねとのやり取りがあって「これはこれで」いい感じ。
このあかねは何となく好きだなぁ〜
あかねいい味出してる。
「んもう!」
確かクリスマスの頃ハワイから好評連載中とか言ってたが、もう3月になったぞ。 いつになったらあの日が来るんだ?
きまオレのテーマは永遠の夏で、ハワイは常夏の島だからな〜 シンクロしちまって戻ってこられないとかw
「あ、まどかちゃん。この度は随分お世話になったみたいだね。子供達 からいろいろ聞いたんだけど…なんかお返ししないとね。」 「あ、いえ、別に…私も楽しかったし。」 「じゃあ、今度、君のポートレート撮ってあげよう。」 「おやじ!それは俺が…」
409は作者か?
そういや書き込む時間が違うな、いつもと。でも内容は合ってるけど。
時差ってことも考えられる 今度はどこの空の下で……
久しぶりに見る恭介の積極的な態度にまどかは瞬間固まる。 「!」 恭介はまどかを隆から引き離し、チョコレートの棚の裏に引っ張った。 ここはちょうどみんなから死角になっている。 「な、何よ?」 「あ、あのさ、俺こそお礼してないから…あ、あの時の。帰ったら鮎川の ポートレート撮らせてくれる?デザインしてプレゼントするから。」 「…本当?」 柄にもないことを言う恭介をまどかは驚きの眼差しで見つめた。 恭介は淡いオレンジ色のポロシャツの胸元を広げてネックレスを取り出す。 藍色の太い紐の先には店内の照明を反射して小瓶が輝いている。 今日が最後と思い身に着けていた。 「これ、大切にするよ。」 (身に着けてくれてたんだ…) まどかは嬉しくなった。 少し照れながらノースリーブの胸元からそっとおそろいを取り出す。 「ほら、あたしも」 紅色の紐の先に結えてある小瓶をゆらゆらさせてみせる。 二人はここにきてやっと見つめ合う時間を持てた。
眩いばかりの照明で、陳列されている商品がどれも輝いている。 隆はくるみ達に捉まりあれ買ってこれ買ってとねだられている。 「せんぱ〜い!どこですかあ?」 二人は慌ててネックレスをしまう。まどかはすぐに離れ視線をそらした。 あかねとひかるがやって来た。 「ねえ、これ可愛いでしょう?似合いますか?」 Tシャツを自分に合わせている。 「ひかるちゃん、お土産は?」 「あ、これ先輩にお土産です。あたしとお揃い。」 「じゃあ、あたしはまどかに…」 「じゃあ、くるみも日本のくるみちゃんにチョコレートを。」 「あ〜、くるみ。それはないよ!じゃあまなみはお兄ちゃんに。」 「え?俺にくれるの?」 「と見せかけて私に!」 「何だよ〜」 まどかはニコニコしながらみんなのやり取りを眺めている。突っ込まない。 だんだん収集がつかなくなってきた。
「じゃあ、鮎川、ひかるちゃんおやすみ。あかねも。」 「まどかさん、ひかるちゃん、あかねちゃんもおやすみなさーい。」 「『も』ってなによ!」 「まあまあ。」とひかるとまどかがなだめる。 恭介達は父親と一緒にタクシーでホテルへ帰った。 「あっという間だったなあ…。」 物足りなさそうにひかるが呟くのに、あかねもうなずきながら 「今度はバイトしてお金貯めて来よう。」 3人はちょっとぶらぶらしながら帰った。 コンドに着くなりすぐにシャワーを浴びて帰り仕度。 あかねもひかるもパジャマ姿で頭にタオルを巻いている。 まどかもパジャマ姿で髪をバスタオルでゴシゴシしながら二人を見ている。 女の子だから衣類が多い。二人は薄くなるようたたみながらスーツケースに 詰め込んでいく。現地で買った日焼け止めやポーチや靴など、明らかに 来た時より荷物が多くなっている。小物は隙間に埋めていく。 「やっぱり、買い過ぎたかなあ?」 考えながら詰めていくあかねとひかる。なかなかうまくいかない。
彼の脳が時差ってるような気もする。
まどかも「これ誰の?ほらあかね、忘れ物。」と言いながら二人を手伝う。 二人があれこれ詰めている間に洗濯したものにアイロンを掛けてくれる。 ひかるの買い物が多かった。パパにママにおじいちゃんにおばあちゃんに。 「ひかる、送ってあげようか?」 「いや、絶対持って帰ります!だってみんな楽しみにしてるし…」 (おそろいのTシャツなんか買うからだよ。) ひかるは片付けていた手を休め、残念そうにまどかの方を向いてこぼす。 「あ〜あ、まどかさんと一緒に帰りたかったなあ。」 そう、行きも一緒じゃなかった。 「ごめんね、ひかる。でも、親父とは一時会ってないからさあ…。」 「そうですねえ、お母さんはよく学校に来てたみたいだけど…。」 すかさずあかねが突っ込む。 「まあ、昔から散々親に心配掛けてたから。親孝行しないと!」 「え?」 まどかはきょとんとしてあかねを見た。 「なんたって『…のまどか』だから。うちの学校にも聞こえてたもんね〜。」 あかねは「はてな?」という風に天井を見上げ『…』をわざと伏せる。 まどかは二の句が継げない。 ちょっと間が空いて、急に3人は吹き出した。
確かにまどかの素行の悪さを心配して、母親がよく来校しては謝罪していた。 「知られてちゃあ、しょうがないか。久し振りに親孝行でもするかな…。」 リビングに飾ってある家族の写真を見て微笑むまどか。 (さすがにもう言われないだろうなあ、「こっちに来なさい。」って… 来年は恭介と一緒の大学に……ところであいつ、大丈夫かなあ…) 物思いに耽る彼女を2人は不思議そうに眺めている。 二人の視線に気付いて、悟られまいと慌てて提案。 「ちょっと休憩!カクテル作ろうか。」 「賛成ー!!」 まどかはクラッシュアイスをグラスに満たし、ジンとオレンジジュースを注ぎ 冷蔵庫にあったパインを切ってグラスに添えた。 黒胡椒の利いたハムとチーズをお皿に並べ、一緒に持ってきた。 「はい、お待ちどうさま。」 「わあ!美味しそう!」 まどかがおどけたように音頭を取る。 「無事のご帰還を願って、かんぱ〜い!」 ちょっと会話が弾む。 「でも、まどかってお金持ちだよねえ。」 「なんで?」 「だって、こんな所にこんなお部屋持ってんだもん。恭介達のホテルって ほとんどベッドに占領されてるんだって。」 確かにここはベッドルームが二部屋あり、それぞれにバスルームが付いて いる。そして、広いリビングとそれとは別にシステムキッチンの台所がある。 何より、まどかは自費で来ている。
「そうねえ、確かに恵まれてるなあ…あたしの力じゃないけどね。」 「んー、…やっぱりまどかと結婚するしかない!」 「あははは!何言ってるんですか、あかねさん。」 「ホント。さあ、明日は早いんでしょう?さっさとやって寝なくっちゃ。」 まどかはおしゃべりしている二人をせかした。 就寝前の歯磨きとお肌のお手入れも終了。 「おやすみなさ〜い。」「オヤスミ。」 まどかは目が冴えていたが、自分が寝ないと二人が夜更かしすると思い リビングの電気を消して自分のベッドルームに行った。 あかねとひかるのベッドルームの電気も間もなく消えた。 (さすがに疲れたんだろうなあ。) まどかは部屋の照明を落とし、ベッドに仰向けになり目をつむる。 なんかスッキリしない。横を向いてみる。やはり心のもやもやが取れない。 (あー、もう!) 目覚ましラジオにヘッドフォンをつないで地元のR&B 専門のFM局に ダイアルを合わせてみると、どこか懐かしい曲が流れている。 (これ…姉貴のCDだ…) 恋する女性の気持ちを歌った内容。歌詞を聴いているうちに自然と 口ずさんでしまう。つられて自分の感情も高まってくる。 (ねえ、春日クン…何しにハワイに来たの?全然一緒じゃなかったよ…)
ふっと窓の方を見る。街の喧騒が聞こえてきそう。 (そりゃあ、あたしも意地張っちゃったけど…) みんな明日は早い。1時間前には搭乗手続きを済ませたい。10時にはここを 出発するから今更誘い出す訳にもいかない。電話も出来ない。 (あたしだって…夜のビーチを歩きたかった。なのにあいつ、ひかると…) まどかに余裕がなくなる。確かにちょっと前までは「応援」していた。 でも、もう違う。それは昔のこと。譲れないし、譲らないと決めた。 「あーあ…やんなっちゃう!」 つい声が出た。慌てて向こうの気配を伺うが、起こしてはなさそう。 (眠られそうにないなあ…久しぶりに「あそこ」に行ってみようか。) まどかはスタンドを点け、ベッドから降りると着替え始めた。
421 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2009/03/15(日) 22:20:34 ID:PanqCni2
上は黒のノースリーブ、下には黒地にシルバーのアロハ柄がシックな ロングバウを合わせた。伸びをするとおへそがちょっと見える。 ベッドの脇に置いていた白い大きめのショルダーバッグにヘアブラシや アクセサリーなどの小物を入れると、靴を手に持ち音を立てない様に裸足の ままそっと玄関を開けて出て行った。 エレベーターに乗ると靴を履き、バッグからブラシを取り出すと大雑把に 髪をとかす。 エレベーターはすぐに1階ロビーに着いた。 まどかはフロアに備え付けてある大きな鏡を見ながらイヤリングをつけ、 3つのブレスレットを重ねて腕にする。 眉をきつめに描いて、薄く口紅をする。夜遊びの時はいつものこと。 この辺の手際の良さは、夜遊びに慣れた彼女ならでは。思うと行動が早い。 (明日じゃ、パパ達来るから出られないもんねえ。) 一方、恭介も眠られないでいた。
(おやじ、まだバーで飲んでんのかなあ?) 隆も妻を亡くして淋しく過ごしてきた。楽しみはというと、家族で過ごす バカンス以外に、友人たちと飲むことくらいである。 (それにしても、せっかくハワイに来たのに…せめてハワイの街を 二人で歩いてみたかったなあ。今頃もう寝てるよな…) 考えることは一緒である。 恭介は今日が最後だと思うと居ても立ってもいられなくなった。 着替えてホテルを出る。もう11時近い。でも、とにかくまどかの近くに 行きたかった。逢えないのは解っているけど…。 ホテルからワイキキの中心まで歩く。昼と違ってランドマークがはっきり 分からない。どうにかこうにかさっきまで居た通りに着いた。 通りはまだ人が多く明るい。恭介はあらためてハワイに居ること実感して いたが、そんな彼の視界に気まぐれな彼女の姿が飛び込む。 (え、ええ?まさか!) 向こうから歩いて来るまどかの姿を目撃した。 (嘘だろ…あれ鮎川の訳ないよね?)
いつもながら服に対する描写が細かいけど、ひょっとして作者って女性?
その姿はいきなり曲がり、ホテル併設の施設の中へと入って行った。 彼女が乗ったエレベーターの扉が閉まる。 恭介は駆け寄って、エレベーターが止まった階を確認すると急いで後を 追ったが、何も知らないまどかはそのままホテルのバーへと入って行った。 まどかはカウンターが空いているのを確認してウェイターに 「Excuse me , is that seat available?」 まどかの容姿と慣れた雰囲気に彼も疑わない。 「Sure.」 遅れて着いた恭介。 「え?ここバーじゃん!こんなとこで夜遊びしてんの?」 中からはライブ演奏が漏れ聞こえる。 (どうしようか…ちょっと入るだけならいいかな。) 恭介もドアを開けて中に入ろうとした瞬間ウェイターがやって来て笑顔で 「ID please.」 (え?) ウェイターは困った顔で 「How old?」 「…ソ、sorry!」 恭介は慌てて店を飛び出した。
(なんで鮎川は入れんのに俺はダメなんだよ?でも、あのカウンターに 座ってたの鮎川だったよな。なんでこんな時間にこんなとこに…。) 単に見た目で断られただけである。本当は、21歳未満は入れない。 まどかはカウンターに座り、パインを頬張りながらマイタイをやっている。 窓から見えるワイキキは不夜城のごとく輝いている。彼女は頬杖をついたまま そんな景色をただぼんやりと眺めて考えていた。 (日本に帰ったら夏季講習かあ…どうでもいいなあ。) このまま、ハワイに居たい気もする。高校を中退してもいいとさえ思う。 (でも、春日クンが居ないとつまんないし…) 瞬間顔がひきつる。 「!!、んもう!」 (ここのところ、あたしの考えることときたら、あいつのことばっかり!) そんな自分にちょっとウンザリして呆れる。 まどかはチェリーを口にくわえたまま、ぼんやりと街の夜景を眺めた。 「やっぱり、帰んなきゃ…。」 (だって…放っとけないでしょ?) 帰る理由を恭介のせいにした。
店の前でどうしようかと悩んでいる恭介の傍に、賑やかな集団が近づく。 (早川みつる?) 早川は女の子3人とマネージャーを連れバーに入って行く。同時に帰ろうと するお客数人が陽気に騒いでいる。急に入口のところが慌ただしくなった。 その期に乗じて恭介は紛れるように店に入り込んだ。さっきのウェイターを 見つけ、その視界に入らない様に店の奥の暗がりに移動した。 来ている客は年配が多く、必然的に演奏される曲もOld Numberである。 早川は奥の席に案内される際に、カウンターで一人でやっているまどかを 見つけた。 (え?あれ、鮎川まどかじゃねえか!何やってんだ?あいつ。) 「マネージャー、ちょっとこの娘たちの相手しててくれない?」 「え〜!なによ〜、浮気者〜!」 「いや、違うって。仕事の話だから。ねえ、なんでも好きなもの頼んでて。」 そう言うと、カウンターへと進んで行った。
「よお、不良!」 「…何よ?」 まどかはシャンパンを飲んでいる。 「お前未成年だろ?ここじゃ21歳未満はアルコールは違法なんだぜ。」 「知ってるわよ。で?」 「おい、その『で?』ってのは止めてくれないか?」 「止めたとして、だから?」 「お前、取りつく島が無えよ!」 まどかは酔った瞳で早川を睨んでいる。 (あんた、恭介とひかるの何を見たのよ?) 「あ、あいつ…」 恭介は飛び出したいのだが、ウェイターが近くをウロウロするため出られない。 見つかったら間違いなくつまみ出される。体格が違い過ぎる。 恭介はあわててトイレに隠れた。 そんな時にマネージャーが早川のところにやってきた。 「なに?」 「あそこ。あれひょっとして『サンタ氏』じゃない?ほらギタリストで メジャーな連中のプロデュースもしてる。」 「え?」 まどかも同時に振り返った。彼女の好きな曲のプロデュースもしている。 ロック、ラテン、R&Bとすべての分野で彼の名前を目にする。
「ちょっと失礼、まどか。」 「気安く呼ばないでよ!」 早川は席を外し、マネージャーとひそひそ話を始めた。 「これって、世界への足がかりになるかも。」 マネージャーは意気込んでいる。 「俺に任せて。マネージャーは女の子用意しといて。」 そう言うと、厚顔な早川はすぐにサンタ氏の元へ入って行った。 サンタ氏は黒のサファリ帽を深くかぶりサングラスをしているが、マリオ のような髭からすぐに彼と判る。世界的なギタリストだがなんとも気さく。 「僕は日本のシンガーです。そして、あなたの大ファンです。宜しければ是非 ご一緒させて下さい。」 嘘ではない。誰でもギターの腕を磨く際、一度はサンタ氏のコピーをする。 彼が親日家であることを知った上での非礼だった。 彼の取り巻きは一種のボディーガードでもあり、「Sorry. Please go away.」 と言いながら威嚇してきた。 しかし、早川の人懐こい笑顔に、マンネリ打破の刺激を求めていたサンタ氏は 「OK Boy.」と言ってくれる。 早川はマネジャーに女の子を連れて来るように頼んだ。 「オー、カワイイネ!」
御歳61歳である。しかし、彼のギターテクは独特のものがあり、いまだ他の 追随を許さない。彼がフューチャーすると必ずそこそこのセールスを記録する。 なにより、気持が若く、絶えず刺激を求めている。 「今日はOFFですか?」 「アア、ソウダヨ。」 「次の新曲が待ち遠しいです。」 「キミガ ウタッテミルカイ?」 サンタ氏は日本の若造にリップサービスをした。 「デモネ、イマハ、オンナノコノ ヴォーカルヲ サガシテルンダヨ。」 (…!!) 早川は振り向いてまどかを見た。相変わらずスカしている。 (…あいつを紹介してみよう、あいつなら必ずイケる。) 早川の中にまどかの歌をもう一度聴いてみたいという衝動が湧いてきた。 (おれは後でもいい。まずはあいつだ!もう一度聴いてみたい。) 「あそこに『凄い』のがいますよ。」 「ドコ?」 まどかは知らん顔してキウイを頬張っている。かなり酔っている
サンタ氏はいきなり早川を押しどけるようにまどかに急接近。 (な、なによ!) 「クンシ アヤウキニ チカヅカズ。」 「はあ?…ぷっ!あははは。」 真顔のサンタ氏。彼の意味不明の諺に吹き出すまどか。(状況違うじゃん!) 彼も一緒に笑っている。 (ホントはそうかも知れねーな…) 早川はこの不適切な諺が意外と「はまっている」のにちょっと唸ってしまった。 サンタ氏は笑っているまどかにたたみかける。 「ニーハオ ハシムニカ?」 「こんにちわ ですかあ?ってなに!…大体、混ざってるし!」 酔っているまどかのツボにはまった。彼女はお腹を押さえて笑っている。 サンタ氏は頃合いを見計らって切り出す。 「オジョウサン イッショニ カラオケシマセンカ?」 「あー、いいですよお…あははは…。曲は?」 サンタ氏は曲名を告げた瞬間、まどかはちょっとしらふに戻った。 (へ〜、カントリーも演るの?でも、アレンジしたらカッコいいかな。)
いきなりサンタ氏は席に戻って仲間に話す。みんなの視線が彼女に集まる。 「アノコカイ?ダイジョウブカナ?」 「テンサイノミガ ワカル『フィーリング』サ。」 ステージに急きょサンタ氏のおかかえバンドが上がって、それぞれの楽器を チューニングし出す。ラウンジはざわめき出した。年配者で彼のことを 知らない人はいない。 「オジョウサン オイデ。」 まどかはふらっと立ち上がり(どうでもいいや)とステージに上がる。 ざわめきが大きくなる。少しブーイングに近い。 (せっかくサンタ氏のギターが聴けるのに何であんな娘を…) そんなざわめきなど全く気にせず、まどかは自らアコースティックギター をからう。そして、さっさとチューニングを済ますとサンタ氏を見る。 彼は微笑んで仲間を見やり「one two !」と掛け声で弾き始めた。 彼には珍しいカントリーソング。ドラムとパーカッションにベースがリズム を刻み、そこにキーボードとサンタ氏のギターが絡んで行く。 そして…まどかのボーカルが決まった。 観客は総身に鳥肌が…。今ここに音楽の天才がベールを脱いだ! 抑え気味に流すような、それでいてエコーが効いたように通る声で歌い出す。 ギターも様になっている。歌う表情もセクシー。 まどかはいい気分になっている。
(ワオ!カッコイイ!)サンタ氏は久々に嬉しくなった。 バンドのみんなも最初は驚き、そして互いを見やってニヤリとする。 (コノコ ホンモノダゼ!) 早川は鳥肌が治まらない。ゾクゾクと寒気すらする。 (凄げえ!…間違いない、世界で通用する!) 日本人と声の質が全く違う。声の深さでいえば黒人に近い。声の通りは 大御所白人女性シンガーによく似ており、発音もほとんどネイティブ。 要所でパンチが利き、決して高いキーでも裏声になったりかすれたりしない。 パワーがある。 一方、トイレに隠れている恭介は、ラウンジがざわめいているのが気になる。 (歌ってるのって…鮎川の声?鮎川は絶対人前じゃ歌わないよなあ?) そっと顔を出す。 (え!!)「あ、鮎川…」 完全にステージの主役であった。 (な…何で、歌ってるの?)
まどかはサンタ氏をはじめ、バンドのアレンジにうまく合わせて歌う。 ベースの男性が自分のカウボーイハットを取って、後ろからまどかにかぶせた。 振り向くまどかに彼は親指を立てウインクする。 少し深くかぶり直してギターを弾きながら、いい感じでアレンジが出来ている。 みんなはノリノリで実に陽気になっていた。サンタ氏はソロの途中でまどかを 指さす。応じるようにパンチがきいた歌声が入る。 曲が終わるやフロアはスタンディングオベーションの嵐となった。 あまりにも有名な曲。年配者にとっては懐かしい定番ソング。おじさんも おばさんも立ちあがって喝采を送る。 サンタ氏と彼の仲間の飛び入りだけでもあり得ない。チケットを買うなら 相当高額のはず。ハワイの夜にとんでもないプレゼント。終わりがけの こんな時間に。来て良かった、帰らなくて良かった…みんながそう思った。 本来は24時で閉店だが、店長の判断でそのまま営業時間を延ばした。 もちろんドアにはCLOSEの札が。
「デハ モウイッキョク。ナンニシマスカ?」 (え〜、もうやんないよ!) まどかはギターを下ろした。 取り敢えずサンタ氏と会えただけで心から満足している。 歌まで歌えたんだからもう充分幸せ!少し酔いも醒めてきたし。 そして、(そろそろ帰んなきゃ)と何気なくフロアの奥に視線を移した時… ラウンジの奥の暗がりにぼーっと立って自分を見ている少年を見つけた。 (!!!…か、春日クン!何してんのよ?こんなとこで。) それはお互い様。 しかし、恭介にはいつもびっくりさせられる。今回もそう。 早川はまどかの驚いた表情を見て取って、その視線を追う。 (か、春日。なんであいつが居るんだよ!お前ら未成年だろ…) もう一度まどかを振り返ると、まどかは自分の方を見ている。 (まさか、あなたが呼んでくれたの?) まどかはいい方に勘違いしている。また早川が絡んでいるのかと。 早川は何故まどかが自分を見ているのか解らない。しかし、まどかのこんな 視線を感じると、妙にドキドキしてしまう。 (俺らしくねえ…)
「カノジョ、 キョウノオキャクサンニ サイゴノプレゼント。」 ラウンジのお客さんは、この日本人の美しい女性にアンコールを期待して 歓声をあげている。凄く盛り上がっている。 「ミンナマッテイマス。 ラストサービス イキマショウ!」 客層を見てまどかの頭にある曲が思い浮かんだ。ママの大好きな曲… そして、何より、ここに紛れ込んだ「おかしな彼」に送りたい。 「OK. 『You belong to me.』…May I?」 定番中の定番、後世にいろんな歌手がカバーしているやつだ。 みんながOKを出す。まどかは再びステージの元居た位置に戻り ギターをからうと、マイクに向かって静かに次のナンバーを伝えた。 「You belong to me.」 お客は立ち上がり歓声を上げる。指笛があちらこちらからうるさい。 ここに来ているお客は、まどかのパパやママの世代が主。 彼らの大抵は、この曲を聴いて青春を過ごしたに違いない。 ハワイに観光で来て、サンタ氏の演奏でこの曲を聴けるなんて!
今夜のまどかはシックに決めてきた。なりゆきとは言え、 カーボウイハットを被ってギターをからう姿はミスマッチ。 それでも彼女がすると、それはそれでカッコいい。実に決まっている。 まどかはちょっとキーを確かめるとサンタ氏を見る。 すると、まどかの視線を合図にして彼は始めた。 「one two!」 いきなりベースとキーボードから始まり、そしてサンタ氏のスパニッシュな 泣かせるギターが入ってくる。ここでみんなは鳥肌が立っている。 そして…まどかが渋く決める。 一斉に歓声が上がった! ある熟年の夫婦は腕組みをしている。 また、ある中年の夫婦は妻が夫の肩に頭を持たれ掛けている。 それぞれがこの曲にそれぞれの思い出を持っている。 サンタ氏のギターと、それに負けないまどかの歌声のコラボレーションに みんな心から酔っている。
何ともCOOLでカッコいい!切なげに、しかし力強く歌い上げる。 まどかは今風にアレンジした歌い方で歌う。それもパンチが効いた歌い方。 とにかく上手い。自分で歌に酔っている。 そして…想いを込めて歌っていた。 視線を外そうとしない。恭介もじっとこっちを見ている。 (そう、キミだよ、恭介。) 今日のまどかは酔いも手伝って少し大胆。 サンタ氏のジプシーなギターソロが鳴き出した。 そして間奏が終わるとまどかの力強いVoiceが響き渡る。 「Tell her …You belog to me!」 このパートをまどかは力を込めて歌う。顔は余所を向いているけれど、 まどかの視界から恭介の姿は切れない。切ない表情で恭介に歌を送る。 そして瞬間、まどかは被っていたカーボーイハットを投げた。 それは手を伸ばす客達の上を飛び越えて、恭介の手元に収まる。 (あっ…) 恭介のハートが射抜かれた。涙が溢れてくる。 「Tell herYou belong to me・・・Tell her You love me .」 まどかは切なく歌う。
「イイネ! サイコウ! 」 最近ネタ切れ気味のサンタ氏はまどかの姿に触発された。 ギタリストとして、プロデューサーとしての腕が鳴った。久々に興奮している。 (*数年後、まどかをイメージして書いた曲が大ヒットすることとなる。) しかし、それは早川も同様であった。 「スゲぇ…!凄いぜ!見つけた…オレが…俺が本当にやりたかったことが… あいつをプロデュースしたら最高に面白いことになるぜ!」 曲が終わるとフロアから歓声の嵐が。20名くらいしか残っていないのだが フロアマネージャーもウェイター達も狂喜している。 (このライブハウスの伝説になるかも知れない。) サンタ氏はギターを下ろしているまどかに近づくといきなり彼女を抱き上げた。 「痛い!いたいよ。」 まどかはちょっと恥ずかしそうに笑っている。 早川も上がって来た。まどかに抱きつきたかった。嬉しくてしょうがない。 サンタ氏も早川も、まるで宝物を見つけたように喜んでいる。 しかし…サンタ氏から解放されたまどかはさっさとその場から立ち去った。 (え?) 「あたし『未成年』なもんで。」 驚く二人を余所に、彼女は一旦カウンターに寄ると置いていたバッグを持って 真っ直ぐ恭介の元へ駈け出した。まどかが座っていたカウンターには 飲みかけのシャンパングラスの下にチップ込みの50ドル紙幣が置かれていた。
お客はみんな「え〜?」っとまどかを見ているのだがお構いなし。 彼女はギョッとして見ている恭介に近づくや、その手を取って引っ張る。 恭介はまどかに引っ張られてそのまま店の外に連れ出された。 「ね、ねえ、そんなに引っ張ったら痛いんだけど。」 しかし、まどかは恭介の顔を振り向くこともせず黙って引っ張って行く。 エレベータの中でも黙ってドアの方を向いたまま。 恭介はそれ以上声を掛けられない雰囲気。気まずい沈黙が流れる。 エレベーターの扉があくと、「ほら」とまた恭介の手を引っ張る。 (なに?なんか怒ってるの?) 恭介は引っ張られるままワイキキのメインストリートを外れ、そのまま ビーチへ連れ出された。
やっと本編に戻てきった感じ まあ今までも作者にとって大切なんだろうけど
もう1時近い。ビーチには人影がちらほら。満天の星空と波の音が 何ともロマンチック。浜辺沿いにホテルの照明が輝いている。 「春日クン…」 やっと口を開いた。 「何であそこに居たの?」 「いや…だから…眠れなくって…。でさ、せっかくハワイに来たのに…」 「だから、夜遊び?」 恭介はむきになって言う。 「…全然一緒じゃなかったじゃない!そう思ったら居ても立っても… とにかくワイキキに行こうって思って、そしたら鮎川を見かけたから。」 恭介はまどかの顔を見つめた。まどかは赤くなった。 「もういいよ…分かった。ごめん、疑って…」 「そう言う鮎川はいつもの『夜遊び』?」 砂浜ををうつむき加減に眺めながらぼそっと応えた。 「…春日クンと同じだよ。」 「え?」 ビーチの乾いた砂を踏みしめながら二人は歩いた。 まどかはちょっと離れて恭介の前を歩いている。 その姿が月の明かりに照らされて美しい。さっきまでのCOOLな彼女は 姿を隠し、いつものまどかに戻っていた。 いきなり恭介の方を振り返る。 「あ、あのさ…あたしもフラを習ったんだあ…」 目が合うとちょっと照れて他所を向くまどか。 「BGMは無いんだけど…ちょっと見てくれる?」 そう言うとサンダルを脱いで海の方を向いたままフラを踊り出した。 まどかは頭の中に聞こえてくる音楽に合わせて鼻歌で歌いながら。
今までの流れは「スター誕生」を意識しているのでは?
彼女は両腕を高く伸ばし、それをゆっくり前に差し出しながら足を動かす。 腰がゆっくりと振られ、それを軸につられるように膝と足がしなやかに動く。 体全体がゆったりとした流れの中で動いている。動く度にブレスレットや イヤリングが月の明かりを拾って輝く。 月に照らされて浮かび上がるシルエットだけでも見とれてしまう。 踊っているうちにまどかはそのままゆっくりと体を恭介の方に向けた。 恭介は目の前に降りてきた『天女』に戸惑っている。 (さっきまでの鮎川と全然違うや…。) まどかは目をつむったまま踊っている。気持よさそうな、やさしい表情。 心で恭介を感じている。 BGMは波の音だけ。照明は月明かり。 まどか自身も驚いている。 (しらふじゃ出来ないよねえ…春日クンわかる?振りの意味… …『あなたを、誰よりもずっと想っています』っていうのよ。) 恭介は見とれている。凄く伝わってくる。 「あ、鮎川…」 (抱きたい、抱きしめたいくらい愛おしい…愛してる。) 恭介は近づき彼女を抱きしめようと腕を伸ばした。
>>442 まあ作者がここまでの伏線をどう回収するかが見物だ
……とプレッシャーかけたりする
このレベルじゃ回収不能と見た。
瞬間、まどかは身をひるがえし思いっきりベロを出す。 「べーだ!…誰かさんにも同じことしたんじゃない?」 「え?」 「あははは!」 まどかはサンダルを拾うと笑いながら恭介の元から小走りに逃げた。 「あ!待って〜。」 二人はホテルの間の通路に入り込んだ。誰も居ない暗がり。 恭介は彼女の腕をつかまえた。まどかは急に笑うのを止めた。 二人の想いは同じだった。 恭介はまどかの両肩を優しくつかむ。 「鮎川…」 まどかは身を委ねて目を閉じた。 (春日クン…) 「ズザッー!!」 恭介は砂まみれになった。後ろエリをつかまれ投げ飛ばされた。 「痛え…」 「キャー!うっ…!」 瞬間、まどかは後ろから口を塞がれ暴れている。 2人の白人に襲われた。
まどかは肘を打ち込もうと腕を振るのだが、相手は190cmはある巨体。 完璧に決められ、いかにまどかと言えども全く歯が立たない。 恭介はまどかを助けようと突進した。しかし、恭介を軽く投げ飛ばした もう一人が、今度は恭介のボディーにパンチを入れる。 「ゲホッ…!」 息が出来ない。おそらくこれでも手加減しているのだろう。 目の前の2人はあまりにもデカイ。助けを呼ぶ方が賢明。 「HELP!HE…!」 連呼しようとしたが、相手の大きな手で顔をつかまれ、またもや腹に 一発入れられ声が出せなくなった。それでも恭介は隙を見て相手に 砂を投げつけ、まどかを捕まえているやつの腕に咬みつく。 (春日クン!) 恭介は瞬間(逃げて!)という目でまどかを見る。 「Shit!」 咬みつかれた奴がまどかを離し、恭介の胸板に思い切り蹴りを入れ 恭介は吹っ飛んだ。まどかは転身、やり返そうとした瞬間 もう一人に後ろから髪を引っ張られ、顔を数発殴られ気を失いそうになる。 噛まれた奴はさらに倒れている恭介に数発蹴りを入れた。 二人組はぐったりとなったまどかを抱え、ストリートで待機していた もう一人の車に乗り込んだ。
恭介は息が出来ない苦しみの中、それでも這うように後を追った。 しかし、まどかが連れ込まれた車が目の前で音を立て急発進する。 「ぐはっ!」 血を拭き出した途端、ぜーぜーと息が出来るようになった。 もう深夜の1時過ぎ。ストリートは人影もまばらになっていた。 恭介はあらん限りの声で叫んだ。 「HELP!!…HELP!HELP!!」 しかし声が出ない。思いを強くしても声が出ない! そこに手をつないだご機嫌のカップルが通りかかった。 (やだあ、日本人の酔っ払い?え?血だらけじゃない!) 二人は慌てて駆け寄り抱き起こす。 「どうしたの!大丈夫?」 (助かった…日本人か…) 「助けて、助けて下さい!警察を…」 恭介はまどかをさらわれた悔しさと事件の重大さに震え、嗚咽が出そう。 「しかりして!泣いちゃ分かんないでしょ!どうしたの?」 「鮎川が、…彼女がさらわれた!さらわれ…ゲホッ!」 また恭介は血塊を拭き出した。少し息が楽になった。 「あ、鮎川って…、まさか『まどか』のこと?!」 なんと、マリーと旦那のボブであった。
また事件か。巻き込まれ過ぎだろ。 「あの日」まで、どこまで引っ張る気だ?
