約束の日、キャンセルされて格安で確保できたホテルの部屋にそれぞれ旅行かばんを持った私と母親は早々にチエックインした。
「せっかくだから、ウェディングドレスの花嫁姿の姉さんを見せてやるよ」と言っておいたので
母親はもう今にも泣き出しそうな顔をしていた、私がシャワーを浴び終えるのを待ちかねたように、
母親は裸のままの私を寝室へ連れてきて、
戸惑う私に「親子だから恥ずかしいことはない」と叱るように言い、
かばんから真新しい一目で高級品だと分かるランジェリーを取り出して私に着せ始めたのです、
ブルーのリボンがついたガーターベルトとストッキングまで用意して
「○○ちゃんにはきちんとした花嫁衣装を着せてあげたいもの」と言いながら実際に着せているのは弟の体なのに、
少しぞっとしたけどこれが幼くして失ったわが子への母親の愛情だと思うと少しほろりとして、
今まで母親が背負っていた心の傷の深さを感じた、
鏡の前に座らされて母親に丁寧にメークされ、母親が準備していたパールのアクセサリーを着けて、
促されてウエディングドレスを着るとウイッグとウエディングベールをつけてもらい、
白いレースの手袋に造花のブーケを渡された、
再び鏡の前につれて行かれた私の見たものは、
紛れもなく会えるはずのない大人になりウェディングドレスを着て嫁いでゆく姉の姿だった、