10日の府中グモ、俺はその場にいた。状況は、準特急到着直前、退避ホームに各停が入ってきて、少しした時。
準特到着のアナウンスがあって、俺は分倍の方を見ていた。反対ホームには下り急行が停車中。 と、何やらおばさんの慌てた声と、バサッと言う音。
悲鳴とか、そう言うのは聞かなかった様に思う。 何だ? と見ると女の人が線路に落ちている。(自ら降りたのか、その辺は見ていない。)
丁度背中をこちら側のホームに向けたままで、線路の間に内股で座り込む形だった。 俺「何やってんだ、危ないなぁ。」とか普通に心で思った。
次の瞬間、間もなく入って来るであろう準特の事を思い出し、分倍の方を見るともう既にカーブを曲ってきていて 編成の半分程が見えている。
先頭はもう直線に入っていたように思う。 俺は声も出せないで落ちた女の人を見る。
女の人は線路の間から動いていない。助けを求めるとか、そう言う事はせず只ジッとして其処に座っていた。
おばさんの声が「誰かっ、」と一層慌てるが、俺の身体は動かなかった。ただもう、見ているだけ。
それでも思考は助けたかったのか、思い出した様に非常ボタンを探すが、それは既に押されていた。 赤いランプが光っているのは見た。
で、もう一度女の人を見て、全く動いていないのを見て、確信した。
「マジかよ」と。
その後はもう時間の流れが遅かった。 ブアーブアーブアー、何回か警笛が鳴って、そして「ガスッ」っと鈍い音。 その瞬間、俺は身体ごと顔を背けていた。
悲鳴が上がったかも知れないけど、俺の耳には届かなかった。
そして車輌は止まり、ホームにはヴーヴーというブザー音が鳴るだけだった。
これマジな話。誰かに話して楽になりたかったけど、誰にも話せなかったので
此処で吐き出します。ごめんなさい。
俺はその時反対ホームに停車していた下り急行(前から4〜5両目付近だと思う)に乗っていて、 上りの線路側に背を向けて座っていた。
発車のためドアが閉まり、その直後に警報が鳴り始めた。
何事かと振り返って上りのホームを見ると何人もが入ってくる準急とは逆の方向、つまり停車している各停側に全力で走っていた。これがなぜだかわからない。
とにかく入ってくる準急から逃げているようにも見えたので、てっきり上り準急が脱線でもしながら進入してきているのかと思った。
俺はそのとき携帯でメールを打っていたのだけど どっかから「早く誰か助けてあげて!」っていうおははんの声と
突然鳴り出した非常ベルが聞こえてそのとき初めて人が線路に 転落しているのに気が付いた。
すぐホーム淵に駆け寄ったら女性、というか女の子(と思うくらい若く見えた)が 俺のいたホームからほんの3、4mくらい先の線路上に横たわってて
このままじゃ危ないと思って、線路に降りようかと電車を見たら もうすぐそこまで来ていて、
とても線路に下りて助けられる状況じゃなかった。
このとき女の子は持っていた傘を杖代わりに立ち上がろうと言うそぶりを していたように思う。
回りの乗客は皆大騒ぎでなんか怒鳴っていたけど何を言っていたのか わからない。俺も「逃げろ!」と叫んでいたように思う。
もう駄目だって言うとき皆その周辺から逃げ出して、俺は その周辺に取り残されるような感じになってしまって その瞬間を見てしまった。
電車が女の子の上を通過するときゴッって音が鳴って 女の子は電車の下に吸い込まれるように消えていった。
つか、なぜか目をそらせなかった。見なければよかったと今更思う。
この瞬間回りの客はキャーとかあーとか絶叫してて 俺もなんか頭抱えて叫んでたような気がする。
そのあと女の子がどういう状態になってしまったのか わからない。
俺は準急より先に出ることになった各駅停車に乗って行ってしまったのでその後の状況をしらない。
助けられるもんなら助けたかった。でも無理だった。女の子が落ちてから1分も時間はなかったのではないかと思う。
少なくともおばはんの声で俺が気づいて、女の子が轢かれてしまうまでに20秒も掛からなかった。