バスク語

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1自由
昔、「バスク語は受動態のみある言語である」と
の文章を読んだことがあります。
てきとーな本ではなく、それなりにまともな本で。
でも、おかしいですよね。ある言語の中に、
受動態しか存在しなかったら、
どうしてその態を受動態って認識できるんだって…
どなたか、ご存知の方いませんか?
2というか:2000/01/07(金) 05:35
印欧語的な意味での能動態と受動態の区別がない、という意味だと思います。

「能格」とか「能格言語」というキーワードでいろいろ調べたらわかるかも。
(説明めんどいのでごめんなさい)
3名無しさん:2000/01/07(金) 07:44
(たまたま)多数派の対格言語では、
他動詞の動作主が自動詞の主語と同じ格になりますが、
能格言語では、他動詞の動作対象が自動詞の主格と同じ格になります。

主格言語
1.ドアが開いた。「が」
2.オレがドアを開けた。「が」「を」

能格言語
1.ドア、開いた。「ゼロ」
2.ワシがドア、開けた。「が」「ゼロ」

――といったぐあいです。
こういう能格構文を受動態と言うのは不正確ですが、
大雑把なアナロジーとしては許容範囲でしょう。

4自由:2000/01/07(金) 19:29
>2@`3
ネットで色々見た結果…

名詞の格が明示される言語では、
「他動詞の動作対象が自動詞の主格と同じ格」であることが、
明瞭であるため、(若干正確さは欠けるが)受動態のような表現となる。
このため、あたかも能動態がなく、受動態のみかのように観察される…
かなと思っています。
素人なので、十分な理解に至っていないと思いますが。

いずれにせよ、自分の知らない見方を知る、きっかけになりました。
ありがとうございます。  では。
5名無しさん:2000/01/08(土) 05:18
能格言語でも「裏返しの受動態」があるらしい。
つまり、動作主を主格に持ってきて、
動作対象は別の補助的な格で表示されるという構文。
こういうgenngogenngoることを知ったうえで、
「対格言語中心主義」にならないようにすることを考えると、
自動詞と他動詞の格に同じ表現は使わない方がいいのかもね。
つまり、「自動詞 主格」「他動詞 能格・対格」ということにして、
「能格と主格が一緒になる言語と、対格と主格が一緒になる言語と、
いちいち別形式の言語がある」と表現する方がすっきりしてると思う。

6名無しさん:2000/01/08(土) 05:20
「genngogenngoる」って何だ(笑)
「言語がある」です、すみません。
770年代以後の言語類型論では:2000/01/09(日) 04:38
「格」を意味範疇には使わず、形態を表す概念として用います。
意味範疇には「意味役割」という別のラベルが貼られます
自動詞文の主語をS(Subject)、他動詞文の主語をA(Agent=
動作主)、目的語をO(Object)またはP(Patient=被動作主)と
呼ぶことが多く、
主格・対格型言語: 主格(S&A)VS 対格(O)
能格・絶対格型言語: 能格(A)VS 絶対格(S&O)
という違いになりますね。( )内は同一の格で表される意味役割
です。前者の言語にはOを主格,Aを斜格(Oblique)であらわす
受動態があり、後者の言語にはAを絶対格、Oを斜格で表す逆受動
態(Antipassive)があります。
8自由:2000/01/09(日) 20:06
>5@`6@`7
ありがとうございます。
でも、すいません。私の容量を完璧に超えています。
折角ですから、図書館で専門書でも見ながらゆっく理解します。

それで…
いろいろなサイトに寄ったところ、
・古日本語は能格言語だった  とか
・(現在の日本語の)「は」「が」の違いは主格と能格の違いだ
 とか、書いてありました。

あれ? いつのまにか、日本語も関わってんの?
9名無しさん:2000/01/09(日) 22:37
「は」と「が」は別の次元の対立だと思いますが、「わたしはあなたが好き」を I love you と比較してみたら、確かに能格言語的な表現になっていますね。

再構成された印欧祖語は、中性名詞の主格と対格が同じ形になっています。
「主格の形は本来の能格語尾が融合した形であり、中性名詞は、他動詞の動作主になることがまずなかったせいで能格語尾が付かず、結果的に主格と対格が同型になったのだ」
という説明を読んだこともあります。仮説としては筋が通っていると思います(実証も反証も無理そうですが、どのみち印欧祖語に関する議論ではそれが普通です)。
その仮説が本当で、前史における対格言語への移行がなかったとしたら、印欧系の諸言語は今も能格言語だったかもしれません。能格言語と言うと何だか例外的な文法類型のような気がしますが、そういう仮想の世界もありえたと考えてみれば、「この世界」の言語でそれが少数派なのは、たぶん歴史的偶然にすぎないのでしょう。
10自由:2000/01/10(月) 02:04
あの…怒らないでくださいね。>皆さん
ちょっと、おばかな質問を。
英語の場合、代名詞を除くと主格と目的格の違いはありませんね。
すると、英語が対格言語であることが、示されるのは
かろうじて代名詞の利用によってのみと考えていいですか?
つまり、代名詞の目的語が主格と同形になった場合、
英語に付いては、歴史的経緯はとにかく、対格言語か否か
外形的に判断することは不可、ということになりませんか?
まあ、英語の場合、前置詞があるので、そう単純ではないかもしれませんが。
112です:2000/01/10(月) 02:19
名詞の格を示すのになにが使われるか。
日本語では助詞(がのにを)、英語では「位置」ですね。
12自由:2000/01/10(月) 03:14
>11
うーん、やはりそうなるかなあ。
まあ、10に示した条件の上、名詞の置かれる位置まで
自由になるってことはないだろうし。
137です:2000/01/11(火) 00:22
能格性(ある言語がどの程度能格的であるかの度合い)の判定の
基準は、名詞句の格表示だけでなく、関係節における名詞句の振
る舞い、動詞述語における人称・性(または類別)・数などの
表示などがあります。英語の場合、動詞は自動詞と他動詞の別を
問わず、3人称単数現在の-sと一致をおこす名詞句は常に目的語
ではなく主語です。この事実も、英語が主格-対格型言語であるこ
とを裏付けていると言われています。

おばかな質問ではありませんよ。怒るなんてとんでもない。
お陰で十数年前に院で習ったことを思い出すことができました。
能格性について興味がおありなら、DIXONの“Ergativity”という
本が一番網羅的だと思います。日本語では『言語学大事典』の
述語編の関係する項目、あと『言語研究』の能格性特集(十年
ほど前)などが入門によいかと思います。
14自由
おそらく、何かのきっかけで「能格(今では一発で変換できるようになった)」
に興味を持ったとしても、とても自分だけでは、この境地には
辿り着けなかったでしょうね。
そもそも1を書いたときの予想は、
・かつて能動態があったのに受動態のみ残った、という歴史経過
・近接言語(ないか… バスク語じゃ)ないしは、単語の流入等で影響を
 与えた言語の体系から考えて受動態と考え易い
という、非常に的外れのものだったのです。
これでは、能格言語に辿り着きませんわなあ。あはは。

>13=7さん、ご紹介の本は参考にさせていただきます。
ありがとうございます。皆さん。