「元山にはお前の友達や仲間もたくさんいるんだろう!?
スターリング、ネロ、ジュディ、ポリアンナ!」
ジョオは親友達の名を耳にして腕組みをしながらうつむいた。 カーリーはさらに言葉を続ける。
「ハーク、武者、ジン、竜、…そんなに親しくないだろうけど…
アッシュもいるんだ!!」アッシュの名を口にした時、カーリーの 瞳から涙が溢れていた。
ジョオはただ無言だった。 「カーリー…ジョオ。」部屋に入ってきたのギラだった。
「ギラ?」ジョオは再び滅多に会えない人間の訪問に顔あげて相手の姿を
まじまじと見つめた。「あなたも来ていたの?」
「カーリーの説得で十分だと思っていたけど…やっぱり見ていられなくて。」
ギラはジョオに近づき、彼女の深い青の瞳を見つめながら言葉を続けた。
「僕からも頼む…カーリーの願いを…アッシュを助けてほしい。 もちろん君の友達を救うためにも。」ギラは深く頭を下げた。
「ジョオ…」
三人目の人影がジョオの部屋に入り込んできたのはその時だった。
ジョオは驚きの声をあげる。「お母様…お母様までいらっしゃったの?」 メアリーだけではなかった。
メアリーの横にはメグが立っていて、入り口の 端っこからエイミーがチラチラと部屋の中をのぞきこんでいる。
ベスもきっと廊下で聞き耳を立てているに違いない。 メアリーはギラに声をかけた。
「ギラさん、どうか頭を上げてくださいな。あなたほどの人が
こんなことをしなければいけないほどの緊急事態だからしかたないでしょうけど…」 「ありがとうございます…。」
メアリーに促されてギラは頭をあげた。その瞳に言葉で表した以上の感謝の灯が点っている。
「ジョオ。」メアリーは再びジョオに話しかけた。
「あなたの大切な友達が危機に陥っていて、こうして高い位の方々が頭を下げてでも
頼みこんでくる…。こんな時にマーチ家の人間がどうすべきか…あなたにはわかっている はずね。」
「お母様…。」ジョオは瞳をやや潤ませて母親の顔とじっと見つめた。
「ええ、お母様。こういう時にマーチ家の人間がとるべき態度…
下すべき決断…お母様が来てくださらなかったら私は忘れるところでした…。」
カーリーが興奮気味に口を挟んだ。「じゃあ、じゃあ…助けてくれるんだな。」