ようやくしおらしくなってきた?六本木Hanako 14
952 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 14:57:55 ID:OwPmxV4s0
「おい口上をいえ」と巌がいった。
953 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 14:58:28 ID:OwPmxV4s0
「なんの?」
954 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 14:59:01 ID:OwPmxV4s0
「へびに芸をさせるんだ」
955 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 14:59:43 ID:OwPmxV4s0
「よしきた……そもそもこれは漢の沛公《はいこう》が二つに斬《き》った白蛇の子孫でござい」
956 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:01:30 ID:lCMeSkA50
調子おもしろくはやしたてたので人々は少しずつ集まりかけた。
957 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:02:00 ID:lCMeSkA50
「さあさあ、ごろうじろ、ごろうじろ」
958 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:02:34 ID:lCMeSkA50
しゃもじの調子にのって巌はへびをひたいに巻きつけほおをはわし首に巻き、
右のそで口から左のそで口から中央のふところから自由自在になわのごとくあやなした。
959 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:03:06 ID:lCMeSkA50
「うまいぞうまいぞ」と喝采《かっさい》するものがある。
960 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:03:39 ID:lCMeSkA50
最後にかれはへびを一まとめにして口の中へ入れた。
961 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:04:11 ID:lCMeSkA50
人々は驚いてさかんに喝采した。
962 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:04:44 ID:lCMeSkA50
「おいどうだ」
963 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:05:17 ID:lCMeSkA50
かれはへびを口からはきだしてからみんなにいった。
964 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:06:37 ID:lCMeSkA50
「うまいうまい」
965 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:07:10 ID:lCMeSkA50
「みんな見たか」
966 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:07:45 ID:lCMeSkA50
「うまいぞ」
967 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:08:17 ID:lCMeSkA50
「見たものは弁当をだせ」
968 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:08:49 ID:lCMeSkA50
人々はだまって顔を見合った、そうして後列の方からそろそろと逃げかけた。
969 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:09:35 ID:lCMeSkA50
「おい、こらッ」
970 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:10:08 ID:lCMeSkA50
いまにぎり飯を食いながら逃げようとする一人の少年の口元めがけてへびを投げた。
971 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:11:49 ID:aPeD79aU0
少年はにぎり飯を落とした。
972 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:12:36 ID:aPeD79aU0
「つぎはだれだ」
973 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:13:07 ID:aPeD79aU0
かれは器械体操のたなの下にうずくまってる少年の弁当をのぞいた、弁当の中には玉子焼きとさけとあった。
974 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:13:38 ID:aPeD79aU0
「うまそうだな」
975 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:14:09 ID:aPeD79aU0
かれは手を伸《の》ばしてそれを食った。
976 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:14:42 ID:aPeD79aU0
そして半分をしゃもじにやった。
977 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:15:12 ID:aPeD79aU0
「つぎは?」
978 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:15:45 ID:aPeD79aU0
もうだれもいなかった、投げられたへびはぐんにゃりと弱っていた。
979 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:16:17 ID:aPeD79aU0
かれはそれを拾うと裏の林の方へ急いだ。
980 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:16:50 ID:aPeD79aU0
そこには多くの生徒が群れていた、かれらの大部分は水田に糸をたれてかえるをつっていた。
981 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:17:23 ID:aPeD79aU0
その他の者は木陰《こかげ》木陰《こかげ》に腰をおろして雑誌を読んだり、宿題を解いたりしていた。
982 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:17:56 ID:aPeD79aU0
巌はずらりとかれらを見まわした、これというやつがあったら喧嘩《けんか》をしてやろう。
983 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:18:32 ID:aPeD79aU0
だがあいにく弱そうなやつばかりで相手とするにたらぬ、
そこでかれは木の下に立って一同を見おろしていた、
かれの胸はいつも元気がみちみちている、かれは毎朝眼がさめるとうれしさを感ずる、
学校へいって多くの学生をなぐったりけとばしたり、自由に使役したりするのがさらにうれしい。
984 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:19:41 ID:R7tLxwOn0
かれはいろいろな冒険談を読んだり、英雄の歴史を読んだりした、そうしてロビンソンやクライブやナポレオンや秀吉《ひでよし》は自分ににていると思った。
985 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:20:20 ID:R7tLxwOn0
「クライブは不良少年で親ももてあました、
それでインドへ追いやられて会社の腰弁《こしべん》になってるうちに自分の手腕をふるってついにインドを英国のものにしてしまった、
おれもどこかへ追いだされたら、一つの国を占領して日本の領土を拡張しよう」
986 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:20:52 ID:R7tLxwOn0
こういう考えは毎日のようにおこった、かれは実際|喧嘩《けんか》に強いところをもって見ると、クライブになりうる資格があると自信している。
987 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:21:23 ID:R7tLxwOn0
「おれは英雄だ」
988 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:21:55 ID:R7tLxwOn0
かれはナポレオンになろうと思ったときには胸のところに座蒲団《ざぶとん》を入れて反身《そりみ》になって歩いた。
989 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:22:27 ID:R7tLxwOn0
秀吉になろうと思った時にはおそろしく目をむきだしてさるのごとくに歯を出して歩く。
990 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:22:59 ID:R7tLxwOn0
かれの子分のしゃもじは国定忠治《くにさだちゅうじ》や清水《しみず》の次郎長《じろちょう》がすきであった、
かれはまき舌でものをいうのがじょうずで、博徒《ばくと》の挨拶《あいさつ》を暗記していた。
991 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:23:29 ID:R7tLxwOn0
「おれはおまえのような下卑《げび》たやつはきらいだ」と巌がしゃもじにいった。
992 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:24:02 ID:R7tLxwOn0
「何が下卑てる?」
993 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:24:34 ID:R7tLxwOn0
「国定忠治だの次郎長だの、博徒じゃないか、尻をまくって外を歩くような下卑たやつはおれの仲間にゃされない」
994 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:25:06 ID:R7tLxwOn0
「じゃどうすればいいんだ」
995 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:25:39 ID:R7tLxwOn0
「おれは秀吉《ひでよし》だからお前は加藤か小西になれよ」
996 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:26:11 ID:R7tLxwOn0
かれはとうとうしゃもじを加藤清正《かとうきよまさ》にしてしまった。
997 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:26:43 ID:R7tLxwOn0
だがこの清正はいたって弱虫でいつも同級生になぐられている。
998 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:27:16 ID:R7tLxwOn0
大抵《たいてい》の喧嘩《けんか》は加藤しゃもじの守《かみ》から発生する、しゃもじがなぐられて巌に報告すると巌は復讐《ふくしゅう》してくれるのである。
999 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:27:47 ID:R7tLxwOn0
いずれの中学校でも一番生意気で横暴なのは三年生である、
四年五年は分別が定まり、自重心も生ずるとともに年少者をあわれむ心もできるが、
三年はちょうど新兵が二年兵になったように、年少者に対して傲慢《ごうまん》であるとともに年長者に対しても傲慢である。
1000 :
名無しさんと大人の出会い:2006/11/05(日) 15:28:21 ID:R7tLxwOn0
浦和中学の三年生と二年生はいつも仲が悪かった、
年少の悲しさは戦いのあるたびに二年が負けた、
巌はいつもそれを憤慨《ふんがい》したがやはりかなわなかった。
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