まあまあ 他人の妄想を覗き見て注文つけんのはヤボってもんだw
その頃、早川は連れの女の子達を乗せてドライブ中。音楽をかけ 街外れを流していた。 (くそ〜、なんであんな冴えなやつと…) 「みっちゃ〜ん!なんで黙ってんのよ〜!」 女の子達からからかわれている。 「あ、いや、なに…あ、あはははは!」 取り繕うも、考えるのはまどかのことばかり。 (出来てんのか?あいつら。よしんば出来ていたとしてもだな…) 瞬間、対向車からかすかに悲鳴が聞こえた。ぱっと視線をやると 中には暴れている女性の姿が。 対向車は猛スピードで丘の方へ走り去る。 ほんの瞬間だったが見逃さなかった。 早川はためらうことなく急ブレーキをかけると同時にハンドルを切る。 車は凄い勢いで回転して止まった。 「キャ〜!何すんのよー!!」 「ご、ごめん!悪いが、ちょっと付き合ってくれる?」 (巻き込む訳にはいかないけど、こんなとこで降ろしたら、それこそ 危ないし…)
「今の対向車、女の子がさらわれてるみたいなんだ!」 深刻な顔で切り出す早川みつる。 「みっちゃん、助けに行こう!」 「わ〜、面白そう!行こう!行こう!」 (こ、こいつら…) 早川は対向車が上がって行った道を急発進させて追って行った。 (さて、どこか民家に一旦寄って、Policeに電話するか? しかし、そうこうしてる間に犯られてしまう。策は…?) 走らせながら必死に考えを巡らせている。 助手席と後部座席は勝手に盛り上がっている。 一方、ワイキキストリートでは… 「ねえ、鮎川って、『まどか』のこと?」 「知っているんですか?いきなり暴漢に犯られて…車で連れ去られて…」 事情を訊くや、マリーは叫んだ。 「ボブ!警察呼んで!」 「OK!」 恭介は胸に殴られたのとは違うチクチクした痛みを覚え手をやった。 シャツの胸のあたりが血糊でべったりしている。 「え?…痛っ!」 シャツの胸を開いてみると、ネックレスが砕け複数のガラスの破片となって 肌に突き刺さっていた。 「鮎川…」 恭介はまどかのことを想い、居たたまれない不安を覚えた。
「ああ、そうだ!白のバンで後ろにスペアタイヤが付いているらしい。 そいつのカバーがドラゴンの画だそうだ。ああ、ナンバーは解らない。 とにかく急いでくれ!」 ボブは911に電話で伝え終わると、大学時代のフットボールの仲間達へ すぐに電話した。土曜とはいえこんな時間、ほとんどの連中は寝ている。 「起こしてスマン。wifeの友人が危ないんだ。力貸してくれ!」 ボブ自身が動きたいのだが、アルコールを飲んでいる。 マリーと恭介の元に戻ると、間もなくハーレーに乗ったいかつい大男が 駆け付けた。ジーンズにTシャツ、ブーツとグローブで決めている。 「よう!ボブ。他の連中は直接探しに出てるぜ。タイヤカバーが目印だな?」 「サンキュー、ロイ!」 ロイは「愛馬」にまたがったまま、恭介に声を掛ける。 「boy…大丈夫か?待ってな、今病院に連れてってやる。」 捜索に加わるつもりでいたが、血反吐を吐いている恭介を見かねた。 マリーは恭介の胸から大きな破片を取って行く。 まどかからのプレゼント。恭介はその破片に手を伸ばそうとする。 我に返ると、悲しさと同時に猛烈な悔しさが湧いてきた。 そして、いきなり今到着した好漢ロイに頼んだ。 「連れてって!」 (What?) 「ダメよ、あなたは病院に行きなさい。」とマリーが制する。 「お願いします。お願い…」 恭介はくやし涙を拭いて立ち上がろうとする。ボブはなだめるように 肩に手を乗せるが、恭介はよろよろとロイのハーレーに近づく。
454 :
今更ながら :2009/04/14(火) 22:15:43 ID:h1Zv7Hg1
417の雰囲気がいいね。あかねが可愛く仕上がってる。
455 :
今更ながら :2009/04/14(火) 22:20:13 ID:h1Zv7Hg1
Tell her you belong to me って、ひかるに恭介はまどかのものだと言えと・・・
>454 あかね「ありがと〜!!」
457 :
今更ながら :2009/04/15(水) 23:43:42 ID:???
>441、443 ココいいね!ようつべでフラ探して視たが なかなか魅惑的なダンスなのだと知った次第。 まどかにこれやられたら、おれはイチコロ!
456=457? あんな踊りのどこがいい? お前荒らすなよ。
459 :
今更ながら :2009/04/17(金) 00:02:37 ID:???
「お願いです。僕が見れば車が解ると思うし。僕は大丈夫だから。」 「…OK、乗りな!」 「ダメよ!ロイ。」慌ててマリーが恭介に近づくが 「彼の言う通りだ。事態が切迫してる。早くGirlを見つけないと! Boy!キミは我慢してな。」 そう言うとボブは恭介を軽々と持ち上げロイの後ろに乗せた。 ロイはヘルメットを脱いでボブに渡すと、ボブは恭介に被せた。 「しっかり掴まってな!」 ハーレーは低く太い唸り声を立てて飛び出して行った。 (どうせそんなことする連中だから、ダウンタウンか山の方だろう…) ロイはワイキキから山側に上がり無線を取る。今のところ手がかりがない。 「ダイジョウブ?」 「はい。」 恭介はハーレーから振り落とされない様我慢してしがみついてはいるのだが、 実は右肋骨が2本折れており、加速する度力が入りうめき声が漏れてしまう。 ロイはフットボールをやっていたから、恭介の見た目から肺挫傷を心配した。 「イキ デキル?」 「ええ…。」 (肺はやられてなさそうだが、2〜3本は折れてんだろうな。) 「ガンバッテ!」 見ず知らずのナイスガイに励まされ、恭介はまた涙がにじんできた。
460 :
今更ながら :2009/04/19(日) 00:37:49 ID:???
一方、早川はほとんど民家が無い道で迷っていた。 (こんな時間だし、照明が点いてないから分からないなあ…) 同じような場所を行ったり来たりしていたところ 「みっちゃん!あれ、あそこ明かり付いてるよ。」 「え?どこ、どこ?」 うすぼんやりとした明かりが窓から漏れてくる家を見つけた。そこには さっきすれ違ったバンが停められている。 (あ!あれだ!) ワイキキでは… ボブはホテルのロビーで連絡を待っている。いくら酔いが醒めている とはいえ、車に乗る訳にはいかない。イライラしている。 「こんな時間じゃ、ヒト目もないから情報が入らないだろうな。」 「ボブ、落ち着いて。私達はまどかの無事を祈っていましょう。それしか…」 「ミスター、電話です。」カウンターから声がする。 電話は警察官の友人からであった。 「パンチボウルの近くでタクシーが例のタイヤカバーを見たらしい。 今うちの連中を集めてる。」 ボブは無線で仲間にも状況を伝えてくれと頼んだ。 そして、早川は… 彼はライトをスモールだけにして家の近くまで移動すると女の子達を残し 車を降りた。下は湿気を含んだ赤土で、足を取られて歩きにくい。 靴もズボンも汚れてしまうが、今の早川は正義感が先立っている。 そっと家に近づいて止めてある車を確認する。 (なんだあ?この悪趣味な絵は。こいつに間違いない!) さらに、音を立てない様に薄明かりの洩れる窓際に近づき、サッシの隙間 から中を覗き込むと (えええええ?!!あ、あれ、「鮎川まどか」?!!) 驚きのあまり腰が抜けそうになった。
461 :
今頃 :2009/04/19(日) 00:39:21 ID:???
まどかは恐怖の表情で部屋の隅に逃れていた。 車の中で目いっぱい抵抗したせいで、顔をしたたか殴られている。 しかし、かろうじて衣服は脱がされていなかった。 男たちも、この家でゆっくり脱がせにかかるつもりでいたので、取り敢えず 騒ぐまどかを黙らせようと暴力で制するにとどめていた。 一人がビデオを用意し始めた。残る二人が不敵な笑みをこぼしている。 (犯られる!どうしよう、俺じゃ勝てない!無理だ!どうしよう?) 早川は考えた。そして、あたふたと車に戻るや女の子達を降ろした。 「いい?ここに隠れてて!俺行ってくるから!絶対隠れてて!」 「みっちゃん!カッコいい!!絶対戻ってきてね!」 「戻ってきたら結婚してえ!」 (な、何をこんな時に…) 「…と、とにかく、行ってくる!」 ひそひそ声でやり取りすると、早川は車を家のすぐ近くまで動かした。 そして、自らを鼓舞するように大声で叫んだ。 「一人や二人…轢いても構わんだろぉ!!」 そして、その遠くには青色の回転灯をつけたパトカーが近づいていた。 その後ろから、ロイのハーレーが追いかける形になっている。 二人の男が近づいてきた。まどかも抵抗する余力が残っていない。 (こんな奴らに犯られるくらいなら…)
462 :
今頃 :2009/04/19(日) 00:49:15 ID:???
まどかは胸に手をやると、中から例のネックレスを引っ張りだした。 そして…ガラスの小瓶を口に入れると一気に二度三度と噛み砕いた。 (ごめんね、春日クン…ずっと…ずっと好きだったよ…) 瞬く間にまどかの口から大量の血が溢れ出す。 同時にまどかは激しく咳き込み、余計に血を吹き出す格好となった。 ほんの一瞬だった。覚悟を決めるや、まどかはあっという間にしてのけた。 男たちはあまりの惨状に顔をゆがめてたじろぐ。 「な!なんてことしやがるんだ!」 「やばい!死ぬぜこいつ!」 「…ず、ずらかろう!」 その時!!ドアの外でけたたましいクラクションが鳴り出した。 「パ!パ!パパパッ!パパパパー!!ブオン!ブオーン!!」 早川が玄関近くまで車を寄せて、ライトをパッシングしながらクラクションを 鳴らし出した。凄い勢いでエンジンを空ぶかししている。 男たちが慌てて出てきた。 「Fuck!」 一人が車に向かって行こうとした瞬間早川は車を一回急発進させ 「うぉらー!!」 と大声を出しながら男たちを威嚇すると、すぐにバックし元の位置に構えた。 (乗られても振り落としてやる!一人でも道ずれにしてやる!)
458よ、作者は457を贔屓にしてるみたいだぞ。 ちみは嫌われ者じゃないのか?
早川の光の点滅に気付いたパトカーが近づいて来る。しかし、それより早く、 パトカーの脇を猛スピードで追い抜くロイ。 「Boy!シッカリツカマッテナ!」 ハーレーはバウンドしながら駆けてくるや、早川の車の横にスライディング しながら斜めに止まる。ロイの足がブレーキになった。 奴らは慌てて玄関を閉じたがもう遅い。 恭介がヨロヨロと降りて玄関に向かう。 「Hey Boy!キヲツケテ!Gunモッテルカモ!」 しかし、恭介は自分の身よりまどかの身を案じていた。 (神様!神様!神様…!) 扉を開けると、連中は観念して両手を挙げている。 そして…部屋の隅にはまどかが血だらけになって横たわっていた。 「お、俺たちじゃないぜ!あいつが勝手に…」 「こ!この野郎!」 恭介は一人に殴りかかった。しかし、恭介の体力は残っておらず、パンチは へなちょこだった。恭介はそいつの前に倒れ込むように両腕と膝をつく。 「フッ…」 男が鼻で笑った瞬間、でかい拳が顔面にめり込んだ。
鼻はへし折れ、歯は数本吹っ飛ぶ。男はちょっと宙に浮かび床に落ちた。 ロイであった。鬼のような形相をしている。 「Goddamn!」 残りの二人を睨んで威嚇すると、ちょっと恭介を見た。 恭介はまどかの方へ這って行き、一生懸命彼女をゆすっている。 しかし、反応がない。 (間に合わなかったのかい?) ロイの目に涙がにじむ。彼女の身を案じ、痛みを堪え一生縣命自分に しがみついていた恭介の気持ちを思いやった。不憫に思った。 (俺が制裁してやる!) 振り向いたロイの形相に、残りの二人は(殺られる!)と思った。 その瞬間、 「Hands up!Get on your knees!」 ピストルを構えたまま、どかどかと警察が入って来た。 2人はその場で手錠を掛けられ、倒れている奴は担架に乗せられた。 警察はロイと面識があり、「後で事情を聞かれるかもな」と伝えるに止めた。
「Excuse me!」 恭介を脇へ除けるや救急隊がまどかの処置を始めた。 まどかの呼吸は止まっていたが、心臓はきっちり拍動している! 場慣れた救急隊員はすぐに鼻からチューブを入れ血液を吸引する。 しかし引けない。チューブを抜くと血液の塊がチューブの先に付いてきた。 もう一人がペンライトで口の中を確認する。 「ウッ、口の中がガラスだらけだ!」 慌てて他を傷つけない様にガラス片を取り出し、ガーゼで出血点を抑える。 何度も血の塊を引っ張り出すと、急にまどかが咳き込み出した。 死んだとばかり思って呆然としていた恭介とロイの顔に血の気が戻る。 「どうする?これじゃ挿管は…無理すると暴れちまう。」 「このまま行くか。」 隊員たちはまどかの口の中をガーゼで抑えながら、さらに血液が流れ込まない ように、担架にまどかを側臥位に乗せ、顔面を少し下に向かせた。 かろうじてまどかは生きていた。しかし、口腔内の動脈を傷つけた為に出血は 多量で、一時血塊による無呼吸の時間があったため、危険な状態である。
複数のライトで照らしだされた現場。数台のパトカーと救急車の回転灯が 賑やかに輝く。無線の音も騒がしい。現場検証と被害者の搬送、加害者の 輸送が始まる。写真のフラッシュもうるさく光る。 担架に乗せられ運ばれるまどかを見送る早川。警察に状況を訊かれていた。 すぐ離れた所で女の子達がうっとりとした眼差しで早川を見つめている。 それをちょっと誇らしげに、そしてちょっとわずらわしく思いながら 担架に乗せられ運ばれているまどかを心配そうに見つめている。 彼女の顔は殴られ方が酷かったせいか赤黒く腫れている 警察に彼女の状態を確認するのだが、「判らない」とのみ返事。 警察もうかつなことは言えない。反って失望を深くさせる場合もある。 (クソォ…もう少し俺が早ければ…。) 早川は日本から来た週刊誌の記者にその姿を撮られていた。 すると、それまでうっとりしていた女の子達の一人が近づき カメラを取り上げると、他の女の子も加わりフィルムを引っ張り出す。 「あんた達、どうせロクな記事しか書かないんでしょ!」 凄む3人に記者はたじろいでいる。
「鮎川!鮎川!鮎川!…」 涙をこらえられない。恭介は心の中で叫んだ。 (神様!神様!僕が代わりに死んでもいいから、お願いです!鮎川を助けて!) 同乗したかったが、救命処置の邪魔になるのと、恭介自身も手当てが必要と 判断され、救急隊に促され別の車に乗らざるを得なかった。 まどかを乗せた車内では、点滴が開始され、バイタルのモニターが始まった。 輸血用のクロスマッチも行われている。結果は随時搬送先の病院に伝えられる。 「出血がひどい。呼吸も不整になって来てる!レスピレーターの準備が必要!」 隊員の一人がまどかの口の中に指を突っ込み、出血をガーゼで抑えているが そのガーゼに染みて血が滴り落ちている。 恭介は車内で人物照会を受け、すぐに宿泊先のホテルに連絡が行った。 父親の隆は、明日の出発が早いのにもかかわらず、恭介の帰りが遅いので 心配して眠らずに待機していた。 そこに突然の連絡があり、恭介が事件に巻き込まれたこと、そして取り敢えず 無事ではあるが病院に搬送されたことが伝えられた。 愕然とするも、すぐに気を取り直して搬送先の病院名を聞いて電話を切ると すぐに助手に連絡した。 眠そうにしている助手に事情を簡単に説明し、二人は慌ててホテルを出発する。 (娘たちは起こさずにいよう。) 「恭介…お前に何かあったら、天国の母さんに何て詫びりゃいいんだ!」 一方ワイキキのホテルのラウンジで待機していたマリーとボブにも連絡があり まどかはかろうじて「生きている」ことが伝えられた。
マリーは気色ばんだ。 「もし、まどかに何かあったら、私が絶対許さない!」 たった二日なのにまどかのことを妹のように想っていた。 ボブと飲んでる時も話題は殆どまどかの事だったくらい、可愛く思っていた。 彼はマリーをなだめながら 「とにかく、搬送先の病院に行こう。それからだよ。」 救急車が病院に到着するや、まどかは待ち構えていた看護師達によってすぐに 院内に運ばれた。恭介は車から降ろされると制止を振り切ってまどかの 乗せられたストレッチャーに走る。 「鮎川!鮎川!」 しかし、付いている男性スタッフに止められた。 鮎川の顔は腫れ、口から胸元にはおびただしい血の跡が。 彼女は酸素マスクと点滴をされたまま急いで運ばれて行く。 病院には被害者が日本人ということで、警察から通訳が呼ばれていた。 まどかの傍に居たかったが、行ったところで邪魔にしかならないことと、 恭介自身も検査が必要であることを、通訳を通して強く説得された。 英語圏で、尚且つ専門用語が飛び交う中では、全く状況が分からず、恭介は じっと指示に従うしかなかった。 (終われば鮎川の元に行ける。) まどかは止血と呼吸循環管理が優先される。そのため彼女よりも先に画像診断 が開始された。 案の定、右の肋骨が2本折れているが気胸は起こしていない。 胸から腹部にかけて酷い打撲はあるが、エコーでも内臓損傷は否定された。 胸の裂創は3か所。部分麻酔の注射をされ、それぞれ3〜4針の縫合を受けた。 そしてバストバンド固定と湿布、鎮痛剤の注射がなされ、「OK」と言われた。 その瞬間、傍に居た警官と通訳の間をすり抜け、まどかが運ばれた処置室に 駆け込もうとする。
えらいことになってる!
これじゃ、夏期講習間に合わない。ハワイに足止め。 「あの日に」つながらないじゃん!
そこで「あの日に帰りたい!」ってオチだったりして?
うまい!
この作者は誰にも受け入れられない妄想を延々語っているのだな、これが。 経緯からすると、そのスレから追い出された感が。まあ、頑張れや。
恭介は彼らの制止を振り切り処置室に走り込んだが、すぐに行く手は遮られ 「Wait!Wait…」と看護師達から抑えられた。 「もう!俺はいいんだよ!おれは!」 尚も振り切ろうと暴れる恭介に怒鳴り声がした。 「落ち着くんだ!恭介!」 隆が来ていた。 一方、まどかは緊急に処置室に運ばれるや、すぐに上着を脱がされ心電図の 電極が張り付けられる。同時に自動血圧計が巻かれ、点滴は新しいものと 替えられた。採血がなされるや、筋弛緩薬と静脈麻酔が点滴から流され まどかの意識はすぐにに落ちた。その瞬間に手際よく経鼻挿管を施行される。 すぐに口腔内の出血点の結紮と縫合、異物除去がなされた。さらに、モニター の監視下で気管支鏡が入れられ、気管支内にガラス片が入っていないか確認。 次に内視鏡で咽頭から食道まで調べられたが、幸い出血点は口腔内のみ であった。 処置室では心電図モニターと血液ガス、血算生化学などが調べられる。 一通りの処置がなされ、処置室の緊張が解けたその時、いきなり 心電図のアラームが鳴りだした! 「VT!…Vf!」 看護師が叫ぶ。ドクターは寝台に飛び乗るや、まどかにまたがり 心臓マッサージを始める。危険な不整脈が始まった。心停止の直前! 看護師達が慌ててカウンターショックを準備する。 ドクターは大声で電圧の数値を叫ぶ。 看護師がパドルにゼリーを塗るやドクターは飛び降りそれを握る。 「Clear!Here we go!」 二つのパドルが胸に押し付けられると、瞬間まどかの体が跳ねた。
恭介はロビーで祈っているしかなかった。涙がポタポタ床を濡らす。 別室のまどかの状態をなぜかしら感じている。 (神様!鮎川を助けて!お願いします。代わりに僕が死ぬから!) 隆は何も聞かずに恭介の背中をさすっている。 通訳も警官も少し間を開けてから訊くことにした。 処置室では不整脈が収まらず、アラームが鳴りっぱなしである。 ドクター指示で点滴の横から強心薬がワンショットで流される。 今度はロコのでっかい女性看護師が身軽に飛び乗るや、まどかにまたがり 心臓マッサージを始めた。 「Come on!」 充電されるや電圧が上げられ、ドクターが叫ぶと同時に看護師は飛び降りた。 「Here we go!」 ドン! しかし、モニターの波形はflatになってしまった。 心停止である…。 同時に恭介はソファーから前のめりになるようにして崩れ落ちた。
次回から鮎川主演「あの世から帰りたい」とか?
病室でまどかが恭介にキスしようとするシーンって OldiesなんだけどBGMはSylviaのPillow Talkなんかどう? 作者はよく「Old-School」って書くけど、誰のファンなの?
それとさ、ビーチでマリーさんと一緒に歌う歌って LALA のSprung On a Thugなんかぴったりだと思うよ。 余計なお世話ですか?
>480 聴いてみたが、歌詞がエッチだな。 作者はGWまたハワイか?
映画の「あの日」につながるとかここの誰かが勝手に言い出した事だろ 作者は何も言ってない つながるかも知れないしそうでないかもしれない 個人的にはそうでないほうがいいが
* ふと気付くと、ビーチに座っていた。 沈んでしまった夕陽の名残りで、薄っすらと水平線が輝いている。 風がやさしく頬をなでる。 ぼんやりとした頭で海を眺めていた。 ずっと長い間ここに座っていたような気がする。 ひどく泣いたせいか、まぶたが重い。 重く感じる頭を動かし周りを見回すと、いつのまにか人影はまばらに。 自分ひとり閉ざされた世界に残され、喧騒は遠くに感じる。 もう一度海を眺め、そして彼女のことを思い出そうとまぶたを閉じた。 すると、閉じたまぶたを通して、夕陽に輝くまどかの姿が浮かんできた。 彼女はあの夜と同じように、やさしく笑みを浮かべて、気持良さそうに 踊っている。 『あなたを、誰よりもずっと想っています』と。 でも…(鮎川…) そっと目を開けてみるのだが、彼女はもういない…。 恭介はポケットに忍ばせておいたガラスの小瓶の破片を取り出し 頸の脈打つ部分に当ててもう一度目を閉じた。 (鮎川…今からそっちに行くよ。)
恭介 後を追うことを考えてる暇があったら半日前にタイムトリップして 鮎川を救うことでも考えろよw
言っちゃった 俺は死のうとした偶然にタイムスリップすればいいなと思ったが 書いたことで方向が変わったら嫌なのであえて書かなかった
そっか 俺はそこまで思慮深くなかった が、作者はたぶんマイペースで妄想を続けることだろう
しかしこの人は入院経験でもあるのかね
ERの視過ぎじゃね?
作者!まさかこれで終了じゃないよね?
(鮎川…今からそっちに行くよ。) 完 なるほどな
主人公を死へ追いやる結末てのは安易じゃないか? 妄想ってエンドレスじゃないのかい?
そこで恭介がまどかを黄泉の国から救出して大団円ですよw
死後まどかは自分に逢いに黄泉国までやってきた恭介に腐敗した死体を見られたことを恥じ恐怖で逃げる恭介を追いかける。 しかしまどかに対して恭介が黄泉国と地上の境である黄泉比良坂(よもつひらさか)で道を塞ぎ会えなくしてしまう。
神話(当時の妄想)とこれをごっちゃにされてもなあ・・・。 つーか、作者!こんな落ち着けんなよ。再開希望。
気配なし。
これは駄目かもわからんね
497 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2009/05/15(金) 23:23:09 ID:VNxJJbf2
あげちゃったりして。
妄想家がいないと始まらないんだから上げる意味無いだろ 妄想家は上げるとか関係無く、来る時は来るし
ごめんなさい、試しただけ。残念だな〜(泣・・・
ワシも妄想くらいなら出来るがそれを文章にして人様にお見せするとなるとなぁ……
あはははは!500さん、面白すぎ!確かにな。
あー、これはあれだな。きっとまたアク禁だ
日曜の夜を期待したが・・。
今日もなしか… ひょっとしてマジ死亡「あの日に帰りたい」end? あんまり遅いとIFルート作るぞ 文章力ないから粗筋書きで まあそんな気ないから早く戻って来い
私だけじゃないんだ・・・。 戻って来てくれたら嬉しいんだけど。
h
鮎川の誕生日だからアップされたかと期待したんだがな……
508 :
元祖 :2009/05/26(火) 20:08:58 ID:???
知らないのかな?
まどかは引き続き心臓マッサージを受けると、再び除細動を掛けられた。 ドクターが大声で叫ぶ! 「Come on!!」 ドン! まどかの胸部がぐうっと反り返った。同時に別室の恭介にも電流が走る。 * バシッ! 恭介は思いっきり頬をひっぱ叩かれ… (鮎川…?) まさにその瞬間、モニターに正常波形が出現した! この間、時間にして5分程度なのに、随分長く感じられた。 処置室は安堵の空気に包まれながらも、すぐに検査が続けられる。 恭介は余りにも聞き分けがないので、鎮痛剤と混ぜて鎮静剤も打たれており、 その所為で気を失っていただけであった訳で。 (お、俺…) 「恭介、大丈夫か?」 急に意識を失ったものの、かけつけた看護師が脈や呼吸を診て問題がないと 判断。そのままソファに寝かされていた。 「お、おやじ…鮎川…!鮎川は?」 起きあがろうとするが朦朧としており、力が入らない。 「あ、鮎川…」
* 「なんてことすんの!!」 まどかは思いっきり恭介の頬を叩いた!彼女の両目が涙で溢れる。 「そんなことされても、嬉しくないよ!ばかっ!」 まどかは情けない姿の恭介をしっかり抱きしめた。 恭介の手からガラスのかけらがポトリと落ちて… ドクターの問いかけにうなずくまどか。弱いが握力も感じる。 「さあ、そろそろ抜管しようか。」 麻酔薬の拮抗薬が投与され、しっかり自発呼吸が出てきたことを確認して 管が抜かれた。すぐに、マスクを押しつけられるが、問題無い。 まどかは頬を軽く叩かれながら起こされる。 少しずつ意識が戻って来た。うっすらと溜まっていた涙が耳元へ流れる。 「コレ、ナンホン?」 「…2本…」 ドクターはまどかに指の数を言わせ、何度か繰り返して意識が戻ったことを 確認すると、彼女を処置台からストレッチャーに移すよう指示を出した。 * 哀れな恭介の心をまどかはやさしく、そしてしっかりと抱きしめる。 (春日クン…泣かないで…) まどかの胸は切ない想いで満たされてくる。 恭介が自分を追って来ようとするのを『感じ』 悲しみと切なさで心が破裂した。 (戻らなきゃ!) その瞬間二人の心に電激が走る。 死にかけていたまどかの肉体と、死にかけていた恭介の心が蘇生した。 …お互いを想う気持ちが二人を連れ戻した…。
安静室へ移されるまどか。 顔中包帯が巻かれ、まだ残っている麻酔のせいで朦朧としている。 一方、恭介は処置室に寝かされていた。疲れもあってよく眠っている。 隆は助手に連絡を取り、ひかるとあかねを先に日本に返すように伝えた。 事件に巻き込まれたのは春日家と鮎川家であり、今後の成り行きから考え ても、両家はもうしばらく此処に滞在しなければならない。しかし、企業 や地元観光協会の好意で招待してもらった姪や家族の友人までを延泊させる ゆとりは先方にはないはず。 夜が明け、朝の6時、まどかのコンドにて 「おはよう、まど…?あれ?…まどかあ?」 同時にひかるも起きてきた。伸びをしながらリビングに出てくる。 「ふぁ〜…あかねさん、おはようございます。どうかしたんですか?」 「うん…いつもなら居るのに…カーテンも開いてないし…」 「あっ、ホントだ。まどかさん居ない。今日『帰る日』なのに…」 そんな時、急に電話が鳴る。 二人はてっきりまどかからと思い、あかねが受話器を取った。
電話は隆の助手からであった。慌てなくてもいいから、取り敢えず荷造りを 済ませてタクシーでクイーンズ病院に二人とも来て欲しいとのこと。 訳を話すと長くなるけど、まどかと恭介が事件に巻き込まれ入院したことが 伝えられる。 「え?な、何で…?あ、はい…ええ……はい……はい…解りました。」 あかねは傍にあったメモ用紙に病院名と電話番号を書きとめている。 電話を終え、驚きのあまり声を失って呆然としているあかねに 「何かあったんですか?」 覗き込むひかるにあかねは不安な面持ちで 「…ど、どうしよう…まどかと恭介が暴行を受けて入院したって…。」 声が震える。 「ええ!?な、何で?さっきまで、まどかさん一緒に居たじゃないですか。」 「うん…あたしにも分かんないんだけど、とにかく荷造りしたらそれ持って 病院…クイーンズって言ってたっけ、とにかく来てくれって。」 「ふ、二人とも無事なんですか?」 「結構酷かったみたいだけど…今は何とか…大丈…」 涙声になりそうなところをなんとか堪えた。ショックが大きい。 二人は慌ただしく洗顔やブラッシングを終えるとすぐに着替え出発の準備をした。 「えーっと、えーっと…」 パスポートは?忘れ物は?あたふたと部屋を見回す。 扉を開けると彼女らはスーツケースを押してエレベーターまで急いだ。 二つのスーツケースのゴロゴロゴロ…という音が慌ただしく廊下に響く。 あかねの表情は不安げ。しかし、ひかるのそれは…険しい。 (一体…先輩とまどかさん…)
ロビーに出ると、タクシーが数台止まっていた。運転手がすぐに二人の荷物 をトランクに積んでくれる。あかねが片言のイングリッシュで行き先を 告げると、彼は(Airport?)少し首をひねって、ミラー越しにあかねを見る。 そんな気配を感じたあかねは 「クイーンズ、メディカル、センター、プリーズ!」 再度念を押した。 タクシーの中では会話が出てこない。二人とも黙っている。 あかねは二人の安否が気がかりであるのはもちろんのことであるのだが 隣でふさぎこんでいるひかるのことも気になっていた。 ひかるは両手で顔を覆ったままずっと下を向いている。 (…先輩とまどかさん…またあたしの知らないところで…) 病院玄関にタクシーが着くと、助手が待っていた。すぐにトランクから荷物を 降ろし、運転手にチップをはずんで引き上げてもらった。 「とにかくこっちへ…」 助手は流暢な英語でフロントにスーツケースを一時預かってくれるよう頼み すぐに二人を安静室の方へ案内する。あかねもひかるも表情が険しくなってきた。
よくわからんが幽体のまどかが同じく幽体の恭介をひっぱたいたという事か
おお やっと蘇生したか! 妄想が……
「あかねちゃん!ひかるちゃん!」 それまで気丈に振る舞って、泣きじゃくるくるみを慰めていたまなみだったが、 二人を見た途端目から涙が溢れ出した。 あかねは駆けて来たまなみを抱きしめる。 状況が分からないだけに、何と声をかけたらいいものか… あかねはソファーにぐったりとなっている恭介を見つめた。 ひかるはちょっと躊躇ったが、すぐに恭介の傍へ走った。 「先輩!先輩…」 恭介の手を握ると、とめどもなく涙が溢れてくる。 「大丈夫だよ、ひかるちゃん。薬で寝ているだけだから…。」 隆は肋骨が折れていることについては触れなかった。 打撲や裂創は、取り敢えず服の下に隠れている。 ひかるはハッとなって声を荒げ慌て出した。 「まどかさん…まどかさんは?!」 「今、治療が終わったばかりで安静中だから、入らない方がいい。」 その時、安静室から看護師が出てきて、口に指を立て「シー」っと言うや 少し微笑んで「ドウゾ。」と言ってくれた。 隆は眠っている恭介を残してみんなに手招きする。 「静かにしていよう。」
517 :
元祖 :2009/05/27(水) 00:11:20 ID:???
507が起こしてくれたのかな? 483の*が気になってたんだけど、そういうことか。 510の*は秀逸!ちょっと涙が出たよ。 張り切り過ぎないでね!
コクリとうなずくと、ひかるはそっとドアを開け入って行った。 まなみはあかねに支えられ、くるみは隆になだめられながらそっと後に続く。 ベッドは少し起こされており、そこには長い髪の女性が眠っていた。 点滴が数本ぶらさがり、口と鼻を覆うように酸素マスクがつけられている。 モニターの音や画面が騒々しく、見た目がすでに重傷である。 顔を包帯で巻かれて、尚且つアイシングされているのだが、その姿自体が まどかが受けた惨状を物語っている。 「まどかさん…!」ひかるはベットの傍で嗚咽を我慢している。 くるみはシクシク泣き出す。まなみは声を失い、倒れそうになった。 あかねも泣き出しそうになったがそれを堪え、とにかくまなみをかかえ 部屋の外に連れ出した。隆もくるみを連れ出す。 「大丈夫?まなみちゃん。」 「まどかさん…可哀相…お兄ちゃんもまどかさんも何で…」 ひかるはベッドの傍でまどかを見つめている。 まどかは時々苦悶様の呻き声を漏らしている。
「まどかさん…なんでこんなことになっちゃうんですか?」 ひかるはまどかの顔にかかっている髪をそっと分けてやり、彼女の手を取ると やさしくさすり出した。さする自分の手の甲に、大粒の涙がぽろぽろと落ちる。 看護師がやって来て、この辺で一旦部屋を出るように促された。 ひかるは名残惜しそうにまどかを見つめながら部屋を出ると、目を覚まして ソファにうなだれて座っている恭介を見た。その瞬間 「先輩!!」 恭介に駆け寄るやしがみついて泣きじゃくる。恭介は胸の痛みを堪えた。 警察と通訳がやって来て状況を訊きたいと言う。大凡のことは、マリーや 早川みつるから訊いている。もちろん、一部は当事者の恭介がしゃべったもの だが、改めて事実確認する必要があった。 あかねはひかるを恭介から離し、抱きしめてやった。 恭介はまどかとバーに居たことなどは端折って…ビーチを散歩して帰ろうと したところ、暗闇でいきなり襲われた…と、最も簡単な経緯のみを語った。 確かに身に覚えもない突然の暴力であった。 何故こんなことになったか恭介が訊きたいくらいであり…。
>元祖 あんたと趣味が合うかも知れん。 俺は510にGiovancaのjoyrideを当てる。 歌詞も合ってるし。 あんたなら?
521 :
元祖 :2009/05/28(木) 07:42:27 ID:???
Chrisette Michele - What You Do (Feat. Ne-Yo) でしょうか? スレちがいになるから止めましょうよ。
今、3日かけて全部読み終えたところで、ようやく書き込み出来ますな。 読みはじめたら引き込まれてあっという間に読み切ってしまいました。 まどかが出汁を作ってるところなんか大爆笑してしまいましたよw ちょっと状況描写での蛇足な部分と伏線が多い気がするけどあの日を最近みた自分にとっては 作者様の文章には引き込まれていく魅力があると思います。 とにかく続きを期待しています。頑張ってください。作者様。
523 :
有難う! :2009/05/29(金) 00:44:07 ID:???
