坐禅と見性第10章☆火に触れて焼けず☆

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47第二十三則  不思善悪
南方に旅立った六祖を追って不満な弟子が追ってきた。
六祖はそれを見ると五祖から伝授された衣と鉢を石の上に投げ出して言った。
「この衣は禅の悟りの象徴である。力で争うものではない。持っていってもよい」 弟子はそれを持ち上げようとしたが山のように動かなかった。
弟子は恐れて、「私が来たのは仏法を求めてのことで、衣のためではありません。ご教示ください」と言った。
六祖は「善とか悪とかを思わないそのときの貴方の本来の自分とはどのようなものか」と問うた。
弟子はこれを聞くと悟って、全身に汗し、涙を流し、「今伺った秘法の他にまだ教えてくださらない極意はありませんか」と尋ねた。
六祖は「今貴方に説いたことは極意というものではない。
自分自身の本質に気付いてそれになりきることが出来ればそれでよいのだ」と言った。
弟子は「これまで五祖の下で修行しましたが自分の本質に気が付きませんでした。
これからは貴方が師匠です」と言うので、六祖は「それなら一緒に五祖を師としよう。自分自身をしっかり保持しなさい」と言った。