10年以上前、俺は悟りを開いたと思う。最初の悟りだ。
「カゲロウは一日飛び回って死んでしまう。人間も同じだ。」
ある日突然人生が終わる人もいる。長生きして孫やひ孫に囲まれて
死ぬ人もいる。
それでも、どちらも幸福かもしれないし、どちらも不幸かもしれない。
後者より前者の方が幸福な事もある。
それは命ある日々をどう生きたかが問題だと知った。
それから数年後また悟りを開いたと思う。俺にとっては2番目の悟りだ。
「人は一人では生きていけない。」
純粋に「自分」と呼べるものは何もないという事だ。自分の肉体や
知性は勿論、心さえも他の存在からもらった物だという事だ。
心は今まで関わった人との記録で出来ている。
とりわけ愛情を全く受けないと人間は死んでしまう。そして愛情は
気力となってあらゆる困難に打ち勝つ力になる事を知った。
それが悟りなのか分からんが、2つの経験で少しだけ偉くなったような
気がしたが、まだまだ未熟者だと世間が教えている。