警察は恭介と隆に落ち着いたら一緒に署に来て欲しいと伝え引き上げた。 それまで黙っていた隆が口を開いた。 「どうして帰る日の夜中にホテルを出たんだ?」 「ごめん…なんか帰るのが惜しくなって…」 隆には、この場でそれ以上恭介を問い詰めるのは躊躇われた。 子供達が居るしあかねも居る…そして、何より…ひかるも居る手前。 隆は助手に手招きし、あかねとひかるに伝える。 「君たちはこのまま黙って彼と日本に帰ってくれないかい?」 「嫌です!まどかさん、あたしじゃないと看病出来ないし。それに…」 「ひかるちゃん、気持は解るけど…」 「先輩…あたし傍に居たいです!」 あかねがひかるをやさしく諭す。 「ひかるちゃん、あたしたち家族じゃないじゃん。『大人の事情』でついて 来られてる訳だからさ…ね?これ以上は迷惑掛けられないし…。」 隆からすれば列記とした事件なだけに、部外者を巻き込む訳にはいかない。 「そんな…」 ひかるは恭介の膝に手を置いてうつむいてしまった。
病院の玄関であかねとひかるが見送られる。 「あかね、毎日連絡は入れるから。ひかるちゃんを頼んだよ。」 ひかるは目を真っ赤にして恭介を見つめている。 そして、意を決したように恭介に伝えた。 「まどかさんを…まどかさんをお願いします!」 「…うん。」 見送るみんなを見ながら二人と助手はタクシーに乗った。 タクシーが空港に着き、3人はスーツケースを預けると搭乗手続きを済ませ 出国審査を終えるや搭乗口に急いだ。もう搭乗が終わりがけであった。 「あかねさん…まどかさん大丈夫でしょうか…」 「うん、心配だね。でも、きっと彼女のことだから…」 頬をスルッと涙がすべった。 「…クッソォ〜!悔しいよ…」 帰らなければならない自らの立場に歯がゆさを覚えているのはあかねも一緒。 嫌な思いを残し帰国の途に就く二人。 ただただ、残念な思いで窓の外を眺めるしかなかった。 隆は観光協会が延泊の手続きをしてくれた。土地の観光CM作成のつもりで 招いた一家を酷い目に合わせてしまって、主催者は申し開きが出来ない。 昼過ぎにはホノルル市長が見舞いに来るとのことである。 一番のお得意様である日本人に被害が及び、財政の大部分を観光に頼っている 市としても対応を素早くする必要があった。
病院の玄関であかねとひかるが見送られる。 「あかね、毎日連絡は入れるから。ひかるちゃんを頼んだよ。」 ひかるは目を真っ赤にして恭介を見つめている。 そして、意を決したように恭介に伝えた。 「まどかさんを…まどかさんをお願いします!」 「…うん。」 見送るみんなを見ながら二人と助手はタクシーに乗った。 タクシーが空港に着き、3人はスーツケースを預けると搭乗手続きを済ませ 出国審査を終えるや搭乗口に急いだ。もう搭乗が終わりがけであった。 「あかねさん…まどかさん大丈夫でしょうか…」 「うん、心配だね。でも、きっと彼女のことだから…」 頬をスルッと涙がすべった。 「…クッソォ〜!悔しいよ…」 帰らなければならない自らの立場に歯がゆさを覚えているのはあかねも一緒。 嫌な思いを残し帰国の途に就く二人。 ただただ、残念な思いで窓の外を眺めるしかなかった。 隆は観光協会が延泊の手続きをしてくれた。土地の観光CM作成のつもりで 招いた一家を酷い目に合わせてしまって、主催者は申し開きが出来ない。 昼過ぎにはホノルル市長が見舞いに来るとのことである。 一番のお得意様である日本人に被害が及び、財政の大部分を観光に頼っている 市としても対応を素早くする必要があった。
皆は安静室の前に戻ると、現地のスタッフに加えマリーやボブも来ていた。 しかし、案の定、ロイは警察に呼ばれていた。 マリーは恭介の具合を確認しながらはやる気持ちを抑えるように尋ねる。 「まどかは?大丈夫なの?」 「はい、今は眠ってる様です。ちょっとしか会えないみたいで…。」 恭介は隆に事情を話し、助けてもらった経緯を伝えた。 現地スタッフも一緒に事情を聴き、それぞれが通訳したりしながら そこに居る全員が事の詳細をつなぎ合わせた。 間もなく担当医がやって来て、まどかが一時危ない状況にあったこと、そして 恐らくもう心配は要らないだろうが、数日は入院が必要であることを伝えた。 マリーは一目会えないのか訊くのだが、ドクターは本人の負担になるので、 面会は明日以降にしてもらえないかと提案する。そして、自分達が付いている ので心配しないで欲しいということを付け加えた。 彼女は引き下がるしかなかった。まどかのためにも。
皆は取り敢えず、それぞれ今日しなければならない仕事へと向かった。 マリーはぶつぶつと独り言をつぶやいている。 (今日は…今日は笑えない…仕事キャンセルしよう…) 恭介達は事情聴取と犯人達の面通しのために警察に向かった。 いずれ、まどか本人からも聴取されることになる訳であるが、 立件は容易であり、調書は形式的なものになる。 なぜなら、犯人達が暴行の一部始終をビデオカメラに収めていたから。 これ以上の証拠はなく、やつらに弁解の余地は何も無かった。 一方、ロイについては警察も加担し正当防衛をねつ造してしまった。
同日、朝の空港税関出口にて 「我々はホノルル市警の者です。鮎川さんですね?」 「まどかは大丈夫なんですね?!」 まどかの父が険しい表情で訊ねた。母親の方は冷静さを失い、自分を 抑えきれないでイライラしている。 まどかのコンドミニアムを管理する不動産から、所有者である父母の現住所や 電話番号、さらには鮎川家の顧問弁護士、税理士等など、全てが調べられ、 その所在がまさにここハワイに向かう機内にあることが判明するや、すぐに 連絡が入った。
ファーストクラスにて CAがくつろいでいる夫妻の元に近づき 「機長からの伝言です。どうか落ち着いてお読みになって下さい。」 内容は、娘が傷害事件に巻き込まれ入院する事態になている、幸い娘は 無事であるが怪我の程度は重傷である、署員を空港に迎えに行かせるので 同行して欲しい旨、書かれていた。 あと2時間程度で到着すると言うのに…、夫妻は娘が無事であるという その一点だけで何とか冷静を保とうとしていた。
病院へ向かう車内で事件の詳細が伝えられた。 落ち度と言えば、未成年が深夜に外出していたくらいで、娘が被害者である のは間違いない。しかし今はそんなことより娘の安否をこの目で確認したい。 病院に着くや、待ち構えていた市の職員と刑事が病室に案内する。 安静室の前に居たもう一人の刑事が夫妻を見るや、主治医を呼んだ。 主治医は簡単に自己紹介をし、ソフトな口調でまどかの病状の説明を始めた。 取り敢えず落ち着いているので面会は手短に留めて欲しいことと、口腔内の 裂創を数か所縫合しているため、栄養は中心静脈栄養でしていること、 そして会話はさせない方がいいと。
夫妻は娘のベッドに案内された。 看護の手が空いたことと、面会に来る両親にショックを与えないよう、隆達が 見た時よりは衣服や血液の後は綺麗にされていたが、顔面を包帯で巻かれ さらにその上からアイシングされている娘の姿を見て二人は絶句してしまった。 主治医がまどかに声を掛けた。 ぼんやりと宙を見ていた眼が動く。 そして、首を動かしあらためて両親が来たことを確認した途端、 両眼から涙が溢れ出した。 声にならない声でマスク越しに何かを伝えようとする。 (ママ、パパ…ごめんなさい。) 主治医が制するより先に母が近づき 「いいの、何も言わないで。いいの…」 母も泣き出した。もう、ひたすらまどかの手をさするだけである。 「まどか、今は安静が必要だから、辛抱して頑張りなさい。 パパとママは一旦出なきゃならないけど、後で戻ってくるからね。 辛いだろうけど辛抱しなさい。」 そう言って、まどかの頭を二度三度とやさしく撫でて微笑みかけた。 今のまどかには、強がるにも余力が無かった。 出て行く父母の後姿を見つめながら、唯々悲しみが込み上げてきた。
列記
大ごとになったなぁ 日本でテレビニュースになるぞ 被害者が一般人でも大騒ぎになるのに世界的な音楽家の令嬢が事件で重体なんて
その令嬢が不良だもんなあ・・。
535 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2009/05/29(金) 22:25:10 ID:X+B3yewT
鮎川夫妻と春日家の初対面の流れですね? 難しくなってきましたw
ゴメンあげちった… またしばらくROMってるわ
両親は一旦病室から出されると、刑事から事の詳細を聞かされた。 「で、一緒に居た少年は?」 「今、お父さんと署で調書作成に協力して頂いています。」 「大丈夫だったのでしょうか?」 「ええ、彼も肋骨を数本折る大怪我をしていますが、 入院には至らずに済んだようです。」 さらに、マリーやロイ達の協力や、日本の芸能人『みつる早川』のお陰で 一命を取り留めたことが伝えられる。 母は自分の娘がいろんな人達に守られていることを心から神に感謝した。 (守られているということは、愛されているということよ、まどか。) 一時して、隆と恭介が戻って来た。 刑事と地元観光協会のスタッフ達を間に、お互いが紹介された。 まどかを守れなかった自分を恥じて、恭介は下を向いていたが、 まどかの父は近づくと両手で恭介の手を握りやさしく語りかけた。 「君がまどかの楯になってくれたんだね? 有難う、本当に。」
しばらく空いてたのに始まったら続くね 乗ってきたのかな
月曜のお昼過ぎ。 眩しいほどの陽差しがブラインド越しに病室に差し込んで来る。 安静室はカーテンで数か所に仕切られているが、今はまどか一人であった。 2時間くらいか、まどかは再びぐっすりと眠っていた。 * まどかは恭介をやさしく見つめていた。 (こんなに弱い人だったなんて…でも、だから、ずっと傍に居てあげたい。 だって、あたしだって…そうだもん。) カーテンが分けられる音で目を覚ますと、担当医と話をしながら 自分の方に進んで来る両親の姿が視界に入って来た。 (…あれ?春日クン…春日クンは?) あらためて目を覚ますと、「今」と思っていたことが (…『夢』…だったの?) でも、抱きしめた感触ははっきり覚えているし、 指でなぞった恭介の涙の温かさも残っている。 「…春日クンは?」 マスク越しで聞き取りにくい。 「まどか?目が覚めたの?」 両親が顔を近づける。
そろそろかな?
5/3の次が5/26 また一ヶ月ほど空いたりして
とりあえずワイハ編終了迄は頑張ってクレ そのあとゆっくり休めばいい。
「ママ…パパ…。」 今度はマスク越しでもはっきり聞き取れる。 「何?」 母がまどかのマスクに耳を寄せる。 まどかはかすれた声で 「かす……ううん、何でもない…」 頭を動かし辺りを見回す。 すると、隅で不安気にまどかを見つめている恭介の姿が。 (…春日クン…無事で良かった…) まどかの視線はそのまま止まった。 そして、あっという間に恭介の姿が涙でぼやけて行く…。 恭介はベッドに近づき…涙が出てくる。 そっとまどかの手を握り、涙で濡れた頬に笑顔を作り 「あれは効いたよ。痛かったけど…でも、有難う。」 (え…?)
痛みを堪えて尋ねようとする。 「春日クン…あのさ、そのこと…」 「今は喋っちゃダメだよ、口の中傷だらけなんだから。」 「…うん。」 「そうよ、たくさんお話ししたいことがあるでしょうけど、今はダメよ。」 まどかの体調が落ち着いて来た。問い掛けへの反応がしっかりしている。 (もう大丈夫だな。) そう見て取った父が 「ママ、ちょっと出ていよう。春日さん、良かったら外でお話しでも。」 「そうですね、今後のこともありますし。」 隆と両親が出ようとするのに、ついて出ようとする恭介を見やって 「申し訳ないが、君はもうちょっとまどかについててくれないかね?」 「…え?」 まどかの父はニコリと笑って恭介を残しドアを閉めた。 恭介はベッドの傍に座って、ハンカチで涙を拭いてやる。 「ごめん、役に立てなくって…」 「ううん、春日くんのお陰で生き返っちゃっ…あ痛たた…」 「あ、喋っちゃダメだよ。」 「あはは…痛っ。」 「ひかるちゃんとあかねは先に日本に帰ってもらったから。」 「そう…心配かけ」 押し留めるように 「解ってるって、ちゃんと連絡しとくから。もう、喋んなくていいよ。」
ふと、どちらからともなく急に黙り、二人は見つめ合った。 サッシから木漏れ日越しの強い陽射しが差し込んで来る。 床に反射した光で病室内がキラキラと明るく輝いている。 まどかは少し手を伸ばして、ベッドに置いていた恭介の手を握り、 そして…指を絡ませてきた。 白くて長い指が、 恭介をいたわるように、 やさしく、しなやかに動く。 (春日クン、あなたがあたしの命の恩人だよ。 岸に残した泣き虫さんを放って行けないじゃない。 でね、決めたの。あたしは…)
トントン。 慌てて手を離すまどか。 看護師がバイタルの測定と採血に入って来た。 「Sorry…」 雰囲気を察して、事は淡々と事務的に進められ 一通り終わると点滴の調節をして出て行った。 急に恥ずかしくなって、まどかは余所を向いた。 「あ、…俺、そろそろ出なくっちゃ。じゃ、また来るね。」 「あ、…うん…。」 恭介も我に返って、あたふたと病室を飛び出した。 まどかは余所を向いたまま考え出す。 (でも、あれって…何だったんだろう?) 今触れた手をもう片方の手でそっと握り、ぼんやりと考えている内に また恭介と遇えそうな気がしてまどろみの中に落ちて行った。
甘いなあ〜・・。
まだかな?
流れ的にダレるとこだから仕方ないが…
じゃあ、盛り上がってんの、オレだけ?
>>550 そんなことない。
ただ蛇足な状況描写が長い分、物話の進展が遅いのが気になってるだけ。
悪くないんだけど作者様自体、それに嵌まっちゃってんからさー。
今夜はあるかな?
容態も安定しており夕刻前にまどかは一般病棟の個室へ移された。 市側の計らいもあって、特別室が当てられた。 ホテル並みの家具調度品が備え付けられている。 「パパはもう家に帰っていいわよ。まどかは私が看ますから。 久しぶりに一緒に寝られるわね、まどか。」 嬉しそうに語るママ。 紙に書くまどか。筆談開始。 『ママも今日着いたばかりだから疲れたでしょ? パパと一緒に帰って下さい。』 「何遠慮してるの。親子でしょ。」 また紙に書くまどか。 『首から下は平気なの!』 「ダメよ!今日くらい言うこと聞きなさい。」 わざと小さく書く。 『ママ、目の下クマってるよ。お化粧全滅してるし。』 小さい字を声に出して読みながら 「え?…!!」 慌てて洗面所に見に行く母を父と一緒に笑ってる。 「まどかにかかっちゃ、ママも形無しだなあ。」 『本当にごめんなさい。パパもママも大好きだから、今日はゆっくり 休んで欲しいの。お願い。私は大丈夫だから。』
コンドミニアムに帰り着く両親。 お互いシャワーを済ませ、ソファでくつろぐ。 「とにかくまどかが無事で良かったよ…ママ、ドンペリ開けようか?」 「いいわね。」 長旅の先にとんだ事件。 でも、娘が『何とか』無事でほっと一安心。祝いたい気分である。 カウンターに電話して、地下のワインセラーのドンペリを持ってきて 貰うよう伝える。 「お待ち下さい、今お調べ……あの〜、先日お召し上がりになったのでは?」 「え?…あ、ああ、そうでしたわね。ごめんなさい。」 電話を切ると呆れたように 「『先日お召し上がり』だって。パパ…やられたわね。」 「まどかのやつ…一体幾らすると思っているんだ。」 ママはちょっと飲めそうなものをあちこち探しながら 「冷蔵庫にシャンパンがあるけど、これにします?」 「ああ、何でもいいよ。…ところでさあ、ママ、まどかのことなんだけど」 「あら、あなたもお分かりになりました?そうなのよねえ… あの『おてんば』さんが、しおらしいったらありゃしない。」
ママは続ける。 「問題起こす度に学校に謝罪に行ってたんだけど、まどかったらいつも 知らん顔してたくせに…。」 「まどかと会うのは半年ぶりくらいだが…少し女性らしくなったね。」 パパはシャンパンの栓を上手に開けてグラスに注ぐ。 ママは冷蔵庫の中にあったフルーツをカットしてお皿に盛って出す。 「お疲れ様〜。」 チン!グラスが鳴った。 「1か月前もね、酷い怪我して入院したでしょ?その時、お姉ちゃんと 話したのよ。でね、まどか雰囲気が変わったって。丸くなったって言ってた。」 「そう言えば高校に上がる頃から事件を起こさなくなったかな?」 「あら、2か月続けて大層な事件に巻き込まれてるじゃないですか。」 「ああ、でも、まどかが起こしたんじゃないだろ?」
ママはぐいっとシャンパンを飲んで身を乗り出すように話を続けた。 「実はね、この間お世話になった眼科の先生にお礼をしておいたんだけど、 その後、向こうから返礼の電話があってね、で、いろいろお尋ねしたら、 どうもその時も春日さんと一緒だったみたいで…今度もでしょお?」 「ああ、でも見た感じ普通の子だよね。どちらかというと地味かな?」 「お付き合いしてるのかしら?」 「まあ、まどかももう子供じゃないんだから、いろいろあるんだろうけど… とにかく、もう少し大人しくしてて欲しいもんだよ。」 パパは溜め息交じりにシャンパンをお代わりする。 (本当ならドンペリだったのに…) 「でも、相変わらず夜遊びだけは変わらんなあ…誰に似たんだい?」 「あら、私のせいって言うの?」 「あの頃の君はカッコ良かったもんなあ。似てるよ、やっぱり。」 「まあ!『い、ま、も、』よ。」 昔を思い出すように、二人はシャンパンを持ってラナイに出た。 「あれ?止めてなかったの?」 「ええ…なんか、止めたら『あたし』らしさが無くなるようで…。 でも、たまによ、たま〜に。ごめんなさい。」 ママはちょっと笑って煙草に火を付けた。 ラナイは禁煙になっているのだが…。
ちょっと煙をくゆらせて、すぐに消した。 (それにしても…) ママは娘がお相手に迷惑を掛けているのではないか心配している。 「まどかが春日さんを巻き込んでるの?それとも逆かしら?」 「どっちでもいいさ。いろいろあるんだろう、まどかにも。 とにかく、まどかが無事で、幸せになってくれたら一番さ。」 「そうね。随分手を焼かせてくれるけど、あの娘が私達の子で 良かったと思うわ。何事にも慎重なお姉ちゃんはあなた似、 まどかは…やっぱり?」 ママはおどけたように自分を指さす。 「そう、キミだよ。」 一方病室では清拭と着替えを済ませたまどかがソファに座っている。 部屋を暗くし備え付けのラジオから流れる音楽を聴いていた。 胸元からは点滴のラインが伸びている。 スタンドにぶら下がる大きなバッグと小さい小瓶を見上げ溜め息を吐く。
(みんな心配してるだろうなあ…) 電話をしたくても声を出せない。 点滴スタンドを押して窓際に移動し、 ぼんやりと街の灯りをを眺めながら考えてしまう。 (この間といい、今回といい …… 妙なゴタゴタに巻き込まれてるなあ、あたしと春日クン。 あたしが自分の気持に素直になった辺りからよね。 神様がお怒りになっているのかしら?…ひかるの…)
喉が渇いてきたため、一旦洗面所に行きガーグルでうがいをする。 そして、恐る恐る水を含み、ゆっくりと喉に流し込む。 (美味しい!) 今度は冷蔵庫にあったお冷をグラスに移し、少しずつ流し込む。 (あ痛っ…冷たいと沁みるなあ。でも、美味しい。) 再び窓際に移動した。 またぼんやりと街の灯りを眺めてしまう。 (あたしの神様は…? 春日クンの神様は…? そして……あの『記憶』は…?)
素敵なママだね!
562 :
元祖 :2009/06/19(金) 22:02:06 ID:???
あの作品は「はまらない」けど この妄想は意外と「はまる」ね。 あの作品は「辛い」けど この妄想は「甘い」ね。 あの作品はまどかちゃんが「独りぼっち」だけど この妄想はあかねちゃんやまりーさんがいるね。
>元祖 俺は「あの日」にもはまった。 切なかったけど。 それ以外は同意する。 ツンデレもいいけど、まどかの良さを あかねやマリーやまなみに引き出して欲しい。 姉やママとのやり取りも面白いと思うぞ。
「あの日」はまどかがまったくの別人(性格が)になってたんではまれなかった
とりあえず、OVA復活きぼんぬ。広瀬さゆり編で3本。 特にハワイのがみたい。
これは、きまオレと似て非なるもの。オレは好きだけど。
気を持たせやがって。
568 :
作者に敬意 :2009/06/23(火) 17:20:45 ID:RilwBfk8
保存版作りたくてワードにコピペしたら3時間以上かかって170Pオーバー! 3週間かけて文節つなぎ編集して現在110P。やっと追いついた・・・。 編集して読みやすくするとこれがまたえぇんやわ。 >2がプロローグで>217までが第1章その日(とき)がくるまで編 >218〜現在が第2章ハワイ(ふたりの絆)編ってとこかな? 最初は回顧録を勢いでUPしてた感じするけどすぐに脳みそ飛び出すほどの 努力がうかがえる。がんばれ作者!!
569 :
元祖 :2009/06/24(水) 00:29:34 ID:???
え〜!!私と同じことやってる人発見! そうですよね〜!もう、凄い量ですよね? 私は、作者さんの気持ちや想いを壊さない様に 文節や行間を残すようにしてます。 そろそろかな? 待ってま〜す!
570 :
元祖 :2009/06/24(水) 00:32:20 ID:???
>2がプロローグで>217までが第1章その日(とき)がくるまで編 >218〜現在が第2章ハワイ(ふたりの絆)編ってとこかな? そうですね。その題頂きま〜す。
571 :
お前ら… :2009/06/24(水) 11:35:07 ID:???
呆れた奴らだ。俺もだが… ちなみに俺はワードのフォントをMSUIゴシックにして サイズ12、段落間隔13、文字数、行数詰めに詰めて 枚数少なくしてるぞ。 元祖が言うように、分節や行間は大切にしている。 確かに568が言うように、そういう流れだよな。 「二人の絆」かあ・・巧いこと言うな。
572 :
作者に敬意 :2009/06/24(水) 16:55:58 ID:???
敬意が足りなんだ〜。作者様ゴメンなさい。 オリジナル盤保存作業開始!
573 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2009/06/25(木) 00:03:47 ID:iT52w8rq
他人の妄想をまとめて小題まで付けるとは…… フッ くだらん…… ことをやってるのは俺だけじゃなかったとはな……
574 :
元祖 :2009/06/25(木) 09:09:56 ID:???
だってさあ、面白いんだもん。 あたしまで妄想にふけっちゃうよ。
どうも皆さん同じ事を考えてるようで… ハワイ編は繋げて読むと圧巻ですな。
576 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2009/06/26(金) 15:00:22 ID:8gE1uNtg
俺は「第一章」が好きだな。 まどかが自分の気持ちをはっきりさせたし。 ひかるにも宣戦布告してるし。 あの日につながる下地がしっかり出来たんじゃないかな? ちなみに、そろそろ2週間。 作者さま、早くアップしてくれ!
577 :
元祖 :2009/06/27(土) 08:39:46 ID:???
昨夜もなかったね。ひかるちゃん居ないから 今のうちだよ、まどかちゃん。
578 :
作者に敬意 :2009/06/27(土) 10:21:10 ID:???
つぎの妄想投下まで時間あれば、ほかのKOR小説読むのどーだろ? さらにこの作品にハマれるかもね。 6年越しのラブレター→誰かのための→Subsquemt tale of KOR →KOR_Bible of Love_Parallel_Novel→赤い麦藁帽子 って流れですか?元祖さん??(っか、あなたなら全部クリアしてる気がしまして・・・) 未完成も多いけど、読む側の妄想がもっとひろがるよ。 知ってる人、多いでしょうね。スンマソ・・・
579 :
元祖 :2009/06/27(土) 12:28:05 ID:???
いえいえ!お察しの通りで〜す。 あたしはBible of Loveが好きでした。 早川ミツルがまどかちゃんやあかねちゃんにやられるやつ。 そして未来の娘と出会うやつ。 後者はすごく切なかったなあ。 北海道編は、ひかるちゃんとまどかちゃんのフォローを してて、ほっとしましたよ。 お陰で「あの夏」につながりやすかったかなあ。 「作者に敬意」さん、有難う!
今晩あたり・・
581 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2009/06/28(日) 21:05:15 ID:S1WfLD2f
日テレが夏休みに『マジカルエミ』『飛影』『キン肉マン』の再放送を流してた頃に戻りたい
582 :
元祖 :2009/06/29(月) 09:14:32 ID:???
このスレ、分量多くってサーバーに負担掛けてんじゃない? あんまり上げない方がいいよ。スレが抹殺される危険性が心配。
>>582 どのみち600〜700レスあたりで落ちるでしょ?
それもこれも作者様次第なんですが…
pukiwikiで、まとめサイトでもつくれば安心?。
また規制食らってるのかな?
>>584 さん是非ともお願いします。
この作者、まとめてど〜んと出すだろ。 鯖負荷かけてるから、出入り禁止されてんじゃね? 上げなきゃ目立たなかったかもな。
出来ただけ出さずに小出しにするといいかもね
588 :
元祖 :2009/07/01(水) 09:29:59 ID:???
アクセス禁止?だったら嫌だな〜。また1か月以上待つの?
現地の深夜、恭介はひかるにに電話する。 「せんぱい!本当ですか?良かった…良かった…」 電話先のひかるは嗚咽を漏らしている。 「こっちが落ち着き次第帰るから。うん、鮎川は喋られないから 今は筆談みたい。ひかるちゃんに連絡取りたがってたけど…」 取り敢えず報告を済ませた。 「先輩!早く帰っ…いえ、まどかさんに付いていてあげて下さいね。」 自分の想いをぐっと飲み込んだ。 あかねにも連絡する。 「本当?良かった〜。えー!当分喋られない?何ぃ〜!2〜3日? も〜、びっくりさせないでよ〜。ところでさあ、こっちじゃえらいことに なってるよ。『お手柄早川』で持ちきりでさぁ。」 「ひょっとして、俺達のこともバレてるのか?」 「それより、あいつが内緒で連れて行ってたタレントの女の子のことが 大騒ぎになってて…スケープゴートって感じ。心配要らないみたいよ。」 「でも、お礼を言わなきゃ…まだ居るのかな?こっちに…」 「恭介、今はまどかちゃんのことだけ考えてあげてよ。そして……」 「何?」 「…いや、いい。帰って来てからだね。」
翌日 隆とまどかの父は、今後のことについて弁護士と打ち合わせをしていた。 一方、ママはまどかの病室から離れない。髪を三つ編みにしてあげたり、 口の中の傷に触らないよう、喉越しの良いゼリーを食べさせたり、 とにかく甲斐甲斐しい。 久し振りにじゃじゃ馬娘の世話をやけるのがなんとも嬉しそう。 (煩わしいなあ…でも、まあ、好きにさせとくか…) ママの顔を見た途端泣き出した素直な娘は何処へやら。 「ねえ、治ったら何食べたい?」 『お腹減る』(じゃない!んもう!) 「あら、食欲はあるんだ。」 『当たり前』(でしょ!) パパッと紙に書いて応酬する。 (有り難いんだけど、ママが居ると春日クンが来づらいじゃない。) お昼が過ぎて トントン。 笑顔でドアの方を振り向くまどか。 大きな花束と共に早川みつるが現れた。 まどかから笑顔が薄れて行く。
「あら、あなた『早川みちる』さんでしょ?この度は…」 ガクッと膝を折る。 「あの〜『みつる』です。初めまして、お母様ですか?」 まどかがソファからじっと見ている。 「やあ、大丈夫?いや〜、それは良かった。うん、うん。」 相変わらず勝手に馴れ馴れしい。 (やれやれ)といった表情で 「ふっ…」 少し笑ってまどかは紙に書き出した。 『色々聞きました。あなたのこと勘違いしてたみたい。 ちょっと見直したわ。本当に有難うございました。』 紙を渡すと、まどかは笑顔で早川を見つめた。 「え?あ、あぁ…。」 厚かましい彼のハートがまどかの笑顔の前でドキドキしている。 (こいつにこう出られると調子狂うな。俺、本気で恋しちまったかな…?) トントン 花束を抱えたマリーが現れた。 まどかは今日一番の笑顔になる。
「まどか…良かった。本当に良かった。」 顔のむくみも随分取れ、包帯も少なくなったまどかを見てマリーは涙ぐむ。 ママはマリーと早川の二人に深々とお辞儀をする。 「皆様に守って頂いたお陰で、娘は命拾いをしました。今は話せませんけど 娘に代わってお礼申し上げます。本当に有難うございました。」 『大好きなマリーさん、この度はいろいろとご心配をおかけしました。』 マリーが来てくれた時のためにと、予め綺麗な便せんに書いておいた 手紙を手渡す。そして、わざと涙を拭う真似をすると笑顔になった。 「コラ!心配したんだぞ〜。」 マリーは笑顔になってまどかに抱きついた。 「あ、じゃあ、俺はこの辺で。」 「あら、今コーヒー入れますわよ。」 (まあ、今日は母親もいるし…それに) 下にカメラマン達が待ち構えている。 「いえ、も〜お構いなく〜…。それじゃあ。」 そそくさと部屋を出ると、ドアのところに恭介が立っていた。 「よう!何しょぼくれてんだ?」 「あの…助けてもらって有難うございました。俺じゃ彼女を守れ…」 「そんなこと無いさ。聞いたぜ、お前よくあんな連中に向って行ったな。」 「……」 早川は少し兄貴風を吹かせセリフを決める。 「まあ、いいさ。貸しを作ってこれでハンデ無しだ。遠慮はしないぜ。」 颯爽とエレベーターに乗り込んで姿を消した。
作風変わった?
玄関にはスクープ狙いのカメラマンが大挙している。 ロビーに降りるや、マネージャーが慌てて袖を引っ張り、裏口へと向かう。 「What?」「すみません!」「Fuck!」「ソ、ソーリ〜!」 二人はドタバタと音を立てながら厨房をくぐり抜け、病院を後にした。 結局、恭介はまどかの病室を訪れないまま帰ってしまった。 一方、病室ではマリーとママと3人がフラの話題で夢中になっている。 もちろん、まどかは頷くばかりなのだが。 「いいの?」 コクリと頷く。 (だって、もうここ飽きちゃったんだもん、退屈で。) 二人は顔を見合せ、ハミングしながらゆっくりと踊り出した。 ママはそれを真似している。 まどかは胸から点滴が入っていることを忘れている。 トントン。 看護師が点滴の調整にやって来た。 まさにフラの瞬間を見つけ、「NO、NO…」と顔を振りながらまどかを ベッドに戻した。看護師が出て行ったあと3人はちょっとバツが悪そうに ベロを出す。みんな悪ノリが過ぎた。
トントン。 今度は仕事帰りのボブとロイであった。 「ヨウ!マダイタノカイ、ハニー。ヤケニ タノシソウダナ。」 「ビョウシツ トハ オモエナイゼ。…?『ナイト』ハ ドコダイ?」 ロイは恭介の姿を探した。 歓談も終わり、3人は部屋を出る。ドアのところまで見送りながら 母は退院したら挨拶に伺う旨伝えた。 「まどか、あなたはいつの間にこんなに素敵なお友達を作ったの?」 そう言われると、あらためて今までになかった人との繋がりを感じる。 ひかるや恭介達に加えあかねやマリー、そして屈託のない人々。 今の自分が幸せであることをしみじみ感じるのであるが… (『肝心なの』が、今日はまだ来てないんだけどなあ…) 昨日より元気になった姿を見て欲しかった。
その『肝心なの』は、ホテルに戻って考え事をしていた。 何となく、まどかの前に姿を現しにくい。 まどかを守れなかった惨めさもあったが、それ以上にまどかと 『不思議な空間』 を共有してしまったことへの戸惑いがあった。 (俺達って何者なんだろう…?) 「恭介、どうした?」 「うん…実は…じいちゃんから聞いてはいたんだけど… 今日初めて『トリップ』しちゃって。」 「あの時かい?」 「うん、自分では意識してないんだけど…巻き込まれるって感じで。」 「やっぱりそうか…で、どこに行ったんだい?」 「それが…ビーチでね、あれはワイキキだったと思う。そこで…」 「母さんから聞いているよ。私も逢ったことがあるよ、母さんと。 それが、お前たちの『能力』らしい。そう、大切な人が本当の危機に 瀕している時に急に現れると言う。」 「…うん。」 「それで、言ったのか?まどかちゃんに。」 「ヒントを伝えてしまったかも知れない。」 「じゃあ、あとは彼女次第だな。まあ、ゆっくり考えればいい。」 「そうだね…。」 恭介は、またぼんやりと外を眺め出した。 離れて聞いていたまなみが (やっぱり…お兄ちゃんとまどかさん…。) ひかるのことが少し心配になってきた。
597 :
トントン :2009/07/06(月) 19:16:40 ID:???
お〜、待ってましたよ。 アク禁解除?おめwww
結局超能力を持たせたか・・。 俺的には、それじゃない方が良かったのだが。 それを使ってコメディタッチにしないで欲しい。
俺は適度に有ったほうがいい 超能力ないならきまオレじゃなくてもいいし
600 :
鮎川宅にて :2009/07/11(土) 17:05:32 ID:???
退屈だなあ。
もう夏だぞ!梅雨も明けたし早いとこ決着つけてくれ!
