大久保店復活初日
開店前の店内は異様な雰囲気が包み込んでいた。
三田総主を始め錚々たる面子が狭い厨房で各々、自分に出来る最高の仕事をしている。
しかしヘルプで来ていた松子も今日ばかりは借りてきた猫。
久保美と世間話をしつつ男達の仕事を見ながら食券を磨いていた。
いよいよ開店、店内には再開延期で1年以上待たされ半分暴徒と化したした男達が雪崩れ込む。
それは初春にマスコミを賑わせていた蘇民祭を彷彿させる様相。
改めて日々人気店のオペレーションを掌る自分の責務に凛とする松子
回転が進むにつれ慣れぬ配置も体が覚え始めた。
今日は店を臨時休業にしてでも此処にきて良かったと。
しかし、慣れと同時に沸々と湧き上がってくる違和感を松子は感じていた。
この感情はなに?
我に返った松子は改めて店内を見渡し、その瞬時に理解した。
ロットは乱れ、店内には何人もの飢えた豚が壁際で涎を垂らしている。
あなた達、何しているの?店内に入っていいのは2人でしょ、いつも2人って言ってるじゃない。
そこのあなたも、さっき5番卓に座ってなかった?
勝手に移動しないでよ。
久保美はまだメモに慣れてないのが判らないの?
口に出せぬもどかしさに松子は打ち震えていた。
そう、ともに二郎を守る女として日ごろから情報交換をしていた久保美に相談されメモの利便性を説いたのは他ならぬ松子である。
メモオペの短所をに慌てふためく久保美を見ながら思った。
この身勝手な豚共を許さない、許してはいけない。
それ以降、松戸のルールを強化せねばと心に誓った松子。
そう、私が松戸駅前店の法律なのだ。
>>268に続く