石北本線 Part16

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683名無し野電車区
カツーン..カツーン..カツーン..
その夜社長は、何かを打ち砕くような金属音で目を覚ました。
「なんだね、君たちは?夜中に人の家に勝手に入り込んで騒々し..い?」
辺りを見回すとそこは彼の家ではなく、薄暗い洞窟であった。奥では編み笠を被り
黄色い服を着た男たちが鶴嘴や鎚を振るって岩壁を砕いている。
社長が、これは一体どうしたものかと呆然としていると、穴を掘っていた男たちが
一斉にくるりと振り返って、社長の方へ向かって来た。
「ひっ!!」
腰を抜かしながら後ずさると、突然後ろから肩をつかまれた。見ると同じように編み笠を
被った黄色い服を着た男が社長をしっかりと捕まえていた。前から向かって来た男の一人が、
無言で社長に鶴嘴を手渡す。鶴嘴を受け取ると、社長は男たちに導かれるまま岩壁へ向かった。
男の一人が岩壁の片隅を指差す。
「ここを掘れ、というのか?」
男達が小さく頷くのを見て、社長は鶴嘴を突き立てた。ガラガラと音を立てて崩れ落ちる岩...
「ぎゃああああああああ!!!」
そこには人柱として埋め込まれたと思われる白骨化した死体が絡み合っていた。
「うわわわ、うわああああ!!」
情けなくも腰を抜かし、四つん這いになって布団を頭から被る社長。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい..なんまんだぶなんまんだぶなんまんだぶ..」
「..あなた、どうしたの?一体何があったの?あなた、あなた..」
妻の問い掛けに答えること無く、すっかり夜が明けて明るくなるまで社長は布団の中で震えていた..。