永遠の夏……これこそがきまオレの真骨頂
夕刻の病院では 担当医がわざわざ時間外に診察に訪れ、両親とまどか本人に伝える。 ほんの十数秒であったが、心停止の時間があったこと、しかし 今のところ後遺症は何も見られないこと、一応縫合は吸収糸でしている から抜糸の必要はないが、まだ創部が完全に閉じていないので、経口 からの食事は軽くゼリー程度にとどめて欲しいことが伝えられた。 現在、治癒を早めるための高カロリー輸液をしているので、あと2日 は入院が必要とのことであった。
「まどか、学校の方はどう?決めてる?進路。」 『検討中』 メモ用紙に大きく書くまどか。 「あのねえ、もう健康以外何も求めてないわよ、あなたに。 そんなにぶっきらぼうにしなくてもいいでしょ?」 『ごめんなさい。多分進学するかな?』 「どこ?」 『いいじゃない、どこでも。』 「音大?」 瞬間、恭介の顔を思い浮かべて 「ぷっ!あはは…痛っ…」 吹き出した。 (明日は来るよね?明日聞いてみようかな…。)
3日目の朝 「恭介、明日の朝出発が決まったぞ。後は全部弁護士さんに任せるよう 鮎川さんが手配してくれた。また来なくちゃならないかも知れないけど 取り敢えず決定だから。ほら、まどかちゃんにも伝えて来なさい。」 「お兄ちゃん、行かないの?お見舞い。」 「うん、ちょっと寄りたい所があるから。お前たち先行けよ。」 恭介はTheBusに乗ってショッピングプラザに向かった。 そこではもうフラの講習が始まっており、 マリーが受講生の間を回りながら、やさしく指導している。 恭介はそれをぼんやりと眺めていた。顧問
講習が休憩になると恭介はマリーの元を訪れた。 彼女はちょっと驚いて、すぐに笑顔になり 「あら、あなたはまどかの…どうしたの?」 「あ、はい、まだ皆さんにお礼を言ってなかったし…明日帰るから…。」 「うん、みんな心配してたよ。でもいいのよ、元気そうで安心した。 私が伝えておいてあげるから。これでハワイを嫌いにならないでね。」 「…はい!それじゃ。」 恭介に笑顔が出た。 「See Ya!」
マリーに元気を貰って、恭介の心が少し軽くなった。 (よし!) 恭介はビーチに行く勇気が湧いた。 「確かこの辺りだよなあ…」 あの時の風景が蘇る。 陽が沈んだばかりのゴールデンアワーと呼ばれる時間帯。 まどかを失ってどれだけの時が経ったのだろう、 深い孤独に包まれていた自分が居て、生きる希望を失い まどかを追うつもりでここを訪れた。 しかし…
思い出すのは、彼女の、悲しいけれど…とても温かな眼差し。 いろんな時間が一点に交わった瞬間だった。 未来の自分の前に… 今まさに旅立とうとしていたまどかが現れ… 彼女の心を現在の自分が感じ… 結果、二人は救われた。 ビーチは人で混んでいる。 (見つかる訳ないよなあ…) 探すのを諦めようとした瞬間、(痛っ!) 足下を見ると、キラリと光るものが… 「あっ…!えっ?う、嘘だろ?」 見つけた。そう、やっぱりここに来ていた。
恭介は破片をそっと拾い上げる。 そして大切そうにハンカチに包み、ポケットに入れた。 いつかまどかに見せる時が来るかも知れない。 それまでは…大切にしまっておこう。 だって…無くしたら一生口を聞いてもらえないらしいから。
610 :
元祖 :2009/07/16(木) 05:46:54 ID:???
待ってました〜! すっごくいい! ママもマリさんも脇ではあってもいい味出してる! でも、何で未来に落とした「かけら」が現在(未来から言えば過去)にあるの? でも突っ込みじゃないよ。すっごくいいからずっと読んでる。ここの世界大好き!
>元祖 おそらく、恭介が倒れている間に未来の恭介がやって来たんじゃないか? そしたら、旅立とうとするまどかとも「現在」で出会えるだろ? しかしややこしい。
612 :
作者に敬意 :2009/07/17(金) 08:05:36 ID:???
もう一つの時間軸の読み取りが解読のカギかな? 本編の時間軸とは別に、まどかがステってそのままの時間軸。 二日後、恭介があとを追うのを感じた本編のまどかが時空を超えて諌める。 そして、恭介は二日前の本編時間軸にトリップする。 すると>596「今日初めて『トリップ』しちゃって。」 が生きてくるのでは?
613 :
元祖 :2009/07/17(金) 22:41:45 ID:???
作者に敬意さん、さすがに深いですね〜! 私は「一生口をきいてももらえない」ってところが、こんなところで生きてくる なんて、「参った」でした〜。
614 :
元祖 :2009/07/19(日) 18:52:34 ID:???
連休中にまた最初から読み直してるんだけど、いろいろと発見があるんだ〜。 まどかちゃんのフラのシーンにはJennifer LopezのLoving Youがぴったり。
>元祖 ジェニファーのファンか?そういえばユービロングトゥーミーのカバーもしてたな。 今度サルサをテーマにした映画があるが、それに主役の妻役で出てるぞ。一応教えといてやる
君たちの音楽の趣味を押し付けないでくれないかな・・。
617 :
元祖 :2009/07/22(水) 07:51:02 ID:???
616さんは、ひょっとして作者様ですか?御気分悪くされたらごめんなさい。 私の中では、作品の場面毎にBGMを想像して聴いてるだけなんです。ハワイの風景が 蘇っちゃうんだもん。とにかく、ごめんなさい。
作者は今、壁にぶつかっている。 膨らんだイメージを文章に置き換える作業に限界を感じているはず。 でも、思いもよらない伏線の回収にこの人はただ者じゃないと思いましたよ。 だから頑張ってちょw
619 :
元祖 :2009/07/23(木) 09:20:06 ID:???
「膨らんだイメージを文章に置き換える作業に限界を感じているはず。」 困りました〜。もう夏休みに入ってるのに。 焦らなくていいですから、どうか続きをお願いしま〜す。待ちきれないよー! 「二人の絆」はどこまで行くのかしら?ひかるちゃんはどうなっちゃうの?
620 :
616 :2009/07/23(木) 16:37:27 ID:???
オレは作者じゃねーよ。
勘違いしてはいかん これはあくまでも妄想であって、「あの日」の補完作品ではない 作者は思いのままに妄想を膨らませるが良い
今時「補完」なんて言葉・・・恥ずかしい。
その頃病室では… ママはお買いものに出た。 見るともなしに雑誌を広げ、一人でソファに座っている。 そう、誰かさんを待っている。 トントン。 「はい。」 笑顔でドアの方を向くまどか。 「こんにちは…。」 (まあ!)という表情から、あらためて笑顔になった。 「まどかさん、これ。」 まどかは驚いた表情で (あら!わあ〜) 「綺麗!」 (二人で選んでくれたの?…) 「有難う!!」 まどかは花に埋ずめる様に顔を近づけ、香りを思いっきり吸い込む。 (う〜ん…甘くって) 「いい匂い!」 まどかはまだわずかに残る口の痛みを堪え、最小限の単語で讃辞を送る。 「まだしゃべれないんですか?」 「うん、あんまり。でも」 そう言うや、片腕を上げて笑顔で力拳を作ってみせる。 「良かった〜、まどかさん元気になって。」 (春日クンは?)
何となく聞けない。 まなみはまどかの心を察して 「あ、お兄ちゃん…後になると思います。きっと来ます。」 「そう言えば、お兄ちゃん、昨日何か考え込んでたなあ。」 (くるみ!余計な事言わないの!) 「え?」 気にするまどかに、くるみは 「そうなんですよお、おにいちゃん、まどかさんのこと凄く…」 まなみは咳払いをして、くるみに『めっ!』をする。 (……!あっ、暑いよね?) 「アイスコーヒーでいいかしら?」 まどかは赤くなっている。
点滴のスタンドを押して、備え付けの冷蔵庫に行こうとしたが、 まなみは慌てて制す。 「あっ…、まどかさん。私達がします。」 まどかはもう充分動けるのだが、まなみが自分の世話をしたがる 気持ちを察して二人に任せた。 テーブルには氷の入ったグラスにパックのコーヒーが注がれている。 それぞれが取って、自分の好みで味付けする。 まどかはストレート、まなみはミルクだけを少々、そして… くるみは大量のシロップとミルクでお子様仕様に。 (うわ〜、台無しだ…。) まどかとまなみは顔を見合せて吹き出した。
「え〜!?明日帰るの?」 色んな話が弾んだあと、明日の朝出発することが告げられた。 「ごめんなさい…。」 「ううん…」 まどかは少し落胆するが、やさしい笑顔で首を振る。 (あなた達の所為じゃないもの。 でも、あたし一人が帰れないのかあ…ちょっと淋しいな。) 淋しそうに下を向くまどかを見て、堪え切れずまなみが跳び付く。 びっくりして受け止めるまどかの胸の中でまなみは泣きだした。 くるみも傍に来た。 まどかは二人を抱きしめ (それじゃあ…) 「次会うのは日本でだね。」
ひかると同じ、こんな自分を想ってくれる大切な後輩。 そして…『妹達』。 (ひかる…会いたいよ。) 複雑な心境になった。 まなみは元気を取り戻し 「じゃあ、まどかさん。お先に帰ります。待っています。」 そう告げるとお辞儀をして部屋を出て行った。 すぐドアが開き、くるみが顔だけ覗かせてニッコリ笑顔で 「待ってま〜す!」 パタン。 まどかにも笑顔が出た。 (そうね…早く帰んないと。)
姉妹が帰って2時間は経とうか…病室にて (何やってんのかしら?もうお昼をとっくに過ぎたよ。 明日でしょ?帰るの。時間無いじゃん!) まどかがイライラしている。 「何苛ついてるの?」 買い物から帰って来たママが呆れたように言う。 慌てて言い返そうと紙とペンを取るが、ママは何でもお見通し。 さっさとキッチンに逃げて行った。 (んもう!) ソファの上で、お行儀悪くあぐらをかいてみたり、 点滴のスタンドを持って廊下に出てみたり…。 「ほら、飲んでごらんアロエのジュース。傷にいいかもよ。」 一度は(ふんっ)として見せるが、早く治れば早く会える。 テーブルに置かれたジュースに手が伸びて… 「美味しい!」 思わず大きな声が出た。 (あれ?痛くない…) 目の前にママの勝ち誇った顔があった。 「どう?美味しい?」 「…知らない!」
トントン。 急に他所を向くまどか。背中が期待している。 「どうだい?まどか。」 (?!……)「は〜」 がっくりと溜め息をつくまどか。 (パパ?何でノックなんかすんのよ…家族でしょ!) ママがからかう。 「今はね、ご機嫌お悪くしていらしてよ。」 「どうしたんだい?」 「何で…!!」 いきり立って振り向くまどかを恭介が覗いていた。
視線が合って二人とも赤くなった。 (あんたはノックしなさいよ!んもう。) 「お邪魔します…。」 「いや、彼と下で遇ったからね。」 「コーヒーどうぞ。じゃ、まどか、あたし達ちょっと出掛けるから。」 「あ、…うん。行ってらっしゃい。」 あらためてセッティングされると何とも具合悪い。恭介と向き合わせ。 チラリと恭介を見ると、買い物袋を持っている。 「春日クン、何?それ。」 「あ、…声出せるようになったんだね。なら、要らないかな。 傷にいいって聞いたから、いっぱい買っちゃった。」 アロエの束であった。
「どうするつもり?」 「うん、見よう見真似なんだけど、ジュースにしたら飲めるの かなって…下ろし金もついでに買って来たんだけど。」 まどかはちょっと考えて、偶然を装う。 「ミキサーがあるよ。」 恭介が今からしようとすることに凄く興味が湧いてきた。 「はい。」 ママがさっき使っていたミキサーを用意してそこを退くまどか。 案の定、皮を剥かずにミキサーをかけ出した。 まどかは(やっぱり…)とクスクス笑って 「春日クン、汁が飛ぶと洋服に色が染つるよ。ほら。」
そう言って、以前まなみにしてやったようにママのエプロンを 恭介の首に掛けてやろうとして後ろから… 近づく… その瞬間 (春日クン…) まどかは想いをこらえ切れずに後ろから… 恭介の背中に……抱きついた。 (…!) お互いの胸の鼓動を感じながら 二人の動きが止まる。
まどかの甘い香りと、肌の温もりと… 「あ、鮎川…」 「あ…ゴメン。 まだちょっと頭がフラフラしてるの…。 もうちょっと… このままで… いさせてくれる?」 「うん…。」 まどかは恭介の背中に頬をつけた。 二人だけの時間が静かに流れる。
んもう! 久しぶりっ!
635 :
元祖 :2009/07/26(日) 15:24:13 ID:???
作者さん、アリガトウ!!!感謝感涙で〜す。だんだん「二人の絆」が結ばれてく。 でも、まだ続くんですよね?最初のシーンまでは。絶対無理しないで下さいね〜!
なに勝手に連結させてんの
637 :
元祖 :2009/07/27(月) 09:49:46 ID:???
え〜?だって、この物語は1、2、から回顧録になっているんじゃないですか? もう、パラレルとか時間軸とか、そんなことを持ち出さないで、単純にそこに戻って 欲しいです〜。1、2、は「あの日」の続きですよね?
んなわきゃない
単純にそこに戻って欲しくないです
あの日虎馬野郎も元祖も目障り!黙ってROMっとけ!
お前こそ目障り!黙ってROMっとけ!
予想通りの反応。 元祖も虎馬も偏執狂・・。 頼むから荒さんでくれ・・とほほ。
643 :
元祖 :2009/07/29(水) 08:36:33 ID:???
え〜私も偏執狂ですかあ?私はこの作品の出だしから、そこに帰るものとばっかり思って たんですけど。でも、結果荒らしてることになるのならちょっと出入りを控えようかな。 でも、作者様の大ファンですよ!!
これはウザイ
>元祖 633から想像すると、少なくとも作者はお前さんのことを 嫌ってはいないんじゃないか? ただ、目立ち過ぎるから、少々控えた方がいいぞ。 >虎馬 お前さんは、当初から作者の相手をしているようだから それなりに作品を長続きさせているのに貢献はしていると思う。 が、いずれにしても「ほどほど」にな! >その他 野次は控えめに! >作者 うんざりせんで、続きを書いてくれ。結果は任せる。
元祖のKYぶりがひかるのキャラとだぶるのだが。
「だったらお前が書け」 って言われる前に黙ってROMってろ元祖w お前みたいな増長してんのがいるから作者に余計なプレッシャー 与えてることにどうして気付かないんかね? とにかくハワイ編が終了するまで書き込みすんな。 いいな?これは命令だ。
コテやめてカキコミ半分にすりゃ叩かれる事もあるまいに
649 :
元祖さん。 :2009/08/02(日) 05:09:15 ID:???
作者「あなたのためだけに別スレ立てたよ。おいで!」 まどか「どこよ?」 作者「彼女の趣味がヒントかなあ・・・」 まどか「よ〜く考えてね。待ってるよ、元祖さん。」
どこだよ?んもう!元祖贔屓しやがって・・。
640〜648の代わりにオレが謝る。 スマン!作者!元祖!だからどこに行ったか教えてくれ。 探してもみつかんね〜!
謝っても赦さん
653 :
647 :2009/08/06(木) 02:22:43 ID:???
んもう!無理に持ち上げてただけなのに勘違いしないでよ! 作者クンなんて元祖と一緒に日和ってればいいんだわ!
>647 いや、べつに無理に持ち上げなくてもいいのだが。 お前が来なきゃいい話だろ?ややこしい奴だな、お前。 持ち上げるとまで言うのだから、お前ひょとして「作者に敬意」か? 自演だったらホントお疲れさん。もうここに来ないでくれ。 元祖のほうがまだましだよ。 作者よ、こいつはもう来ないらしいから、元祖と一緒に復活してくれ。
655 :
作者に敬意 :2009/08/06(木) 14:18:11 ID:???
私ではありません。私は、発言に責任を持つためにハンドルネームつけます! 私もこのスレでは、これを最後にROMります!zzz。
やっとコテが一掃されたか
「ごめんね、有難う。ちょっとソファで休むね。」 「うん。」 まどかはソファに腰を下ろすと、下を向いて少し微笑む。 (なんだか…スッキリした…) 恭介はアロエをミキサーにかけながら今のシーンを思い出している。 あまりにもいつもの気丈なまどかとかけ離れた行為。 (鮎川…まだ万全じゃないのかなあ?それとも…) 出されたモノはドロドロの緑の物体。 恭介は苦笑いを浮かべ 「飲んでみる?」 まどかはじ〜っと見つめて 「う〜ん、ちょっと厳しいかなぁ…あ、ヨーグルトに混ぜようよ。」 苦肉の提案。 食べ始める二人。 「うえ〜!なんだこれ、変な味…。鮎川は大丈夫なの?」 「うん…『好き』かな…。」 (だって、春日クンが始めて作ってくれた料理よ。 …『好き』に決まってるじゃない…。) 「へ〜こんなのが好きなんだね。」 不味そうに食べながら言う恭介を見て、まどかは恨めしそうにボソッと呟いた。 「ドンカン…」
食べ終わって、ほっと一息。 二人は窓際で夕暮れ近い街の景色を眺めている。 まどかは、あの夜の…どうしようもなく感じていた物足りなさが 今は満たされているのを感じていた。 「ねえ、明日帰るんでしょ?」 「知ってたの?」 「うん、昼に妹さん達が見舞いに来てくれて…」 恭介は急に改まった物言いになる。 「お、俺…まだ鮎川に言わなくっちゃいけないことがあって、でも、まだ、 自分の中で整理がついてなくって…」 まどかは優しい表情で恭介を見つめている。 「いいよ、無理しなくって。言いたくなったら聞いてあげるよ。 でもその時は…その時はさ、あたしも『知りたいこと』を訊くから。」 「う、うん。」
まどかは覗き込むように恭介に顔を近づけ 「ところでさあ、来年どうするの?」 「うん…自分の限界を、取り敢えず高校生としての限界に…」 「で?」 「K大を受験してみようかと…。」 「へ〜、凄いね。」 「へ?驚かないの?」 「別に。春日クンがしたいことを応援するだけ。」 「無謀って言われると思ってたんだけど…鮎川はどうするの?」 「前言ったじゃない。忘れたの?誰でしたっけ?頼んだの。」 「でも、鮎川の才能だったら芸大かなあって…」 「勝手に決めつけないでよ。あたしは自分のしたいようにするから。」 まどかは『一緒に行こう』という言葉を待っている。 (あの時言ってくれたじゃない。何で尻込みするの?) 相変わらずの優柔不断さに少し怒るまどか。 「と、取り敢えず中途半端になったけど、夏期講習…第二期から 一緒に受けようよ。ね?」 「…うん!」 ソッポを向いてたまどかに笑顔が戻った。
「ほら!あそこ!」 「何?」 「Double Rainbow!」 「あっ!ホントだ。」 まどかの指さす方向に二重の虹が出ていた。 夕暮れに近いオレンジ色の空にかかっている。 「何してるの?」 「お願い事。春日クン、ここじゃ、あれに出会うとみんなお願い事するのよ。」 「へ〜、じゃあ俺も…」 (春日クンとずっと…。) (鮎川と一緒の大学に…そして…。) トントン。 「ただいまあ。」
途中の階で人が乗ってくる。医療従事者や見舞い客。みんなでかい! 奥に押される二人。 まどかはスタンドごと奥に押しやられ、恭介はまどかを守るように その隅の空間を確保する位置に立った。 両手を広げてまどかに背を向けるようにエレベーターの壁に手をついている。 すると、まどかは恭介の片方の腕をつかんで下ろし、自分の腕を絡ませた。 (え?) まどかは周りの視線も気にせず、彼の腕に抱きつく。 色っぽい眼差しで、恭介に顔を近づけ 「支えてくれる?」 「あ…う、うん…。」 エレベーターがロビーに着くほんのわずかな時間。 まどかは目を閉じて、恭介の肩に頬を寄せた。 恭介はまどかの大胆な攻撃に、体を強張らせるのが精一杯…。 エレベーターが開くと、恭介は 「大丈夫?心配なんだけど。」 「体力的にまだかなあ…。」 まどかはちょっと嘘をついた。 「点滴は今日までなんだ…ホントは明日(一緒に)帰りたいんだけど …やっぱり、親孝行しないとね。こんな娘でも可愛いらしいから。」
点滴さえなかったら全く普通に見える。 「ねえ、外に出てみたいんだけど…時間無いかなあ、ダメ?」 「点滴したままじゃ…ねえ、車椅子借りようか?」 「え〜!要らないよ。」 「でも、それ(スタンド)押しながらってのは、外歩きにくいよね?」 まどかはちょっと考え (それもいいかなあ…) 受付で車椅子を借りてまどかを乗せる。 玄関を抜けると、一気にハワイ特有の甘い香りと市街の喧騒が。 「うわ〜!やっぱり外は気持ちいい!」 恭介は夕暮れに染まった病院の庭へ、車椅子をゆっくり押して出た。 小鳥たちのさえずりが二人を包む。 「3日ぶり?」 「うん。…春日クン、暑くない?」 ハワイは真っ盛りの夏。夕暮れでもかなり暑い。 久しぶりの外と…そして何より恭介に介抱されているのがたまらなく嬉しい。 まどかはオレンジ色に輝くビル街を眺めながら、ちょっと呟いてみた。 「ねえ…もしさあ、もし…あたしがこのままになっちゃったら…」 「俺でよければ、ずっと押すよ。」 「……!」 視線は外さなかったけど、恭介が優しい顔で応えているのは見なくても解る。 「へ〜、言ってくれるじゃん!」 抑え気味の声で、見栄を切りつつも 彼の言葉の温もりを背中越しに受け止めた。 (有難う…)
「そろそろ帰ろうか。」 「うん。」 車椅子を受付に返し、エレベーターのところまでついて行く。 「もういいよ。ごめんね、反って迷惑かけちゃった。」 「いや…じゃあ、日本で待ってるから。」 まどかは思い切って切り出す。 「あのさ、…ひかるのことなんだけど…」 「え?」 まどかはちょっと躊躇って 「あの娘…本気だし、一途だから…」 「うん…」 エレベーターの扉が開く。 まどかは恭介を見つめ、扉が閉まる寸前に 「(これ以上)傷つけたくないの。」 他の乗客に押されて奥に行く。 「あっ…」 扉が閉まった。 (ええ?鮎川、どういうつもり?)
「傷つけたくないって…」 (まさか、自分は身を引くっていうこと?ひかるちゃんを…ひかるちゃんを 大切にして欲しいってこと?そ、そんなぁ…。) 恭介はこのハワイの日々を思い返した。 まどかは随分自分の気持ちを伝えてくれてたはずなのに それで十分スッキリしてしまったってこと? これで思い残すことなく、自分をひかるに譲れるとでも? 帰る間際になって、恭介はかなりのショックを受けて…」 茫然自失となって、バス停に向かう足取りが重い。 しかし、恭介は勘違いしている。 まどかは今この瞬間に自分と恭介の気持ちに間違いが無いことを確信した。 しかし…ひかるのことを考えると、どうしても揺れる気持ちを 恭介に支えて欲しいから…伝えたかった。 (ひかるを深く傷つける前に…『はっきりさせて欲しい。』 どうしたって傷つけるのは解っている。だから…) そんなまどかの気持ちを誤解したまま 恭介はホテルに帰っても家族との会話は全て上の空。 (ひょっとして…俺、ふられた?そ、そんなぁ…違うよなあ…) 訳が解らなくなって、ぶつぶつ独り言を呟きながら荷造りをしている。 (まどかさんと何かあったのかしら?) まなみが心配そうに見ていた。2
まどかは病室に戻ると 「ねえ、明日点滴外して貰えるのよねえ…明日帰っちゃダメ?」 「……」 呆れるパパとママ。 「お口の中は大丈夫なの?」 「うん、まだ食べるとちょっと沁みるけど…。」 「まどか、せっかくだから後数日一緒に過ごさないかい? パパも久し振りだし。何でも好きなもの買ってあげるから。」 「ううん、別に欲しいものは無いし。あ、そう言えばマリーさんには 会って帰りたいかなあ…。」 3人は病院の食堂で食事を摂る。 とても総合病院とは思えないホテル並みの内観。 「うわ〜、美味しそう!」 まどかは食べられそうな分だけ少しずつ摘んで頬張る。 「ちょっと糸が触るけど、でも食べられるや。美味しい!」 恨めしげに点滴を見上げ、胸のラインをちょっと引っ張ってみた。 「痛〜い!」 点滴の挿入部は、抜けてしまわない様に糸で皮膚に固定されている。
娘のあまりの無謀さに、両親は呆れている。 「ちょっとは大人しくしてなさい!んもう。」 「だって〜、煩わしいったらありゃしない…。」 ママはスパゲティを頬張りながら 「『おてんばさん』にはちょうどいいのよ。」 「誰が!」 夕刻、主治医が病室を訪ね、口腔内を診察。縫合創が癒着していることと 炎症は起きていないことが確認される。今朝の採血データも問題ない。 まどかは点滴を外したいと願い、主治医はOKサインで応えた。 すぐに看護師が呼ばれ、あっという間に点滴のラインが抜去される。 まどかは思いっきり伸びをした。 「ねえ、ママたち、こっちに来て全然遊んで無いでしょう?遊んできたら? あたしは今夜、日本の友達に電話したりするから…もう帰っていいよ。」
おー!戻ってきた。続けてくれ。
まるでもう必要無いような言い方がママの癇に障った。 「あんた、まさか本気で明日帰るなんて言うんじゃないでしょうね?」 ちょっと睨むママに 「しないよ。あたしだって家族でゆっくりしたいし…。」 少し照れたように答える。 「…ごめんね、まどか。疑って…。」 「嫌な言い方してごめんなさい。あたしは大人しくしてるから。」 「それじゃママ、久しぶりにハワイでデートしようよ。」 パパは少し怪訝な表情のママにウインクをした。
娘の反抗期はまだほんの少し続いている。 下手に逆なでしない方が賢明とパパは判断しママを促した。 ママもやれやれといった表情でバッグを取り上げ 「じゃあ、また『明日』ね、まどか。」 「うん…。」 二人は病室を後にし、主治医の元へあらためて挨拶と、明日には退院 する旨伝えに行った。 まどかは早めにシャワーを浴びた。今まで気にしなければいけなかった 点滴が外れたことで、思い通りに動ける自由を味わう。
ひかる宅にて。 「はい、檜山です。」 「ひかる…。」 「まどかさん!まどかさんでしょ?」 「ごめん…心配掛けて。」 「な、何言ってるんですか!」 その後、ひかるは涙でしゃべれなくなった。 まどかはハワイの最後を台無しにしてしまったことを詫びた。 ひかるに誤解されない様に経緯を話す。 「そうだったんですか…『偶然』だったんですね。 でも良かった。先輩もまどかさんも無事で。」 「うん… (ちょっと『偶然じゃなかった部分』もあるんだけど…) …有難う。あたしはもう少しこっちに居るから。」 「先輩は?」 「さあ?もうすぐ帰るんじゃないかなあ…。」 まどかは嘘をついた。 自分と恭介が『いい感じ』になっていることはさすがに言えない。 二人だけの時間もたくさん持てた。 でも…そのことが、まどかに気兼ねさせてしまう。
「じゃあ、帰ったら連絡するね。」 まどかは電話を切って、今度はあかねに電話する。 「まどか〜!もう、心配したんだから!」 「ごめん。帰ったら特製パスタ奢るから。」 「じゃ、許す。でも、ホント……」 声を詰まらせるあかね。 しばらく沈黙が流れた。 まどかにも伝わっている。 「早く帰っておいでよ。」 「うん。有難う。」 まどかも少し涙ぐむ。 しばらく他愛もない会話を続け、急に話が変わった。 「ところでさあ、『早川みつる』、こっちで凄い株上げてるよ。 帰国してから、もう毎日ヤツのニュースばっか。 でもね、愛人騒動にも巻き込まれてて、何なんだろうね?」 「うん、悪いヤツじゃないんだろうけど、何かねえ…。」 二人は笑い出した。 帰ったら会う約束をして電話を切った。
一方ひかるは (まどかさんも先輩も…『偶然』だとしても…求め合ってるから 『偶然』の回数が多くなるんじゃないのかなあ?そんなあ…) ひかるはベッドに転がり、3人の写真を眺めた。 (じゃあ…今までの先輩とあたしの関係は何だったの?) 思い起こすに、この3年間、なんにも無かった。 自分がベタベタ甘えて、恭介は優しく受け止めてくれていた。 二人っきりのデートだって何度もしたのに… でも、恭介からのアプローチは…無かった。 (やっぱり…まどかさんの方がいいのかなあ…) ひかるはアルバムを引っ張り出し、ベッドの上で眺める。 中学1年の頃から、やはり3人一緒の写真が多い。 でも自分と恭介の2ショットもたくさんある。 ベッドから起きて鏡に向かい、まどかの写真を見ながら (うん、負けてない!頑張ろう!)
まどかは姉にも電話した。 「お姉ちゃん、ごめんね。」 「ママ怒ってなかった?」 「ううん、逆に優しかったかなあ?」 「で、ママは?」 「パパとデート中。」 「へ〜!仲のよろしいこと。」 「ほ〜んと。」 「まどか、あんた女らしくしてなきゃ。彼に嫌われるよ。」 「…え?!な、何言ってんの?」 慌てるまどかに釘を刺すように 「ぜーんぶママから聞いてるよ。と、に、か、く、女の子らしくね。」 「うん…。」 連絡が一段落する。 まどかはママの作り置きの方じゃない、とっておきの物体を ヨーグルトに混ぜて食べた。 (まあ、大人の味にしては…ちょっと青臭いかなあ。でも…) 「ふっ」と笑って食べ続けた。 「『傷つけたくない』かあ…あたしって自分勝手だよね…。」 スプーンが止まった。
ぼんやりと夜景を眺めながら考える。 (今更…どうしたって傷つくよ…) 「帰ってからが正念場だなあ。」 まどかは自分のことだけを考えようと努めるが… ひかるも大切な『妹』…悲しむ姿は見たくない。 (何よ!決着はつけたはずでしょ?)
また揺れ出した。 こんな時は、アルコールでごまかすのが一番なのだが さすがに今日ばかりは…。 (眠られないじゃない!…春日クン今頃何やってるのかなあ?) 一方恭介も眠られないでいた。 (鮎川って「きまぐれ」なとこあるし…でも、それでいて すごく深いところで悩んでたりするし…) 一番考えたくない所に踏み込んでしまう。 (俺が…俺が決めても…鮎川が引くかも知れない… 鮎川にとっては、ひかるちゃんの存在って大きいんだろうし) 『傷つけたくない』 何度も反芻しながら二人はまどろみへと落ちて行った。
翌朝、恭介は帰国の途へと向かう。 出来るなら、まどかにもう一度確認したかった。 (でも…鮎川のことだから、もう決めたのかも…。) 引きずる想いを残し搭乗する。 一方、病室では 「お世話になりました。」 家族で主治医と看護師達に挨拶する。 早川みつるには、父が事務所を通じてお礼をしておいた。 先方も、世界的な音楽家から直々の連絡に恐縮している。 「ねえ、まどか、ちょっとアラモアナでショッピング付き合ってよ。」 「そうねえ、じゃあ、あたしも気分転換に服でも見ようかなあ。」 家族は車で移動し、のんびりとしたお昼を過ごした。 ショッピングセンター3階のオープンカフェレストランで (今頃、飛行機の中よねえ…いくら不思議クンでも現れないか…。) 「あのね、言い出しにくいんだけど…やっぱり明日帰るね。」
「……!!」 パパとママは顔を見合わせる。 「今日退院したばかりじゃないか。もうちょっとゆっくり…」 「したじゃない。夏季講習があるんだあ。早く勉強しないと。」 「あんたの口から『勉強』って言葉を聞くとは思わなかったわ。」 「だって、来年受験よ。うかうかしてちゃ…」 わざと『どうしよう?』と困ったポーズを取るまどか。 見破られていようがお構いなし。正面突破を図る。 もちろん、二人とも娘の魂胆などお見通し。 しかし、言い出したら聞かない頑固な性分も分かっている。 「でも、チケットが取れないだろう?」 「そこよ、パパ。お願い!」 拝む娘に甘くなってしまう。 「やれやれ…」 「あなたったら、まどかには甘いんだから。」 「じゃあ、夕飯は豪勢に行くか。ちょっと知り合いに頼んでくる。」 パパが席を立つや、いきなりママが切り出す。 「ねえ、まどか。…春日さんとお付き合いしてるの?」 「え?…そ、そんなこと、関係ないでしょう?」 真っ赤になってよそを向く。
(やっぱりそうなんだ。) 「でもね、あなたのことがいつも心配なのよ、ママは。」 まどかはちょっと考えた。 ここのところ恭介のことで悩んでいるのは事実。 ママのやさしい笑顔を見ると、『彼』のことを話してみたくなった。 意地っ張りのつっかえ棒が呆気なく外れる。 「春日クンは…ママが心配するような人じゃないよ…。 どちらかと言うと、あたしの方が迷惑掛けてるかしら。」 「ふ〜ん…」 まどかの顔を見つめて聞いていたママが、急に核心に迫った。 「ごめんね、いきなり聞くけど……好きなの?」 (…え!?)
しばし沈黙が流れ、喧噪だけが通り過ぎる。 まどかは恥ずかしそうに白状し始めた。 「…うん。あ、でも分かんない。あたしの気持は…思うんだけど…。」 まどかは言い淀んでしまう。 「そうなんだ…。」 「うん。いろいろあるんだぁ…いろいろと…。」 ストローでアイスコーヒーの氷を回しながら、ぼんやりと人通りを眺める。 恭介のことを今まで誰にも相談したことが無い。 それは自分の気持ちが解らなかったから。 でも…今は違う! ただ、どうしたらいいのかが解らない。
ふっと、ママを見て 「ねえ、ママの初恋って…。」 「何度も言ったでしょ?パパだって。」 まどかは顔を近づけ、小声で訊く。 「純愛路線?」 「そうねえ…まどかほどじゃなかったけど… ママもパパを随分困らせてたかなあ? ず〜っと好きじゃない振りしてね。」 (うわっ…!一緒じゃん。) 遠くで電話をしているパパを見て手を振るママ。 「オドオドするパパを随分困らせたかなあ? でもね、一生懸命なパパのこと、誰よりも見てたわよ。」
「もういいよ。分かった分かった。」 まどかは相談したつもりが、反ってのろけられて当てが外れた。 それでもママは素直な娘に『女』としてのアドバイス。 「ママね、一緒に居て、まどかが心から嬉しく感じるお相手なら、 離す手はないと思うわよ。」 「それはそうだなんだけど…」 「春日さんはまどかのこと、どう思っていらっしゃるのかしら?」 「多分…。」 まどかは赤くなってグラスに視線を下ろす。 「ママね、あなたたちを見てると、私達の若い頃を思い出すのよのねえ… 『応援するから』さ、恐れずに自分を信じて進んでみたら?」 「でも、そのせいで…そのせいで誰かを傷つけることになったら?」 ママはちょっと考えた。 (三角関係なの?だから悩んでるんだ…。)
「まどか、他にもお付き合いしてる人居るの?」 そっちの三角関係ではない。 「居る訳ないでしょ!」 ちょっとムキになるまどか。 「じゃあ、割り込んじゃったの?」 「…結果、そうなるのかなあ…。でも…」 また言い淀んでしまう。 ママは娘が無理に割り込むようなタイプじゃないことは承知している。 (まどかのことだから、どうせ意地っ張りが禍してタイミングを 逃してこじれてしまったってところかしら?あたしに似て… 素直じゃないし。) 「ママはあなたが本当は優しい娘なのは分かってる。でもね、 優しくすることが幸せにするとは限らないわよ。」 「え?」 「まどかは身を引く気なの?それで春日さんは幸せ?まどかは?」 「……」
母親が母親らしくていい
685 :
元祖 :2009/08/16(日) 18:51:39 ID:???
