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SGY:
『四十回の冬』
四十回の冬がきみの額を包囲し
その美の野原に深い塹壕を掘ってしまえば
今でこそみなとれる きみの誇らしい青春の衣装も
ぼろ同然のよれよれの雑草にしか見えなくなる
そうなってから「きみの美はどこにある
あの輝かしい財宝をどこにやった」と聞かれ
「この落ち窪んだ目の中に」なんて答えるのは
恥っさらしの哀れな自賛というものです
しかし「この美しい子供こそ わが人生の総決算
わが老いの申しわけ」と答えられるなら
きみはその美をじつに立派に使ったことになる
子供の美貌が親譲りであることも皆がみとめる
きみは老いても 新しく生まれかわり
血が冷えきっても 暖かい血が自らに脈打つのを知る