愛の若草物語 ベス 【三女目】

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746名無しか・・・何もかも皆懐かしい
「あらベス、もう寝るの?」
「え、ええ、ちょっと早いけどね。なんだか、その、ちょっと体がだるくて・・・・・・」
 わざわざベスはつかなくてもいい嘘をついてエイミーをかわそうとした。エイミーは
そんなベスを見つめながらつかつかと歩み寄ってきた。
「ベス・・・顔や耳が赤いわよ。もしかして、熱があるんじゃないの?」
「えっ?あ、そ、そうかしら?」
 ベスはギクリとして自分の頬を触った。自分では気付かなかったが、先程ジョオにつまみ
食いされた体が火照ったままだったのだ。
 ベスの健康については、家族全員が心配するところであり、エイミーももちろんその例に
漏れなかった。エイミーは自分とベスの額に手のひらを付けて熱を測り、その青くつぶらな
目をくりくりさせながら言った。
「うーん、熱はないようね。ベス、晩ゴハンのときもちょっと元気がなかったから、もしか
したらカゼかなって思ったんだけど、気のせいみたいね。よかった」 
 エイミーの純粋な優しさに触れ、ベスは思わずそのたったひとりの妹を抱きしめた。
「ありがとう・・・エイミー・・・・・・」
「ベス・・・・・・?」
 もともと内気でおとなしいベスは、よほど感情がたかぶるような事が起きない限りは、
抱擁やキスなどでその感情を表わすことはなかったので、身を案じてみただけの行為に
対して、エイミーはベスにしては少し大げさだと内心困惑した。
 エイミーのその困惑は広まった。エイミーを抱きしめていたベスの両腕がさわさわと
エイミーの背中や腰、さらにはお尻の近くまで撫でまわし始めたのだ。
 今日の出来事に気付いているかのようなベスの言葉にも、ジョオは驚かなかった。むしろ、ベスなら気付くのが当たり前だとすら思う。
 「あのね・・・?さっきジョオが”ただいま”って言ったとき・・・なにかいつもと違う感じがして・・・」ためらいがちにベスが言葉を続ける。
 「ほら、ジョオっていつも、外でイヤなことがあったとき・・・無理に明るく振舞ってみせるでしょ?私達に心配させないように・・・」