やっとみつけたら、他の人に先乗りされてるし・・。 ここはここで凄い勢いで再開されてるし・・。 654さんのお言葉に甘えて、またお邪魔してもいいですか?作者様。
>>685 大爆笑w
何が元祖なんだかwwwwww
コテ消したら戻ってもいい
688 :
654 :2009/08/17(月) 11:48:35 ID:???
盆明けて覗いてみたら、えらいUPされてるな・・。まあ、うれしい限りだが。 ただ、こんなことやってると、またアク禁(多分)くらわないか?ところで・・ 686よ、お前さんがこのスレの雰囲気をぶち壊しているのが分からないのか? 687よ、お前さんが仕切ることではないんじゃないかい? そもそも、お前ら、作者は元祖になびいてるんだろ?その元祖を嫌うことは 作者の本意に反することでもあるし、そんなに嫌ならお前らがここに来なきゃいいんじゃないか? どうしても続きを読みたいのなら、元祖を批判しない方がいいと思うのだが。 この作者の作風から、かなりナイーブなイメージを受けるだけに、つまらん個人攻撃やってると、 その内「終了」されるんじゃないか?俺はそっちの方が心配だ。 作者に敬意殿はどう思われるのかな?御意見を聞いてみたいぞ。
688よ、お前さんが仕切ることではないんじゃないかい?
あのななんと言うかなぁ、えーっとウザコテは、なぁ、なんと言うか ウザコテになろうとしてウザコテになってんじゃねぇんだよ ウザコテになるしかなかったからウザコテなってしまったんだろうがぁー ホーント狙ってやってないでしょぉー
こいつの感度といい、レスポンスの解離具合といい・・ PDに占拠されたこのスレ・・終わったな・・合掌。
作者「691さんの言う通り、本日をもって終了とします。」 まどか「元祖さん、loving you!…解るよね?」 マリー「待ってるよ!See Ya!」
終わったか 作者の心象はともかくコテが居着くと荒れるから仕方ない
え〜っ マジすか? 稀に見る良スレだったのに……
移動先からコピペしてもいいけど すみわけにもなるし 無許可だから作者が怒ればやめるけど
696 :
654 :2009/08/18(火) 14:46:33 ID:???
>693 俺的にはコテは全く気にならないのだが。 >694 少数参加型の良スレだったと思う。 >695 こそっとやってくれ。
そりゃあんたも一種のコテだからな
どちらにせよ今はコッチのほうが進んでてあっちはここで言う
>>667 までしか書かれてないから当分待たなきゃね
699 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2009/08/18(火) 20:18:41 ID:KtPqusNN
もう話の展開つまらな杉w いい加減ヤメロっつー意味でアゲてやるわw
心配しなくても作者はここを見もしないんじゃないかな ここも読者が音楽がどうの保存がこうのと雑談するまではいいところだったんだが
コピペ 「もう少し自分のことを…」 「わかってる…わかってるって!」 暴走気味のママを制するように両手で押し止め まどかはよそを向いて少し悲しい顔をした。 (わかってるって…) ショッピングセンターのフロアは日差しに照らされまぶしく輝いている。 また、グラスの氷をかき混ぜながらため息をついた。 「ねえ、あたし帰りにマリーさんのとこ寄るから。」 「あら、じゃあ私たちもご挨拶に伺おうかしら。」 「え〜、ついてくんの?」 「だって、ほら、お世話になったでしょ?」 (んもう…子離れできないんだから…)
>>701 おすすめ2ちゃんねるに移転先が出てるのに、
向こうからここにコピペする意味があるのか?
向こうは元祖専用スレらしいよ 作者に敬意によると
704 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2009/08/25(火) 01:06:38 ID:Xc2MzCE6
(コメント)最初からROMってたけど俺も移転先知らん(..)。 おすすめ2ちゃん・・・?
いけね。あげちゃった。
なんと愚かなことを・・ こんなことしても、作者は喜ばないぞ。
という事は元祖以外はもう読むなという事か
いや、読むなって言ってんじゃなくて、荒らすなってことだよ。 上げたり(故意じゃなきゃnpだが)、アドレス張ったり、個人攻撃したり・・ まあ、作者の意見は知らんが、おれも最初から読んできたファンとして このスレをぐっちゃぐちゃにしないで欲しいと思ったまで。
コピペ 「その方のために身を引くのって、一見通りはいいけど…」 まどかは両手のひらで暴走気味のママを制しながら 「わかってる…わかってるって。」 視線を通りに移し (避けて通れないのかな…) 日差しに照らされたフロアの人通りを眺めながらぼんやりと考えた。 (『傷つけたくない』かあ…) 「ねえ、あたしマリーさんの所に寄るから。」 「じゃあ、一緒に行かない?パパも挨拶しておきたいって言ってたから。」 「え〜?ついて来るの?」 まどかは両腕で頬杖をついたままママを見つめている。 (子離れしてよ、んもう。) 単にママがマリーに会いたいだけであった。
マリーは午後の部が終わって、後片付けをしていた。 「マリーさん!」 「あら!まどか!お母さんも。」 「その節は大変お世話になりました。まどかの父です。」 挨拶の後、しばらく4人の歓談が続く。 「えー!明日発つの?」 マリーも驚いた。 「もう、この子は言い出したら聞かなくって…」 こぼすママに、パパが今夜のディナーを提案するが 「ごめんなさい。今夜、出なければならないショーがあるんです。」 「どこであるんですか?」 まどかが尋ねる。 「クヒオビーチのステージよ。」 家族はディナーの前に観に行く旨伝え、一旦別れた。 「じゃあ、マリーさん、楽しみにしてます。」 「See Ya!」
夕暮近くなり、ビーチの松明に炎がともる。 タヒチアンダンスにマリーが出ている。ステージからまどかを見つけ 笑顔で手を振る。激しいファイアーダンスや子供たちのフラショーがあり 最後は観客を上げて一緒にフラ。 マリーは真っすぐにまどかの所に誘いに行き、まどかとママが上がった。 ママはマリーと顔を見合わせ楽しそう。時々舞台下のパパに手を振っている。 まどかは…濃紺へと、そのグラディエーションを変化させていく水平線を 見つめている内に、この数日の出来事がフラッシュバックしてきた。 (春日クンの前で踊ったあたし。 春日クンの頬を叩いたのはこのビーチ? そして…抱きしめた…)
瞬間、まどかは強烈なめまいを覚える。 手も足も動きを止め、海を眺めながら放心したように立ちつくした。 マリーが気づき、慌ててステージの袖に連れて行き座らせる。 「大丈夫?」 ママもパパもやって来た。 「ごめんなさい…まだ無理なのかなあ?」 少し笑顔ながら、まどかの両目は涙であふれていた。 「大丈夫なの?無理してるんじゃない?」 まどかの性分を知っているママは焦るが、まどかは 「ううん…違うの…違うんだ…。」 そう言ったっきり黙ってしまった。
まどかにも解らない。 悲しい訳でもないのに、 なぜ自分が涙を流しているのか…? 実は… 恭介が乱した時間の歪みにさらわれそうになったのが原因。 この場所こそが歪みを生んだ場所。 もう一方の当事者であるまどかがやって来て 恭介を想う気持ちが、再び歪みを起こそうとした。 まどかに歪みを起こす力はないはずなのに…。 まどかは2度目の不思議な体験に感動している。 …今度は戸惑うことなく受け入れようとしていた。
「ごめんなさい。海を見てたら感動してきちゃって。」 まどかは涙を拭き立ち上がるや 「ねえ、マリーさんも一緒にディナーしましょう?」 そう言ってマリーの手を取った。 「いいの?大丈夫?」 「ええ!マリーさんと居ると元気を貰える気がするの。」 「う〜ん…じゃあ、ちょっと待っててくれる?」 ホテルのラウンジで 待ち合わせの場所に、マリーとボブ、ロイも現れた。 コピペ まどか達は感激し、当時のお礼を改めてした。 レストランに入るや、それぞれが好き勝手に注文し、 「カンパ〜イ!」 の合図で宴が始まった。 みんなはいろんな話で盛り上がっている。
今夜はまどかの快気祝い。 主役も楽しそうに笑っている。 頃合いを見計らって、マリーがまどかを窓際に誘う。 「ねえ、明日10時までにチェックインすればいいんでしょう?」 「ええ。」 「じゃあさあ、朝凄く早いんだけど、まどかに見せたい景色があるんだ。 ホノルル空港までは私が送ってあげるから、明日朝見に行かない?」 「いいんですか?あたしはすごく行きたいけど…マリーさんお仕事が。」 「それはいいのよ。でも、まどかのパパとママが…」 「大丈夫です、こんなのいつものことだし。」 二人をみると、かなりご機嫌になっている。 (チャンス!) まどかは二人の元へ行くや、すぐに交渉し、了解を取り付けた。 そして、ニコニコしながらマリーの元へ戻って来る。 「マリーさん、明日何時にどこで待ってたらいいんですか?」 宴は続いたが、マリーとまどかは一足先に退散した。
翌朝 まだ暗い朝5時半。 マリーはまどかのコンドの玄関まで迎えに来てくれた。 「有難うございます!」 「さあ、乗って!朝ごはんはあっちで食べよう。作ってきたから。」 まどかは帰りのスーツケースをワゴンの後ろに積みながら 「ボブやお子さんたちに悪いことしちゃったかなあ?」 「うちはね、祖父母と同居してるし、朝は作ってあるものを各自が 自分の時間に適当に食べるのよ。私の周りもそんな風。まどかの家は?」 「うちはパパとお姉ちゃんはよく一緒に食べてたけど、あたしとママは 割と自由ですよ。習慣というより『きまぐれ』だから、ママもあたしも。」 他愛もない会話をしている内に、車は渓谷伝いに山奥に入って行く。 そして、霧が立ち込める頂上を越えると大海原と険しい峰々が視界に入る。 「さあ、着いたわよ。ここからは馬で行くの。」 現地の知人が二人をさらに山の麓へとガイドする。そして… 「うわ〜!!」 二人は馬上で声を上げた。 馬たちが少し驚く。
目の前から海を背景に急峻に立ち上がる山の頂は雲に隠れ、急いで流れる 雲の隙間から、まるで後光のように幾筋もの朝日が降り注ぐ。 そこは辺り一面遮るものがなく、朝露に濡れた草木が密生しており 海から山へと駆け上がる風に揺れて光りかがやく。 全てが神々しく、二人は息を飲んだ。 そして、馬から降りるとあらためて雄大な景色を眺める。 「ねえ、まどか。神様って信じる?」 「分らない…分らないけど…」 「うちはね、親の代からクリスチャンだから、まあ一応ね。でもね、 聖書のような字面ではない、本当に自分は生かされているんだなあって 思う瞬間があるの。今なんか、当にそう!で、思うの、『二度とない 人生だから、自分に素直に生きよう』って。」 まどかにマリーの気持ちが通じている。
この風と空気と、瑞々しい草木の香りを思いっきり吸い込んで、 そして体全身に朝日を浴びたら自然と心のリセットが出来た。 (あたしはあたしの運命に従って生きるだけ。後悔はしない。) 二人は顔を見合せて、どちらからともなく笑顔になり 「有難う!」 大きな声がはずんで出た。 まどかはその場でクルクルと回って、風と香りと光を一身に浴びた。 マリーはまどかが何かに苦しんでいることを察していた。 だから、自分がそうするように、まどかにもここに来て、自分に 素直になれる気分を味合せてあげたかった。 そして、それは成功した。
帰りの車中では、マリーのCDに合わせ二人が楽しげに歌っている。 どちらからともなく、メインボーカルやコーラスの部分を歌い分け アイコンタクトで歌っている。 車はハイウエイに乗ると左手に海と街並み、右手に山並みを眺めながら 軽快に空港までを飛ばして行った。 ホノルル空港に着いた時には、日差しは照りつけているのだが、 シャワーのような小雨が降っている。 まどかはスーツケースを降ろすと空を見上げた。 虹が輝いて見える。 (気持ちいい。) マリーは歩み寄ると、いきなりまどかを抱きしめた。 「またおいでね、待ってるから。」 「はい。」 「See Ya!」 まどかはチェックインを済ませる。 (うわあ!ビジネスクラスじゃない。) 自分の身分で座る席じゃない。 パパの贈り物だが、ちょっと迷惑。 「しょうがないなあ…。」 まどかはマスターへのお土産を選んだ後、空港内のカフェで時間を潰した。 (帰ったら決着を着けることになるのかな…)
日本では 「ねえ、おにいちゃん、ひかるちゃんに電話したら?」 くるみの催促に電話をする恭介。 「はい、桧山です。」 「あ、ひかるちゃん?俺、春日。」 「あ!先輩…先輩!帰ったんですか?いつ帰ったんですか?」 「うん、さっき着いたばっかりで。今成田からなんだけど。」 「まどかさんは?」 「まだ居るようなこと言ってたけど…」 恭介の胸が疼いた。 「家に着いたらまた連絡するから。」 「はい…待ってます。」 ひかるはしおらしく返事をする。 恭介は疼く胸に訊ねる。 (鮎川の気持ちが知りたい…)
春日一家がタクシーで到着すると、マンションの下にひかるが待っていた。 街灯に照らされた姿は、ハワイの時よりちょっと大人っぽく見える。 (ひかるちゃん…) ひかるは恭介を見るとすぐに駆け寄ってきた。 いつものような屈託のない笑顔はどこにも見られない。 「お帰りなさい。」 「ひかるちゃん、待ってたの?」 ひかるはこくりと頷いた。 家族はひかるも促しながらとにかく部屋へ上がる。 久しぶりの我が家に、春日一家の表情が崩れた。 隆が開口一番 「いや〜、疲れたなあ!」 言うや、姉妹が声を揃える。 「うんうん!」 疲れていても、まなみは気を利かせる。 「お父さん、お兄ちゃん、お茶入れようか?あ、ひかるちゃんはコーヒーね。」 「あ、あたしはいいよ。」 慌ただしく隆と恭介はスーツケースを部屋の奥に運び込む。 それぞれの急用が済むと、みんなは自然とリビングに集まった。 今回のハワイ旅行、大変な騒動に巻き込まれたことでみんなの話が尽きない。
「ほんっと、大変だったね。」 兄を見ながら呆れたように言うくるみに慌てて言い返す恭介。 「おいおい、俺のせいじゃないだろぉ〜。」 すかさず、ひかるは用意していた言葉を、さも思い出したように言う。 「まどかさんから電話があったんですけど、大丈夫だからって…」 そう言いながら恭介の顔を見た。 恭介はそんな視線に『意味』を感じながら、なんともやるせない気分で 「うん、大丈夫そうだったよ。」 手短に述べて笑みを作った。 (せんぱい、元気無い…)
大好きだからこそ敏感に感じる。 今までは、まどかのことについてスイッチをONにしていなかっただけ。 入れてしまえばすぐ分かる。 (まどかさんのこと気になるんでしょ!) 「先輩、ちょっといいですか?」 そう言うと、恭介の部屋へ向かった。 (へ?) どうしたらいいのか分らず後についていく恭介。 隆はさっさとバスルームに行きシャワーを浴びている。 くるみとまなみは顔を見合わせる。 (ひかるちゃん、どうしたんだろう?) 恭介が部屋の明かりを点けようとすると、ひかるは 「点けないで。」 恭介の手の上から自分の手を被せた。
ひかるはギョッとしている恭介から離れ、恭介の机の方に向かった。 そして、机を手でなぞりながら窓の外の夜景を眺めている。 「ひかるちゃん、どうし」 遮るように 「先輩…。あたし、先輩に…もしものことがあったら生きていけません。」 振り向いた彼女の顔は… ドキッとするほど美しく… でも、どこか悲し気。 泣くでもなく、騒ぐでもなく…冷静に想いを伝えて来る。 いつもとは全く違う雰囲気。 「先輩…あたしのこと好きじゃないんでしょ?」 (な、なんで!)
言い当てられた心を誤魔化すように慌てる恭介。 「そ、そんなこと…」 「まどかさんより好きじゃないんでしょ?」 恭介の目を見つめながら、言葉をかぶせてくる。 「鮎川は関係ないよ。」 思わず視線を逸らし、捨て台詞を吐くものの 「でも、この間といい、今回といい、先輩とまどかさん、あたしの 知らないところで逢ってるじゃないですか?」 (この間?) たたみかけられ、たじろぐ恭介に対し、一方のひかるは自分の発する 言葉の意味に自分自身驚きながらも、不思議と落ち着いていられた。 だって、訊いていることは至って当然のこと、筋が通っていること、 いずれはちゃんとしなければいけないこと…つまり、ひかるは 自分に対する『恭介の本心』が知りたい訳で… しかし、それこそが優柔不断な彼にとって一番答え辛いものであった。 だから…、だからこそ、3人の関係が今ここに至っている訳でもあり。
恭介はため息交じりに 「鮎川がオレに興味が無いって。」 また捨て台詞を吐いたが、それを聞くやすぐに 「じゃあ、先輩はどうなんですか? あたしは先輩の…ホントの気持ちが知りたいんです!」 自分の気持ちをまどかの気持ちにすり替えようとしたズルい恭介を 逃がさない。 恭介は答えられずに、よそを向くしかなかった。そんな恭介を見て 「あたしは…あたしは、はっきり言えます。 先輩のことが『好きです』って。」
コピペ疲れた。元祖続きやってくれ。
敬意です。今日一日中コピペお疲れさまでした。 そしてありがとうございます。 私も一日中PCと「にらめっこ」しておりましたが未だ たどり着けません・・・。 皆様のお助けに頼るばかりで申し訳ございません。 おふざけナシで、「ありがとう!!」 そして作者様、コピペ許して下さい!! お願いします。
教えてやりたいけどばれる可能性があるからなぁ
全部読んでりゃ、作者の背景がわかるだろ?敬意よ。 自演野郎が来ないように、あいつの頭じゃ到底無理なところにある。 しかし、元祖もよく見つけたと感心する。 自演ば〜かはコピペを荒らしてろ! 昨日は、急患の合間にコピペしたが、夕前に逝きそうなのが2件入った から、あれ以上は無理だった。 敬意、焦らなくてもオレが暇な時コピペしてやるよ。 (作者が怒らなけりゃな。) それにしても、オレがスレ立てして、作者が来てくれて1年か。 よく続くよなあ。感心するよ。妄想連載開始一周年、おめでとう! 論文読むよりはるかに面白いから、今後も続けてほしいものだ。
あ、ちなみにオレ730じゃないから。 730は多分偏執自演馬鹿だと思う。
733 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2009/09/14(月) 12:15:39 ID:ZcCcrpEU
スレ主様、気ぃ使わせてすみません。ありがとう!(スレ主に敬意)
また下げわすれた・・・ やっぱ、ROMってます・・・
似たところに注意
737 :
元祖 :2009/09/14(月) 17:25:01 ID:???
731さん。その節はどうもどうも。 ちなみに、コピペは作者様の本意ではないと思います。 これ以上作者様が御隠れあそばすことの無いよう、 コピペは少しづつの方が宜しいかと・・。
あんたら、もったいぶらないで、早くコピペしてくれよ。
彼女は肝心なことには大胆でいられる度胸の持ち主であった。 今日のひかるは、今まで心の中に留めていた気持ちを言葉にする。 「あたし、今日から部活の合宿なんです。でも、先輩に会いたくて 抜けて来たんです。どうしてもはっきりさせたくって…」 「だから、ひかるちゃん、それは…」 「いいんですよ、無理しなくって。でも…でもあたしの気持ちは ずっと変わらない…。」 ひかるは恭介の傍に来て見つめた。 「先輩今日は疲れてるでしょう?ゆっくり疲れを取って、明日から 受験勉強…」 突然…! 恭介の唇にひかるのそれが重なる。 「…頑張って下さい。」
ひかるはそのまま暗い部屋から出て行った。 まなみとくるみが部屋の近くに居たが、二人に「おやすみ」と伝え そのまま真っすぐ玄関を出て行く。 静かにドアが閉まった。 二人は心配になって覗き込むと、暗い部屋で目を見開いたまま 壁にもたれかかる恭介を見つけた。 「お兄ちゃん、ひかるちゃん…?」 瞬間、我にかえって 「何でもないから。」 恭介はドアを閉めた。 「どうしよう…」 いつもと違う、冷静で美しいひかるに惑わされている『ほんの瞬間』、 不意打ちをくらった。 喜びよりも情けなさが先に立つ。 恭介は心底やるせない気分になった。
ずっと引いてきたつもりでいた一線が、たった今崩された。 まどかの自分への想いは遠ざかったのだろうか? どうにでもなれというやけっぱちな気持ちと、どこかで『まだ…』 と思う心残りな気持ちにの狭間で悲しくなってくる。 もし後者なら、これは不義理である。 前者なら?…妙な打算が働く。 『先輩の…ホントの気持ちが知りたいんです!』 恭介の心にひかるの言葉が深く突き刺さった。
翌日 恭介はパンフレットに添付してある申込書に記入する。 「よし!」 (俺は俺、鮎川は鮎川。ひかるちゃんは合宿だから当分会わなくて済むし…) 取り敢えず目の前の目標に気持ちを奮い立たせ予備校の受付に向かう。 手続きを済ませると、当日より講義参加となりかなり慌てている。 「さっぱりわかんね…」 落ち込む恭介の後ろから 「よお!浪人生!」 「小松、八田も…まだ違うわい!」 「じゃあ、何でそんなに焼けてるのかなあ?ワイハにでも行ったとか?」 「さあね。ところでお前たちも講習受けてるの?」 「君より早くからエンジン掛けてるよ。で、鮎川は?」 「知らないよ。」 「今学校でみんな話題にしてるぜ。『お嬢様、早川追っかけ』って。」 「ホントかよ?学校は何て言ってるの?」 「相変わらず、御両親からの圧力に、今回も見て見ぬ振りらしいぜ。」 実際は母親が事の詳細を報告し、改めて娘共々謝罪に伺うと伝えていた。 学校は本校の生徒がハワイで事件に巻き込まれただけで、観光地を深夜に 出歩いた以外の過失は無い故、お咎め無しということであった。 (実は飲酒もあるのだが…)
743 :
元祖 :2009/09/21(月) 22:41:41 ID:???
今日は、これにてお手伝い終了しま〜す。
その調子でUPしてくれ、元祖。 つ〜か、お前もUPし過ぎだろ。
夕方の講義が終了し、予備校一階フロアでたむろする3人。 「で、ホントのところはどうなんだよ?お前『たち』がワイハに居たことは 知ってるんだぜ。吐けよ。」 (うっ…) 「…ああ、その通り。遊んでま、し、た! でも、鮎川の名誉のために言っとくが、追っかけなんかするか!」 「だから、知ってるっつーの!そんな奴じゃないことも。 俺達が知りたいのはだなあ、お前と鮎川の……あゆ…?」 (…げっ!) 「何よ!あたしがどうかしたの?」 「あ、鮎川…様。」 小松と八田が絶句する。 恭介の真後ろにジーンズ姿のまどかが立っていた。
で、まだか?
元スレがアク禁くらってる様子だから、我慢汁。元スレは50話くらい 進んでいる?
その元スレとやらを上げてもらおうじゃねーか。つーか、おまいら何ゆーえつかん にひたってんだよ!!
おいおい、頼み方ってのがあるんじゃないか?
そんな高飛車な態度がムカつく!!
(コメント)おいおい、感情的になるなよ、待ちわびているのはみな一緒・・・と第三者より。 元スレがわからない読者にも善良な者はいると思います。 どなたか、フリーアドレス晒す代わりに場所を教えて頂くなど救済の手を頂けないでしょうか。
↑常識人みっけ。
元祖はどこに行った?
754 :
元祖 :2009/10/20(火) 05:36:05 ID:???
他にないか探し中で〜す。
元祖サンなら、元スレご存じだろうか。
もう1カ月止まってるんですけど・・・・・><”
ネタ切れでっか? まあ、ハワイ編は割と面白かったんやけどねえ。 帰国してからは話が膨らまんやろ? 他所スレじゃ、どんだけ〜?進んでんだ?(古!)
お目覚め! いよいよ第3章突入ですねー。皆さんならどんなサブタイ考えるかな? っか、自分の身勝手さに凹んでたんですけど・・・。 最初は、コピペは作者の本意ではないでしょーって思ってたのに最新スレ 見つからないとなると頼ってる自分がいて・・・。あぁ〜ヘコむ。 元祖さんやスレ主Dr,さんが最新スレをオープンに出来ないワケも理解できますし・・・。 まぁ、最新スレ見つけられない私の技量不足なんだからしょうがないですね。 エピローグ迎えたら公開しても差し支えないでしょうし、その時はお願いします。 作者さん、見てないでしょうけど2chのどこかに帰って来てください! とりあえず、みんなで良識ある声援送って辛抱強く待ちましょー!
>元祖 絶対ばらすなよ!これ以上作者に居所変えられたら、もうさすがに解んなくなるから!
もう11月なんですけど。
恭介の誕生日までにアップされなきゃ、ここ閉鎖決定だな。
じゃあ、閉鎖決定!
え?それでいいの。元スレのために、いろんな方法で検索かけたりまとめサイト身に言っているけど、ないんだよな。 本格的に探したわけではないから・・・。 しかし、荒らされるとはいえ、そこまで秘密にする必要あるんだろうか。まとめサイトなり、変にコメントが入らないよう工夫すれば何でもないのに。
>761762お前ら、勝手に閉鎖すんなよ!>763時間出来たらUPするから!
766 :
コピペ :2009/11/08(日) 18:29:54 ID:???
サングラスを髪留めにして髪を後ろにまとめている。 その姿はまるでモデルかOFFのCA。 ドキドキしながら振り向く恭介。 「あ、鮎川…帰ってたの?」 「『ばかり』なんですけど。さてと、どのコース受けようかなあ…」 パンフレットを探す振りして、ちらっと恭介の方を見た。 彼が腕に抱えるテキストを見るや、おもむろに顔を近づけて 「K大コースかあ…『それ』にしよっと。」 そう言うと、受付に行って申込書に記入し提出した。 手続きが終わるとテキスト一式を受け取り 「じゃ。」 そう告げて、さっさと帰って行った。 その一部始終を見ていた二人が恭介の胸ぐらを掴んで 「で、何があったんだよ!テメ〜!!」「コノヤロ〜!」 「し、知らないって!」 恭介はヘッドロックをかけられてあがいている。 (…?K大コース?ということは、やっぱり…)
数時間前。 ルルルル…! 「はい、春日です。」 「あ、まなみちゃん?お兄様はご在宅かしら?」 「まどかさん!今どこからですか?」 「帰って来ちゃった。今、成田に着いたとこ。」 ポニーテールにナイキのキャップを目深にかぶり膝下丈のホワイト ジーンズ、胸元が開いたノースリーブTとストライプのシャツ。 ジーンズはローライズでヒップポケットにはシルバーのチャックが カッコいい。 旅慣れたまどかは、スーツケースを業者に任せて至って身軽。 大きめのショルダーバッグを肩にからって電話を掛けている。 「お兄ちゃん、今日からKゼミナールに行ってるんです。」 「へ〜!やる気満々なんだ。」 まどかは成田から直接Kゼミに向かった。
帰宅中の恭介。 (K大コースということは…やっぱり、オレと一緒の大学に行くって ことだよなあ…つーことは…やっぱり…でも…) 恭介の頭の中で、いろんな想いが錯綜している。 (じゃあ、「傷つけたくない」って…どういうつもりで言ったのかなあ?) 少し期待が膨らむと同時に、昨夜の過ちを後悔し出した。 (バレたらどうしよう…) 一方ひかるは合宿所にて。 「ひかる、凄いね!メインゲット出来るんじゃない?」 先輩達からはやし立てられている。 「そんなに甘くないですよ!そんなに…あたしなんか…」 つい、現実がクロスしてしまう。 (まどかさん帰って来る前に決着付けなきゃ。) 先手を打ったつもりではいるが、そんなんじゃ彼の気持ちを つなぎ止めておくのは難しいのも解っている。 (まどかさんに…負けたくない。) 今まで慕っていた存在から強力なライバルへと変わる。 焦りがひかるを大胆にしていった。
帰宅の電車の中で。 車中はかなり混んで窮屈。 まどかはドアのガラス越しに夕暮れのビル街を眺めている。 (ハワイの方が良かったなあ…でも、こっちは…居るし。) カランコロン! アバカブのドアが開く。 中はお客さんで賑わっていた。 「いらっしゃいませ。」 バイトの女子大生が言うやマスターが振り向き 「おっ、まどかクン!お帰り。いつ帰ったの?」 「ただいま、マスター。今帰ったばかりよ。忙しそうね…手伝おうか?」 「いやいや、夏休みは大丈夫だよ。(何とか)間に合ってるし。」 「そっかあ〜、ああいうのがマスターの好みか…。」 「おいおい!」 「あはは!はい、お土産。」 「おっ!コナコーヒーにチョコじゃない!」 「ごめんねえ〜『定番』で…」 マスターからすれば、気を使わず、気心知れたまどかの方が百人力。 しかし、受験生の夏休みを奪う訳にもいかない。 まあ、この期間はバイトも見つけやすいし…。
「ところで、大変だったらしいね。ハワイ…」 言いかけて慌てて自分の口を押さえるマスター。 周りを気にするようにまどかに近づく。 まどかはマスターの耳元に小声で 「『噂』は、ほとんど『嘘』ですから。」 「ああ、解ってるよ。コーヒー入れようか?」 「ううん、帰って部屋の掃除をしなきゃ。じゃあ、また来ま〜す。」 そう言って店を出て行った。 家に帰り着くとびっくり! ポストの中に山ほどの手紙が…。 (何かしら?) 取り敢えず、全部かき集め、持って家に入る。荷物を放り出し 「あ〜疲れたあ〜!」 そう言うと、テーブルに投げ出した手紙の一つの封を切る。 『鮎川先輩!私は先輩を信じてます!…』 ハワイの騒動は学校にも知れ渡っていた。
2年生には、どちらかと言うと怖いイメージが定着しているし、実際 中学時代に鮎川から「焼を入れられた」連中もいるだけに、噂が先行 しているが、1年生はひかるや春日姉妹から実際の鮎川像が広まって おり、彼女のファンが多い。 手紙はどれを開けても同じ内容のものばかり。 (こういうのを『有り難迷惑』って言うのよねえ… 昔は『死ね』って書いてあったのにね。) そう思うと、可笑しくなってきた。 まどかは笑いながらバスルームに向かう。 (モテモテね、まどかさん。でも… 『肝心なヤツ』が、はっきりしないのよねえ〜。)
シャワーを済ませ、スッキリしたらお腹が鳴った。 (う〜ん、有り合わせで作るか。) 冷蔵庫の野菜室に入れておいた野菜が少し古くなって傷みかけている。 まどかはそれらの傷んだ部分を取り除き、皮を剥いてぶつ切りにすると アクをすくいながらコトコトと煮込んで、最後にコンソメで味を調える。 ニンジン、セロリ、アスパラ、ヤングコーンにベーコンと色鮮やか。 大きな深めの皿にアツアツを移すと、リビングに持って行く。 フランスパンをスライスし、軽くトーストしたら純正オリーブオイルに バルサミコ酢とガーリックオイルを混ぜた小さい器を用意。 パンを浸して食べながら、冷え冷えの白ワインで夕ご飯。 野菜丸ごとのスープに食が進む。 (そういえば…どんなことやってんだろう?) まどかは、リビングに置いていたショルダーからテキストを取り出し 片手にパンを持ったまま、お行儀悪くページをめくりだした。 「ふ〜ん…」 (これじゃあ、あたしがついてないと…) 少し酔って、いい気分になっている。
「は…ハックション!」 急にくしゃみをする恭介。 あらためてテキストの内容を復習していた。 (ヤバいなあ…全然ついて行けて無いや。) 数学などは、例題からして難解であった。 しかし、そこはまどかに鍛えられただけあって、視点を変えながら 糸口をを見つけようとする。基礎があやふやなだけに、なかなか 上手く行かないが、諦めずに粘る体力(精神力)だけはついていた。 トントン。 「お兄ちゃん、お夜食持って来たよ。」 「有難う、さすが!まなみ。」 「お兄ちゃん、凄く頑張るね。中学の頃からすれば別人みたい。」 「え?そ、そうかなあ?」 「やっぱり、大学を目指すって、こんなにも人を変えるのね。」
(これって…ひょっとしてオレ、バカにされてる?) 恭介は片手にサンドイッチを持ったまま考えていた。 「お兄ちゃん…あのね、あの…」 「なに?」 「…やっぱりいい。あ、ひとつも〜らい。」 まなみはサンドイッチをつまむと部屋を出て行った。 「ねえねえ、訊けたあ?」 「ダメよ、せっかく勉強に集中してるんだからあ。」 姉妹は昨夜のことが気になっていた。 (おれ、そんなに変わったのかなあ?確かに、ちょっと前のオレ だったら、K大なんて口が裂けても言えなかったよなあ…) 伸びをしながら呟く。 「随分鮎川の個人指導を受けたしなあ。」
思い出したように何やらカバンをゴソゴソとして財布を取り出した。 そっとめくると、とっておきの写真が入っている。 まどかと出会って間もない頃、まだ彼女は恭介に心を開いておらず ちょっとやそっとじゃ笑顔を見せてくれなかった。 中間試験は大敗し、期末に賭ける意気込みで、遅くまでアバカブで 個人指導を受けた日々。 当時の二人はと言うと… 「明日ここまで出来てたらコーヒー奢ったげるよ。」 そう言えば、必死でやってくる。でも、ほとんど間違えだらけ。 「全然出来てないじゃん、んもう!やり直しといで!」 つっぱねると、翌日も持ってくる。 「あら?出来てんじゃん…ふ〜ん、じゃあ、明日はこの問題。」 お母さんの言うことに応える幼子のように頑張る恭介。 「ねえ、鮎川、今度の期末、見てて。中間より頑張るから。」
「え?…う、うん…。」 (いや、別に…頑張んなくってもいいんだけど…) 「でさあ、頑張ったらなんか奢ってもらおうかなあ?あ、あはは…」 恭介は頭をかきながら、ムシのいいお願い事をする。 (まどかはじ〜っと恭介の顔をみつめて) 「いいわよ。期待しないでいるから。」 素気なく応えた。 結果は…またもや惨敗。 逆に、まどかは初登場でいきなり4番! 理由は簡単。恭介を教えることが自分の勉強になっていただけ。 上位50番が掲示板に張り出されるから、学年中に知れ渡る。 授業前のクラスでは、みんながまどかをチラチラ見てざわつくが、 当の本人は全くお構いなし。いつも通り頬杖ついて外を眺めている。 放課後。 肩を落として前を歩く恭介を見つけると、駆け寄って声をかける。 「ねえ、どうだった?」 「え?……あははは、は〜…。」 溜息をついて下を向く。 「…ぷっ!」 まどかは雰囲気を察してちょっと吹くが、すぐにやさしい笑顔で 「凄く『頑張った』もんね。…そうねえ、特製カレー奢っちゃおう!」 「え?いいの?」 「夕方おいでよ、アバカブ。努力賞よ。」 「やった〜!じゃあ、後でお邪魔するから。」
恭介は初めて見る、明るい笑顔の鮎川に驚いているのだが、一方 まどかはまどかで、誰かを構う楽しさを覚え始めていた。 カランコロン! 「いらっしゃい!春日クン。ちょっと待ってて。」 まどかは奥に入ると、いきなり揚げ物の音がし出した。 (何やってんのかなあ?) 「まどかクンお手製のカツカレーみたいだよ。」 ウインクするマスター。 「はい、お待ちどう様。」 大きめの平皿に薄くひかれたライス。その半分に、香辛料の利いた カレールー。そして、ライスの上には切り口から肉汁がこぼれている ロースかつが乗っかる。香ばしい香りが食をそそる。
「うわ〜!凄いや!!い、いいの?ほんとに。」 「春日クン、すごく頑張ったじゃない。約束よ。」 「いや、でも…」 「いいって…きっと身を結ぶんだから。」 やさしく励ますまどかを恭介は見つめている。 それに気づいて、まどかは慌てて視線をそらした。 自分の中に芽生え出した『妙な感情』に戸惑う。 (あ、あたし…?) 恭介はカバンの中から隆から貰ったオート一眼レフを取り出した。 (なに?) ギョッとして見ているまどかに 「…あのさあ、実は家からカメラ持って来たんだ。鮎川の手料理 第一号だから…記念に撮ってもいいかなあ?」 「え〜?こんなのが記念なの?…ぷっ!」 吹き出すまどか。 (へんなヤツ。) レンズをまどかに向ける恭介に 「あ、あたしは嫌だよ。まあ、カレーだけなら構わないけど。」 (ちょっと自慢のカレーだしね。) 「親父がね、食べ物を撮れるようになったら一人前だって。」 「分かったから、さっさと撮って、早く食べてよ。んもう。」 誰かのために、何かをする喜びを覚え始めているのに、そんな気分を 台無しにする恭介の無神経さ。でも、彼女は微笑んでいる。 店内が暗いせいか、オートフォーカスも戸惑っている。 「うわっ!!」
ピントが合わず、体を反らすとバランスを失い椅子から転げ落ちる。 慌ててカウンターをつかもうとしてカレーをひっくり返した! カメラはオート連写モードで、フラッシュと同時にシャッターが降りる。 まるでスローモーションのように、転げ落ちる恭介の目線から、 宙に浮くカレー皿とスプーン、驚くまどかの表情、そして…カレーを 頭から被る恭介をカウンター越しに覗き…びっくりした表情の後 …吹き出して笑うまどかの表情が…次々と写った。 彼女のこんな表情を見たのは初めてであった訳で… それは、まどかが恭介に『初めて心を開いた』瞬間でもあった。 カウンターから恐る恐るのぞくまどか、そして吹き出すまどか。 この2枚は、恭介の大切な思い出の写真。 だって、恭介にとっても『そう思えた』瞬間だったから。
(そうだよなあ…俺はこの頃からオレの気持ち以上に鮎川の気持ちが 気になり出したんだよなあ。) あれから3年ちょっと… ふっと、机の上の写真を眺め、深刻な気分に落ちる。 恭介を真ん中にした3人の写真。 恭介は勉強を止め、ベッドにころがり天井を眺める。 (もう一度…もう一度鮎川の気持ちを確かめて…することをしなくちゃ。) 起き上がると、また机に向い、何かを振り払うように俄然勉強し出した。 鮎川邸にて。 食後の片付けも終わり、まどかは自分の部屋でくつろいでいる。 (そうだ、ひかるとあかねに電話しなくっちゃ。) カーッペットにあぐらをかいて子機から電話する。 ひかるの自宅に電話をするが、出たのはお母さん。 ひかるは合宿中とのことで、宿舎の電話番号を聞き、改めて掛け直す。 「お帰りなさい!まどかさん。わざわざ電話してくれたんですね。」 まどかの優しさに感激する。 「ただいま、ひかる。ごめんね、さんざん心配かけちゃった。」 「無事が何よりですよ。」
他愛もない会話が続いたあと、話題が受験のことになった。 「まどかさんも春日先輩と一緒の夏期講習受けるんですか?」 「うん、うちの高校は、KゼミかY塾か、どっちかだもんね。 まあ、家からのアクセスを考えたらKゼミかなあ?」 「まどかさんなら、受けなくっても大丈夫ですよ。」 ひかるは軽くまどかを抑えにかかるが、まどかは受け流す。 「そうは行かないわよ、ハワイでおバカになってるし。」 「先輩と一緒の大学に行くんですか?」 (え?…) まどかは机の上の恭介の写真を見ながら、 「さあ、受かった所に行くだけよ。」 しばし、沈黙が流れる。 ひかるは周りに人が居ないことを確かめ、賭けに出た。 「実はですね…この間、先輩にキスしてもらいました。」 ひかるはそう言うと、電話先のまどかの反応を待った。 「そう、良かったじゃない。」 直ぐに返し、冷静を装う。 「やっと…やっと一歩前身です。もう、嬉しくって!」 「良かったね。部活も恋も頑張んなよ。じゃあ、邪魔したね。」 「はい!まどかさん、今度アバカブで会いましょうね。」
(……) ショックで心が震えている。 (な…なんで?) ドキドキしている自分に驚くまどか。 急に抑えようのない戸惑いと不安が襲ってきた。 キッチンに降りてワインをグラスにつぐや一気に飲み干す。 でも、揺れ出した心は落ち着かない。 (何が『良かった』よ…) してはいけないイライラと、らしくない焦りが交錯する。 リビングに場所を移すとソファにどかっと腰を下ろす。 何とか落ち着かせようと、両膝を抱え込むように座ってみる。 顔を伏せ考え込んでいると、電話が鳴った。 ドキッ! 慌てて電話のところに駆け寄り、ディスプレイを確認する。 表示されている相手は『KYOUSUKE』。 受話器の前でまどかの手が躊躇っている。 その内、音が止んだ。 まどかはショックを隠せない。 何もかもが手に付かない。 (はっきりさせて欲しい。そう言ったはずなのに…これが答えなの?) 残りの白ワインのボトルを空にした。
いきなり大量コピペすっから、 展開について行けねぇよ!
