愛天使伝説ウェディングピーチ お色直し4回目

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567名無しか・・・何もかも皆懐かしい
一段上がるたびに階段がきしむ。
しかし今の鬼太郎の耳には聞こえていなかった。
ドクンドクンと胸を打つ、己の鼓動だけがうるさい。
 ───花嫁さん・・・なんて、まさか。そんなわけないじゃないか・・・。
しかし思い返してみれば、ねこ娘に面と向かって結婚話をしたことは・・・ない。
まだお互いにそんな年齢ではないのだし、ねこ娘がお嫁さんになることは
鬼太郎にとっては決まっていることでもあった。
ねこ娘にとっては・・・違ったのだろうか。
一度として疑ったこともなかった。互いに思いを寄せている仲なのだからと、
慢心していたところもある。
けれどもし。もしもねこ娘が本当に心から愛する者を見つけたというのならば、
それがどんなに年上であろうと人間であろうと、鬼太郎には奪い去ることはできない。
ねこ娘の願いはいつも”しあわせなお嫁さん”だ。邪魔することなどできない。
 「・・・」
ぶるぶると頭を振り、マイナス思考を振り落とす。
こんな馬鹿げたことを思っていては、また妖怪ノイローゼにでもなってしまう。
 ───ねこ娘は・・・操られているのかもしれない。
画家の執念に絡めとられて、身動きとれなくなっているのかもしれない。
しかし、この洋館を訪れたのはねこ娘の意思だ。
柿のお土産も包んで、いそいそと出向いたのも、ここ数週間通いつめているのも
ねこ娘自身であることに変わりはない。
また、嫌な妄想が脳裏をよぎる。
画家の隣に寄り添い、しあわせそうに微笑むねこ娘の姿。
 『鬼太郎って子供なんだもん』
腕を組み、嬉しそうに頬ずりするねこ娘に対し、照れ笑いを浮かべる画家。
 『いやぁ彼女のことはしあわせにするよ。僕に任せて、鬼太郎くん』
 「・・・冗談じゃ・・・ないっ」
律儀なまでに妄想に返事をする鬼太郎はぎりぎりと歯噛みして階段を昇りきった。