入り口の暖簾をくぐると、下がカパカパで、端がほつれている。
がたびしのドアを空けると、古びた下着のおやっさんがなげやりに、
くぐもった声で、 「いらっしゃい」 という。
壁と天井は煤と油がこびりついて、てかてか光っている。壁には
煤けた紙に手書きの品書きがはってあり、換気扇に吸い込まれる風で
こきざみにゆれている。カウンターはあちこちはげて、ほこりがそこを埋め、
隅っこにチャバネゴキブリがとまって、静かに触手を動かしている。
おやっさんは億劫そうに釜をかきまわして、麺の残りを金網ですくいとり、
がちゃがちゃ音をたてて残嵯入れに落としこむ。おばさんは髪も梳かずに、
甲高い声で、なじみらしい女客と人の悪口に熱中していたが、今気付いたような顔をして、
コップの水を持ってくる。コップにはうっすらとラードがこびりついて、水はゴム臭い。
やっとラーメンができた。欠けたどんぶりにラーメンを入れ、おばさんがしわしわの
指を突っ込んで出す。しわのひとつひとつに、黒い垢がこびりついている。 爪も黒い。
どんぶりを置いたはずみで、汁がこぼれてツーと流れ、カウンターが傾いていると知る。
使い古しで不揃いの竹のわりばし。
ラーメンはこういう店で食べると、実にうまい。
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