あの人達に犯された時、私は自分が切ないほどに女であることを思い知りました。最初にこう書いてしまう
と、私がレイプを望んでいたように思われるでしょうが、そうではありません。彼らを憎み、レイプという行為
を決して許さない気持ちは、今でも変わりません。ただあの時、私の中には、もう一人、別の自分がいました。
嫉妬、、、、女なら誰でも持つ感情、私はこの嫉妬に苦しめられました。私の中にひそむ奥深い女の本性に、私
は苦しめられ、自分自身をも憎みました。
私が勤める派遣会社は小規模ですが、専門能力の高い派遣スタッフが多く在籍しています。特に語学の分野で
は、派遣スタッフの優秀さは高い評価を受けています。私はそこで営業を任されていますが、ある会社から英語
とドイツ語のできるスタッフの派遣を依頼されました。初めて取引する小さな会社でしたが信用調査も問題な
く、私は交渉を進めました。派遣する予定のスタッフを杉浦さんに決め、その杉浦さんも交えて、先方の担当者
と細かな打ち合わせをし、派遣は一週間後からという事に決まりました。後から分かったことですが、その時点
では確かに信用調査は間違っておらず、先方が派遣スタッフを必要としていたのも事実でした。ですが、他社の
倒産の影響で、その会社も急に資金繰りが悪化していたのです。一週間後の派遣の初日、交渉を担当した者の義
務として、私も杉浦さんと一緒に、その会社に行きました。
私達は社長室に通され、社長さん、専務さんと向かい合ってソファに座りました。先方の担当者は、杉浦さん
の横に立つと、自分の雇い主に向かって、信じられない言葉を口にしました。――どうです社長、いい女でしょ
うビジネスの場に最も似つかわしくない彼の言葉に、私は驚きました。杉浦さんを見つめる社長と専務の表情
が、だらしなく卑猥にゆがみました。私が、まさかという危険を感じた時、彼は杉浦さんの両腕をさっとつか
み、後ろにねじり上げました同時に、専務が私に体当たりしてきました。私と杉浦さんは、両手を後に縛られ
て、社長室の床に転がされました。あの人達は、――最期の宴にふさわしい、――いい女だ、、そう言って私の
すぐ隣り横たわる杉浦さんの体に触れていきました。信じられない出来事でした。下の階ではこの会社の人たち
が仕事をしているに、そんな事はまったく意に介さないように、あの人達は嫌らしい手つきで、杉浦さんの体を
まさぐり続けました。何をなさるんですっ、やめてください、と身をよじる杉浦さんに、あの人達は、――どう
せ俺たちはもう終わりだ、その分たっぷり楽しませてもらう、そう言って、男の嫌らしさをむき出しにして、彼
女に群がりました。あの人達の言葉の断片から、事業と人生に失敗した自分達の最期の楽しみのために私と杉浦
さんが生贄になったのだと悟りました。私は、こんな会社と契約を取り交わした自分の未熟さを悔い、杉浦さん
に申し訳ない思いで一杯でした。ご主人と二人のお子さんがいらっしゃる杉浦さんは、四十三歳の素敵な女性で
す。常に努力を怠らず、専門の語学に精進される姿を、私は尊敬していました。道行く男性がはっとするほど、
人を惹きつける美しい姿の杉浦さんでした。私がもっとこの会社の経営状態を調べていれば、、、、心の中で杉
浦さんに謝り、そして二十八歳の私も、身に起こるはずの危機に震えていました。――亭主にまだ惚れてるの
か、昨日の夜は抱かれたのか、男は何人知っているあの人達は言葉で杉浦さんを侮辱しながら、彼女の体に顔を
すり寄せました。その日の杉浦さんはオフホワイトの上品なスーツでしたが、その服に顔をこすり付けたり、ス
カートの中に頭ごと入り込んでは、露骨に鼻を鳴らしていました。杉浦さんへの執着は異常なほどで、彼女の手
のひらや指、特に結婚指輪が光る左手の薬指を執拗に舐め、パンプスを脱がした足の指さえも舐めていました。
あの人達は服を脱がせるたびに、あたかもそれが杉浦さんの分身であるかのように鼻を近づけて匂いを嗅ぎ、彼
女のショーツを脱がせた後などは、それこそ奪い合うようにショーツへ執着し、鼻を鳴らして舐めまわしていま
した。その男性達のおぞましい姿に、私は身の毛がよだつ思いでした。杉浦さんの大きく広げた両足の間に頭を
三つ並べ、伸ばした手をしきりと動かせて交替で顔を近づけていました。
ずいぶん長い時間、あの人達はそんな事をし続け、彼女の全身を舐め回しました。やめてくださいっ、と何度
も訴える杉浦さんを、最初の男性がレイプしました。哀しい響がする杉浦さんの叫び声を聞いた時、私は心から
彼女に同情しました。同じ女として、杉浦さんの哀しみや口惜しさを思うと、涙が出ました。ましてご主人がい
らっしゃる彼女の胸中を察すると、胸が痛みました。男性は乱暴に挿入するのではなく嫌らしい腰つきで、杉浦
さんを犯していました。最初の男性は、――しぶとい女だ、そう言って杉浦さんの左手に射精しました。彼女か
ら艶かしい反応と声を引き出せなかったのを口惜しがり、その腹いせにするつもりか、彼女の結婚指輪めがけて
射精しました。二人目の男性が彼女を犯す間も、他の男性達は彼女の顔にすり寄り、一瞬の表情の変化も見逃さ
ない風情で、じっと杉浦さんを見つめていました。三人目の男性の時に、杉浦さんの股間から粘液質な音が響き
始めました。ここに擬音を記すのが恥ずかしくなるほどの、男と女の淫らな交わりの音でした。でも、それは仕
