愛の若草物語 ベス 【三女目】

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765名無しか・・・何もかも皆懐かしい
「何を言うか。聖ルーベンスはこの絵を天下万民隔てなくすべての人に見せるべく描かれたものだ!!
それを金を取って見せようなどとは聖ルーベンスのご意思に反するものではないか!」
坊主はたじろぐ。
「それは…だが貧なる者は邪悪な霊が取り付いた者とも言える。その霊をとり払うべく、我々は儀式を
行っている。金はその霊を取り除くための聖ルーベンスの魂への供養なのだ。」
俺は猛烈に怒って坊主の妄論を叩き潰す。
「何を言うか!!貴様らのやってる事はただの人種差別だ!!神がいつ貴様らの言うような事を言ったか!!
聖なる書のどこのページで言ってるのか、いつ、何年の何月の何日に言ったのか!!」
坊主はもぐもぐと口ごもる。「それは…それは…」
「何も言えないようだな、この業突く張りめ!!よし、この絵はこれから天下万民に見せることにする!!
ローリー、ブルック、あの絵を覆う布を引き裂いてしまえ!!」
俺は仲間とともに絵が隠されている礼拝堂に向かった。
礼拝堂に向かうとローリーが叫んだ。「見ろ、誰か倒れている!」
よく見ると蝋燭も消えた暗い礼拝堂の中で二つの影が横たわっていた。
「これは…少年と犬だ。」俺は近寄って確かめてみた。金髪のよく整った顔立ちの少年が
大きい犬と固く抱き合いながら冷たい礼拝堂の床に倒れていたのだ。
「しっかりしろ…大丈夫か!?」俺は少年と犬の側まで寄って床に膝をついて一人と一匹
の様子を詳しく調べる。「…生きている!!」そう、生きていた。ただ、その二つの命は
今にも消え入りそうだった。多分、少年の貧しそうな身なりから見るに飢えと寒さで倒れた
に違いない。早く助けなくては…俺はみんなと協力して、彼らを荷車の上に乗せてマーチ邸へと
急いだ。彼らを暖炉の火で暖まった部屋のベッドに寝かせ、毛布や布団を上から幾つもかぶせる。
ともかく、まずは暖めなくては。目をさますまで。俺、メグ、ジョオ、ベス、エイミーが
交代で彼らを見つめて息を吹き返してくるのを待つ。優しいベスの当番の時にやっと少年と犬は
目を開いた。少年はネロと名乗り、犬をパトラッシュだと紹介した。