(もう寝よう。) 部屋に戻ってベッドに潜り込んではみるものの どうにも目が冴えてしょうがない。全く眠気が来ない。 (どうして?) ベッドから起き出し、椅子に座って下を向くと両手で顔を覆う。 (なんでよ!) その手をずらしながら髪をかき上げるように上を向くと 目の前で『恭介』が笑ってる。 「何よ!」 左手で払うと、『彼』は机から吹き飛んだ。 まどかは着替えて家を飛び出し、高校生のくせに『行きつけ』の カクテルバーに向かった。 そこは、繁華街のビルの地下にあるお洒落なバー。 テキーラサンライズをあおり、ぼんやりと酔いに身を任せる。 「はー…」 まどかは深いため息を吐きながら (心にもないことを言ってしまったなあ…全然良くないよ…) 隣のカップルのはしゃぎ声が耳につく。 (うるさいなあ〜。) 酔った目でちらっと睨むと、相手は気づいて音量を下げた。 今夜のまどかは、性質が悪そうな雰囲気を全身から出している。 (何で…?) 店を出ると0時過ぎ。 駅を降りると自然と恭介のマンションに足が向かう。 マンションの前に来ると彼の部屋を見上げるが、 電気は点いていない。 (…一体どういうつもりなのよ?)
かなりフラフラになっているが、じっと部屋を凝視する。 (…何なのよ… …このまどかさんが… …フラれたの?…) 大通りまで出るとタクシーを止めて家まで送ってもらった。 玄関を開けると、そのまま突っ伏してしまう。 (何さ!……) 閉じたまぶたに薄っすら悔し涙が…。 今度はまどかが勘違いの迷路にはまってしまった。 翌朝。 (あれ?) 「やだ!こんなところで寝ちゃった。」 まどかは慌ててシャワーを浴びに行く。 (ひかる、嬉しそうだったなあ…でも…) 何となく、ひかるに『挑戦状』を渡されたような気もする。 考え出すと頭がガンガンしてくる。飲み過ぎた。 「痛〜い!」 (初日だけど、サボっちゃおうかなあ?) シャワーを終え、化粧台に座る。
「ひっど〜い!」 眼の下はクマっているし、目も赤い。顔も何となく腫れている。 洗顔が終わると、スキンローションをつけて入念にマッサージ。 両頬をパンパン!と叩くと、今度は髪の毛をブラッシング。 前髪を、いつもよりちょっと顔が隠れるように横に流す。 着替えが終わると、気力を振り絞って授業の支度をする。 (そうよね、とにかく授業は受けなくっちゃ…) ホントは恭介に会いたい。そんな気持ちを誤魔化している。 時間を気にしながら、キッチンでレモンティーを入れて飲む。 考えないようにしているのだが…。 カチャン。 力なくカップを受け皿に乗せると、バッグをからって出掛けた。
恭介は… (昨日電話中だったはずだよね?なんでその後出てくれなかったのかな? すぐに出掛けたのかな?鮎川のことだからそれも考えられるし…) ルルルル! 「はい、春日…」 「おっはよーございまーす。先輩!」 「あ、ひかるちゃん。おはよう。どうしたの?朝から。」 「モーニングコールでーす。っていうのは冗談で、ちょっと先輩の声が 聞きたかったから。じゃあ、今日も頑張って下さいね!」 電話は一方的に切られた。 賭けに出たひかるにしては、これが精一杯。 恭介は少し引いていた。 (何なんだろ?これって。このままじゃ、既成事実を楯に 逃げられなくなっちゃうし…ヤバいなあ…) いくら恭介でも、ひかるの心が読めてきた。 恭介の中にブルーな気分が少しづつ湧き上がってくる。
翌朝。 Kゼミ校舎の玄関で、『一応』恭介を待つまどか。 玄関近くは朝から受講生であふれ返っている。 (あいつ、何やってんだろ…) 諦めの表情を作って踵を返し、校舎の中へ入って行った。 恭介は行きがけに小松達と遭遇する。 「よお、さえない顔してるね〜春日クン。ひかるちゃんと何か…?」 「何だよ、朝っぱらから。」 「どうせお前、朝飯食ってないんだろ?寄ってかねーか、スタバ。」 3人は空いている席に荷物を置いて場所を確保する。 それぞれが、好みのドリンクに軽食を付けてオーダー。 席に戻ると、早速小松と八田は女の子たちの品定めをし始めている。 「みっともないから止めろよ。」 「そりゃあ、キミはひかるちゃんがいるからいいけどね。」 「鮎川だろ?」 八田が禁句を口にする。すると小松がたたみかけるように 「どっちなんだよ?」
「どっちでもないよ。」 恭介はブスッとして余所を向く。 (ヤバいよなあ、やっぱりこのままじゃ…) はしゃぐ小松と八田を余所に、またブルーな気分になって来る。 「おい、早く食おうぜ。遅刻するだろ?」 2人をせかして時計を見る。 予備校に着くと講義はすでに始まっていた。 大講義室の扉をそっと開け、後ろから音を立てないように静かに入る。 教室は階段状になっており、遠くで講師が熱弁を振るっている。 見渡す限りほぼ満席で、3人はそれぞれ空いてる席を探して散った。 空いてそうな席を見つけると恭介は小声で 「そこ空いてますか?」 「どうぞ。」 相手も小声で返す。 音を立てないようそっと座って、テキストを取り出し準備をする。 黒板を見ようとあらためて前を向くと、目の前に見覚えのある後姿。 (うっ!?鮎川…。)
790 :
コピペ :2009/11/30(月) 15:55:44 ID:???
彼女はこちらを少し向いてため息を吐く。 (なに遅刻してんのよ、バカ!) 彼女の仕草と雰囲気から、どうやら自分の存在は察知されている様子。 (うわぁ…、な、何だかヤバそう…) 結局、後姿が発する雰囲気から、彼女の気分を変に意識してしまい 恭介は講義に集中できずに1限目は終了した。 終わると同時にみんなが立ち上がり教室を移動する者や休憩に出る者で 講義室はゴタゴタになった。 「ねえ、あ、鮎川。」 まどかは無視して教室を出て行った。でも、荷物は席に置きっぱなし。 戻ってくるとの意思表示? (だって、次の講義もこの教室だもんなあ… それにしても目が赤かったけど、昨夜眠ってないのかなあ?) 授業開始間際に人の波と共に戻ってきて席に着いた。 話しかける間も無い。
同時に今度は小松と八田が隣の席に移ってきたために、 尚更話しかけづらい雰囲気になる。 しかし、小松は気軽に声を掛ける。 「ようっ!鮎川。」 「あら、おはよう。」 まどかはちらっと見て、興味無さそうに前を向いた。 恭介は、1限目以上にまどかを意識してしまう。 (何か怒ってるのかなあ?) 2限目が終わると、また同じ。 まどかは荷物を置いたままどこかに行ってしまう。 後を追おうとしても小松達が放してくれない。 「よう、お前らどうなってんの?ありゃ、明らかに怒ってるぜ。 おまけに目、クマってたし。お前、何かやらかしたのかあ?」 「え?…別に何もしてないけど。」 「じゃあ、昨日と今日の違いは何なんだよ?」 「いや、鮎川は『気まぐれ』だし…」
「それだけであいつがああなるかよ、普通。」 恭介はちょっと考えてみた。 (…えっ!?…ま、まさか、ひかるちゃん…) 恭介の顔がサアーっと青ざめていく。 「ほ〜れ、何か思い当たることでもあんだろ?」 3限目開始間際に戻ってくるまどか。相変わらずスカしている。 恭介にとっては地獄のような時間となった。 そして、4限目は小松達から解放されたが、もう講義は解らない。 ひたすら目の前のまどかの後姿を見ながら自問自省の時間が過ぎる。 そして、講義が終了すると、思いきって声をかけた。 「ねえ、鮎川…一緒にお昼…」 「ひかると食べれば?」 ゾッとするほど素気ない。 まどかは荷物をバッグに詰めると、席を立ち、その日はもう その席に戻ることはなかった。
結局、これを最後に、まどかは恭介と距離を取るようになった。 (ひかるちゃん、言ったのかなあ…この間のこと…) 帰りも小松達に絡まれながら、帰路へ着く恭介。 (ちゃんと説明しなくっちゃ…) 自宅に帰ると、こそっと自分の部屋に子機を持ち込む。 それから何度も電話をするのだが、全部留守電になっている。 何回掛けただろう、恭介は回数に比例して絶望を味わった。 一方、まどかは今日は飲んだくれていない。 掛ってくる電話の音を全て確認していた。 でも…出たくなかった。 予想外の事態に意地を張っている。 (そうよね…こうなった方がいいのよ…)
無理してひかるへ義理立てするけれど… 窓から暮れなずむ空を見上げると、ハワイの日々が蘇る。 (あれは何だったの?) 数日前の自分たちの関係を思い出すと寂しくなってきた。 (あんなやつ!) ホントは好きなのに… つい、意地を張ってしまう。 素直になれない…。 「さあ、夕ご飯済ませて明日の準備しなくっちゃ!」 予備校には行く気である。 今のところ、接点は『そこ』しかないことを 心のどこかで分かってるから…。
翌日。 恭介の姿を探す自分に気づくと (ダメだ…) どうしても許せない… 自らを抑えてしまう。 まどかは無理して恭介に背を向ける。 予備校では座る席も敢えて離すようにした。 恭介も必要以上に追えない。 お互いがお互いの距離を気にしながら、ぎこちない日々が始まる。 まどかは切り替えて授業に集中する。 そんなまどかを気にしながら、恭介は仕方なく受講している。 お互いが相手の姿を確認しながら、今までのように声を掛けられない。 意識し合いながら、彼女は敢えて彼を視界から外そうとしている。 恭介も少し諦めムード。 (やっぱり、今は『時間』が必要だよな…)
796 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2009/12/01(火) 01:34:23 ID:TEOc3vrx
エンジェルススレの者です。 続きも期待していますよ!! がんばって下さいね!!
ハワイの一件から自分の気持ちは固まっていた。 ただ、鮎川が言った一言が恭介を迷路へと誘い、そして… 僅かに出来た隙をひかるに突かれた。 (どうしたらいいんだろ…ちゃんと話したいのに、このままじゃ… 時間が経てば?…いや、その前にオレがはっきりさせないと…) 彼女の気持ちがどうであれ、 まずは自分の気持ちをはっきりさせるべき。 やっと決意が固まった。 優柔不断との決別。 (ちゃんとしよう!)
翌日、 今日はひかるの合宿打ち上げの日。 真夏の講堂での過酷で容赦のない舞台稽古がやっと終わり、 宿舎でお昼を兼ねた最後の反省会。 皆は感極まって泣き出すが、ひかるはそんな気分じゃない。 (なによ!今からじゃない、あたしにとって…。) 「桧山さん!電話よ。」 「え?あ、はい。」 (誰だろう?…まどかさんかなあ?) 慌てて宿舎の公衆電話へと急ぐ。 「はい、桧山です。」 「あ、ひかるちゃん?オレ春日。」 「先輩!」 「今日で終わりだよね?合宿。話があるんだけど…会えないかなあ?」
「へ〜、先輩から誘ってくれるなんて珍しいですねえ!何ですか?」 「いや、電話じゃ…。」 ちょっと声が沈んでいる。 「予備校あるんじゃないですか?」 「いや、今日は半日だから。来れそう?」 ひかるは本能的に危険を察知するが、 『避けられない』と直感し、返事をしてしまう。 「なんとか…。」 二人は時間と場所の打ち合わせをする。 「じゃあ、5時半に待ってま〜す。」 ひかるは努めて明るく振舞うが、嫌な予感がしていた。
(きっとハワイでまどかさんと何かあったに違いない。 この間は、あたしの不意打ちだったけど…) 恭介から『先日の事』の取り消しを告げられそうで怖くなってきた。 自分のしたことが、恭介に変なきっかけを与えてしまったんじゃないかと… (駄目よ、弱気になっちゃ。なにか…何か考えなきゃ…) 恭介のことを誰より好きな自信はあったはずなのに… 彼が自分だけのものという自信は無くなった。 (今まで、私の一人芝居だったの…?) ひかるの眼に悔し涙がにじんでくる。
ひかるは合宿所を出ると、公園に行く前にまどかの家に寄った。 ピ〜ンポ〜ン。 (え?まさか…) 2階から慌てて降りてきた。 「はい。…あ、あら、ひかる…合宿終わったの?」 ちょっと期待が外れる。 ひかるは荷物が詰まった大きなバッグを肩にからって立っていた。 「はい。ちょっと近くまで寄ったから。」 ひかるは無理に笑顔を作るけど… まどかはそんな彼女をやさしく迎え入れる。 「暑かったでしょ?上がんなよ。」 リビングに通された。 「久し振りでしょ?うち来んの。アイスコーヒーでいいかなあ?」 「はい。でも、『先輩と待ち合わせ』してるから…すぐ出ます。」 「あら、そう。」 ひかるの強調に反応しそうになる心を抑え、 一旦キッチンへ引っ込み深呼吸。 カランコロン! グラスに氷を入れ、ミルクとシロップを添えて持ってくる。 棚からとっておきのブルマンを取り出し、ゆっくりと挽き出した。 「うわ〜、高いんでしょ?そこまでしなくても。」 「ううん、落ち着く時間も必要よ、ひかる。」 まどかはひかるの心に余裕が無いのを見切っていた。 ドリップの用意ができたら、ちょうどケトルが音を立てる。
「うわ〜!いい香り。久しぶりにこの匂いかぐなあ〜。」 「でしょう?合宿中じゃこんなにゆっくりコーヒーの香りを楽しむなんて 出来なかったでしょう。」 ドリップが溜まると、あらためて氷が満たされたグラスに注がれる。 パリパリ! 氷が割れる音が鳴った。 まどかはそのままストローを入れ一口飲む。 ひかるはシロップを入れて混ぜた後、ほんの少しミルクを注いだ。 そして、それがグラスの中をゆっくり漂っていく様子をみつめている。 雰囲気から、何か言いた気。 (しょうがないなあ…) まどかの方からやさしく誘い水をかける。 「で、その後どうなの?春日クンと。」 まどかは『今だけ』お姉さんに徹するつもりでいた。 「……」 「どうしたのよ?」 すると、ひかるはみるみる涙目になる。 「多分…多分、迷惑なんですよ、あたしのことが。」 (いきなり何よ?キス『された』んじゃなかったの?)
ハワイから帰ってからのまどかは、恭介のことをチラつかせても 全く動じない。余裕すら感じる。 ホントは違うんだけど… まどかの大人な対応に、ひかるは焦りをより深くする。 恋敵に一矢報いたい、そんな気持ちが心のどこかで働いて、 トラップを仕掛けるものの、微動だにしないまどかに躊躇い、 その内、本当の素直な自分が出てしまう。 つい、いつもの『まどかさん』に相談する体となる。 ひかるは、こぼれそうになる涙を必死にこらえ語り出した。 「先輩に呼び出されてるんです。話があるからって。」 「…それで?」 まどかはやさしく促す。 「先輩…きっと、…きっと…」 (言いたいけれど言えない。訊きたいけれど訊けない…) ひかるはコーヒーを口にするが、とても味わえる気分じゃなかった。 カラン! まどかのグラスが鳴った途端、 突然、心の歯止めが外れた。 「ま、まどかさんはどうなんですか?!」
盆スレではストーリーどこまで行ってんの?ちらっと教えてくれんかのう?
「え?」 「先輩のこと…あたしと先輩とどっちが…」 ひかるの言わんとすることは解っている。 これ以上誤魔化しようがないと観念した。 「…二人とも大切だよ…二人とも。」 まどかは下を向いて呟いた。 「じゃあ、何で…」 (『大切に想ってくれてる』あたしから先輩を奪うんですか?) 「そんなの解んないよ、あたしだって。」 「いつから…?」 ひかるは食い下がる。 「だから、解んないって!」 まどかはひかるを睨んだ。 (もう…もう、十分でしょう?ひかる。) ひかるはグラスを両手に持ったまま黙ってしまった。 まどかはひかるの言いたいことを全部受け止める覚悟でいる。 『卑怯、裏切り…』いろんな言葉を受け止めようと。 でも、その上で、こと、恭介に関しては『対等』でいたかった。
いきなりひかるは立ちあがると 「まどかさんの気持ちは解ってます。…そ、そうですよね、 あたしが今まで気付かなかっただけなんですよね。」 「え?」 「とにかく先輩に会ってきます。それから…それからです!」 そう言うと 「ごちそう様でした。」 バッグをからって一人で出て行った。 まどかはソファに腰掛けたまま動かない。 (とうとう…この日が来ちゃった。) まどかはぼんやりとひかるが飲み残したコーヒーを見つめていた。 (そうよね…ひかるからすりゃ、『割り込み』だよね。 あたし、『最低』だよ…。)
(でも…) 不思議と胸騒ぎはない。 ひかるを前に、数年来心に溜めてきた想いを、 ひかるに促されてではあるが、 彼女と同じくらい「大切な存在」と、何とか表現出来た。 でもそれは、まどかの『女性』の部分が自然と求める、 違った意味で「大切な存在」。 争うことになっても…譲りたくない…そんな…『存在』。 はっきりとは表現できなかったけど、これで十分伝わったと思う。 言ってしまうと、ずっと心につっかえていたものが取れた気がする。 (『自分に素直になる』ってこういうこと?マリーさん…。) 冷静になって考えてみると、 どうあがいても…今の自分は恭介への想いを断ち難い。 この気持ちは…多分、いや、きっとこの先も変わらない。 一方、ひかるへの想いは今後も変わらないけれど、 だからと言って自分が身を引くのは、ひかるへの筋が通せても、 何より自分自身に筋が通らない。 素直じゃない…。 (後は…春日クン次第かな…)
ふと、まどかはひかるの言葉を思い出した。 (いつから?) 解らない…解らないけど…思えばあの階段で初めて出会った時? いや、その前から…もっと前から… 心の中に彼が『居た』ような気がする。 (不思議だなあ…) まどかはソファーから動かずに、ぼんやりと考えていた。 その頃公園では (ひかるちゃん遅いなあ…) 夕方の公園、待ち合わせの売店前で座って待ている恭介。 (ちゃんと言わなくっちゃ。) そんな姿を、遠くの木陰で見つめるひかる。 (とても行けないなあ…どうしよう…) ひかるはその場に隠れていた。ずっと恭介を見つめていた。 何度も出て行こうと思ったが、結局姿を現すことが出来なかった。 公園で待つこと1時間ちょっと。完全にすっぽかされた。 (ひかるちゃん来ないのかなあ…何かあったのかな?) 夕日は完全にビルの間に落ち、公園もオレンジ色に染まる。 長い影を見つめながら一人考える。 (ひょっとして、ひかるちゃんオレの気持ちを…) しょうがなく、恭介は帰ることにした。 明日は金曜日。いつもは毎年みんなで花火大会へ行く日。 (帰ったら電話してみよう。やっぱりはっきりさせないと。)
帰る姿を木陰から見つめながら、ひかるは切なくなった。 (もう駄目なのかな…?) 早い夕食後、 ルルルル! 「はい、春日です。」 「あ、まなみちゃん?ひかるですけど…先輩今…」 「あ、待ってて。」 まなみは子機に切り替え、恭介の部屋に持って行く。 「お兄ちゃん…ひかるちゃんから。」 「え?あ、有難う…」 もう、まなみは状況を解っている。 後は3人の問題であることも。 「ひかるちゃん?今日どうしたの?待ってたんだけど。」 「ごめんなさい!先輩。急用ができちゃって。着いたら先輩 帰った後みたいで…随分待ったんでしょう?」 ひかるは一部始終を確認していたはずにもかかわらず、嘘をつく。
「で、話って何ですか?」 (言わなくっちゃ…) 「うん、実は…お、俺、前から…」 ひかるは思わず遮る。 「あ、先輩。来週花火大会でしょ?行きませんか?勉強ばかりじゃ なくってえ〜、たまには息抜きしなくっちゃ!」 「いや、俺…」 「そこで聞いてあげますって。ね?今日のお詫びも兼ねてえ。」 「うん…。」 まんまとひかるの誘いに乗る。 しかし、決意は固い。 (やっぱ、電話じゃ…こんな話は会って、ちゃんと言わなくっちゃ。) 「じゃあ、神社で。」 そう言うと電話は切られた。
以来、まどかは講義に出て来なくなった。 まどかとひかるのやり取りなど知る由もない恭介。 (どうしたんだろう…?) 彼女のことを心配しながらも、電話をかける勇気が湧かない。 そして、数日が過ぎて花火大会当日。 夕方なのにまだ陽が高い街を、歩きながら神社に向かう恭介たち。 通りはセミたちの声でうるさい。 どこからともなく小松や八田や勇作が合流する。 通りの向こうから 「せんぱ〜い!」 いつもと変わらない笑顔でひかるが手を振っている。 「やっほー!」 「あかねちゃん!」 浴衣姿のひかるの隣で、部活帰りのあかねが手を挙げている。 スポーツ少女の彼女は、胸に小さな花柄がワンポイントの白のTシャツに 濃紺にオレンジ色の太いラインがカッコいい膝丈のショートパンツ姿。 高校名が大きく書かれたスポーツバッグをたすき掛けにからっている。 「久し振りだな。部活帰り?」 「うん、そこでひかるちゃんと会ってさ、 聞いたら恭介たちと花火大会って。 でね、便乗しようかなあって。お腹減ったし。あははは!」 「お前まだ部活やってんの?来年どうすんの?」
「う〜ん…まどかちゃんはどうするって?」 「一応K大受けるみたいだけど。」 (おい、あかね、まさかお前、ついてくる気じゃ…) 「K大かあ…。今からじゃ間に合わないなあ。」 (よしよし…) すると、まなみが 「あかねちゃん、スポーツ推薦使ったら…」 (よ、余計なことを…こいつが一緒じゃ、鮎川とのキャンパスライフが…) 「…あ!さすがまなみ!いいとこ気付くじゃん。その手が…」 「え〜?まさか、本気で付いて来るつもりかよ?」 「ついて来る?…つーことは、恭介、お前もK大受けんの? ぷーっ!あ、あはははは! そういうのを『無謀』って言うのよ。」 あかねは恭介の肩をバシバシ叩きながら笑う。 (鮎川から言われるならまだしも、何でお前から…) 「うるせー。」
笑って聞いていたまなみが兄の応援をする。 「でも、あかねちゃん、お兄ちゃん帰って来てから凄く頑張ってるのよ。」 「そうだよ!今は勉強に燃えてんの!」 思い出したようにくるみが 「今日は『燃えるゴミ』の日だったっけ?」 「くるみちゃん、ひっどーい!」 ひかるが怒り口調で恭介を援護。 みんなは笑ってる。 あかねはキョロキョロと辺りを見回しながら、 「まあ、頑張ってよ。ところで、『あたしの』まどかちゃんは?」 「さあ…。」 皆がひかると恭介に気を使って知らん顔をする。 まなみは事の詳細を把握しているし、小松や八田も馬鹿じゃない。 予備校での恭介と鮎川の関係に、遠慮するところはしている。 勇作はいつも遠くからひかるを見守っている。 恭介の本心がひかるに無いことも解っている。
(あいつ、いつまでひかるちゃんを…いつかオレがこの手で…) 事と次第では恭介を成敗(フルボッコ)する気である。 彼こそ本当のナイトなのかも知れないが、今のところ想いは通じてない。 皆が遠まわしにひかるを気遣うのだが…。 学年も状況も…全て会話に入れないでいるひかる。 (先輩とまどかさん…もう一緒に居ることが当たり前になってる。 あたしの知らない間に、どんどん置いて行かれてる…) ひかるの笑顔の奥に、誤魔化しようのない不安が見え隠れしている。 そんな雰囲気をキャッチして、あかねは事態が差し迫っていることを察した。 「ふ〜ん…。」 あかねは、まどかが帰国してから一度電話を貰っただけだった。 (そう言えば…な〜んか元気無かったよね…) あらためてひかるを見ると、確かにこっちもちょっと空元気。 勇作が心配気に見つめている。 (こればっかしは、当人同士の気持ちの問題だし… あたしに出来ることって何だろ?) あかねもひかるを気遣った。
会場近くの神社に着くと、みんなは周辺の夜店を見て回る。 金魚すくいにはまる姉妹。射的でエキサイトするあかねと勇作。 ソースの焦げるいい匂いに集まったり、ソフトクリームにはしゃいだり、 花火大会まではまだ時間がある。経済的バックアップは隆がいる。 そんな中… 「ひかるちゃん、ちょっとあっち行かない?」 「え?」 促されながらも、ひかるは覚悟を決めた。 (何と言われても、気安く返事をするもんですか!) 二人は賑わいから離れたベンチに腰かけた。 恭介はひかるの方を見ずに、重たい気分で切り出した。 「ひかるちゃん、俺、実は…」 ひかるは遮るように 「この間はごめんなさい。ほんとは居たんだけど…『怖くって』…」 「え?…どういうこと?」
元祖に出し抜かれてるぞ!
817 :
スレ主 :2009/12/11(金) 22:49:30 ID:???
あいつは学生だろ! 俺は忙しーんだよ! だ−って、あっちを読んでな!
