______★上方の「はん」と「さん」の使い分け★__

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5重要無名文化財
余話 「はん」と「さん」の使い分け
これはもう桂米朝師匠の書かれた文を引用すれば事足りるので以下に引用。
上方落語ノート*2より。

関西弁で説明のしにくいのは敬称の「はん」と「さん」の違いである。
「さん」と「はん」の使い分けは関西一円で行われているが、小説やドラマでも意外にこの誤りが多いのでここに書いておくが、
「さん」の方はいささか丁寧で上品で、「はん」の方はやや下品でその代わりに着易さがある------という位に考えておられる向きが多いようだ。
しかし、実は関西弁のドラマや小説でよく使われる「お客はん」とか「仲居はん」というような言葉はないのである。
語尾が、イキシチニヒミイリキヰ・・・・・・つまりイ列の場合には下に「はん」はつかない。すべて「さん」である。
また、ウクスツヌ・・・・・・のウ列の場合も「さん」である。
人名でも、「おますはん」やら「辰はん」などとは言わない。「おまっさん」であり「たっつあん」である。
アの列とエの列は「はん」を付けて呼んでもよろしい。また、語尾が「ン」の場合もかならず「さん」である。
6重要無名文化財:2006/01/12(木) 22:27:50
残った「オ」の列、これが実はさまざまであって一概に律し切れない。
私の考えでは、この「オ」の列は現在*3まだ過渡期であるように思うのである。
古くは「さん」であったのが「はん」も使われ出して、まだ百年も経っていないので、バラバラの用例が見られるというところかと思われる。
一例をあげると、「いとはん」-----お嬢さんのこと。これは今日では別に不思議な言い方ではないが、明治初期以前では、話し言葉で書かれた小咄本その他でも必ず「いとさん」であった。
「義雄はん」や「松子はん」は気にならないが、「和尚はん」や「お嬢はん」はちょっと引っかかる。
けれども、「オ」の列はもう七割以上、「はん」の方にいってしまったと見て良い。
奥様のことを御寮人という呼び方があるが、これを「御寮はん」というのは大きな間違いで、「御寮人さん」をちぢめて言っても「ごりょンさん」であって、末尾に「ン」が付いているから「さん」でなければならない。
ならない・・・・・・といっても、別に法則がこうであるというのではない。そのように使われて来たのである。「ごりょうはん」と言うとアクセントは違うが、「御霊さん」であって、御霊神社のことになる。
ちなみに「京阪乗る人おけいはん」は、発音においては「おけーはん」「おけえはん」とエの列になることが普通なので「はん」でもよいのです