657 :
まもかほ:
「わわっ、どうしよう! まにあわないかも!」
走りながらちらっと眺めた腕時計の針は、もうすぐ三時を指そうとしていたから、ボクは思わずそんな声を上げちゃったんだ!
「あっちゃー、まっずいな〜……よおし!」
ひと声気合を入れて、ボクは走るスピードをぐーんって上げたんだ!
耳元で風がビュービュー音を立てて、景色がぐんぐん後ろに流れて行くのは、とっても気持ちいいんだよ♥ 息はさすがにちょっと……苦しいけどね、えへへへっ♥
まっすぐ続く並木道を一気に駆け抜けたら……あ! いたいた♥ 公園の噴水の前のベンチにちょこん、と腰掛けて両足をぶらぶらさせてる……
「花穂ちゃーーーーん!!」
走りながら大きく手を振って、ボクは花穂ちゃんに向かってそう叫んだんだよ♥
花穂ちゃんはいきなり名前を呼ばれて、ネコさんに水をかけちゃったときみたいにびくうっ! って体を震わせたあと、走ってくるボクに気がついてにっこりとお花が咲いたみたいに笑ったんだ!
「まもちゃん!」
ぴょん、ってベンチから飛び降りて、ちょっとバランスを崩しながら花穂ちゃんはボクの側まで走りよってきたよ。
「はぁ……はぁ……ゴメンね、花穂ちゃん……ちょっと遠回りしてマラソンして行こうと思ったら、遅れそうになっちゃったよ……」
息を切らしながらそう言ったボクに向けて、花穂ちゃんは大げさなぐらい首をぶんぶんと横に振って、「ううん、花穂、ぜんぜん気にしてないよ!」って言ってくれたんだ♥
てへへへ……♥ 花穂ちゃんはやっぱり優しいなぁ♥ うん、そうだ! 花穂ちゃんの優しさに甘えてばっかりもいられないよね! ボク、いい事を思いついちゃったよ!
「花穂ちゃん、こっち!」
ボクは花穂ちゃんの手を取ると、歩きはじめたんだ!
658 :
まもかほ:04/06/09 21:26 ID:nGk3qSVO
「え……? ま、まもちゃん……?」
花穂ちゃんはびっくりした表情。僕の手の中に、ふにふにであったかい花穂ちゃんの手……あ、あはははっ♥ 勢いで手を握っちゃったけど……なんだか……てれちゃうね♥
二人そろって真っ赤な顔で、やってきたのはソフトクリームの屋台の前!
「花穂ちゃん、待たせちゃったお詫びにソフトクリーム、おごってあげるよ!」
ボクがそう言うと、花穂ちゃんは「え、ソフトクリーム!?」って言って目を輝かせたんだけど、すぐに小さく首を振ると、
「でも、なんだかまもちゃんに悪いよぉ……」
そう言いながら下を向いちゃったんだ。ボクはそんな花穂ちゃんの頭をそっと撫でると、
「悪くなんてないよ、ボク、花穂ちゃんがおいしいものを食べているときの笑顔、好きだからさ!」
そう言ってすかさず屋台のおじさんに、
「おじさん、ソフトクリーム二つね!」
真っ黒に日焼けした人の良さそうなおじさんは、ボクにソフトクリームを二つ手渡すと、
「はいよ、お似合いのカップルだね、あんたら!」
そんな事を言ったんだ。もう、失礼しちゃうな! ボクは女の子なんだぞ!! お腹の中で少し怒りながら花穂ちゃんのほうを見ると、花穂ちゃん……くすくす笑ってた。
そしていきなりボクの腕を取って、ぎゅってしがみついて……きたんだ。
「か、花穂ちゃん?」
目を白黒させてボクがそう言うと、花穂ちゃんは、
「花穂、うれしいんだぁ……まもちゃんとお似合いのカップルだなんて言われちゃって……♥」
うっとりしてそんな事を言うんだから! も、もーう、花穂ちゃんまで……でも、その……ボクも花穂ちゃんとお似合いだって言われたとき、チョットだけ……嬉しかったけどさ……♥
「まもちゃん、さっきのベンチで一緒に食べよ!」
花穂ちゃんは、なんだかテレテレになってぼやっとしていたボクの手を取ると、後ろ歩きでさっきのベンチまで行こうとした。
ああっ! 危ないよ! 花穂ちゃん、ただでさえドジっ娘なんだから……!
「ほら、早く早く♥ きゃっ!」
あ〜あ……。
659 :
まもかほ:04/06/09 21:27 ID:nGk3qSVO
……ベンチに二人並んで腰掛けて、ボクは鼻を啜る花穂ちゃんを慰めてた。
「ぐすっ……ゴメンね、まもちゃん……まもちゃんがせっかく花穂に……」
「花穂ちゃん……もう泣かないでよ……」
花穂ちゃんの柔らかくてサラサラの髪の毛を撫でながら、ボクは地面に染み込み始めたソフトクリームをちらり、と眺めた。そしてボクの手の中のソフトクリームに視線を移したんだ。
うん、そうだ……! こう言うときは……
「花穂ちゃん、ほら、ボクの分は大丈夫だったからさ、一緒に食べようよ!」
ボクがそう言うと、花穂ちゃんは予想した通り、「でも……まもちゃんに悪いよぉ……」って言ったんだ。ボクはそんな花穂ちゃんに見せつけるように、ペロリ、って一口ソフトクリームを舐めたんだよ。
「うわーっ! 冷たくて、甘くってとってもおいしい! こんなおいしいソフトクリーム……食べなかったら後悔しちゃうと思うんだけどな〜♥」
「あ……」
花穂ちゃんはうつむいていた顔を上げて、ソフトクリームに目はくぎづけ! ボクはもう一押し、とばかりに口の回りが汚れるのも構わずにてっぺんからソフトクリームにかぶりついちゃった!
660 :
まもかほ:04/06/09 21:28 ID:nGk3qSVO
「ま、まもちゃんずるーい! 花穂も、花穂も〜!!」
あはは♥ 花穂ちゃん、やっと笑った!
ボク達はそのまま競い合うみたいにソフトクリームを両端から食べていったんだよ!
二人がかりだからソフトクリームもあっという間になくなって行っちゃって……だんだん、ボクと花穂ちゃんの顔が近づいて…………突然、ボクの舌が柔らかいものにからめとられちゃったんだ!!
「む……むぐうっ……!?」
目の前には花穂ちゃんのうっとりした顔……ボクの舌は……花穂ちゃんの口の中に吸い込まれてた……。
うわっ……な、なに、これ!? ……凄くふわふわして……胸がドキドキして……気持ち……いい……♥
「ぷはっ……」
ようやく解放されたボクの口と花穂ちゃんの口の間に、透明な唾液が橋をかけてた……。
まだドキドキしている胸をおさえたボクに向かって、花穂ちゃんはにっこりと……なんだか大人の女の人みたいに笑って……こう、言ったよ……♥
「ウフフフ……まもちゃんの言った通りだね……とっても……甘くておいしかったんだぁ♥」