ひかるは余所を向いてため息交じりに 「せんぱい…あたしじゃないんでしょ?」 「・・・!!」 先手を打たれて驚く恭介。 さらに鋭く切り込むひかる。 恭介から顔を逸らすように呟いた。 「ホントはまどかさんなんでしょ?」 「そ、そんな・・・いや、・・・『うん』・・・。」 追い詰められて白状する情けなさ。 「いいんですよ、誤魔化さなくっても。」 「ごめん。」 「何となく解っちゃった。でも…でも、今頃になって…」 ひかるはやるせなさそうに肩を落とす。 「俺…やっぱり…3年経っても変わんなかった。優柔不断で…」 「先輩、あたしは邪魔ですか?もう、あたしは邪魔なんですか? デートだってしたじゃないですか。その時も、まどかさんのこと 考えてたんですか?」 「……」 「あ、あたしは認められないなあ、今更。それって酷いですよ。 残酷です。あたしはずっと先輩に気持を伝えてきましたよね? まどかさんは先輩のために何かしましたか?あたしは解らない!」 恭介は黙っているしかなかった。 この3年半、あからさまにはしなかったけど、本当に想い合っていたのは… 『二人』なのだから…。 ひかるは下を向いている恭介に訊く。 「ねえ、先輩、駄目なんですか?あたしじゃ…」
「……」 黙っている恭介に、堪え切れずひかるは嗚咽を漏らし出した。 涙がぽたぽたと手の甲に落ちる。 そんなひかるを恭介は直視出来ない。 しかし、気持ちを奮い立たせながら、胸の奥から絞り出すように 「やっぱり…俺、鮎川のことが…」 ひかるはキッと睨んで 「今さら、信じられない!そんなこと…」 ピカッ!! 空が光った途端、大きめの雨粒が落ちてきた。 賑わいがざわめきになって、雨宿りに逃げ惑う人たちが走り出す。 神社の木々に雨が滴る音がうるさく、むせ返る様な木々の匂いが 沸き立つ中に、動けずにいる二人。
「ごめん、ひかるちゃん。」 「何、謝ってるんですか…あたしは解りません。あたしは…」 そう言うと、すっくと立ち上がり 「先輩の気持ちだけで済むことですか?とにかく今日は帰ります!」 そう言うと、びしょ濡れの浴衣のままその場から駆け出した。 恭介は動けないでいる。 頭からびしょ濡れのまま、川沿いをとぼとぼと歩くひかるに、 そっと傘を差し出す勇作。 彼の気持ちは有難いのだが、今は恭介しか見えない。 ひかるは呟くように 「あっち行ってよ…。」 (ひ、ひかるちゃん…。) 雨が強がるひかるの涙を隠してくれる。 結局、夕立ちが通り過ぎると、花火大会は中止されることなく始まった。 すさまじい音と閃光に輝く夜空。 しかし、恭介は一人マンションに帰った。
シャワーと着替えを済ませた時 ルルルル… 「はい、春日です。」 「……」 「もしもし?」 「…春日クン…あたし…」 「…!あ、鮎川?鮎川なの?」 ちょっと間が開き… 「あたし…あたしね、今日花火大会だから… …一緒にって… でも、最近春日クンと… 春日クンとうまく行ってないし……」 「う、うん…」 また、間が開いて… 「今日くらいは気分を変えようって…浴衣を着てみたんだけど… 今までのことがたくさん…たくさん頭を過って…何で… 何で、こうなっちゃうのかなあって…」 「俺だって……」 「自分の気持ち次第だって考えるようにしてたんだけど……」 まどかの声が辛そうな涙声になって行く。 (もう駄目だ…我慢出来ない。) 恭介に対しても素直になれた。
「あたし…春日クンのことで…あなたのことで… ずっと…ずっと揺れっぱなしなんだ…一体どうしたら…」 「お、俺…」 「あたし…本当は春日クンが思ってるほど…強くないよ……」 とうとうまどかは隠してきた自分の一面をさらけ出した。 それに応えるかのように恭介も思い切る。 「…鮎川…今からそっちに行ってもいい?」 恭介の言葉で…たった今…『つっぱり』が崩れた。 「はやく…早く来て。…逢いたい。」 恭介は自転車に乗って駆け出した。 まどかは待っている。 浴衣姿のまま…廊下でぼんやりと、明かりのスイッチを… 点けたり消したりしながら…気持ちを抑えられない… 恭介が玄関を開けると、涙の跡が残った顔のまどかが居た。 「鮎川…!」
たまらずまどかは恭介のもとに駆け寄る。 二人は…お互いを愛おしく思い…口づけをしようと目をつむる。 でも…やっぱり…まどかは恭介のキスを…寸前でかわして、 彼の肩に…そっと…頬を寄せた。 「逢いたかった…。」 「俺、今までちゃんとしてなくってごめん。」 恭介はまどかの肩をやさしくつつんだ。 「ううん…あたしも、春日クンの気持ちに甘えてたから… ホントは春日クンあたしのことを……そう思ってたから…」 「ひかるちゃんとのこと…聞いたの?」 「うん…ショックだった…。」 そう言うと、まどかは恭介の胸にあらためて顔をうずめた。 彼女の肩が少し震えている。 「ごめん…。」 「ううん、いいの…。」 「あれは…」 「いいって、解ってる。どうせ…不意打ちされたんでしょ?」 「うん…でも、ごめん…。」
落ち着いたまどかは恭介から離れた。 少し顔を赤らめ 「ねえ…上がってかない…?ほら。」 手を引いて恭介を自分の部屋に招いた。 階段を上がるとすぐに彼女の部屋がある。 久し振りに見る彼女の部屋は、洗練された大人の女性のもの。 「ちょっと待ってて。顔洗ってくる。」 そう言うと、まどかは階下に降りた。 一人残された恭介は部屋を見渡すと、机の上に自分の写真が…。 (鮎川…)
しばらくして、 彼女はあらためて髪を結いあげ、浴衣も着直して上がって来た。 トレイには冷えたワインとグラスが二つ。 おつまみにはハワイで買ったドライフルーツが添えられている。 ちょっと酔うことで「素直に」なりたかった。 汗をかいている彼に冷たいおしぼりも持ってきてくれた。 しかし、部屋に戻ると恭介は自分自身の写真と睨めっこしている。 (これっていつの時の…?なんか俺の様で…しっくり来ない。) 「やだっ!」 まどかは慌てて取り上げる。 「それって、何時の?」 「さあ。」 顔を赤くしてそっぽを向く。 時間は遡って… 高校2年に進級する春…恭介と出会って3年目。 恭介はまどかが『構いたくなる』唯一の異性になっていた。 学校でもアバカブでも気安く声が掛けられる、彼女にとって 希少な存在だった。 そして、何より、からかい甲斐のある『異性』…。 ひかるの彼で…どことなく弟のような…頼りない男の子。
でも時々…ひかるが彼にベタベタすると、無性に抑えられない自分がいるし、 彼のことを思い出してウキウキしている自分に驚くこともあった。 彼の気持ちは解った上で、そんな時は、無理して (ひかるの応援するんだよね?) と、意思確認の必要を迫られていた。 1年3学期の追試。 3科目の追試を、まどかに手伝ってもらってなんとかクリア。 もう、それだけで恭介はまどかに頭が上がらない。 「お礼にアバカブ手伝ってよ。近くの女子大のコンパで このシーズンは忙しいんだから。」 「喜んで!」 恭介にとっては、それはなんとも嬉しい口実。 だって、もう頭の中は彼女のことでいっぱいなのだから。 一緒に居られる口実が出来た。
春休みはアバカブでのバイト。 まどかもなんだか楽しそう。 そそっかしい恭介は、まどかに叱られながらも、やっぱり… 楽しそう。 マスターも微妙な二人の関係には以前から気づいている。 「何やってんのよ!」 「あ、ごめん。」 「んもう!じゃあ、これ洗っといて。」 ガシャン! 「んもう!バイト代から引くからね!」 「ご、ごめんなさい…。」 ちょっと怒るけど、すぐに許せる。 マスターはそんな二人をニヤニヤして眺めている。 そこには「いつもの」二人の世界が出来ていた。 カランコロン! 「あ、ひかるちゃん。いらっしゃい。」 「きゃ〜、せんぱ〜い!」 エプロン姿の恭介に飛びつく。 まどかはちょっと面白くない。
彼女は知らん顔してカウンターの中に入った。 「先輩もバイトですかあ?」 恭介は慌てて 「いや、お、俺は…鮎川に迷惑かけたから…」 まどかはしれっと横目で見つめながら (ふ〜ん、それだけの理由でバイト引き受けたんだ…) そういう視線を送る。 明らかにご機嫌がよろしくない。 またもや恭介は慌てて 「いや、俺は一緒に…いや…その…」 ひかるは不思議そうに恭介を見ている。 二人の関係が微妙なものに育っていることに気付かない。 「ぷっ!」 まどかは吹き出す。 (「一緒に」ねえ…ホントかしら?) 機嫌を直してお皿を洗い出した。 恭介は頭をかきながら照れる。 「ねえ、ねえ!一体どうしたんですか〜?せんぱ〜い。」
「そう言えば、公園が賑やかだったけど何かなあ?」 恭介は知っていた。 「あ、あれはね、アマチュアの写真撮影会でね、プロのモデルさんも 来るんだって、被写体で。」 「へ〜、じゃあ、先輩も応募したらどうですか?」 「俺のはお遊びだから。」 するとまどかが口をはさんで 「でも、あたし達撮ってくれた写真って、どれも気に入ってるよ。 お父さんの素質なのかなあ?上手だと思うよ、アングルも奇想天外だし。」 「奇想天外?そうかなあ…」 まどかは偶然抱っこされた写真のことを思い出している。 「そうですよ。先輩素質あるんだから、絶対出るべきですよ!」 「春日クン、昼過ぎたら店が暇になるから、行ってきたら?」 マスターからのやさしい提案。 「やったー!じゃあ、モデルはあたしですね、先輩。」 「う、うん…」 恭介はちょっとまどかの方を見ると、彼女は知らん顔してお皿を磨いている。
「ね、ねえ、鮎川も…。」 「はあ?」 「だから…鮎川も…ひかるちゃんと一緒に…」 (ひかると一緒か…) 「い、や、だ!ひかるがモデルなのに不足なの?」 「え〜!まどかさんも行きましょうよ〜!ねえ、いいでしょう?マスター!」 「ああ、いいよ。行っておいで。」 「鮎川も…」 「ごめん。興味ないから。春日クン居ても邪魔なだけだから行ってくれる?」 いつものまどかが顔を出した。 「残念だなあ〜。じゃあ、先輩、行きましょうか?」 ニコニコ顔のひかるが恭介にまとわりつく。 まどかは思いっきり作った笑顔で 「いってらっしゃ〜い。」 恭介は心の中で (ひえ〜!) ひかるにはアバカブで待ってもらい、一旦マンションへ戻った。
「え〜っと、カメラ、カメラと…」 恭介は本格式の一眼レフとその場で出せるポラロイドをバッグに詰め、 すぐにアバカブに戻る。 カウンターでは鼻歌交じりにひかるが待っている。 「ねえ、まどかさん。前みたいに一緒に撮りましょうよぉ〜。」 「ゴメン!今忙しいんだ。ひかるいっぱい撮って貰いなよ。」 恭介が戻ってきた。 まどかを見るのだが、全く無視され、取りつく島もない。 結局、カメラバッグをかついで二人は公園に向かった。 いろんな場所で、いろんなアングルでひかるを撮る恭介。 湖面や木々をバックに天真爛漫な彼女はキラキラ輝いている。 ひかるもモデルとしては十分過ぎるくらい可愛い。 「いいねえ〜。」 それまでは恭介が独り占めしていたが、そのうち他の小僧たちも 「撮らせてもらっていいですか?」 あっという間にひかるは人気者に。 (ひかるちゃん凄いなあ…) 感心しながら眺めている呑気な恭介に後ろから…
「どう?いいの撮れた?」 びっくりしてカメラを落としそうになる。 「うわっ!あ、鮎川…いつ来たの?」 「いや…お店が一段落したから…ねえ、ひかるは?」 「ほら、あそこ。もう、ひかるちゃん人気者で…」 「春日クンは撮らなくっていいの?」 「もう撮ったし…それより…ねえ、鮎川を撮らせてくれない?」 「い、や、で、す!」 (やっぱり…。) 「ねえ、そのカメラ高いんでしょ?あたしでも使えそうなのってないの?」 恭介はかばんの中からポラロイドを取り出した。 「これなら、今撮ったやつがすぐ見られるよ。」 そう言って手渡し説明する。 まどかは言われる通りに風景を撮ってみた。 「へ〜、面白いね。」
二人はそのまま公園内をぶらぶらする。 「ねえ、あそこのベンチで休まない?ジュース買ってくるから。」 恭介はまどかの傍を離れて売店に向かった。 まどかは恭介の一眼レフを興味深げに手にとって眺めている。 ふと気付くと、公園の大きなモニュメントに恭介が映っていた。 当の本人はそのことに全く気付いていない。 彼はソフトクリーム売り場に集まる子供相手に優しく微笑んでいる。 まどかはそこに映る恭介を見ているうちに、急に…無意識に手が動いた。 ポラロイドカメラに持ち換えるや実像の『彼』を写す。 たまらなく… 出来立てホヤホヤの写真を手に取り、じ〜っと見ているまどか。 そんな彼女の元に恭介がジュースを持って戻ってきた。 まどかは慌ててポケットに隠す。 「今、何か撮ってた?」 「別に…」 まどかの視線が泳いでいる。 そんな二人の元へひかるが駆けて来た。 「せんぱ〜い!あれ?まどかさん来たんですか?」 「うん、ちょっとね。お店が暇になったから…じゃあ、戻るから。」 そう言うと、カメラを突き返し、とっととアバカブに戻って行った。 (…?) あっ気に取られて見送りながら 「あ、ひかるちゃん…ジュース飲む?」 「やっぴ〜!せんぱ〜い、有難うございます!」
カランコロ〜ン 「お、まどかクン。どうだった?」 「別に…」 まどかはカウンターに入ると、さも忙しそうに立ち働き始める。 しばらくすると、恭介とひかるが戻ってきた。 相変わらずひかるは恭介にベタベタとまとわりつく。 「まあ、いいか…」 まどかは気にしないように努めながらも、無意識に二人を見てしまう。 時々話に加わるものの、夕方過ぎると店も忙しくなって来た。 (いい加減にしなよ、ばか…) まどかは呆れたように尋ねる。 「あのさぁ、春日クン…手伝ってくれるんじゃなかったの?」 思い出したように 「あ、そうだった。俺、お客じゃないんだよね。」 そういうと、慌ててエプロンをかけて、ウエーターに戻った。 お店は女子大生のお客で慌ただしく、まどかも恭介もひかるの 相手ができなくなった。 「じゃあ、あたし帰りますね〜。」
「先輩もまどかさんも頑張って下さいね!」 屈託のない笑顔で店を出て行く。 今日はモテモテで機嫌がいい。めずらしく粘らない。 まどかと恭介は顔を見合わせ「は〜」っとため息をつくと、 どちらからともなく笑い出した。 怒涛の忙しさが過ぎ、10時にはcloseの札を出す。 マスターはレジの精算に余念がない。恭介はまどか指導のもと 後片付けをテキパキとこなしている。 「お疲れ様!」 「お先に〜!おやすみなさ〜い。」 まだまだ肌寒い早春の夜。 どちらからともなく歩調を合わせて…一緒の帰り道。 まどかは何だか嬉しそう。 「どうしたの?」 「ううん、あ、春日クン寒いでしょ?ほら、半分貸してあげるよ。」 そう言うと、恭介の後ろに回り、自分がしてるマフラーの半分を 恭介の首に巻いてやった。 一本のマフラーで二人は『繋がった。』
でも… 「え?」 巻いてやった両端をキュッと締めるまどか。 照れる恭介にちょっと意地悪をした。 「く、苦し…い!」 「今日の様は何よ!手伝うって言ったじゃん!明日も手伝うよね?」 「ギブ…」 まどかの手をポンポンと叩く。 「うへ〜…手加減無いんだもん。」 「あはははは!おやすみ〜。」 悪戯な天使は恭介の元から逃げて行った。 相変らず明かりが点いていない暗い家に帰宅するまどか。 でも、今日は楽しみが待っている。 部屋に上がるとポケットから写真を取り出した。 恭介の優しさがにじみ出ているナイスショット。 見ていると、心が穏やかになる。 やさしい笑顔で眺めてしまう。 数々の武勇伝を誇る荒んだまどかは、もうどこにも居ない。
浴槽で十分体を温めてあげた後、バスタオルを巻いて部屋に上がる。 好きな曲を流しながら髪を乾かし、お肌の手入れをし… その時々に、恭介の写真を見てしまう。 そしてふと手が止まった。 (あたし…何やってんの?) 慌てて写真を引き出しにしまう。 そこには封が切られていないラッキーストライクが…。 (そうよね、あんたは見張り役がお似合いよ。) でも…、二人が3年に進級した翌年の梅雨… それは引き出しから出され、彼女の机の上へと昇格した。
時間は戻って… 「ね、ねえ、飲まない?」 そっとワインを差し出す。自分はドライフルーツを頬張る。 ふたりは視線を合わせられない。 気のせいか、少し暑くなってきた。 エアコンを少し強くしようとリモコンを取り上げた瞬間、 窓の外が凄く光り、遅れて部屋を震わせるように稲妻が鳴り響いた。 ギクッとするまどか。 外は急にザーっと雨音が激しくなる。 「ひかるのこと…どうするの?」 まどかは自問自答のように呟いた。
839 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2009/12/15(火) 11:06:09 ID:vJg6KZvB
どこに書いていいかわからないので…。 とりあえず、エンジェルス入団おめでとうございます! 小説も頑張って下さいね!
今は『彼』が傍に居てくれる。でも… 「俺…実は今日、ひかるちゃんに…俺の本当の気持ちを…」 「え?…言ったの?」 まどかはちょっと驚いた。 「うん。でも…でも、納得してなかったみたい…」 「そう。」 彼女はワイングラスを片手に雨が打ち付ける窓の方へ行く。 「…そうよね、納得する訳…」 「でも…俺、初めて会った時から、鮎川のこと…好きだったから…」 ストレートに告白した。 恭介は言わずにいられなかった。
あらためて言葉にされ、まどかは頬を赤くする。 照れて他所を向いたまま 「うん…あたしも…。 …でも、不良してたし… …素直じゃなかったよね。」 そして、心に思い留めていた『事情』を語る。 「中学の時にね、ひかるに相談されたの、 ホントは春日クンが他の人を好きなんじゃないかって。 それでね、言っちゃったの、『そんなことないよ』って。 そして…ひかるを『応援する』って…… だから…素直じゃないのよね、あたし…。」 恭介はまどかの気持ちを本人から聞いて、あらためて解った。 彼女は彼女なりに辛い思いをして来たことを。 そして… (俺がしっかりしなくっちゃ!) 急に立ち上がると、外を眺めるまどかの傍に行く。 窓に映る恭介の姿が近づいてくるのを見ながらドキドキするまどか。
でも、彼は彼女の体に指一本触れることをせずに想いを語り出した。 「俺、鮎川のこと、ずっと…。なのに、俺のせいでひかるちゃんや 鮎川を傷つけることになっちゃった…。」 「ううん、いいの、あたしは。あたしだって…」 「俺、ちゃんとしたい…。そして、あらためて鮎川に…だから、今日は…」 「そうだね。」 二人は黙って雨が打ちつける窓の外を見ていた。 まどかは少し怖かったけど、ちょっとだけ『期待』した自分を恥じた。 恭介はグラスを空けると 「じゃあ、帰るね。」 そう言って部屋を出た。 まどかは玄関まで見送る。そして… 靴を履こうとする恭介の後姿にそっと手を触れた。 恭介はゆっくり振り向く。 「鮎川…え?」 「好きだよ、春日クン…。」 自然と二人の唇が重なる…。 ゆっくりと時間が止まった。
「ごめん…。」 まどかは恭介から離れた。 「じゃあ…」 恭介が外に出ると雨は上がっており 月に照らされた雲が輝いて流れている。 ひと降りの後、空気は澄んで、星々もキラキラと輝く。 まどかは恭介の自転車のサドルの水滴を、浴衣の袖で拭いた。 「気を付けてね。」 「うん。」 恭介を見送った後、まどかは部屋に上がり、 そして部屋の明かりを消すと、ベッドに腰掛け『想い』に耽った。 (春日クン、有難う。 はっきりさせなかったのはあなただけじゃない。 あたしもそう。あたしにも責任あるよ。 あたしも悩んだんだ。 あたしにとってひかるの存在、ひかるにとってあたしの存在… そして何より、あたし達にとって春日クンの存在… いろいろ悩んだけど…やっぱり… 今の自分の『本当の気持ち』に素直になることにしたの。)
ふと気付くと、窓の外は静か。また降り出しそうな気配。 まどかはベッドのスタンドに灯りをつけると 「よいしょっと。」 反動をつけ、ベッドから机の方へポンと跳んだ。 机の上の飲み残したワインを手にし、口元へ運ぼうとした、その時 ザー! 突然の雨音に思わず窓の外を見る。 (春日クン、大丈夫かしら?) 心配そうに見ていると、ガラスに映る自分の姿に焦点が合った。 (やっぱり、無理してるのかなあ…) まどかは、口を付けずにグラスを置いてベッドに戻る。 そして、灯りを落とすと、シーツの間からさっき隠しておいた 「取って置き」の写真を取り出した。
暗闇の中、まどかは大きな目を見開いて『彼』を見つめる。 灯りを落としたせいで、写真はモノトーンになっているけれど、 恭介の顔は彼女の脳裏で鮮やかに蘇る。 少しドキドキしてきた。 「あたしのファーストかぁ…」 (ちょっと切ないなあ…) 彼女はそっと唇をなぞり、さっき触れた彼の感触を思い出す。 (これで良かったのよ。これで…) そのままベッドに横になると 自分の気持ちに折り合いをつけようと、何度も繰り返し、 まどろみの中へと落ちて行った。 (ひかる…)
家に帰りついた恭介。 みんなも戻ってきている。 「お兄ちゃん、どうしたの?ひかるちゃんは?」 「……」 恭介はため息をつくと黙ってそのままバスルームへ向かった。 シャワーを浴びると部屋に引きこもった。 くるみが覗こうとするのをまなみが制する。 「ダメよ、くるみちゃん。そっとしといてあげよう?」 恭介は財布から鮎川の写真を取り出すと感慨深げに (あの鮎川と…キスしたんだよなあ。あの鮎川と…) はじめは鮎川の気まぐれな態度に翻弄された。 頬を張られたことも一度や二度じゃない。 でも…やっぱり…二人の想いは深くつながっていたことを 今、こんな形で実感している。 (あの鮎川と…)
翌朝 恭介は講義へ向かおうとマンションを出る。 すると…外でひかるが待っていた。 恭介はやるせなくなる。 (ひかるちゃん…) 「おはようございます、先輩。」 「う、うん。おはよう。」 「今度、あたしが主演に抜擢された劇が学校の講堂であるんです。 で、先輩に観に来て欲しいから、チケットを…」 努めて笑顔で振舞うひかるに 「ごめん…。俺、行けない。」 「え〜?どうしてですかあ?」 「だからさ、ねえひかるちゃん、もう、こういうの…おれ応えられない。」 ひかるが差し出すチケットの受け取りを拒んだ。 「そうですよね…。でも、もし気が向いたらで…。」 「いや、やっぱり無理だよ。悪いけど講義があるから…」 そいう言うと、恭介はひかるの脇をすり抜け駅へと歩き出した。 ひかるは、 「じゃあ、駅まで送って行きます!」 あわてて恭介の後を追う。 恭介はちらっとひかるを見て、肩を落とし、そのまま駅へと歩き出した。
ひかるは駅のホームまで付いてくる。 恭介はさっさと乗り込むと、無情にもドアが閉まる。 「せんぱい、頑張って…」 ひかるの言葉は遮られ、恭介も余所を向いている。 出発する電車を見送るひかる。 ひかるは何か言ってるのだけれど、ただただ恭介はやるせない。 予備校の玄関に恭介の姿を探すまどかの姿が。 やっとまどかと、普通に…『それなりの関係』で待ち合わせが出来る。 昨日のことを思い出すと二人とも照れくさい。 教室に入り席は隣同志。 幸い小松達は別の講義。 授業中まどかはメモ用紙に書いて恭介にそっと渡す。 (大丈夫?寝てないの?) 恭介は手紙を返す。 (まだ諦めてくれないみたい…) それを見て、まどかは深いため息をついた。 (そうだよね…)
講義が終わると二人は休憩に出る。 自販機でコーヒーを買うと窓側に移動する。 まどかはコーヒーを少し口にし、外の景色を眺めたまま訊いた。 「どうするの?」 恭介は街の景色から足元へと視線を移し 「…解ってもらうしかないよね…それしか…辛いなあ…」 ため息交じりに呟いた。 まどかはやさしく同調する。 「うん…みんな辛いよ。みんな…」 「か〜すがく〜・・・うっ!!」 (止めとけ、八田!) 雰囲気を察して小松が抑えた。
3限目の講義で今日は終了。 「気分変えようか?」 まどかの提案で二人はお昼に向かう。 「あたしね、今まで…春日クンと…こうやってさあ… こんな日を待ってたのかも知れない…。」 「え?」 嬉しそうに語るまどかの顔を見つめる恭介。 「…やっぱり、あたしらしくないよね…、『不良』だし。」 恥ずかしくなって、そっぽを向いた。 「そんなこと…、俺だって…」 (どれだけ夢見たことか…絶対手が届かない存在だったもんなあ。) ふと気付くと、すれ違う男性諸君の視線が気になる。
恭介はちょっとスネて見せるまどかに提案。 「ねえ、俺がよく行く定食屋さんなんだけど、そこのハムカツ定食 すっごく美味しいんだ。行かない?」 「パース!昼から重いよ。それよりさあ、前から行ってみたかったとこ あるんだ。そっちにしよ?」 「なに?」 「冷やし中華!」 「ええ!?うそ?」 のけ反る恭介。 「鮎川って、そんなの食べるの?」 「何よ!食べちゃ悪いの?」 「いや…ほら、鮎川って、なんかアバカブの…洋食のイメージが。」 「まぎれもない日本人なんですけど。 じゃあ、ハムカツは『鮎川』にお似合いなんだあ、キミにとっては。」 そう言って、恭介を指差すと、二人は笑い出した。
学生街にあるラーメン店。中は混んでいる。 カウンター内からおじさんが忙しそうに声を掛けてくる。 「兄ちゃんたち、カウンターでいいかい?」 「あ、はい。」 「兄ちゃん何する?」 「冷やし中華を…」 「彼女は?」 (か、彼女!!??) 「あ、あたしも、…おやじ…同じ…冷やし中華を下さい。」 まどかはドギマギし出した。 二人は目を合わせられないでいた。同じことを考えている。 恭介はお食事中の男性諸君の視線をチラチラ感じながら、 誇らしいやら…恥ずかしいやら…。
「はい、お待ちどう様。」 二人の前に色鮮やかな冷やし中華が置かれた。 「うわあ!美味しそう!いただきま〜す。」 「ねえ、ここ前から狙ってたんだあ。どう?」 「お、おいひ…ゲホッ!ゲホッ!!」 辛子にむせながら、それでも止まらないでいる恭介。 そんな「彼」をまどかは楽しそうに眺めている。 「ごちそうさま〜。」 席を立ってレジに向かう二人。 「あれ?」 「どうしたの?財布忘れたとか?」 予定調和な『落ち』を想像するまどかに 「いや…財布はあるんだけど…中身が…」 恥ずかしそうに言う恭介。
「プッ!」 想定外の落ちに思わず噴き出す。 「いいよ、言い出したのあたしだから。ここは、おご…う〜ん… や〜めた。ここは『貸し』ね。」 言い直すまどか。 惜い!とばかりに指を鳴らす恭介。 『貸し』にしておけば、いずれ返してもらわなければならない。 よって、またこういう二人の時間を共有出来る訳であり… 食べ終わると、二人は図書館に向かう。 中はかなり混んでおり、別々の席に離れて座るしかなさそう。 「何時までする?」 「う〜ん…アバカブないし…閉館までしようかなあ。」 「じゃあ、俺も!」
二人はそれぞれ空いた席につくと勉強に取り掛かった。 明日は夏期講習中期最後のまとめテスト。 恭介はまどかに置いて行かれないように頑張るしかない。 一方のまどかも (あ〜あ、ほ〜んと、ハワイでおバカになってる。) 自分にため息をつきながら、講義の復讐にとりかかる。 2時間ほど集中してやると、 (ちょっと休憩しようかなあ…) まどかは席を立ち、恭介を探す。そして… (ふ〜ん、気合入ってんじゃん。) 彼は一生懸命参考書を調べながら勉強していた。 (せっかく調子付いてるんだし…まあ、いいか。) 恭介を誘わず、一人で外に出た。 予備校生や、見るからに高校生な連中がつるんで喫煙している。 (昔のあたしも、ああだったのかなあ…?) ちょっと自分に呆れている。
久しぶりコピペしようと思ったら、する必要がなかった。
まどかはすぐにその場を離れ、夏の陽射で誰も居ない裏庭にやって来た。 クーラーが効き過ぎているせいか、帰って暑さが心地いい。 (再開しよっと) ちょっと伸びをすると、また自分の席に戻った。 集中して勉強していると閉館15分前を知らせる音楽が流れ出した。 まだ、粘っている学生もいるけれど、みんなが一斉に片付け出すと、 それぞれも諦めるように片付け出す。 「鮎川。」 恭介が迎えにきた。 「帰ろっか?」 「うん。」 二人は図書館を後にする。 街はまだ陽が高く、車の騒音で賑やか。 「春日クン、凄いね。集中して頑張れるようになったんだ。」 「そうかなあ?」 「だって、以前はそわそわしてることが多くって、集中力無かったもん。」 (鮎川の前じゃ、誰だってソワソワするっちゅーの!) 「なに?」 「あ、あははは…。」 慌てて誤魔化す恭介。
図書館を出て、駅へ向かう二人。 暑い夕陽に照らされて、それでも会話が絶えない。 まどかの表情は、驚いて見せたり『ぷい』と他所を向いたかと思うと 急に笑い出したりと、猫の目のようにコロコロと変化する。 中学生の頃は無口で表情は冷たく、すぐに相手を睨む癖もあったのに、 恭介との出会いがこんなに彼女を変えてくれた。 そんな自分の変化に、今までは敢えて知らん顔して来たけれど、 今では素直に嬉しく感じている。 切符を買うと電車に乗る。 「あ〜涼しい!」 ラッシュのピークは過ぎたとは言え、車内はかなり混んでいる。 まどかはハンカチを恭介に渡し、自分もミニタオルで額の汗を拭く。 「あ…有難う。」 恭介も額の汗を拭こうとしたら、優しく甘い香りが… (うわあ〜、鮎川の匂いだ…。) うっとりとしながら、あせを拭いたハンカチを握り締めている。 感動にむせぶ恭介を、不思議そうに見ているまどか。 「ねえ、返してくれる?」 「え?よ、汚れたから、洗って返…」 「いいよ、別に。」 「いや、だってさ…」 「大丈夫だよ、春日クンの汗なんだから。」 済ました顔で恭介からハンカチを奪うと、そのままバッグに入れた。 何となく嬉しい様な…こんな関係。
二人はドアのところに立ち、話すこともせずに同じ車窓の景色を 眺めている。 流れる街の景色はオレンジ色に染まり、時折、高架から見える商店街は サラリーマンやOLであふれ、徐々に夕食の時間の賑わいを見せていく。 「先輩!」 ギクッとする二人。思わず振り向くと、女子大生が先輩であろう男性に 笑いながら話し掛けていた。 二人は顔を見合わせ、ため息をついた。 「ぷっ!」 どちらからとも無くちょっと噴き出して、そして苦笑い…。 まどかはぼんやりと遠くの景色を眺めながら呟いた。 「このまま…(一緒に)どっか遠くに行っちゃいたいなあ。」 (え?) 少し驚いて、視線をまどかに移す恭介。 「…うん、そうだね…。」
受験や校則や…そして何より『ひかる』という縛りから逃れたい、 そんな気持ちをやさしく受け止めた。そして、ちょっとおどけて 「でも、やっぱり、明日のテストからは逃げられませ〜ん!」 まどかにほんの少し笑みが浮かんだ。 恭介はあらためてまどかを見る。 脛まである濃紺のスカートからは、しなやかに脚が伸びる。 足元にはこげ茶色した皮製のサンダル。 タイトな白いシャツの襟をピンと立て、太い革のベルトで腰に止める。 長い髪はそのままに、前だけ横に流す。 密度が濃くコシのあるまどかの髪は、 空気を入れなくてもボリュームよくアップに膨らむ。 そんな彼女が大きなバッグを肩にからって立っていると、誰だって振り向く。 うっすらと日焼けしていても、美人度が高いだけに自然と視線が集まる。 大きな瞳に濃く長い睫毛、高く筋が通った鼻は、お姉ちゃん同様、母親似。 一頃は尖ったオーラを出してはいたが、今は大人になっている。
あまりにカッコ良過ぎる『大人な』まどかをしげしげと眺め 自分の幼さにため息をつく恭介。 「どうしたの?」 「いや、いいんです。俺なんか鮎川には不釣合いだし…」 キョトンとして彼を見つめ 「ふ〜ん…何を言い出すかと思えば、そんなこと考えてんだ。」 ちょっと呆れた後、フッと笑う。 バツが悪そうにしている彼を見ると、悪戯心が湧いてきた。 まどかは顔を思いっきり近づけて『普通に』誘う。 「ねえ、春日クン。今夜うちに来ない?」 「え?…え〜?!」 赤くなる恭介に 「ば〜か…何、勘違いしてんのよ。明日の対策立てようって。 だって、明日のテストで後期のクラス編成が変わるじゃない。」 「あ!あははは…そ、そうだね。俺一人じゃ無理だし。」 「いや、そんなこと無いと思うよ。たださ、あたし一人じゃ 飲んじゃいそうで。見張っててくれる?」 二人は笑い出した。
「良かったら一緒に夕食でも如何かしら?」 「やった〜!!鮎川の手料理が一番だよ!」 「ハムカツより?」 「もちろん!」 ちょっとおどけるまどかに、嬉しそうに答える。 鮎川邸にて 玄関前に立つ二人。まどかが鍵を開けている。 恭介は街灯が点きだした辺りを見回して 「なんか、今更なんだけど、鮎川って、いつ帰っても家暗いんだよね。」 「そうね…昔はこれが嫌で、でも親には突っ張っててさ。 あたしに子供が出来たら、帰りを迎えてあげられる家庭を……やだっ!」 「ん?」 じっと話を聞いている恭介を前にして、まどかは急に恥ずかしくなった。
家の中は凄く暑い。 まどかは直ぐにエアコンのスイッチを入れた。 そして、いつも通り、玄関から順に部屋の灯りが点けられる。 恭介はリビングに通されると、あっという間に涼しくなっていった。 「ねえ、お腹減ったでしょ?昨日の残りのカレーならすぐ用意出来るけど。」 「カレーは2日目が旨いっちゅーの!」 まどかは笑いながら 「じゃあ、待ってて。その間に妹さん達に電話したら?心配するでしょう?」 「うん。じゃ、借りるね。」 まどかは荷物を置くとエプロンを着て、カレーの入ったお鍋を火にかける。 冷凍庫からラップにくるんだご飯を取り出すとレンジで温め、その間に 野菜庫からレタスとクレソンを取り出すと、お皿の上にぱっぱと手でちぎり、 プチトマトとスライスハム、そしてクリームチーズをカットしてトッピング。 塩コショウにドレッシングも軽くかけて、あっという間に彩り鮮やかな 付け合せのサラダも作ってしまった。
