幼児虐待や虐めといった問題は、すでにある程度の期間を費やして、
各方面の専門家の方々が、研究を重ねてきていることと思います。
ところが、その延長線上の話を繰り返しても、
なかなか根本的な原因の究明や、問題の解決へと到達できないようなので、
従来とはまったく異なる切り口からの、アプローチが求められていると思います。
つまり、問題解決のための新しいステージ=心の科学を、創ってしまう試みです。
人間の心の由来を考えてみると、心は脳が生み出し、脳は生物の一器官で、
生物は、エネルギー代謝を行う物質、という階梯を持っている現象のようです。
となると、物理学のエネルギーに関する法則を起点にして、
エネルギー代謝を行う物質=生物の成り立ちを考え、
生物の中に脳神経系が出現する方向に進化して、
そこから人の心が生まれてくるまでの、
全ての原理と法則をシミュレーションしていって、
最終的に、それをコンピュータの人工知能上でシミュレートして検証する、
までの一連の作業を行えば、
21世紀の高度情報化社会に相応しい、新しい心の科学が誕生すると思われます。
21世紀の、新しい心の科学を確立させるためには、
物理・遺伝子・生物・心理・言語・コンピュータなどの各学問分野を、
思い切って、一元的に統合してしまう必要があるようです。
そこで、新しい心の科学の名前を「フュージョン」と仮称することにしてみます。
フュージョンは、今からこの場で作るものなので、
ややこしい説明抜きで、傍目に、イメージしやすい印象を持たせておく必要があると思います。
そこで、難解な専門用語の使用を避けて、
中学生レベルの基礎教養+アルファの予備知識程度で、
簡略に片付くように組み立ててしまおうと思います。
アウトラインは私が仮組みしていきますが、
細部のパーツの組み付けは、不充分な個所も多い筈なので、
皆さんで、辻褄を合わせを試みてください。
見事、幼児虐待の根本原因を解明できるところまで到達できるかどうか、
ある程度の見通しは立っていると思っているものの、
実際どこまで持っていけるか、私にはよく分からない部分もあります。
まずは、新しい心の科学=フュージョンの、プロトタイプ、バージョン1を創ってみます。
さっそく、フュージョン1(読みは、フュージョン・ワン)の、
最も基底核部分となる、物理パートを策定する作業に取り掛かりましょうか。
まずは、物質から生命の構造が作られるまでを追ってみます。
この宇宙は、ビッグバンと呼ばれる大爆発によって誕生したと、
偉〜い物理学者の諸先生達が連呼しているようなので、この場はこの説が正しいと仮定します。
つぎに、ビッグバンによって、宇宙は非常に小さくて密度の高い点のような高温状態の火の玉から、
大爆発によって、周囲へとエネルギーが飛び散って、百数十億年を費やして拡散していった結果、
今の宇宙は、ある程度まで、温度が下がってきているようです。
もしも、この大爆発のエネルギーの拡散が、完全に均一なものだったならば、
今も宇宙は均一な温度と物質の分布になっている筈ですが、
銀河や星々の分布を見ると、この宇宙は、どうやらランダムで不確定な要素で動いている様子です。
地球上の地形や、そこに住む生物まで含めると、複雑怪奇な有り様になっているようです。
エネルギーの拡散=散逸は連続したアナログ的なもので、
多少ランダムな要素が加わっても、波動性が現れる程度と考えられているようです。
ところが、この宇宙にはどうやら、銀河や星や原子といった、様々な階梯で、
不連続の粒子性を持ったデジタル的な構造を生み出す法則も備わっている様子です。
アナログなエネルギーが散逸する流れの中に、デジタルな構造化の法則が現れた結果、
エネルギーは物質へと構造化され、物質はより複雑な生物へと構造化され、
最後に、人の心の精神構造や、人の意思が集まって動く社会が構成されていったと考えられます。
この構造化していく原理から生まれた法則性は、上へと階梯が進むにしたがって、
下位の法則性を踏襲しつつ、複雑に組み合わせられていく性質があるようです。
つまり、構造化の法則性は、物理現象から人間の精神まで、一本に連なっているようなのです。