方のない事だと思いました。たとえ無理やりでも、あれだけ長い間しつこく体を刺激され、決して乱暴ではない
男性達の巧みな動きを繰り返されれば、私もそうなってしまうでしょう。杉浦さんの反応に、あの人達は声をあ
げて喜び、そんな彼女を侮辱しました。――亭主とどっちがいい、、亭主を裏切ってもいいのか、、もっとよが
れ、、杉浦さんも自分の恥ずかしい音を自覚しているのか、隣りの私にそっと顔を向けて関森さん、私を笑わな
いで、、、哀しそうな目で杉浦さんは言いました。そして瞑想するように瞳を閉じた杉浦さんは、「アッッ」と
声を洩らしました。意思に反して恥をかかされる杉浦さんが可哀想で、私は胸が痛みました。反応を示す杉浦さ
んを見て、男性達は狂喜したようにはしゃぎました。しきりと私を気にする杉浦さんに、――こんな女なんか気
にするな、もっとよがれ、亭主を裏切ってみろ、、
男性の口にした言葉が、私の心に突き刺さりました。こんな女、、、私は、こんな女なのか、それまで男性達
は私に好色な目を向けるどころか、触れてすらいませんでした。決して自惚れでは無く、私も一人の女して、自
分に誇りを持っていました。私に恋人がいると知っていても、アプローチしてくれる男性は何人かいました。自
惚れの強い、嫌な女だと思わないで下さい。私も女としての努力を怠らず、一生懸命、生きている一人の女性な
のです。、、、こんな女、、私なんかには、興味すらないの、、、杉浦さんを犯す男性達を憎み、卑劣な行為に
怒りを覚えていても、レイプの危険にさらされた恐怖の中でも、ふと、そんな思いが頭をかすめました。確か
に、社長室に入ったときから、男性達の視線は常に、杉浦さんにありました。杉浦さんはとても綺麗な女性で、
その彼女にだけ、男性達は執着していました。足の指すら舐めてもらえる杉浦さんの魅力、はるかに若い私は無
視され、男性達の欲望を強く引きつける杉浦さんの美しさ、男性達が必死になって執着する杉浦さんを、私は、
嫉妬しました。そんな自分が堪らなく嫌で、私は自分自身を叱りつけました。そんな自分を蔑み、杉浦さんに心
の中で謝りました。でも、どんなに振り払っても、杉浦さんへの嫉妬は消えませんでした。もはや全身で悶え、
淫らな声を上げる杉浦さんは、妖しく綺麗でした。挿入を繰り返す男性は汗を飛び散らせ、他の男性達は狂った
ように杉浦さんに接吻していました。
その後、男性達は杉浦さんにフェラチオを要求し、その彼女の口元をしつこいほど見つめ続けていました。
散々、杉浦さんをいじめた後、一人の男性が私に顔を向けました。――この女もいいじゃないか、その言葉に
よって、レイプの恐怖とは別に、その恐ろしさの中で、もう一人の私は自尊心をくすぐられ、微かな満足感を得
ていました。なんて愚かで、浅はかな女、、そんな自分がみじめで、とても哀しかった。男性が私のストッキン
グとショーツを脱がそうとし時、本気で抵抗しました。いや、絶対にいや、、、憎い男性の性器が私の膣に触れ
ると、その汚らわしさで、全身に鳥肌が立ちました。でも、もう一人の私は、、違う、杉浦さんの時と違
う、、、そう叫んでいました。乱暴に挿入され、荒々しくレイプされる私には、優しい恋人の顔が頭によぎり、
犯されている現実を嘆き、その男性を心から憎みました。でもやはり、あの人の時と違う、、もう一人の私の声
に、私は苦しめられました。男性は私を物のように扱い、ただ乱暴に挿入を繰り返すだけでした。私の乳房す
ら、触れようともしませんでした。その時、杉浦さんの苦悶の叫び声がしました。彼女は四つん這いにされて、
後ろから男性に犯されていました。――なんだ、もう尻の穴を犯ったのか私をレイプしていた男性はそう言っ
て、いきなり私から離れると、杉浦さんの体にすり寄って行きました。、、、私はただの暇つぶし、、、、レイ
プを逃れ、膣内への射精が防げたことへの安堵感よりも、もう一人の私が男性に非難の声を上げました。私の中
では、排泄器官を凌辱されている杉浦さんの苦しみを気遣う自分と、男性の欲望を一身に集める杉浦さんを嫉妬
する自分とが、同時に息をしていました。杉浦さんの排泄器官を凌辱した男性達は、"掃除"と言って、よごれた
男性器を私の口に押し付けました。その合間に、まさに暇つぶしのように、乱暴でなげやりに、私の膣を犯しま
した。私は悲しくて、本当に悲しくて、泣きました。不意をつくように一人の男性が、私の足首をつかみ、そし
て足の指を舐めました。その時、私は歓喜の声を上げてしまいました。、、、ああ、私も、あの人と同じように
してもらえた、、、男性にしてみれば、その行為も、ただの暇つぶしだったのかも知れません。でも私は、浅は
かにも喜びの声を上げてしまったのです。切なくて、情けないほど、私は自分が女であることを悟りました。
あの人達はその日に、行方が分からなくなりました。私も杉浦さんも、あの事を警察に届けていません。きっ
と杉浦さんは、深い傷を負い、苦しまれたことでしょう。私もそうです。ですが、私は、もう一人の自分にも苦
しめられました。あの時の自分がたまらなく嫌で、それは死にたいほど辛い記憶です。杉浦さんと同じように、
足の指を舐めてもらえた時の、私の喜びの記憶。私は今でも、その時の愚かな自分を責めています。