とにかく動きに無駄が無くスピーディ。 「お待ちどうさま!」 (待ってないし…) 恭介はまどかの手際の良さに驚き、同時にABCBのマスターが彼女を 重宝がる理由が良く解った。 「凄いや!お肉が塊でゴロゴロ!ほんじゃ、いっただっきま〜す!」 速い速い!まるで飲み物のように喉に流し込む。付け合せのサラダもぺロリ。 あっという間に平らげると、水をグイグイ飲み干して 「プハ〜!!美味しかった〜!!お肉、すっごく軟らかくって、ルーも バッチリ決まってる!サラダもすっごく美味しかった。」 まどかは饒舌な恭介にちょっと引いている。 (よっぽどお腹が減ってたのかしら…?) 「良かったら、あたしのもあげようか?」 「そこまで卑しくないよ。でも、すっごく美味しかった!」 「アリガト。」
まどかが食べ終わるのをニコニコしてじっと待っている恭介。 そんな彼をチラチラ見ながら、まどかは可笑しくなって来た。 そして一旦笑い出すと、とうとうご飯が入らなくなった。 (ああ…たまんない!春日クン、さっきから可愛過ぎるよ!) きょとんとしている恭介を前に、それでも まどかは笑いを堪えて何とか食べ終えた。 「片付け手伝うよ。」 「いいよ。それより洗ってる間に、明日の作戦練っててよ。」 「了解。」 恭介はバッグからテキストを出しながらまどかを見る。 (鮎川って、どこで覚えてんだろ?センスってやつかなあ?) トレイにお皿を載せて片付け出した彼女にちょっと訊いてみた。 「ねえ、鮎川のお母さんやお姉さんも料理得意なの?」 まどかは片付けている手を休めずに答える。 「得意かどうかは解んないけど、みんな作るのも食べるのも好きかな? ママが言うには、母方の遺伝子にレシピが組み込まれてるんだって。」
「へ〜!」 恭介は真に受けている。 まどかは片付ける手を止め、急に手を伸ばして恭介の鼻を軽く弾いた。 「痛てっ!」 「んな訳、ねーだろ?あははは!」 「だって、いつもは鮎川、冗談なんか言わないから…ちぇ。」 まどかは片付け終わると、リビングにテキストを広げる。 「どう?ヤマは?」 「う〜ん、授業で線を引いたところは全部だね。絞れないよ。」 「数学はこの手の問題がヤマじゃないかしら。ねえ、解いた?」 「うん、何とか。でも合ってるかどうか解んないけど…。」 「どれどれ…あ、答え同じだ。春日クン苦手って言ってたのに。」 「鮎川のお陰だよ。」 こんな調子で二人は次から次へとヤマを張って、押さえていく。 時間が過ぎ、ふと気付くと 「あれ?もう10時?帰らなくっちゃ。じゃあ、後は家で仕上げよう。」 「うん。」
玄関まで見送られる恭介。でも… 昨日のことをしっかり思い出してドキドキしている。 気持ちを伺うように、のろのろと靴を履いている。 すると、ポンポンと肩を叩かれた。 振り向くと…彼女の人差し指が頬に当たり… 「痛てっ!」 「そんなに甘くないよ、キミ。」 気持ちを見透かされ、バツが悪そうにする恭介。 ルルルル! まどかは振り向いた。電話が鳴っている。 恭介も気遣って 「じゃあ!」 「うん。気をつけてね。」 手を振ると慌てて電話へ駆け寄った。
(こんな時間に…ひかるかなあ?) そっと受話器を取り上げる。 「もしもし?」 「あ、まどかさん…こんな時間に済みません。先輩…」 (やっぱり…) 「『さっき』帰ったよ。」 「まだ居るんじゃないかって…」 「もう居ないよ。」 「……」 「明日試験なんだ。だから、うちで勉強会してたんだよ。」 ひかるを気遣い、『今日は』何も無かったことを伝える。 でも、電話の向こうからため息が聞こえたような気がした。 そして…やっぱり…
「…まどかさん…酷いです…。」 「……ゴメン。」 「何で今まで言ってくれなかったんですか?」 「言える訳…ないじゃん…。」 「あたしは…誰からも教えて貰えなかった…。でも…でも、 あたし以外、みんな先輩とまどかさんの関係に気付いてた。」 「ひかる。それは…」 「いいんです、もう…。おやすみなさい。」 プー、プー、プー… 一方的に電話は切られた。 (は〜…) まどかは心の中で重くため息をついた。 (向かってきてくれた方が少しはいいんだけどなあ… ひかるにしても今更そうは出来ないよね…。)
(『みんな気付いて』って…そうなんだ…。) 今までのことは『悪かった』にしても、もう恭介は気持ちを伝えた訳だし 3人の気持ちがはっきりした以上…ひかるに『降りてもらう』しかない。 でも…それが酷なことは…誰より、まどかが一番解っている。 まどかは、あらためて玄関に施錠し、シャワーを浴びる。 いつものようにバスタオルを体と頭にそれぞれ巻いて、 テキストをバッグに詰めて自分の部屋に持って上がった。 髪を乾かしながらテキストを眺める。 体を拭いて、パジャマに着替えて、その時々にテキストに 目を通すのだけれど……誤魔化しようが無い。 「あ〜もう!!」 下に降りるとラム酒とアップルティーを持って上がる。 また降りると、氷とグラスをトレイに乗せて部屋に戻る。 そして、かなり濃い目に作ってやりだした。 (答えが見つかんないよ…) ここ数日の疲れが重なり、今日はさすがに3杯目でダウンした。
(こんな時間に鮎川に電話するって…まさか、ひかるちゃん?) ちょっとブルーな気分になって帰りを急ぐ恭介。 マンションに帰りつく頃、またシトシトと雨が降って来た。 急いで駆け込もうと入り口を見ると、ロビー前に傘をさした女性の姿が。 (ひかるちゃん…) 恭介はやるせない気分でひかるの元に歩み寄ると、 ひかるは悲しそうな顔で恭介を見つめた。 「先輩…まどかさん家に居たんですか?」 「…うん。明日テストだから、一緒に対策練ってた。 俺ん家じゃ、妹たちがうるさいし。」 「勉強だけですか?」 「なんでそんなこと訊くの?ひかるちゃんが考えるようなことは… でも、やっぱり、…俺達、お互いの気持ちが分かったから… ひかるちゃんが考えるような、そんな気持ちが…無い訳じゃない。」
「じゃあ、もうあたしは先輩の眼中に…」 「ごめん。…ただ…俺、鮎川と初めて会った頃から…」 「酷いです!…今更そんなこと言われても…。 あたしは3年間先輩のことだけ見てきました。 なのに、先輩の気持ちに気付かなかった。」 「俺も騙してたつもりじゃ…」 「もう、無理なんですか?」 恭介は意を決して伝えた。 「…俺…もう、ひかるちゃんの気持ちに応えられないと思う。」 「そ、そんな!あたしは…」 食い下がるひかるに 「だから…無理だよ。ねえ、もう遅いし…帰った方が…」 「酷いです!酷い…。」 ひかるはその場にしゃがみこんで泣き出した。 「ねえ、風邪引くから…帰ってくれる?俺、明日試験があるし。」 ひかるの体にそっと手をまわし抱えようとした瞬間、 傘を投げ捨て、ひかるが抱き付いてきた。
そして、思いっきり恭介にしがみつく。 「離さないもん!」 恭介は思わず突き放した。 「何するの!ひかるちゃん。もう、こんなことよそうよ!」 「あたし…先輩のこと好きだもん!諦められない!」 ひかるは恭介にしがみつこうとするが、 恭介は力任せにひかるを突き放す。 「止めてくれる?俺が一番悪いのは解ってるって!俺が…」 雨の勢いが激しくなってきた。 ひかるは顔を手で覆い泣き出した。 恭介は顔をそむける。 ひかるを置いて自分だけ家に入る訳にもいかず… 「お、俺…やっぱり、鮎川のことが好きだから…ごめん。」 そう言い残すと、その場を離れ歩き出した。
激しい雨の中を、恭介は当て所もなく歩く。 ひかるを残し、街中の大きなビルの軒下までやって来た。 道路を車が通る度はねる土砂の音が、強く耳に入ってくる。 全く考えがまとまらなくって、胸の中が熱く苦しい。 恭介はポケットに両手を入れたまま、ガラスドアを背にしてうつむく。 髪の毛から雨の滴が… (ごめん、ひかるちゃん…こんなことになって…。) 恭介は雨の中自分を待っているひかるを心配しながら、 ここで優しくするより…このまま卑怯な自分に徹することを選んだ。 それから… 1時間は待っただろうか…雨が小降りになってきた。 ひかるは恭介が戻ってこないと解り、帰るしかなかった。
翌朝 予備校の正面玄関近くで待つまどか。 恭介の姿を確認し 「おはよう。」 「おはよう…。」 二人とも眼の下がクマっている。 それでもまどかは少し無理して笑顔を作る。 一方の恭介は全く寝てなかった。 「大丈夫?」 「え?…うん。でも、試験は全然大丈夫じゃないかな…。」 まどかは恭介のあまりの憔悴ぶりに、かける言葉が出ない。 「よう!お二人さ…あれ?どうしたんだ?」 小松、八田コンビが現れた。 「じゃあ…。」 まどかは恭介から離れてそそくさと教室に向かう。 小松は小声で 「春日、お前また鮎川と?」 「は〜…、違うよ…」 ぼそっと言い残すと教室に向かった。 「こりゃあ、3人で仲良く玉砕だなあ。あはははは!」 何とも暢気なコンビである。
中期日程のまとめのテストが各科目ごとに行われる。 試験は申し込んだ番号順。 まどかは恭介の斜め後ろの席。 憔悴しきった姿でも、一生懸命に答案用紙に書き込む恭介。 そんな姿が気になりながら、まどかも試験に取り組んだ。 試験が終わるたびに恭介は伏せってしまうが、すぐに小松達にからまれる。 昼過ぎに3科目が終わり、今日はこれで終了。 明日からお盆休みをはさんで、後期講習までは休みとなる。 教室は一斉に安堵の空気が流れ、ざわめきが広がった。 「ランチ行こうぜ、春日!」 「悪い。俺、鮎川と約束があるから。」 今回は流されなかった。 二人から離れて出口に向かう。 そこにはまどかが壁を背にして待ってくれていた。 別に約束した訳じゃないんだけれど、二人の想いはつながっている。
「どうだった?」 「全然ダメ。」 「そう…春日クン、大丈夫?寝てないんじゃない?」 「実は昨日、あの後さ…」 恭介は歩きながら昨夜の出来事を語り出した。 恭介は辛そうにしている。でも、今までの自分の優柔不断さを 清算するかのように、語ることを止めない。 「そうなんだ…」 まどかは恭介の話を聞いている内に胸が痛くなって来た。 「全部、俺の所為なんだ…。」 自分を責める恭介。 「……」 まどかは何も言わず、ただ黙って聴いてあげることしか出来なかった。 そして、彼の想いを全部聞いた上で 「悪いのは春日クンだけじゃないよ。あたしも…。」
「俺、どうしたらいいんだろう…」 そのセリフを聞いた途端、まどかの目が厳しくなった。 「『どうしたら』って…償えるの?今さら出来ないじゃん!」 (自分の選択を後悔してるの?) 「え?」 少しきつい言い方に、戸惑う恭介。 ハッとしてまどかは謝った。 「あ、ごめん…。」 「そうだよね、今さら…。」 まどかは堰を切ったように自分の想いを語り始めた。 「あたし達、今からず〜っと悩むの?あたしは前を向いていたいな。 春日クンの気持ちは、春日クンが決めたらいいと思う。でも… あたしは…春日クンのこと好きだから、この気持ちを大切にしたい。 そして…ひかるのことも大切にしたいけど、 あの子とは、対等に…ちゃんと向き合うつもりだよ。 もう、誤魔化しも、逃げもしない。後悔はしない。」
恭介は下を向いたまま聞いていた。 すると、まどかの声が急に上ずり始め… 「あたし、強がってるよね。実は昨日の電話、ひかるからでさ… 責められて…『ゴメン』って謝るしかなかったよ。 結局…ひかるを独りぼっちに…独りぼっちに……」 まどかを見ると…薄く閉じた瞼の間から涙が溢れている。 「あたしだって…辛いよ。」 そう言うと、まどかは足早にその場から立ち去る。 恭介は後を追おうとするが 「一人にしといて。」 そう言って、彼女は去っていった。 (俺、自分が一番辛いものと思ってた…)
あんな姿のまどかは初めて。 普段は気丈に振舞う彼女だが、実は繊細なハートの持ち主で だからこそ、今まで、どれだけ辛い思いを隠していたか… 気付いてあげられなかった。 (そうだよな、自分ばかり責めても解決しないし、 俺たちは前を向くしかないんだよな。そして… 後は、ひかるちゃんに解ってもらうしか…) まどかはどこにも寄らずに真っ直ぐ家に帰った。 あかねに貰ったサングラスをしている。 家に上がると荷物を放って直ぐにバスルームに駆け込み、 そして…シャワーを頭から浴びながら…… ひとしきり泣いた。 涙が止まるまで…まどかはシャワーを浴び続けていた。
何言ってんだ!1番辛いのはひかるでしょ!
せっかく気持ちよく読んでたのに喘息来やがった。明日ゆっくり読もう。
スレ主さん、お体に気を付けて下さい。
バスルームを出ると、鏡に顔と眼を腫らした自分の姿が映っていた。 そんな自分をぼーっと眺めると、ため息をついてキッチンへ向かう。 ガシャ!ガシャ!ザラザラ! 冷凍庫から氷を取り出すとビニール袋に移し、 簡単な氷嚢を作った。 2階に持って上がるとそのままベッドに横になり、 腫れ上がった眼の上に当てて冷やす。 でも… 氷を当てたまぶたの隙間から涙がこぼれる。 (今日は一日泣いていようか…。)
数時間経って、ふと眼が覚めると 部屋は眩しく西日が差し込み、それでも暗くなっている。 頭が重く、眼は腫れて、ぼんやりとしか見えない。 まどかは1階に降り、戸締りを確認するとカーテンを閉め、 作り置きの冷やしたレモンティーをグラスに注いで、部屋に戻った。 外の景色をちらっと眺め、ため息をつく。 そしてカーテンを閉め、明かりを点けると床に座った。 (ひかる、孤独なあたしをいつも明るく支えてくれた。 なのに、あたし… あの子を谷底に突き落とすようなことをしてる…… 最低だよね…。) ずっと競ってきたのなら話は分かる。 でも、応援するって言った。 最初はそのつもり…いや、考えると最初から無理があったのかも。 (応援の振りをしてただけ?いつから?)
今更言ってどうなる事でもない。 話しても今のひかるには全て言い訳でしかない。 (今更説明しても…) ルルルルルル! 今は誰とも話したくない。話すといつもの自分で居られなさそうで… まどかはヘッドフォンをして音楽を流した。 音楽の向こうで何度も電話が呼ぶけど無視し続ける。 そして1時間後。 ピ〜ンポ〜ン!ピ〜ンポ〜ン! (春日クン?ひかる?…今は誰とも話したくないよ。) 今度はガチャガチャと玄関の鍵を開ける音が。 「え?」 慌てて下に降りた。
玄関には両手に荷物を持った人影が。 「な〜んだ、ママかあ。」 「『な〜んだ』じゃないでしょ?電話しても出ないし、玄関も開けないし。 無用心だから、灯りくらい点けてなさいよ。」 「いつ…今着いたの?」 タクシーのドアが閉まる音がして、パパがスーツケースを持って現れた。 「何だ、居たの?まどか、ちょっと運ぶの手伝ってくれないか?」 一気に賑やかになった。 「来る前に電話してくれたら良かったのに。」 「いや、学校にご迷惑お掛けしたから、お盆前にお詫びに伺おうって。」 「そんなこといいのに。」 「そうはいかないでしょ。あなたも社会常識ってものを…あら? まどか、眼が真っ赤だけど、どうかしたの?」 「別に…」 まどかは隠すように背を向けた。 (ママ、鋭いからなあ…)
「ママ、先にシャワー浴びていいかい?」 「はーい。」 ママは荷物を運ぶ娘の後ろから不意打ちに 「…ねえ、まどか、またおかしなことに巻き込まれてない?」 ギクッとして、慌てて 「ううん、至って品行方正だし。ちゃんと勉強もしてます。」 「ならいいんだけど…夕ご飯は何か食べたの?」 「う〜ん、あんまり食欲無くって…」 (ふ〜ん…やっぱり隠してる。『恋の悩み』ってとこかしら?) ママは素知らぬ振りして 「さてと、片付けるからあなたも手伝ってくれる?」 「は〜い。」 ママと娘はスーツケースの中身と手荷物をテキパキと片付ける。 移動が多いから、自分たちの荷物は少なめにしている。 どうせ、すぐまた海外に出なければいけない。 「まどか、明日何か用事ある?」 「ううん、講習今日で一段落したし、次は18日から。 それまでは…図書館かな。」 「じゃあ、明日はいいわね、学校。」 「え?あたしも行くの?」 「もう連絡してるし。」 「なんで前もって一言…」 「言ったら、逃げるでしょ?」 ママの方が上手である。
バスローブに着替えてパパがやって来た。 「久し振りだし、僕も顔出しとくかな。ママ、いいよ。」 「は〜い」 「まどか、パパのウイスキー出してくれないかい?」 まどかはリビングに備え付けの棚を開き 「どれ?」 「あの銀のラベルの…」 「あ、ごめんなさいパパ。あれ、お掃除の時落として割っちゃった。」 「…ええっ!?18年物のシーバスを?」 「ごめんなさい。バランタインならあるけど。」 (高校生が何でバランタインなんか知ってる?) パパはちょっと訝しがるが 「ま、まあ、しょうがないか…それにしよう。」 娘に弱い父親であった。
お洒落な部屋着に着替えて、ママも加わった。 「あ〜スッキリした〜。パパ、乾杯しましょ。」 「あたし、何かおつまみ用意するね。」 まどかはそそくさとキッチンへ逃げた。 パパはママに顔を近づけ、小声で話す。 「ママ…まどかのやつ、もう飲酒してるの?」 ママも小声で 「そうみたい。お姉ちゃんに聞いたら、タバコは止めたらしいけど お酒が凄いみたいって。どうせ、味は分かんないんでしょうけど。」 「いくら背伸びしたい年頃って言っても…」 「はい!どーぞ!」 わざと二人の顔の前にチーズとハムのお皿を出して 「じゃあ、2階上がって勉強しーよーっと。」 部屋に逃げ込んだ。
賑やかになったお陰で、随分と気が紛れた。 ママとパパに助けられた気分。 (そうよね、これ以上深みにはまってもしょうがないし。) まどかは気分を変えて勉強を始める。 机の上の3人の写真はそのままにした。 一方、恭介は (どうしよう…鮎川に電話した方がいいのかなあ… でも、今はそっとしておいてあげた方がいいかなあ。 明日からどうするんだろう?) トントン 「お兄ちゃん、入っていい?」 「うん。」 まなみが入ってくる。 「なに?」 「今日ね、ひかるちゃんに会ったんだけど…全然元気なくって… うちに誘ったんだけど、もう行けないって言うの。」 「そう……そっちの方がいいと思う…多分。」
「お兄ちゃん…私何て言ったらいいか…」 「いいよ、何も言わなくて…俺の問題だし。 こんなこと言えた義理じゃないけど…まなみとくるみは ひかるちゃんの友達だから…いつまでも仲良くいて欲しい。」 「うん…」 まなみは少し涙ぐんで部屋を出る。 ドアの外でくるみが壁を背にして立っていた。 「くるみちゃん…。」 「私はまどかさんよりひかるちゃんだなあ…大体… お兄ちゃんにひかるちゃんは勿体ない!うん、絶対そう!」 ちょっと強がるけれど… 頬を一筋の涙が伝う。 「おにいちゃん、ご飯よー!」 今日の春日家は静かな夕ご飯となった。 ちらちらと、くるみが恭介を睨むが、そんな視線を無視して箸を進める。 変な雰囲気に堪りかねて隆が 「何なんだ!もうちょっとリラックスして食べられないのか?」 「あ、ごめんなさい。」
まなみがその場を取り繕うが、くるみは席を立った。 「ごちそうさまー。」 ごはんをかき込みながら 「何なんだよ!くるみのヤツ。」 ブスっとして言う恭介をまなみがたしなめる。 「兄ちゃんも悪いよ。くるみちゃん、ひかるちゃんに肩入れしてたから…」 不思議そうに子供たちの会話を聞いている隆。 「恭介、お前…」 「え?な、何でもないよ。」 「あ、お父さん、御代わりね!」 まなみが気を利かせる。 「あ、ああ。」 (やっぱりそうか…) 隆も気付いた。 まだ恭介が中学生の頃、ちょっとしたきっかけで、 気まぐれにお遊びから始まった撮影会だったのだけれど、 ひかると、そしてまどかのフォトを撮ることになった。 でも…ファインダーを通して見たまどかの姿は… 先立った妻の面影にあまりに似ていて、隆は声を失った。
(恭介、いずれこの娘と恋に落ちるんだろうなあ…) その時、何となく…ファインダー越しにそう思った。 そして今、直感は当たった。 (まあ、なるようになるさ。俺とあいつの子なんだから。) 食事が終るとまなみは片付け出した。 「くるみちゃん、手伝ってよー!」 「恭介…ちょっといいか?」 「何?」 隆は息子を書斎に呼んだ。 「お前、ハワイで、それとなく…『教えた』って言ってたな。」 「う、うん。」 「それがどういうことになるのか解ってるのかい?」 「どういう意味?」 「もし…もし彼女が受け入れなかったら?」 「それは…分らないよ。」 「本当にまどかちゃんで…」 「うん…初めて会った時から…そう…『感じた』から。」
「俺、後悔してないから。駄目なら鮎川の前から『消える』よ。」 珍しく決意を語った。 暗い部屋に戻って、机の上に出しておいた彼女の写真を見る。 窓から入ってくる月明かりで、ぼんやりと見える。 今にも彼女の口元が動き出すよう。 「鮎川…本当の俺のこと、受け入れてくれるかなあ…」 翌日 まどかはパジャマ姿でリビングに降りる。 「おはよう、パパ。あれ?ママは?」 「今着替えてるよ。PTAの根回しがなんとかって言ってたけど。」 「んもう、そんなことしなくてもいいのに。」 「おいおい、頼むから学校だけはちゃんと卒業してくれよ。」 「うん。ごめんなさい。」 ちょっとしおらしくして見せたかと思うと 「あたしもトーストた〜べよ〜っと。」 パパの横に座り、トーストを取ってバターを塗る。 ジャスミンティーが入っているガラスのポットからティーカップに お茶を注ぐと、パンをちぎって口に放り込む。 「ねえ、パパも来るの?」 「事が事だけになあ。まだあっちの裁判も始まってないし… 一応、学校には穏便に計らってよう頼んではいるけど… 新聞沙汰なんだぞ、今回は。」 「解ってるって。」 (あたしが悪いんじゃないんだけどなあ〜) 口ごたえを控えた。
今のまどかにとっては、ハワイの事件も、学校のことも、もうどうでもいい。 恭介とひかるのことで頭がいっぱいなのだから。 食後の歯磨きをしてる傍にママがやって来た。 「まどか、あなた今日くらいおしとやかにしてなさいよ、お願いだから。」 (んもう、しつこいよ。) まどかは鏡に向かって頷いた。 2階に上がると、久しぶりに夏の校服に着替える。 今のまどかはあまりにも大人びているだけに、ちょっと似合わない。 (春日クン、今日どうするんだろう… 昨日あんなこと言っちゃったからなあ…。) 3人はタクシーで学校に向かう。 教頭と面談の後、校長室に案内される。 ことの詳細がつまびらかにされ、今回「も」、学校からの表立った処分は ない旨伝えられた。本来なら、これを機にまどかを放校にできるチャンス だったのであろうが、母親の根回しが効いていた。 同席している生活指導主任の国語教師だけが、苦虫を噛み潰したよう。
3人は挨拶と謝罪を済ませると高校を出た。 「まどか、お前大人になったなあ。」 パパが感心している。 まどかにしても、自分のために頭を下げる親に申し訳ない。 突っ張るのは中学生まで。 『取り敢えず…』 ぐらいは出来るようになった。 でも、ママはちゃんと察している。 「生活指導の先生は許してなかったみたいね。」 「だって、アイツには嫌われてるもん。」 「こら。先生に向って『アイツ』呼ばわりはないだろう。」 「は〜い。」 まどかはプイっとソッポをむいた。 街中に歩いて出るとパパが 「ママ、お腹すいたなあ。せっかく日本に帰って来たんだから…」 「ハムカツ?」 まどかがおどける。 「ハムカツって?」 二人が不思議そうにしている。 そんな両親を見て噴き出すまどか。 「ぷっ!あはははは!冗談よ。お蕎麦がいいんじゃない?」 「そうね、『藪』に行きましょうか。」 タクシーを拾うパパをよそに、空を見上げる。 (春日クン、今頃何やってるのかなあ…)
その頃恭介は (鮎川図書館かなあ…なんか電話かけにくいし) 取り敢えず、図書館に行くことにした。 相変わらず学生が並んでいる。 恭介の高校の同級生も多く来ているけど、さすがに小松たちは居ない。 (ひかるちゃん、まだ忘れてないだろうなあ…) 公園を抜けようと柵をまたいだ瞬間、肩をぽんぽんと叩かれた。 (え?) 瞬間!恭介の顔は歪み、体は芝布の上に吹き飛んだ。 (な!なに?) 見ると勇作が立っていた。 「よくも!よくもひかるちゃんを!」 恭介は半身を起して、口からペッと血を吐きだした。 鼻からも血が垂れているが、手で拭った。 「勇作、お前は関係ないだろ。幼いな…」 「何だと!この野郎!」 掴みかかろうとしたところに、人が集まって来た。 恭介は、はなっからやり返す気がない。 (殴られて済むことなら、いくらでも殴られてやるよ。) そんな気分。 「これで済んだと思うなよ!」 捨て台詞を残し、勇作は走って去って行った。 (どこまでも不器用な奴だなあ、お前も。)
恭介は体の芝をはたき、カバンからティッシュを取り出す。 公園の水道のところまで行き、口をゆすいで顔を洗う。 「ほら!」 横からハンカチが差し出される。 (…?あかね!) 「大丈夫?」 「来てたの?」 「あたしも受験生だもん。でも…カッコ悪いね。 ひかるちゃんを振った天罰だからしょうがないか。」 (あかね…知ってるんだ…。くるみが言ったのかな?) あかねにも知られていることに、恭介はため息をつく。 「しょうがないよ…俺が悪いんだし。」 「そうだ!あんたが一番悪いよ。 でも…でも、あたし達ってさあ、ホントは誰も責められないんだよね。 み〜んな、なんらか責任があるんだろうけど。 ま、とにかくあんたが一人で背負込むことでもないんじゃない? あたしも気付いてたし、まなみも知ってたみたいだし… 何より、まどかちゃんも気付いてたんでしょ?自分の気持ちに。」 「だから、自分も悪いって言ってた。」 「それを言わせないようにするのが男でしょ?情けないなあ。」 「う、うん。」 あかねにたしなめられ、恥ずかしそうに頭をかいた。 「そうだよな、開き直る訳じゃないけど、俺がしっかりしないと。」
900ゲットってか? 作者よ、この妄想スレによくぞここまでUPしてくれたなあ。 ホント感心するよ。 ところで1000で終わりそうかい? 無理そうならPART2作るが・・。
スレ主様!湧いてきそうで…超えるかも知れません。 その時はヨロシクお願いします。
902 :
名無しか・・・何もかも皆懐かしい :2010/02/10(水) 11:26:52 ID:UsrE8KRw
早く続きを書いてくれ。
まだか?
904 :
新規加入 :2010/02/13(土) 11:10:31 ID:???
マジ、続き読みてー!
久しぶりに覗いてみたが、作者はモチ上がらんようだな。
サイバーテロ開けオメ。1ヶ月以上カキコされなかったのは初めて?
「そうね、あんたがまどかちゃんを守んないと。悔しいけど… まどかちゃん,ホントに恭介のことが好きみたいだもんね。」 「え?何で…」 ちょっと赤くなる恭介に、他所を向いて 「解るよ、読まなくても。あんたのことになったら変るもん、彼女。 あ〜あ、あたしだったら、もっとしっかり守ってあげるんだけどなあ。」 「と、とにかくこの話は止めよう?(やられぱなしになるから)」 周りは殴られた恭介と、とびっきり美人のあかねの二人が気になっている。 「ねえ、まどかちゃんは?」 「うん…相当辛そう。今は…今は一人のほうがいいのかなあって…」 「そうだよね…あたしも電話掛けにくいんだ。あんなに可愛がってたもんね、 ひかるちゃんのこと。」 たまりかねて一言 「…もういいだろ?ひかるちゃんのことは。」 「あ、ごめん。」 二人は開館前の長い列に並んだ。 結局あかねと一緒に席を並べて勉強することになった。 恭介は黙々と勉強している。 あかねはちょっとびっくりして (まなみが言ったこと本当だ。こいつ、やる気出してるよ。)
お昼になった。 「お昼どうするの?」 「あたし、昼から部活あるんだ。腹ごしらえは恭介にお願いしようかなあ?」 澄まして言う。 「何だよ、初めっからその気だろ。」 ちょっと睨むと、ニッコリ笑顔で 「やったー!有難う!お礼に、どっちの心が知りたい?」 「だ、か、らぁ、もうその話はいいって…。 ところでお前、何で引退後も部活やってんの?」 「うち、体育会系推薦枠があるんだ。先生に話したら、400mのタイムが ぎりぎり推薦枠に残れるって。だから実技の前にタイム落ちないように フォームを固めておかないとね。後は、もう少し学力をつけないと。」 「お、お前…本当にK大受けんの?」 「だって、星女子高は気が合う子居ないんだあ。 このまま短大に上がってもキャンパスライフ悲惨でしょ? その点、まどかちゃんとはすっごく気が合うのよねえ。」 「そうだよなあ、鮎川にしては同級とつるむのって珍しいよね。 あかね、お前気に入られたのかな?」 「うん、あたしも、キャンパスライフは、まどかちゃんと一緒に… そういや、この間、うちで彼女の話が出てた。ハワイの一件で。」
「へえ。みんな何て言ってた?」 「それがさ、うちの子が中学の時、茶店でタバコ吸ってたら、 いきなりバイトの子が来てタバコ取り上げられたんだって。 『何すんの!』って言ったら凄く睨まれて怖かったって。」 「それって、ひょっとして?」 あかねはこくりと頷いて、続ける。 「『今から吸ってたら…と、とにかく止めな!』って。 『これ預かっとくから、コーヒー代は要らないわ。』だってぇ。カッコいい!」 「アバカブ?」 「そう。まどかちゃんだったみたいでね。で、その娘ミーハーだから まどかちゃんに一目惚れして、ファンレター書いたまではいいんだけど、 でも、話してる内にそれが、かの有名な『鮎川まどか』って解って、 一気に恐ろしくなって、渡すの止めたって言ってた。」 「へ〜。そんなにおっかなかったっけ?」 「そうね、うちじゃおっかない噂の方が先行してるかなあ? だから、『追っかけ』なんて信じられないって話が広まってるもん。」 「鮎川ってそんなに有名なの?」 「ほら、うち女子高だからさ。『宝塚ファン』みたいなもんよ。」 「お前もそうなの?」 「馬鹿ねえ。あたしたちは『親友』なんだよ!」 話しながら歩く二人の向こうを横切る少女の姿が目に入った。 (あれ?…うっ!ひ、ひかるちゃん…) 二人はこそこそと建物の蔭に隠れる。 あかねは小声で 「何であたしまで隠れなくちゃならないのよ!」
ひかるはせっかく伸ばしていた髪をバッサリ切っていた。 元のショートヘアに戻っていたため、最初は分らなかった。 彼女はうつむき加減に歩いている。 全く元気がない。 「恭介…ひかるちゃん可哀そうだよ。」 「仕方ないだろ…」 「そうだけど…何とかならないの?」 「もう、何も出来ないよ。もう…」 恭介はため息をつく。 二人はひかるを見送ると、建物から出て、ファミレスに入った。 それぞれパスタとピザにジンジャーエールとコーラを注文する。 「まどかちゃん、辛いだろうなあ。」 「もういいよ、その話。」 「あ、ごめん。」 気持ちを切り替える恭介。 「俺、今は鮎川と一緒の大学に行くことで頭が一杯なんだ。」 「まどかちゃんは楽勝だろうけど、恭介、あんた大丈夫?」 「だから頑張ってるっつーの!」
「痛てっ…」 恭介は腫れた頬をさすりながら食べている。 口の中も切れてるから、食べると少し痛い。 アカネはジンジャエールをストローで吸いながら恭介を見つめる。 「ところで、まどかちゃん…知ってるの?恭介のこと。」 「いや、まだはっきりとは…。」 「でも、何時かは言わなくっちゃ。」 「うん。」 「どんな顔するんだろ?」 「きっと…」 「きっと?」 「…きっと、呆気ないほど、すんなり受けいれてくれるような気が。」 「そうね。まどかちゃん、あんまり驚かなさそうね。 まあ、ヤバくなったら、あたしが(記憶)消してあげるよ。」 「ゲヘッ!ゴホッ!」 恭介は飲もうとしたコーラを吹いた。 「きったないな〜。」 あかねは腕組みして椅子に背をもたれかける。 恭介は咳き込みながら 「そ、そうならないことを願ってるよ。」
鮎川宅にて (あ〜あ、結局ママに引っ張り回されたじゃない。) シャワーを浴びて、いつもの姿で出てくる。 「まあ!まどか、ちゃんと着替えて出てらっしゃい!んもう。」 (はいはい。) まどかはそのままさっさと階段を上がる。 「『カレ』の前でもああなのかしら?」 ママは聞こえよがしに言うと、 まどかはカアッと赤くなり上から言い返す。 「・・んな訳ないでしょ!」 ルルルルル! 「まどかあ〜、ちょっと出て頂戴!」 (なによ、んもう…) 2階で子機を取る。 「はい、鮎川です。あら、お姉ちゃん。どうしたの?」 「ママたち来てるんでしょ?」 「うん。代ろうか?」 しばらく姉とママの会話が続いた。
「まどか〜!お姉ちゃんが代わってって。」 「は〜い。」 子機に切り替えて 「何?」 「うん、まどかもうちのパパのおじいちゃん家に来ないかって。」 「あ、…あの徹夜踊りするとこ?」 「そう。あんたも浴衣着て、ちょっとは女らしくなってみたら?」 「う〜ん・・・どうしようかな〜。考えとく。」 電話を切るとタオルで髪をゴシゴシし出した。 (行ってみたいなあ。でも…) 今までは、何かあると一番に誘うのがひかるだった。 (さすがに…無理だよ。 でも…でも、とにかく電話だけでもしてみようか?) 髪を拭く手が止まり…受話器に手が。 「はい、桧山です。あら、まどかちゃん。 ひかる?ちょっと待ってて。 ひかる〜、まどかちゃんからよ〜!」 大きな声にまどかはドキドキしてくる。
「…」 ひかるは何も言わずに部屋から出て来た。 そして、受話器を取ると 「はい、ひかるです。」 「あ、ごめん、遅くに。あのさあ…良かったら今度一緒に…」 「……」 「…ひかる…聞いてる?」 「スミマセン…ごめんなさい、もう…」 「何よ?」 大きなため息をついて 「もう、無理です。もう…」 「ひかる…」 「ごめんなさい。」 プー、プー、プー… 一方的に電話は切られた。 まどかは顔から火が出るほど恥ずかしくなった。 (どうかしてる。虫が好過ぎるよ、あたし。)
おー!久しぶりにUPされたか。 元スレもUPされてなかったから心配してたんだが。 ところで、中々いい回復具合だ。 まどかの衝動と恥じらいが切な過ぎていいぞ。 頑張れ作者。