【マイコプラズマ】放射線症・傾向と対策27【くま】
放射線被爆は、生体組織の直接損傷あるいは酸化的損傷を招くらしい。
このうち、遺伝子(DNA)の損傷は、DNAについて一定の理解があるのでイメージしやすいと言える。
そこで、別のタイプの損傷をイメージしやすくするため、「タンパク質の損傷」の事例を紹介してみる。
(ソース)「アミノ酸の”形”が老化の鍵?」
in Newtonムック「人体を支配するしくみ」(2006.8月)136-141ページ
とりあえず前置き:
・タンパク質は、アミノ酸がつながってできている(通常、数十個から数万個)。
・自然界には約500種類のアミノ酸が存在するが、ヒトが利用するのは20種類。
・この20種類のうち19種類(うろ覚え?)には、立体構造によって、左手型(L型)と右手型(D型)が存在する
(いわゆる鏡像異性体)。
・体内にあるタンパク質は、通常、左手型のアミノ酸からできている (合成の場にアミノ酸を運ぶ
運搬RNA(tRNA)が左手型のアミノ酸しかつかむことができないため、哺乳類の身体の中で、右手型の
アミノ酸を使ってタンパク質が合成されることはないらしい)。
・アミノ酸の鏡像異性体では、生体内で作用が異なりうる(例えば、人工甘味料のアスパルテームは、2つの
左手型のアミノ酸(アスパラギン酸とファニルアラニン)が結合したペプチドで、非常に甘い性質をもつ。
他方、同じアミノ酸の右手型を2個結合したペプチドは、苦い。そのため商品では、左手型のみが
使用されているらしい)。
近年の研究によって、タンパク質の中にさえ右手型アミノ酸が存在することがわかってきた
との説明のあとの一節:
「・・・代謝の緩慢な組織では生きているうちにも、左手型から右手型に変化しているのではないか、
と考えた研究者がいた。アメリカのマスターズ博士らはそれを実証するため、代謝がほとんどない、
ヒトの水晶体を解析した。すると、水晶体を構成するタンパク質の中に右手型のアミノ酸があることが
わかった。1978年のことである。
藤井[紀子京都大学]教授らはこの報告に触発され、水晶体に含まれるどのタンパク質のどの部位の
アミノ酸が右手型に変化するのか、研究を行った。その結果、水晶体の主成分である「αA-クリスタリン」と
いうタンパク質の58番目と151番目のアスパラギン酸(アミノ酸)が多く右手型に変化していることなどが
明らかになった。
左手型アミノ酸が連なった中に右手型アミノ酸がまじると、タンパク質の立体構造が大きくゆがむ。
タンパク質にとって立体構造は重要で、ゆがむと本来の機能をはたすことができなくなってしまう。・・・」
つでに、もう1つ:
「たかが1個でも右手型アミノ酸がタンパク質に入ると、その立体構造はがらりとかわり、物質の性質も
かわってしまう。たとえば、水晶体を構成するクリスタリンは本来、透明な物質で、クリスタリンが集まり、
きれいに層状に並ぶことで『透明なレンズ』の役割をはたしている。しかし、クリスタリンの中に右手型の
アミノ酸が形成されると、クリスタリンは凝集し、にごった色になってしまう。このようなクリスタリンがふえると、
本来のレンズの役割をはたせなくなってしまう。実際に、白内障の患者の目をのぞきこむと白くにごって
みえる。」 (つづく)