アフォーダンス

このエントリーをはてなブックマークに追加
265名無しさん@お腹いっぱい。
いや勉強になった.251氏に感謝.
まず,日本のギブソニアンはoptical flowは光学的流動,
invariantは不変項と訳すことが多いね.フローはフローの
ままのほうが分かりやすい気がするが.
ギブソンの著作自体は理論と言うより哲学,また不変項という概念も
検出されることによって定義される,という点で再帰的なので,
それを具体的な実証研究に繋ぐ時には,もうワンステップの
飛躍が必要なんだよね.

また,「環境の構造が実質的に無限,すべてをリストアップできない」
という問題は,環境を問題にする心理学理論すべてに関わる問題.
もちろん,説明概念の対象が無限であるということが,その説明が
間違っている,あるいは不完全だと言うことに直接はつながらない.
自然数は無限だが,自然数を含んだ式や予測が間違いだとはいわないからね.
ただ,実際の実証的研究では,その無限の中から一定の要素を抽出しなければ
ならず,その抽出の基準が常に問題になる.
いわゆる「行動主義」は,それをものすごくシンプルな要素に還元してしまった.
このことの是非は十分論じられているのでここでは述べない.

確かに生体を取り巻く環境や,その構造,その中に含まれる不変項は
無限に存在するわけだけど,そのなかで生体にとって「意味がある」
ものは,ある程度限られる.ユクスキュルの「環境世界」などに示される
ように,その範囲は種(とそのニッチ)によって,進化的にある程度
定められているだろうし,ギブソニアンが進化論に傾くのは
環境内の不変項とそのアフォーダンスの検出の傾向が,基本的には
種に依存する,というようなことを考えているからだろう.
266名無しさん@お腹いっぱい。:2001/07/24(火) 09:14
>7)ヒトが知覚する、シーンに含まれるさまざまな構造のすべてに
>対して、それと「直接的に結びついた」invariantが存在するか。

まあギブソニアンはそれが「存在する」と考えて,捜すわけだよね.
そこがギブソンが哲学である,というゆえんだし,そのドグマを受け入れるか
どうかが,「ギブソンを咀嚼した知覚心理学者」になるか,ギブソニアンに
なるかの境目だろうな.進化論でも,ダーウィンの「発見した」原理
自体はドグマに過ぎないわけで.

ただ,進化論者がダーウインのドグマを用いて多数の発見を積み重ねたように,
ギブソニアンもそのドグマに基づいて発見する.「ダイナミックタッチ」に
おける重さや形の知覚と「物体の慣性モーメント」という不変項の
直接の関係の発見は,そうした発見の代表的なものだし,知覚心理学の
歴史の上でも画期的な大発見だと思う.同じような発見が今後も
続いていく,という期待もある程度できる.

251氏の言うSfS問題でも,現在の研究がまだそうした不変項を
発見しておらず,今後発見される,という可能性もあるわな.
それを発見することができれば,直接知覚の理論は前進するわけだし,
発見されなければ停滞する,それだけのことだ.
267名無しさん@お腹いっぱい。:2001/07/24(火) 09:22
もちろん,ギブソニアンも慣性モーメントの例みたいな
単純な不変項検出原理だけを想定しているわけではないだろう.
ギブソンも言うように,知覚は全体がひとつのシステムなんだから,
複数の感覚モダリティが協動することで発見される不変項も
あるだろう.たとえばギブソニアンは視覚でも聴覚でも
「自分の体の移動」を重視するよね.慣性モーメント問題も
慣性モーメントが直接知覚されると言っても,別に人間の
腕に慣性モーメントの検出に特化された受容体があると言う
わけではなく,触覚,筋肉感覚,腕の運動感覚などが
「知覚システム」として強調して機能しているわけだ.
そういう点では,ギブソン世界においても「不変項とその知覚との
関係」は相当に複雑だし,ギブソニズムを実証研究に
繋ぐ,というレベルではかなりの困難が生じるだろうし,
現に生じているわけだ.