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シルビア山本:
コピペ
:シルビア山本:2005/12/07(水) 17:48:58 ID:c5l6n7vt
『愛は風の如く2・第20章 罠 より』
いつの時代でもあることですが、相手が強い場合に、その相手を直接攻撃することなく、そのまわりにいる者の
いちばん弱いところに取り入って、そこから突きくずしていくという方法があります。これなどは、悪魔がいちば
ん好む方法でもあります。
へーシストラトスの心には、いつしかそのような魔が忍び込んでいたのでしょうか。そう、彼は獲物をねらう鷹
のような目でもって、はしゃいでいるアフロディーテに目をつけたのでした。
「そうだ、このアフロディーテとヘルメスの関係をこじらせるのがいちばんだ。なんとかしてアフロディーテの不義
ということをでっち上げて、国民を不信のなかに置き、そしてヘルメスとアフロディーテの離婚騒動を起こすのがい
ちばんだ。そうすればヘルメスは動揺し、そして政治的能力も低下し、我ら家臣団にその実権をゆだねるようになね
であろう。
されば、どのようなことを考えようか。ふたりが結婚してもう七年近い歳月が過ぎようとするのに、アフロディーテ
にはまだ子供さえない。ここがなにかのひとつのねらい目かもしれない。
最近のアフロディーテの様子を見ると、妙に頬に赤みがさして、無邪気にはしゃぎまわっている。まるで野原のなか
に解き放たれた兎かなにかのように、生き生きとして、なにものも恐れないような素振りさえ見える。人間は、得意
のときがいちばん危ないものだ。あのように目を輝かせて生き生きとしているときこそ、兎はたやすく谷底に落ち込
むことがあるものだ。
よしっ、あのアフロディーテを陥れたらどうだろう。昔より、女をおとすには、金に糸目をつけない方法がいちばん
だ。よし、これでいこう」
そうへーシストラトスは考えました。