研修の一環で「育てるカウンセリングの原理と実際」の講演ビデオを見た。冒頭からスクールカウンセラー問題が出てきた。
最近、臨床心理士の資格を持った学校カウンセラーが導入されているが、あくまで臨床心理士は、精神的な病気を助けるものであるものであるのに対し、学校の教師は、主に普通の子どもを対象とするものである。
従って、治す(cure)より育てる(care)方が学校社会にはなじみが深いのであるから、学校カウンセリングには学校心理学やカウンセリング心理学出身の人が関与した方がよいのである。
もちろん、臨床心理士との連携は必要であるが、それには教育者としての自分のテリトリーを知らないといけない。
ここからが講演の本題。
全ての学校の教師はカウンセリングのABCぐらいはモノにしなければならない。
教師が、治療者ではなく教育者として、心と心のふれあい(リレーション)を作るために何をすればいいか。以下に3つ挙げる。
◆oneness
「相手の身になる」
onenessになりにくい教師とは?
(1)感情経験が貧困な教師
人の感情を推し量る能力が割と低い。
子どもが体験したことぐらいは教師も体験した方がいい。
実体験で足りないところは人の体験を聞かせてもらったり、本を読んだりして補うこと。
(2)特定の考え方に固執する教師
教師は特定の考え方から脱却する勇気が必要である。
★onenessを高めるためには、相手の身になることが大切である。そのためには、感情体験を豊かにすることと考え方に自由さをもつことが必要である。
◆weness
「我々意識」「身内意識」
wenessを作っていくには
(1)物理的にその子どもに気づいてあげること
あるべきものがあるようにすること。
自分の居場所が確保されていることが分かるようにすること。
「僕のことを覚えてくれている。」という気持ちが意欲へとつながる。
例えば、教師ならその日の欠席者を確認すること、校長なら病休中の教員宅を訪問することなど。
(2)子どものいいところを認めてあげること
褒められることで子どもの意欲が上がる。
劣等感の強い人はけなす方が強くなる。
ものの見方が少ない(観点が少ない)人は褒めるのが下手である。
(3)時には子どものために教師が体を張ること
教師は、子どもと一緒にブタ箱に入る覚悟がないといけない。
◆I-ness
「共感的理解・受容・傾聴」
教育者は子どもに世の中のことや生き方を教える(社会化する)のが仕事である。
フラストレーションの中でどう生きていくか教えるのが骨子である。
自己開示と自己主張
onenessのできる人だけがwenessを使え、onenessとwenessのできる人だけがI-nessを使え。
oneness、weness、I-nessの3つを使い分けられる人が教育のプロフェッショナルであると言える。
◆リレーションを促すための方法・領域
(1)構成的グループエンカウンター
枠を定めて(構成的に)本音と本音の交流をする。
他者理解と自己発見につながる。
現代は、深いふれあいがないから慢性の孤独感がある。だからこそ、人工的にふれあいのきっかけを作ってやる必要がある。
(2)キャリアガイダンス
生き方を考えさせる教育(としての進路指導)。
米国のスクールカウンセラーはキャリアカウンセリングができるのが当たり前である。
キャリアが定まることで精神衛生上もよくなる。
★指導事例
職業の一覧表を生徒に見せ、そこから自分のなりたい仕事を選ぶ。
↓
その仕事についてイメージしたり、調べたりする。
↓
それをグループに持ち帰り、友だちと話し合って情報交換する。
↓
自分の生き方を考える学習につなげていく。
(3)グループ体験
集団の規範(集団内の共通したものの考え方 「校風」)が人を育てる。
集団の規範が人を変える。
教員は集団の中にどういう規範を作るか考えなくてはならない。
集団に入ると言うことは、自分も何らかの役割をもつことになる。
役割の体験
集団の中での居場所を自分で作る学習になる。
他人の権限を尊重することと自分の責任を果たすこと知る。
(4)対話のある授業
相手の身になりながら会話をする。
聞く人の身になってするのが「対話のある授業」である。
本を書くときも同様で、読む人の気持ちになって書くことが大事である。
(5)サイコエデュケーション(心の教育)
偏見をもった人のゆがんだ考えをどう直してゆくか。