今にして思えば、思い当たるフシもないではなかった。まず、抱いてほしいとジョオに
初めて告白した時も、ジョオは驚きこそしたが、姉妹で愛し合うという異常な行為をその
場で容認したこと。それに、実際に次の日の夜に初めて抱かれた時も、ジョオも初めての
はずなのにあれほどまでに落ち着いて、しかも手慣れたようにベスの相手をしたこと。あの
時のベスに冷静にそんなところまで分析できないのは無理のないことではあったが。
「やっぱり・・・わたしのこと、キライになった?・・・本当にごめんなさい、ベス」
ジョオの瞳をまぶたが悲しげに覆った。
「あ・・・・・・、ジョオ、言わないで!」
ベスは再びジョオに抱きついた。
「嫌いになんか・・・なるわけないじゃない!約束したでしょ?ジョオを嫌いにならないって
・・・ううん、そんなこと約束するまでもないって・・・・・・言ったじゃない・・・・・・」
メグのことは確かにショックではあった。ベスには無縁と思われた嫉妬という醜い感情を
いささか感じもした。しかし、それでもベスはジョオを許した。いや、むしろ、全てを
捧げたいと思っている最愛の姉ジョオを許すとか許さないとかの次元で一瞬たりとも考えた
自分に嫌悪さえ覚えた。
「・・・・・・ありがとう、ベス」
「メグもわたしの大切なお姉さんよ・・・・・・。それにわたしだって・・・エイミーに・・・いや
らしいコト、しようとしてたの・・・・・・何度もよ。ついさっきだって・・・・・・。だから、元々
わたしなんかにジョオを責めることなんかできっこないのよ。・・・・・・でも、どうして今、
そんなことを言うの・・・・・・?」
(おじさまは仕事柄、海外でいろいろと見聞を広めてきたはずだわ。ヨーロッパ、東洋・・・
外国の、わたしたちの神様の教えから外れた風俗や文化・・・・・・。船長だったおじさまのこの
書斎になら、あるいは・・・・・・)
ジョオは書斎の壁を一杯に覆った本棚の一番上の棚から、それと思しき本が収められている
箇所を探り当てると、脚立を使って十数冊ほどまとめて取り出しにかかった。
その作業の途中に、背表紙を片手ではつかめないほどの分厚い本が見つけられた。ジョオは
両手で取り出そうとして驚いた。その分厚い本はひょいっと軽々しく持ち上がり、ほとんど
重さを感じさせないのだ。