愛の若草物語 ベス 【三女目】

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843名無しか・・・何もかも皆懐かしい
きっと彼女達といるといつも毎日が楽しいだろうな
ペリーヌには心を癒されるだろう
ジョオといると元気になれるだろう
あああ
 「うーん・・・」ジョオは書きかけの小説を前に、椅子から立ち上がって大きく伸びをした。5月の麗らかな日差しが図書室いっぱいに広がっている。
 マーサおば様ご自慢のこの部屋は、小説家志望の15歳の少女にとってはまさに夢の城に等しい価値があった。
 ジョオの仕事、つまりマーサおば様のお相手は、ほとんど午前中だけの仕事と言っていい。昼食の後、彼女の朗読を聴きながらおば様がお昼寝を始める
と、ジョオはこの図書室にやって来て、思う存分大好きな本を読んだり、今している様に自作の小説を書いたりして、充実した時間を過ごすのだった。
 彼女にとって、もう一つ有難いのは、喧しいのを何より嫌うおば様の性格を反映して、この部屋の防音がほぼ完璧であることだ。
 自宅ではこの静寂は絶対に得られない。母にメグ、ハンナ、ミルキーアン・・ベスのピアノでさえも(極稀にではあるが)煩わしく感じるときがある。
そして極めつけは末っ子のエイミー!キンキンと甲高い声でまるでガットリング・ガンの様に喋り、笑い、泣き、怒る。
エイミーが家に居るかどうかは、50ヤード先からでも判るに違いない。今までに何度あのうるさい妹と喧嘩したことか・・。
 しかしこの屋敷にいる限り、ジョオはかつて悩まされてきた騒音から完全に逃れることが出来るのだ。しなやかな身体を伸ばしてリフレッシュした少女は、
小説の続きにとりかかるべく、椅子に腰を下ろした。
 −−どれほどの時間が経っただろう。ふと、ジョオの耳に、ギギ・・という忍びやかな音が聞くともなく聞こえてきた。(おば様・・?)
彼女がそう思ったのも当然で、音が聞こえたのはおば様の寝室なのだ。(でも、そんなはずは無いわ!)ジョオはすぐに気が付いた。