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名無し野電車区:
そろそろ22時を回り商店街の人通りも少なく、終電はまだまだと思っていたが暖簾を仕舞う店主の
姿を見て「焼鳥正一合」を出て大船駅のモノレール乗り場へと向かった。
コンコースの照明は薄暗いがホームレスの溜まり場であったルミネ前は柄の悪い若者がラジカセを
響かせぎこちないダンスを誰にとも無く披露していて、悲しいほどのだだ広さは感じられないとい
うより邪魔だ。モノレールのホームへ行くと22時15分湘南江の島行きを待つ人が数名、
沿線住民の急激な高齢化と減少に加え江ノ島行きの京急バスが22時30分まであり、当線の利用者も
それなりに落ち着いてきているが、朝に雨降りだった日だけは富士見町まで異常な混み様だ。
やがて定刻で電車が入線、懸垂式の軌道と一体になったホームはやはり不安定に揺れる。
集団見合いのクロスシートに身を沈めて窓外に目をやる。
ほどなく浮かび上がる不気味なシルエットは大船観音だ。
来年には廃止される旧大船工場の引込み線を渡ると富士見町でどっと降りる。
初乗りのこの駅では車掌は切符を回収しない。ブッパータールのように知らん顔で階段を降りる。
ヒューーンヒューーーン、と音程の狂った悲しげなモーター音をあげながら町屋へ向かって行った。