新しい心の科学フュージョン1が、物理・遺伝子・生物・心理・言語・コンピュータなどの各学問分野を、
一元的に統合してしまうためには、構造化の原理を、法則性から見極めてしまえば良いようです。
知的欲求の処理のしかたは人それぞれだなあと思った。
物質的な存在から、人間の心まで、
一貫した同じ構造化の原理と法則性で作られているらしいのですが、
物質と生命の構造には、顕著な違いがあって、混同できないことも事実のようです。
自然界に普通に存在している物質と、生物の最も大きな違いは、
石ころなどの物質は、放置しておいても存在し続けることが可能なようですが、
生物は、外部から食物や酸素などの、高エネルギーを持った化学物質を、
体内に取り入れられなくなると、あっという間に死んでしまうことのようです。
つまり、常時エネルギーの流れが続いていない限り、構造を保ち続けることが困難な様子です。
生命は、散逸するエネルギーの流れの中にしか存在できない構造物なので、
物理学畑の方々からは、散逸構造といったキーワードで呼ばれることも多いようです。
生命と非生命を、構造化という視点から区別するときに、
散逸構造か非散逸構造かが、最も重視されるようですが、
かといって、生物は単なる散逸構造でもない様子です。
じつは、恒星なども、散逸構造になっていることが判ってきているようですから。
生物の場合には、たとえば、光合成によって光のエネルギーを糖やでんぷんの形に移すことで、
外部から取り込んだエネルギーを、自分が利用しやすい形に変えて蓄えたり、
誕生して以降、自分の体の中に取り入れたエネルギーと、様々な物質を利用して組み合わせることで、
自分自身の構造を、どんどんより複雑なものへと変えていく=成長する 点などが、
太陽などの、非生命の散逸構造物とは、明らかに異なる特徴のようです。
生命は、自らを自己組織化していく自律的な生成機能を備えた、散逸構造体と、
新しい心の科学フュージョン1の中では、科学的に定義するのが良いようです。
これで、物理学から生物学へと、階梯を繋ぎながら、ワンステップ上に昇ることができるようです。
今回さらりと簡略に観察した、生物の構造化の原理や法則性は、
後々人間の心の構造化を探るうえで、それなりに重要になってくると思います。
21世紀の高度情報化社会に相応しい次世代の心の科学フュージョン1が、
なぜ、物理から生物、そして心理へと、階梯を進めようと試みているかと言えば、
人の心の構造を探るために必要な、生命の構造化規則を明らかにしていくためです。
生命は、有限要素のフラクタル的な階層構造、端的に言えば重箱の構造を備えているらしくて、
下位の階梯を成立させている、単純な原理や法則が幾つか組み合わせられることで、
より複雑な、上位の階梯の構造が生成されていくようなのです。
そのとき、下位の構造化の規則などが、姿を変えながらも、
同じパターンを描いて、上位の構造の中に現れてくることが、しばしば観察されるようなのです。
ですから、複雑な心理メカニズムの構造が、直接調べられず判らない場合でも、
下位の構造化規則を幾つか組み合わせて作った、
仮想モデルによるコンピュータ上のシミュレーションと、
実際の心の動きを比較してやることで、心理メカニズムの構造を、推定することができるわけです。
新しい心の科学フュージョン1では、自己組織化する散逸構造体として、人の心を扱いたいのです。
物質の世界を支配している諸法則が組み合わさって、
自らを自己組織化していく自律的な生成機能を備えた、散逸構造体が生成されるまでを、
うまく辻褄を合わせて説明する作業のパートを、
フュージョン1の物理パートと、仮称することにしましょうか。
もちろん、このパートを完成させるためのパズルのパーツが、揃ってきているとは、
まだまだ言えないのではないかと思います。
生命は、食物の摂取や呼吸によって、エネルギー物質を採り込んで、
自らの散逸構造を維持しているといった、生命の作動原理の基本部分は、
一通りイメージできると思います。
今回は簡略に、この程度の理解度で生命原理をイメージして済ませることにしますが、
必要となれば、このパートのパズルをより詳細に解き明かす機会もあるだろうと思います。