「あ…いや、何でもないんだ。ところでジョオ…。」アンソニーが表情を曇らせた。
「何?どうしたの?」ジョオもまたアンソニーの表情に心配顔になって尋ねた。
「重大事なんだ。君の家に言ってお母さんや家族にも伝えたほうがいい。」
「重大事…。」すぐにでも知りたいのを我慢し不安を噛み殺しつつジョオは
アンソニーを家に案内した。お母様のメアリーをはじめメグ、ベス、エイミーら
姉妹、そしてハンナも食堂に集まった。
「ブーンさん…一大事と言うことらしいですが…何ですの?」
尋ねるメアリー。アンソニーは咳払いをし、場は緊張した。
「実は…」アンソニーは話はじめた。
アンソニーの話にマーチ一家は言葉を失った。
「…ひどいわ…ひどいわ…。」「………。」「ううう、うわー、うわーん!!」
メグは悲痛な泣き声を放ち、ベスはほぼ無言ですすり泣き、エイミーは一際声高く泣きはじめた。
ジョオが瞳に涙を浮かべて叫んだ。「そんなことって…許せない、許せないわ!!」
ハンナもエプロンを目に当て、マーチ一家でただ一人辛うじて涙を抑えているのは
メアリーただ一人だった。家族の悲しみに、アンソニーも帽子を胸に当てて
「…お気持ち、お察しします…」とつぶやく他なかった。
その時、突如ジョオは立ち上がった。
「私…行くわ!!そうよ。私が助けに行くしかないじゃないの!!お父様を!!」
ジョオのいきなりの申し出にさすがのメアリーも色を失った。
「ジョオ、何を言い出すの!?あなたに何ができるっていうの!!」
「そうだよ、ジョオ!!戦争はもう終わる!!君まで危険な目に遭ってどうする?
じっと耐えて待つんだ、ジョオ!」
アンソニーも驚いて他人を越える勢いでジョオをなだめようとするのだった。
「いやよ!!お父様が南部連合軍に捕まったのよ!助け出さないと!!」
ジョオはぶんぶん頭を左右に振った。涙が珠となり、飛び散っていく。
メアリーは必死な次女をなだめにかかる