3.気動車用に要求される構造と性能
気動車用ディーゼル機関とはどのような特徴をもち、他用途のエンジンとどこが違うかについて
説明しよう。まず構造的な特徴をあげると、次のようになる。
(1)主として横型機関である
車体の床下に搭載するため高さを極力低くする必要があり、またメインテナンスを行うさい
客室内に入らずに作業するためにも横型が望ましい。これに対して船舶用や自動車用エンジンは、
バス用を除いてはほとんどピストンが上下に運動する縦型エンジンである。
(2)車載用として専用の吊り装置・補機軸取り出し装置が必要
前項でも述べたように床下に吊るための吊り金具をクランクケースに設け、またクランク軸
の前側から補機動力を取り出すための継手や軸受装置を設ける必要がある。
(3)車両用として必要な充電発電機や空気圧縮機をエンジンにマウントしなければならない
制御用電源やサービス用電源として発電機が必要で、近年のサービス性向上(冷房・自動
販売機・カラオケ・ビデオなど)の高まりに応じて発電機も6〜8kwが必要とされて
きている。また空気ブレーキや空気ばねの制御用として空気圧縮機は欠かすことができない。
(4)メインテナンス作業性の要求
気動車の一日平均走行キロ数(「日車キロ」という)は一般的に200〜400kmだが、長距離の
特急・急行などは日車キロ600〜800kmにおよぶものもある。自家用乗用車は平均1万km/年
といわれているから、気動車は1ヶ月弱で乗用車の1年分を走ることになる。したがって
定期的な点検整備作業が必要で、運転所・機関区などでこれを実施されているわけであるが、
床下の狭いスペースで行うので作業性を十分に配慮した付属品の取付け配置が要求される。
つまり車両の両側面からアプローチするので点検整備が必要な機器類はこの両サイドに
設置する必要があり、エンジンの上面や下面への取付けは極力さけなければならない。
車両メーカーに対しても、両側面からのアプローチが容易なように床下スペースをあけて
おくようのお願いしている。