時計を見たら10:44であった。都心でだいぶ渋滞
に巻き込まれたのだろう。ちょっと優越感に浸る。すると程なくもう一台バスがやってきた。これは、山頂と延暦寺を往復しているシャトル
バスで、通常の路線バスと同じ車体である。バス停に「スルッとKANSAI」が使える旨が記してあったので、これに乗ることにする。関東
の「パスネット」と違って、こちらの「スルッとKANSAI」は電車の他に、路線バスにも使えるので便利だ。バスはヘアーピンカーブを下り、
5分ほどで延暦寺に着いた。平日ということで、参詣客は疎らであったが、かえってのんびり見学できてよかった。
山頂から琵琶湖を望む。 平日で閑散としていた延暦寺。
帰りは、「坂本方面」と書かれた標識に従って10分ほど山道を歩くと、ケーブルカーの駅が見つかった。「延暦寺駅」という看板を掲げて
いてかなり重厚な建物である。「比叡山鉄道」を名乗っているが、実態は京阪の子会社のようである。たぶん、買収されて名前だけ残して
いるのだろう。「日本最長ケーブル」が売りの鉄道だけに、全長2025mの路線には途中駅あり、トンネルあり、鉄橋あり、かなり険しい地
形に敷設したことを思わせる。先頭に陣取って眺めているとなかなか楽しい。鉄橋は少々心許なく、なかなかスリルがある。幾つか目の
トンネルを抜けると中間地点で、対向列車とすれ違った。これだけは他のケーブルカーと変わりない。ふと、私を乗せた列車が途中停車
してしまった。何事かと思っていると、「対向車が途中駅に停車しておりますので、しばらく停車します。」とのアナウンスがあった。なるほど、
それはものの道理だ。ケーブルカーの旅は11分で終わり、坂本駅に到着。
途中駅、トンネル、鉄橋と何でもありの比叡山ケーブル。
駅員にせき立てられるように、京阪坂本駅経由・JR比叡山坂本駅行きのバスに乗り継いだ。バスには「江若バス」と記されている。廃線に
なった江若鉄道が経営しているバスである。江若鉄道とは、現在の京阪電車の浜大津から近江今津駅までを結んでいた民鉄で、ここから
さらに福井県の小浜に近い上中まで延長される予定であった。