最高のパスタにがつんとぶち当たったような衝撃だった。
箸で摘んで麺をひと噛み、スープをひと啜りしてから器が空っぽになるまで手を休めることができなかった。
丼ごとかぶりつくような感じで平らげた。私語厳禁の店があったりするけど、この「伊藤」にそんな張り紙は不要だろう。
客はすでに無言になっている。感想は「!」。言葉が出ない。
強力煮干出汁のスープだけに好き嫌いは分かれるところだろうが、東京一、ラーメン好き必食の店として推薦したい。
「そば(具なし、葱のみ)」をぜひ大盛りで!
[付記]西洋的な価値観では、ましてコマーシャリズムでははかれない店。
東洋哲学との接点があって初めて店の隅々にまで理解が及ぶ。
地方には地のものとして、それがあるので理解の過程は省略されている。
商業的価値の下の非商業的な価値に根ざした文化は、
表層一辺倒の何千杯食った派には不可視の状態にあると想像するが、しかしある種の恐れは与えたのではないか。
そういう恐れ(畏れ)のもとに、職人気質が東京のラーメン界に浸透し、再評価されることを望んでいる。
「伊藤」は決してダントツのナンバーワンではないがこの店を明らかに超える店にはまだ出会えない。